はい、こんにちは。今節の対戦相手はバレンシア。今シーズンの序盤にマルセリーノを解任し、カオスに陥るかと思われましたが、CL圏内と勝ち点差4の8位、CL決勝トーナメント進出とどう評価していいのか微妙な戦績を残しています。セラーデス監督も評判ほど悪くはないようです。前回対戦はこちら↓
一方のバルセロナ。初陣のグラナダ戦こそ、バルベルデ時代とは変わったスタイルで勝利を収めたものの、続く3部相当のイビサ戦では大苦戦。前半に先制され、その後も決定機を作られる苦しい展開になりました。内容は本当にゴミ箱に捨てたくなるような試合でしたが、グリーズマンが後半に2ゴールを決め、何とか逆転に成功しました。このバレンシア戦では改善されるのか注目が集まります。
■スタメン
まずはバレンシア。昨夏、バルサから加入したシレッセンは 負傷により欠場。司令塔もパレホも同じく欠場ですね。コンドグビアとコクランというフィジカル強いコンビがボランチに入ります。バルサ移籍が囁かれ出したロドリゴはベンチスタートになりました。
一方のバルサはセティエンが考える現状のベストメンバーでしょうかね。グラナダ戦からの変化としては、フレンキ―、アルトゥールの2人がインテリオールの位置に入りました。尚、移籍濃厚になってしまったペレスが招集外に。代わりにBチームからアレックス・コジャドがベンチに控えます。
■前半
バレンシアのハーフスペース封鎖
さて、まずはバレンシアのセティエンバルサ対策について見ていきましょうか。このブログでは何度かお伝えしている通り、セティエンの基本コンセプトはボール保持!なので、まずはボール非保持時にどうするのか注目していきたいところです。
立ち上がりからバレンシアは高い位置からプレスをかけますが、この時特徴的だったのがサイドハーフの守備挙動。ワイドのレーンのWBをケアするのではなく、3CBの左右の選手に積極的にプレスをかけていきます。この時のプレスのかけ方は基本的に縦切り。つまりCBからインテリオールへのパスコースを封鎖したわけです。
その分、バレンシアのSBが後ろのスペースを捨ててWBをチェックします。この守備陣形を取ることで、パスコースを制限することに成功しました。さらに重要なポイントとしてあげられるのがバルサのインテリオールの2人が良い形でボールを持つことが難しくなってしまいましたね。
フレンキ―は賢いので、その状況を瞬時に読み取ってビルドアップ時にワイドのレーンに移動してボールを引き出していました。しかし、この動きがセティエンのサッカー的に正しいのかはちょっとよく分からないところではあります。そしてそこから上手くパスを配給できていたかと微妙ではあるので、有効とは言い難かったかもしれません。
ビルドアップが制限され、中央のスペースを埋められたバルサはサイドから活路を見出したいところですが、バレンシアのサイドハーフ2枚はここでも活躍します。バルサのWBのアンスとアルバには基本的にヴァスとガヤのSB2人がマークするわけですが、その背後のハーフスペースに必ず戻ってきて、1対2の状況を作っていました。
フェラン・トーレスとカルロス・ソレールの運動量は多分半端なかったと思います。若い2人だからこそできたことですね。ベルナルド・シウバとかもそうですけど、あれだけの技術を持った選手たちが走り回る時代なんですよね本当に。もちろん、毎試合これをやり続けるのは無理だと思いますが。
この試合ではアンスのパフォーマンスに批判の声が上がっていましたが、対面がリーガ屈指の左SBのガヤで、そのカバーにサイドハーフが入っている状態で突破しろというのも酷な話でしょう。それでもドリブルでちぎれる選手が重宝されていくのでしょうが、いずれにせよ17歳のアンスにそれを求めるのはちょっと厳しいですね。
イビサは素晴らしいんだけど、特筆すべきはサイドハーフの非保持時の動き。必ず中央のレーンを塞ぎ、WBにボールを誘導。アンス・セメドにボールが入るとすぐさまプレスバックしてSBと挟み込んでワイドの選手を孤立させる。よく仕込まれてる。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月22日
ただし、これが90分間続くのかは分からない。
実はイビサ戦でもこれとは少し違いますが、ちゃんと対策をされていましたね。2戦目、3戦目で早くも対策をしてくるわけですから、各クラブのスカウティングって本当すごいですよね。もっとも、セティエンバルサは今のところかなり対策が打ちやすいという側面もありますが。
