はい、こんにちは。皆さんいかがお過ごしでしょうか。今回はリーグ戦第22節レバンテ戦のマッチレビューです。前節のバレンシア戦では良いところなく完敗を喫したセティエンバルサですが、コパのレガネス戦では5-0の大勝を収めます。その試合のレビューは書いていないので今回はレガネス戦も踏まえながら書いていきたいと思います。
対するレバンテは今シーズンここまで8勝を挙げ、中位に位置します。前半戦ではホームでバルサを3-1で撃破しました。その試合もレビューを書いてなくて非常に後悔しております・・・笑。近年のバルサはレバンテを得意にしておりませんが(もっともアウェイ戦に限りますが)、今節はどうなるでしょうか。
■スタメン
ホームのバルサは3バックではなく、4-3-3を採用。前回のレガネス戦からの変更は負傷のビダルに代わってラキティッチがインテリオールに入ったのみ。怪我人が多く、またカルラス・ペレスを放出したことで、なかなか選手を休ませられないのが悩みどころです。
一方のレバンテはオーソドックスな4-4-2でバルサに挑みます。リーガ屈指のドリブラーえあるモラーレスと今シーズン9ゴールを挙げているロジェールが2トップを組みます。
■前半
セティエンバルサの新機軸
セティエンが就任して最初の3試合のグラナダ戦、イビサ戦、バレンシア戦では、3-1-4-2のセティエン色全開で挑んだバルサ。グラナダ戦こそ上手くいきそうな雰囲気がありましたが、イビサ戦とバレンシア戦では早くも対策を打たれ、機能不全に陥ってしまいました。
それに対して、セティエンは早くも処方箋を出してきました。コパ・デル・レイのレガネス戦でバルサお馴染みの4-3-3に戻して、5-0で完勝を飾りました。その流れを踏襲してこのレバンテ戦でも4バックで臨みます。しかし、バルベルデ時代の4-3-3とは違う特徴が見られました。
バルベルデからセティエンへの政権交代と共に重要なポイントとしてあげられるのが、ルイス・スアレスの負傷離脱です。彼はキケ・セティエン新監督の元では1度も試合に出てないんですよ彼。デメリットもあった彼ですが、前線で最終ラインと駆け引きをし、相手を引き付けることも、自分で決めることも、さらには決定的なパスを出すこともできる彼の不在は特にメッシにとって痛いものがあります。
新たな「9番」を獲得しないことを決めたバルサにとって、彼のタスクをどう補うかは重要なテーマになります。メッシはもちろんのこと、グリーズマンも前線に張らせて良さが出るタイプではありません。だからこそ、バレンシア戦のレビューの後半でこのチームには「9番」が必要なのでは?と書いたわけですが、結局獲得はしなかったのです・・。その判断の是非は置いておくとして、セティエンの取った策は驚くべきものでした。
セティエンと言えば、ポジションチェンジをあまり好まない監督というのが定説でした。ポジションチェンジによって起きるカオスを好まず、選手全員に正しいポジションを取らせたがります。そのため最初の3戦は自らがベティス時代に愛用していた3-1-4-2のシステムに選手を組み込むかのようなアプローチを取っていました。
しかし、この試合ではシステムを4-3-3に変えただけではなく、選手間の流動性を感じることが出来ました。大きな役割を担ったのは右インテリオールに入ったフレンキー・デ・ヨング。バルベルデ政権ではラキティッチやビダルと組む際は、左で起用されることが多かった彼は、右インテリオールとしてボール保持時に特殊なタスクを課されることとなりました。
具体的に言うと、「メッシ・グリーズマンの動きに合わせて立ち位置を変化させること」。例えば図の様に、メッシとグリーズマンがDFラインから離れれば、CFの位置にスルスルと上がっていくのです。もちろん、メッシやグリーズマンが中央に入れば、サイドに流れていきます。この動きをすることでメッシとグリーズマンをポジションの枠組みから「解放」することに成功しました。
前線に固定されることなく、メッシとグリーズマンが自由を謳歌できるようになったことで前線の動きは活性化し、チームは活き活きとするようになります。まさにこのフレンキーのタスクは「偽インテリオール」と呼べるものでしょうか。運動量とインテリジェンスを高水準で兼ね備える彼だからこそできる役割かもしれません。でもフレンキ―がこのタスクについてどう思ってるのかはちょっと気をつけたい部分ですね。多分本意ではないはずなので。
メッシ・グリーズマン・フレンキ―のこのトライアングルは新生バルサの中心になってくるやもしれませんね。その後方の右サイドバックにはこのトライアングルと有機的に絡めそうなセルジ・ロベルトではなく、個人での突破に優れるセメドがここ2試合チョイスされています。これはサイドの選手に突破力を求めるセティエンらしい采配ですね。
