Hikotaのバルサ考察ブログ

主にFCバルセロナが好きです。他サポの方大歓迎です

【考察】メッシはどうして守備をしない? 世界一を擁するメリットとデメリット

こんにちは。一昨日の台風、皆さまは大丈夫だったでしょうか。僕の住んでいる地域はほとんど被害がなかったのですが、報道を見ていると浸水等の激しい被害に遭われた方もいるようです。被災された方々には謹んでお見舞い申し上げます。落ち着いたらブログ読んでくれると嬉しいです。

また、昨日はその台風を跳ね返すかのようなラグビー日本代表の素晴らしい勝利がありましたね!僕、サッカー以外のスポーツはほとんど知らないのですが、手に汗握って応援しました笑。やはりスポーツの持つ力は計り知れません。

さて、記事に入りましょう。最近のバルサファンの関心事の1つとして、前線の構成をどうするのかという議論が挙げられます。前回の考察記事ではスアレスにスポットライトを当てましたので、今回はメッシについて考えていきたいと思います。テーマはズバリ「メッシの守備」について。是非お楽しみください。

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■美しいバルサフットボールが垣間見えた2試合

問題を複雑化させてしまったのはベティス戦やバレンシア戦で披露したフットボールの質の高さでしょう。

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メッシ・スアレスという昨シーズンまでの強力2トップを欠いたこの2試合(バレンシア戦でスアレスは途中出場)で、バルサは5得点ずつを奪う破壊的な攻撃力を見せつけました。まあうち2得点はバレンシア戦のスアレスのゴラッソなのですが、得点数以上に重要だったのがバルサがボールを持って主導権を握るかつてのサッカーで2チームを圧倒したことです。

ベティスバレンシアも監督が代わったばかりで混乱していた感は否めないので、手放しで評価することはできませんが、この2試合で先発の11人が見せた質の高いフットボールは私たちバルサファンを熱狂させるのに、十分すぎる出来栄えでした。

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バルサベティス スタメン

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バルサバレンシア スタメン

この2試合の前線の構成を見るとCFグリーズマン+両翼にカンテラーノになっていますよね(ラフィーニャはセルタへレンタル移籍)。ブスケツ+フレンキ―+アルトゥールの誰も見たかったであろう中盤ユニットや、16歳のアンス・ファティの躍動は特筆すべきポイントですが、僕がこの記事で言及したいのは前線3人の守備貢献度の高さです。

とにかくグリーズマンを筆頭に誰もサボらずボールを追いかけ、中盤を助ける姿が印象的でした。プレスの先鋒となるべくセンターフォワードの選手があれだけ前線から追い回してくれると、中盤の選手は非常に楽ですよね。

今シーズンのバルサのもう一つの特徴がネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)の速さが挙げられるでしょうか。とにかく今シーズンは失ったボールを早めに奪い返すことを各選手が徹底しているように映ります。即時奪回はここ4試合の高い支配率の要因の一つであることは間違いありません。

そしてそのネガトラの急先鋒になっているのがスアレス離脱後にCFを務めているグリーズマン。チームがボールを失うや否や、相手に襲いかかる姿はアトレティコ次第となんら変わりませんね。最前線の選手があれだけ守備に参加をすれば、後ろの選手たちは相当楽になりますよね。本当に頭が下がります。

バレンシア戦レビューより)

僕がグリーズマンの守備についてここまで言及するのは、当然メッシとスアレスを念頭に置いているからです笑。ボール扱いが上手い最高の11人を並べるだけでは、自らボールを動かし、試合を支配するサッカーを実現することはできません。ボールポゼッション率を上げたければ、できるだけ相手ボールの時間を短くすること、つまり「できるだけ早く相手からボールを奪いとる力」が必要なのです。

バルセロナが本来志向しているようなサッカーを実現したければ、前線から激しくプレスをかけることが不可欠になります。上記の2試合にはそれがあり、ここ5年のバルセロナに大きく欠落している部分でした。

 