さらにバレンシアは攻め込まれると、CFのどちらか(主にガメイロ)がブスケツのラインまで下がり、彼へのパスコースを遮断していました。ガメイロはスピードありますから、ブスケツ付近に置いておけば、ポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の時起点にできそう!という意図もありそうです。これはCLグループステージ第1節のロイスと同じような役割ですね。
各駅停車のバルサ
さて、このような対策を打たれたバルサはなかなか上手く前進することができません。ハイプレスを回避したとしても、バレンシアは中央を封鎖して中盤を殺してきたうえに、前述したようにサイドのにも上手く蓋をするため、シュートを撃つこともままなりません。
序盤からなんとなくボールを保持し続けるものの、効果的なパスはほとんどなく、繋ぐだけのパス回しに終始します。すると10分、バレンシアの最初のカウンターからピケがPKを献上してしまいます。パレホ不在の中、キッカーを務めたマキシ・ゴメスのショットはテア・シュテーゲンが完璧にストップし、難を逃れますが、ここから暗雲が立ち込めます。
この試合の前半のシュート数はバレンシアが5、バルサが3でした。バルサの3のうち流れの中からのシュートは僅か1本のみ。そしてバルサのボールポゼッションはなんと74%。データでもはっきりわかってしまうほど、無駄なボール保持を続けてしまいました。
バルサのパスを隣の選手に繋ぐ、各駅停車のパスが多く、効果的に相手の守備陣を動かすことができませんでした。以前の記事でも書いたのですが、パスを繋ぐ意味は、「ボールを持つこと」ではなく、「相手を動かすこと」にあるというのが僕の見解です。僕の見解と言っていいのか微妙ですね笑。ポジショナルプレーの考え方ですから。繋ぐためのパス回しは目指すべきところではないでしょう。
こんな感じのサイドチェンジとかはほとんどなかったんですよね。左右に相手を揺さぶり、ギャップを作りだしてそこに縦パスを打ち込んで、一気に攻撃のスピードを上げていく。こういう風になればいいなあと思うんですがね。まあそこはまだまだ仕込み切れてない部分なのかなと思います。
例えば、昨シーズンのパブロ・マチン監督政権下のセビージャの3-1-4-2でよく見られたのは、インテリオールやストライカーがサイドに流れて中央の守備者を釣りだし、そのギャップを強襲するパターン。こういうのはセティエンはあんまり好まないんでしょうね。前の記事にも書きましたが、サイドは「聖域」みたいなので。
58分、プロメスが左サイドに流れてピケをつり出すと、そのままスピードを活かして縦に突破。ピケは全くついていけずプロメスはクロス、ファーサイドでフリーになっていたサラビアが利き足とは逆の右足で丁寧に合わせ、ゴール。セビージャ先制です。これ、マチン監督からするとしてやったりのゴールではないでしょうか。セビージャの攻撃の原則は基本的に「サイドにつり出して中を突く」です
前半はこのまま良いところなく0-0で終了します。
前半終了。0-0
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月25日
序盤からボールを保持するもののなかなか前に進まず。逆にバレンシアのファーストカウンターからPKを献上。これはテア・シュテーゲンがストップするものの、その後も同じような展開が続く。バルサは流れの中でのシュート0と全くゴールに近づけない状況に。
■後半
バレンシア先制で状況は厳しく
後半修正が必要なバルサですが、大きな変化は見られず。ということで試合は前半と同じく、ボール保持はバルサ、ペースはバレンシアの構図が続きます。そして後半開始早々、失点を喫してしまい絶望的な空気が流れます。
セティエンバルサのボール保持時の課題をもう一度整理しておきましょう。
- 飛ばすパスが少なく相手が動かない
- 3-1-4-2の陣形を崩さないので相手のバランスが崩れない
まあどちらも言ってしまうと相手のバランスを崩すことができていないってことなんですが笑。1は前半の部分で書いたので次は2について。まあ2もチラッと書きましたが、インテリオールやCFの動きが少ないので、相手が動かないんですよね。セティエンはポジションを大切にし、極力バランスを崩さないことを肝としているようです。
多分ポジションチェンジはある程度許容されてると思うけど、3-1-4-2の形は崩すなって言われてそうな気がする。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月25日
セティエンのサッカーはロジカルなのかもだけど、今のバルサば全然ロジカルじゃない。
例えば、グリーズマンがサイドに流れて相手を釣りだし、空けたスペースにアルトゥールが飛び込むみたいなシーンは皆無なわけですよ。アルトゥールもシーズン序盤はゴールにかかわる決定的な仕事ができていたので何だか勿体ないなと思いますね。