一方、左サイドは右サイドに比べると、静的な印象を受けました。左インテリオールの人選としては、レガネス戦はビダル、レバンテ戦はラキティッチと両ベテランが起用されていることからもバランスを崩す右サイドの帳尻合わせとしての左なのかなと。アルバも特にレバンテ戦はオーバーラップを控えていました。まあ単にアンス行ってこいや!なのかもしれませんが笑。
このように左右アシンメトリーなボール保持時になったわけです。僕はもう少し3-1-4-2に拘泥すると踏んでいたので、この変化は純粋な驚きでした。そしてこれはとてもポジティブなことではありませんか?セティエンが自分の形をある程度捨て、バルサのスカッドにこんなにも早く歩み寄ったわけですから。流石ベテラン指揮官ですよね。
恐らく、セティエンにとってはプレースタイルが第一優先で、配置とかシステムは二の次だとは思うのですが、しばらくは自分のスタイルを浸透させるために3バックを続けるのかなと思っていただけに。これは個人的には嬉しいポイントでした。もっと頑固な監督だと思っていたので笑。
ちょっと個人的にはセティエンを誤解していたかも。もっと自分のフレームワークに拘るかと思ってたけど、柔軟にメカニズムを変えてきた。色を出しつつ選手個々の特性を引き出せている。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月2日
課題はあるけど、その課題はバルサっぽい課題だからいいと思う。
アンス2ゴールに尽きる前半
はい、分かってますよ。まだ試合の話を何もしてないということは笑。レバンテも前半から果敢にプレスには来たものの、バルサはそれに対して逃げずに後方からパスを繋いでチャンスメイクをしていきます。結果レバンテに前半1本しかシュートを撃たせなかったわけですから、試合の支配は完璧だったわけです。
とかいう記述はもういらないですよね。前半はアンス・ファティに尽きます。見事な2ゴール。しかもアシストはいずれもリオネル・メッシから。素晴らしい形からの2ゴールでした。
アンスの2ゴールは左ウイングに取って欲しい形だった。1点目はスルーパスを裏で引き出してキーパーとの1対1を制す。2点目は右からパスをもらって僅かなコースを強烈な左足シュートでねじ込む。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月2日
デンベレ復帰前に結果出せて良かった。ここから競争だ。
グリーズマン、メッシが右で作って左で仕留める!を見事に遂行してくれました。まだ17歳。期待しすぎない程度に期待したいところです!
前半終了。2-0バルサリード。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月2日
前半からいつものようにバルサがボールを握る展開。決めきれない時間帯があったものの、メッシのアシストから17歳のアンスが2発。レバンテのシュートは僅か1本のみ。ほとんどやりたいことをやらせなかった会心の前半。素晴らしい。
■後半
大きく改善したビルドアップ
バルベルデ時代と比べて大きく改善したのはビルドアップです。前からのプレスに対してロングボールで逃げるのではなく、臆することなく後方からショートパスで打開しようとする意図が窺えます。レガネスは5-4ブロックを後方に敷いて守るゲームプランだっため、今回のレバンテのように前から来る相手に対してどうするのか興味がありましたが、コンセプトは変わらずでしたね。
こんなビルドアップは数多く見られました。図だけだと分かりづらいので補足しますね。テア・シュテーゲンから始まるビルドアップです。彼はボールを受け手すぐ次の出し手に渡すのではなく、少々ボールを持ったまま静止します。そうすることで、相手のFWのどちらかが(図ではモラーレス)プレスに来ます。こうして相手を引き付けるわけです。
このタイミングでテアは中盤の選手(ブスケツ)にパス。ブスケツには基本マークが付いているので、素早くワンタッチで後方に下げます。下げる相手はCB(ピケ)。本来であれば、FWがマークについているはずですが、先ほどテアがモラーレスを引き付けたので一時的にピケが「前向き・フリー」の状態が出来上がるわけです。
そしてピケはDFラインと中盤のライン間に位置する選手(図ではフレンキ―ですが、メッシでもWGでもSBでも誰でもいいです)にパスを送りこみます。ここがとても重要なんです。ショートパス主体のビルドアップの目的はあくまで「確実に良い形で前線の選手にボールを届けること」であって、決してボールを繋ぐことではありません。