■メッシはなぜ守備免除なのか

2014年に結成されたMSN(メッシ・スアレスネイマール)は大きくバルサのサッカーを変えました。歴代稀にみる個人技に優れたスリートップが揃ったことで、バルサは極端に言えば、「7人で守り、3人で攻める」サッカーに傾倒していきました。

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ネイマールが退団し、バルベルデが監督に就任した2017年以降は守備をしないアタッカーが2人になり、多少なりともバランスは是正されましたが、MSNの名残は今尚チームに残り続けています。

では、そもそもなぜメッシ(とスアレス)は守備をしなくても許されているのでしょうか。現代サッカー的にも、バルサのサッカー的にも、アタッカーが守備をしないことで生じる不利益は看過できるものではありません。今更ですが、なぜメッシは守備をしないのでしょうか。

答えは簡単で、チームにとってメッシが守備をしないデメリットよりも、彼が守備をするエネルギー分も攻撃に回すメリットのほうが利益を生む確率が高いからです。昨シーズンメッシについて書いた記事ではこう書きました。

じゃあ当然「メッシいないほうがバルサ強いんじゃね」説も出てきますよね。特に現代サッカーは11人全員が攻守に貢献することを前提に構築されています。明らかに守備をしないメッシ(とロナウド)は異質な存在です。でも「メッシがいないほうがバルサは強い」は残念ながらNOなんです。

メッシは現代サッカーの常識を覆すだけの才能を持っています。はい、理不尽です笑。ここで改めてメッシの魅力を語る必要はないと思います。彼は守備のデメリットを補って余りあるほど攻撃面で貢献しています。

「守備をしなくてもいいから攻撃で全エネルギーを使ってくれ」と頼みたくなるほどの力です。グアルディオラはこうメッシのことをこう評しています。「メッシはいつ、どうやってゴールを奪うかを決める神のような存在だ」だそうです笑。異論ありません。チームが機能していれば、勝てるような甘いスポーツではないですね、サッカーは。難しい。どれだけチームが機能していたかではなくどちらがより多く点を取れたかで競うスポーツなのでね…。

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メッシが他の選手と異なるのは崩しの部分で大きな負担を担っているというところです。ドリブル、スルーパス、シュート、フリーランニング。当然ランウィズザボールの回数も多く、脚にかかる負担は尋常ではないでしょう。よくサッカーを観ててありがちなのが、運動量豊富な選手が最後の最後のフィニッシュのところで、足が縺れてしまって大きくシュートを大きく外すシーン。

メッシやロナウドはエネルギーのほとんどをフィニッシュの局面で発揮するからこそ、あれだけ超人的な活躍を続けることができると言えるでしょう。仮にメッシが守備にエネルギーを費やしていれば、32歳の彼がシーズン50ゴールも決めることができたでしょうか。僕は難しいと思っています。

慢性的な膝の痛みにより、守備に奔走することが難しくなったスアレスもメッシを活かすために必要なピースであるというのは前回の考察記事で触れた通りです。

スアレスが戦術的に重要なのは彼が「CBを引き付けられるタイプのCF」であるという点です。

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スアレスの重要性

ここ10年のバルサの大きなテーマは「リオネル・メッシの能力を最大限に活かす」ことです。彼に如何に時間とスペースを与えるかが歴代の監督に与えられた至上命題です。右のハーフスペースでボールを受けたがる彼にスペースを与えるためにはCBをメッシ狩りに参加させないことが肝要になります。メッシにはストライカーが必要なのです。

CBと狡猾に駆け引きができ、柔軟に動きを変えることができるスアレスはまさにメッシにスペースを与える上で、まさに打って付け。CBを真ん中のレーンに「ピン留め」することでメッシに自由が与えられます。メッシが自由になればあとは何でも可能になります。そうすることで崩しは簡単に上手く行くのです。

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正直、スアレスはもう少し守備してよとは思うのですが・・笑。

 

■あなたならどうしますか?