スアレスがいればあまり動きがない中でも起点となり、理不尽なゴールをいくつか決めてくれるかもしれません。しかし、純粋なストライカーがいない現状ではこの静的な配置で得点を奪うのは難しいのではないでしょうか。このスタイルを続けるのであれば、代わりのストライカー獲得は急務な気がします。
で、このような展開になると登場するのがビダルなわけです。中盤の役割もストライカーの役割もできる彼を投入することで、バルサの攻撃は途端に迫力を見せるようになります。本当に、使い勝手の良い選手ですよね。あらゆる役割がこなせる選手です。このシステムにおいて、ビダルはまたしても欠かせない存在になってきそうです。
しかし、メッシの調子が上がらず、アンスが完全に封じられている状態では得点まで至らず。メッシはどこか痛めているのでは?という疑惑があるようですね。ここでメッシまで離脱となれば、今シーズンはジ・エンドですが、決して無理をさせてはいけません。メッシも今年33歳ですし、休むべき時は休まねばなりません。
マキシ・ゴメスとコンドグビアの貢献
バレンシアの攻撃はまずカウンターが優先です。しかし、毎回毎回カウンターにいけるわけではないので、他の攻撃パターンも当然あるわけです。
バレンシアはボール保持時、サイドハーフが内側に絞り、サイドバックが高い位置を取ります。左程後方からのビルドアップが上手いわけではありませんが、大きかったのはマキシ・ゴメス。巨体を活かしてロングボールのターゲットとなりました。そのこぼれ球をガメイロ・ソレール・フェランの3人が拾って高い位置のサイドバックに展開、クロスが1つの攻撃パターンです。かなりシンプルですね。
もう1人大きかったのは中盤のコンドグビア。ちょっとこの試合は異次元でした。長い脚を駆使してボールを回収すると、キープ力を活かして時間を作り、サイドバックが上がる時間を上手く作っていました。メッシとのマッチアップも負けていませんでしたし、ちょっと8位のチームのレベルじゃなかったですね、バレンシアも彼も。
そんなわけでバレンシアの方がやることがシンプルかつ明確だったわけですよ。バルサは前がメッシ&グリーズマンなのでロングボールは蹴れませんし、対策は立てやすいです。バリエーションはまだ少ないですし、個で押し切れるほどバレンシアは簡単な相手ではありません。バレンシアもやることは決まってますが、シンプルであるがゆえに迷いはありませんでした。そこの差は間違いなく出たと思います。
77分には、またしてもアウトオブプレーの気の緩みを突かれて、マキシ・ゴメスに決められて勝負あり。その後コジャドとラキティッチを投入するものの、チャンスを作ることはできず。文字通り結果も内容も完敗で、セティエンバルサは初黒星を喫してしまいます。
試合終了。0-2敗戦。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月25日
後半の立ち上がりにオウンゴールで失点。その後ビダルを入れて前線にパワーを注入してゴールに迫るも得点ならず。逆にクイックリスタートで虚を突かれる悪癖を発揮し、追加点を献上。
3試合目でかなり厳しい試合となった。
■雑感
かなり今後に不安を残す試合となってしまいました。ポゼッションは高いものの、それだけしかないような試合でした。バレンシアの対策と選手たちのパフォーマンスは見事でしたが、それを考慮に入れてもちょっと残念なゲームでした。
ここから各チームの対策はさらに進んでいきます。今のスカウティングは本当にすごいですから1試合やっただけで丸裸にされてしまいます。選択肢は2つで、「対策に対して対策を打つ」もしくは「対策を打ち破るくらいスタイルを熟成させる」のどちらかでしょう。そしてセティエンは多分後者を選ぶでしょう。
こうなるのが予想されていたからこそ、僕は彼の途中就任には反対だったわけですが、まあそれは今言っても仕方のないことです。彼がバルサの監督である以上、心中するしかありません。時間はかかるでしょうし、我慢は本当に必要です。バルベルデが解任されて地獄が終わったと見る向きもあるようですが、忍耐が必要なのはここからです笑
セティエンはものすごく頑固な監督だとは思うので、多分基本コンセプトは変わらないし、ここで折れるんならバルベルデを変えた意味がない。だから信念を貫くのみ。退路はなし。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月25日
そして僕も信じるしかない…。
しばらくは温かく見守りましょう。変化に時間はつきものですから。
最後までお読みいただきありがとうございます。