この試合のバルサはそのビルドアップのゴールがしっかり明文化されていたように思われます。自分たちがどのスペースを狙いたいのか?このパスは何のために出すのか?バレンシア戦に比べると、そこの共通意識が格段にアップしました。ショートパスで相手を誘い込み、後方にできたスペースにボールと選手を送り込む。これはバルベルデ時代にはなかなか見られなかったプレーの1つです。
前政権に比べて大きく改善したのがビルドアップ。どのスペースを目指すのかが整理された印象。テアシュテーゲンから中盤の選手がパスを受け、CBに落とし。ダイレクトでDF-MF間に人とボールを送り込む。このパターンは何度も見られる。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月2日
また、レバンテは2トップだったわけですが、2トップに対しては普通にブスケツを2CB間に落としてビルドアップしていましたね。ブスケツのポジションはあんまり下げたくないのかなとも思いつつ、まあセメドかアルバを3バックの一角に落とすのも何だかなという感じなので笑。セティエンとしてはここもあんまりこだわりはないのかもしれませんね。
また、ダイレクトのパスが本当に増えましたよね。こういう感じのスタイルになるとブスケツが本当に生き生きとするので嬉しいですね。
後半は逆襲を食らう
現段階でここまで仕込んだのはすごいなと思う一方、まだまだ練度は足りないので、後半はレバンテのカウンターを多く受ける格好になってしました。後半は10本のシュートと3回の決定機を許してしまいました。ここはまだまだ課題だなと思います。しかし、バルサらしい課題ではあると思うので、そこはポジティブに捉えています。
後半バルサもちゃんと勢いに押されることなく、攻めることができていたので、そこは良かったんじゃないかなと思います。今日はセティエンのことを書きすぎてレバンテについてほとんど触れていませんが、本当に好チームですからねレバンテ。カンプ・ノウでも臆せず前からプレスに来ましたし。モラーレス、ロジェールの2トップは強烈ですし。
最後に失点しちゃったのは勿体ないですが、まあ1失点で済んで良かったというのが本音でしょうか。
試合終了。2-1バルサ勝利。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月2日
前半に比べると後半はトーンダウン。追加点を奪うことができず、いくつかレバンテにチャンスを与えてしまう。それでもボールを支配してコントロールすることを試みるが、後半ATにセットプレーから失点。若干危うさを残しながら、バルサが連敗を避ける。
■雑感
なんだかマッチレビューっぽくない感じで終わってしまいました笑。レバンテ戦のマッチレビューというよりはレガネス戦・レバンテ戦雑感みたいな感じですかね。でもマッチレビューは一応書いたということにしておきたいので、タイトルは変えませぬ笑。
色々意見はあると思いますが、この2試合僕の中では非常にポジティブでした。セティエンへの不安要素の半分くらいが解消された、というのは言い過ぎかもしれませんが笑。今後に向けて希望は見えました。
しかし、良くないニュースが次々と出ているバルサの周辺です。
危機。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年2月4日
デンベレのハムストリングが断裂。そして報道によるとメッシの状態も芳しくないとのこと。現状万全なトップチームのアタッカーはグリーズマンのみ。アンスに無理はさせたくない。ならBから!と思ったらそっちも野戦病院状態。本当グリーズマンが来てくれてて良かった。
メッシ
— Río (@rio_cule) 2020年2月4日
『正直こういったことを僕はしたくはないが、僕はそれぞれが自分の仕事と決断に責任を持つべきだと思っている。フィールドにいる選手は最初に自分の調子が良くないことを認識する。スポーツエリアの担当者は責任を負うべきであり、何よりも彼が下したものは彼らが引き受けるべきだ。』(1/2) pic.twitter.com/JX2dp3ITFe
デンベレの再離脱とアビダルの失言。なかなか騒がしくなっています笑。さあどうしたもんでしょうか。後者はもうあれこれ言っても仕方ないのでいいんですけど、前者は問題ですよこれ。ペレス出しちゃいましたし、前線は本当に頭数が足らない状況です。せっかく4-3-3で兆しが見えたのに、肝心の選手がいないのでは、お話になりません。
そして次はサンマメスでのビルバオ戦、さらにはビジャマリンでのベティス戦と試合が続きます。不安要素として、レガネス戦もレバンテ戦もホームでの試合だったわけですよ。これアウェイでも同じことできるの?という疑問は当然のように残りますよね笑。メッシの状態も気になるところですし。17歳のアンスに全てを託すようなことは避けたいです。クラブのためではなく、彼のために。
最後までお読みいただきありがとうございます。