さて、議論すべきはここからです。このメッシ(&スアレス)の守備免除は継続すべきなのでしょうか。メッシがこれだけの活躍を見せ続けられたのも守備免除があってこそだと僕は考えています。これは仮定の話ではありますが、メッシがThe BESTやバロンドールを受賞できなかったとしてもあなたはメッシに守備をさせ、スアレスを外すべきだと思いますか?

最近はメッシもスアレスも結構守備頑張っている!との意見も見られますが、それはあくまで限定的なもの。もちろんセビージャ戦のこのシーンのように前からのプレスは今シーズン2人とも意識しているかと思いますが、下がって守備に参加するシーンは殆どみられません。

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セビージャ戦3点目に繋がるプレス

2人が下がってこないのであれば、昨シーズンのリバプール戦の様に8人で相手の猛攻を受ける必要に迫られるわけです。リバプールマンチェスター・シティといった本当のトップオブトップと対戦するのであれば、バルサの守備強度で180分間守り抜くのは相当難度の高いミッションだと言えるでしょう。

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押し込まれるバルサの例

チームの機能性を取るのであれば、間違いなくメッシの権限を削り、スアレスを外すべきでしょう。しかし、それで勝てる保証はどこにもありません。バルベルデのこのスタイルでCLを2年連続で逃したのも事実ですが、リーガを2年連続で勝ち取ったのもまた事実です。

そして僕達バルサファンが歴代最高と崇めるメッシのプレーを享受できる期間はそれほど長くはありません。最近のインタビューでもメッシは自らの引退時期について言及していました。「その時」は確実に近づいているのです。

散々ネガティブなことを書いてきましたが、僕はやっぱりメッシのプレーが大好きです。この先バルサアイデンティティはますます崩壊していくかもしれません。しかし、たとえそうなってもあと数年メッシの美技を享受したい。そのような欲望を抱えたファンは決して僕だけではないと思います。

たとえメッシ引退後に真っ暗な未来が待っていたとしても、史上最高の名手のプレーをこれからも見続けたいです。今年メッシは32歳を迎えます。徐々にですが、彼にも衰えが忍び寄ってきています。彼がいつまでプレーできるのか僕には知る由もありませんが、確実に攻撃面でのメリットが守備面でのデメリットを下回る日がやってきます。その日こそがメッシ引退(or退団)の時ですね。

こちらも先ほどの記事からの引用です。これが僕の偽らざる本音です。しかし、あの圧倒的なサッカーに魅了されてバルサを応援するようになったのもまた事実。メッシが不在であれば、本来のバルサのサッカーが観られるのかもしれません。そのため、「メッシ不要論」という声が今後出てくる可能性も大いにあると思っています。

この一連のツイートが僕の考えの全てです。そもそもメッシと「スタイル」は相容れないの?っていう疑問はあると思うんですが、個人的には難しいと思っています。彼は最早クラブの枠に収まるような選手ではないので。

しかし、当然葛藤もあります。一重にメッシがすごすぎるのが悪いんですが、本来チームよりも個人が優先されるなどあってはなりません。僕は自身をメッシ信者だと自覚していますが、今後「メッシはいらない」という意見が出てきてもそれを責めることはできません。むしろバルサファンとしてはそちらのほうが正しい姿勢なのでは?とすら思っています。

ただ、メッシにバロンドールを取って欲しい、ペップバルサのようなサッカーに戻って欲しい、スアレスは放出してほしい、カンテラーノを積極登用してほしい。このような願望が全て叶えられるほど今の状況は甘くないというのはここで伝えておきたいことです。何を優先事項にすべきなのか、もう一度考えるべきだと思います。

 

■鍵を握るのは

と、ここまで書いてきましたが、現実的にはメッシを外す選択肢などありません。戦力的にはもちろんのこと、広告塔としても現在のバルサを特別なクラブたらしめているのは間違いなくメッシなのです。先日メッシはバルサで引退したいと明言していました。彼がいつ引退するのかは見当もつきません。

つまり彼が引退するその時までバルサファンはこのジレンマに悩まされることになります。バルベルデを解任しようが、スアレスを放出しようが、この問題が本質的に改善することはありません。勿論、マシな状況に転ずる可能性もあるのですが。

個人的にこの状況を打開する可能性があるとすれば、それは新加入のグリーズマンだと考えています。フレンキーとアルトゥールの躍動により、バルサは再び中盤の支配力を取り戻しつつあります。ポゼッション率が向上すれば、守備機会そのものが減少します。

このチームにグリーズマンが完璧にフィットすれば、かなり完成度の高いチームになるはずです。現状、メッシとの連携はイマイチの彼ですが、彼がスアレスと同じくらい、メッシとリンクできるようになれば、状況は変わります。グリーズマンは守備でエネルギーを発揮できる選手なので、彼がフィットすればスアレスの必要性自体は薄れていくのではないでしょうか(バルベルデは純粋なストライカーを好んでいるようなので一概には言えませんが)。

個人的に、グリーズマンには獲得は現在ヴィッセル神戸に所属するダビド・ビジャを想起させられます。ビジャは2010年夏にバルサにやってきましたが、当時はグリーズマンと同じ28歳。リーガのチームから移籍という点も、W杯優勝を引っ提げての加入というのもビジャと似通っています。

ビジャはたった3シーズンしかバルサに所属していませんが、彼がその3年間(特にファーストシーズン)に残したインパクトは絶大でした。短期的な補強でしたが、チームはビジャ在籍期間にリーグ2回、CL1回、国王杯1回のタイトルを獲得していますから、効果はあったといえるでしょう。

グリーズマンに求められるのはまさにビジャのような役割です。誰も彼に今後10年のバルサを託そうとは思っていません。この3~4年で結果を残してくれればOKといったところです。少なくともアトレティコ時代以上のゴール数は求めたいところですし、守備貢献やオフザボールの動きでチームを活性化させることも大いに期待されます。

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グリーズマン獲得の際にも書きましたが、僕は彼にダビド・ビジャのようなウイングストライカーの役割を担って欲しいと思っています。それは本来の彼のスタイルではありませんが、メッシとプレーするためには必要な変化だと僕は考えています。彼がワイドの位置でストライカーの役割を担えるのであれば、メッシの偽9番にも現実味が出てきます。

そして今、メッシのファルソ・ヌエベを全面的に推せる理由は先述したアルトゥール、フレンキー、ペレス、アンス、そしてグリーズマンらの存在にあります。メッシが中盤に下がりフレンキーとアルトゥール、さらにはブスケツと共鳴し、中盤を支配。メッシが作ったギャップにペレスやグリーズマン、アンスが飛び出していく。考えただけでヨダレが出てしまいますね笑。

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勿論、ここまで簡単に上手くいくとは思いませんが、このような形にすれば、バルサの原点回帰にはかなり近づくのではないでしょうか。

またボール非保持時にはメッシだけを前線に残し、ウイングも積極的に守備に参加してもらいましょう。そうすればバランスは限りなく是正されるはずです。

スアレスの記事より引用)

 いずれにしても偽9番システムを機能させるためには、ウイングの得点力が不可欠です。それが保証できない限り、スアレスはこれからも信頼できるストライカーとして引き続き起用されるのではないでしょうか。

 

■最後に

色々と書いてきましたが、「メッシに守備をさせる」、「スアレスをスタメンから外す」というのは口で言うほど簡単なことではありません。もちろん、僕も現状に不満はあります。しかし、今のバルベルデの選択は決して理解できないものではありません。それだけメッシという稀代の名手を擁した今のバルセロナをマネジメントすることは簡単なことではないのです。

いずれにしてもメッシという最高の選手の最高のプレーを毎試合観れることは幸せ以外の何物でもありません。繰り返しになってしまいますが、チームよりも優先すべき個などない、あるとすればそれはリオネル・メッシただ一人です。メッシのプレーが見られるのであれば、と思ってしまう僕はやはりバルサファンとしては罪深いのでしょうか。

皆さんのご意見も是非。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。