こんにちは。先日コパデルレイの抽選がありましてバルセロナはレアル・マドリードと準決勝で対戦することが決まりました。コパでのクラシコ実現ですね。楽しみです。しかし不穏なニュースが。バレンシア戦で接触があったメッシとケガ明けのデンベレが欠場の可能性があるとのことです。メッシとデンベレと言えば、今シーズンのバルサの攻撃を引っ張る核の二人。彼ら二人が前線で違いを生み出し続けるからこそバルサはここまで勝ち点を積み重ねてきました。とても不安ですね、このニュースは。
しかし熱心なバルサファンの皆さんならば、「いやいやちょっと待て」と思われるかもしれません。前半戦のクラシコでバルサはメッシとデンベレ抜きでマドリ―に5対1で快勝しています。特に前半は今季最高と呼べるほどの内容を披露しました。そこでクラシコを目前にして今回はバルサの大エースメッシについて考えてみたいと思います。彼は本当にバルサにとって「非の打ちどころのない」エースなのでしょうか。
■メッシ抜きで完璧に機能したネガトラ
こちらが前半戦のクラシコのバルサのスタメンになります。中盤はラキティッチ、ブスケツ、アルトゥールのトリオが形成し、負傷のメッシの代役には本来中盤の選手であるラフィーニャが抜擢されました。
このラフィーニャという選手、カンテラ出身らしく技術は高いものの、お世辞にも個の打開力が高いとは言えません。恐らくデンベレやマルコムといったドリブラーの先発を望んでいたファンも多かったかと思います。しかしラフィーニャは決定的にメッシやデンベレを上回っている要素を持ちあわせています。守備意識の高さです。彼はチームがボールを失うと猛然とプレスをかけ、プレスがハマらなければ颯爽と後退し、守備に参加します。まさにペップ時代のペドロを思い出すような守備意識です。
ラフィーニャの攻撃面での貢献度はメッシのそれとは雲泥の差ですが、彼が右ウイングに入ることでチームバランスの向上に大きく寄与しました。さて、バルサの守備の鉄則は基本的に即時奪回ですが、毎回それができるわけではありません。
通常のバルサであれば、メッシとスアレスが前線に残る4-4-2でブロックを作りますが、メッシ離脱時のバルサは4-1-4-1、もしくはアルトゥールがスアレスと並ぶ4-4-2のいずれかで守ることができていました。これも非常に守備面で大きな成果を挙げます。
以前のMSNに関する記事でも書いた通りメッシを右ウイングに置いた状態で4-4-2へ移行するとなると右インサイドハーフが過労になりチームとして「横ズレ」を余儀なくされます。さらにはブスケツとアルトゥール(エンリケ時代はイニエスタ)で中盤センターを守ることになるので守備強度に不満が残ります。
一方メッシ不在時の守備はアルトゥールが縦に1列ズレれば4-4-2が大抵完成するので、チームバランスを大きく崩すことなくネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)が遂行できます。また中盤センターはブスケツ&ラキティッチになるので守備も安定します。バルサはメッシ不在時の5試合を4勝1分で乗り切りますが、その数字以上にチームバランスの良さというのは特筆に値するものがありました。ラフィーニャ早く戻ってきて。
■チームの機能性≠チームの勝利
じゃあ当然「メッシいないほうがバルサ強いんじゃね」説も出てきますよね。特に現代サッカーは11人全員が攻守に貢献することを前提に構築されています。明らかに守備をしないメッシ(とロナウド)は異質な存在です。でも「メッシがいないほうがバルサは強い」は残念ながらNOなんです。
メッシは現代サッカーの常識を覆すだけの才能を持っています。はい、理不尽です笑。ここで改めてメッシの魅力を語る必要はないと思います。彼は守備のデメリットを補って余りあるほど攻撃面で貢献しています。
「守備をしなくてもいいから攻撃で全エネルギーを使ってくれ」と頼みたくなるほどの力です。グアルディオラはこうメッシのことをこう評しています。「メッシはいつ、どうやってゴールを奪うかを決める神のような存在だ」だそうです笑。異論ありません。チームが機能していれば、勝てるような甘いスポーツではないですね、サッカーは。難しい。どれだけチームが機能していたかではなくどちらがより多く点を取れたかで競うスポーツなのでね…。
■バルサの哲学<メッシ?「クラブ以上のクラブ以上の選手」
ということで全知全能の神を活かすためにチームはあの手この手を使います。ペップはこうも述べています。「監督の仕事はラスト30メートルでアタッカーにクリーンなボールを入れること。それ以降はアタッカーが創造性を発揮する場所だ。」
これをバルサの監督と選手たちに置き換えると、「俺たちの仕事はメッシに気持ちよくプレーさせるところまでだ。」になるわけです。実際ラキティッチなんかは笑顔で「メッシのために走る」なんて言ってますからね。さすがブラック企業従業員…笑。
しかしこれだけメッシ以外の選手に負担が掛かっているとなると、メッシはチームの哲学を壊しかねない存在であると言えるのかもしれません。彼は13歳の時からクラブにいますが、あまりに力をつけすぎて今や「クラブ以上のクラブ以上の選手」と形容されてもなんら不思議はありません。
彼は相手チームの戦術を破壊するスペシャリストですが、バルサの哲学の破壊者でもあるのかもしれません。個人的にはバルサの哲学を遵守するよりもメッシの活かし方を現チームは追い求めている気がしてなりません。近年バルサらしくないパウリーニョやビダルが重宝されているのは偶然ではありません。メッシの存在はこれからもバルサにとってジレンマであり続けるのではないでしょうか。
■それでもバルサはメッシと共に
散々ネガティブなことを書いてきましたが、僕はやっぱりメッシのプレーが大好きです。この先バルサのアイデンティティはますます崩壊していくかもしれません。しかし、たとえそうなってもあと数年メッシの美技を享受したい。そのような欲望を抱えたファンは決して僕だけではないと思います。
たとえメッシ引退後に真っ暗な未来が待っていたとしても、史上最高の名手のプレーをこれからも見続けたいです。今年メッシは32歳を迎えます。徐々にですが、彼にも衰えが忍び寄ってきています。彼がいつまでプレーできるのか僕には知る由もありませんが、確実に攻撃面でのメリットが守備面でのデメリットを下回る日がやってきます。その日こそがメッシ引退(or退団)の時ですね。
守備のデメリットを覆い隠すために真ん中で起用する手はあります。しかしCFの位置には当代随一の9番ルイス・スアレスがどっかり腰を下ろしています。彼もまたバルサにとって稀有な存在です。それでも僕はメッシは真ん中に置くべきだと思いますが、スアレス放出の判断は困難を極めそうです。結局今後衰え行くメッシとどう付き合っていくかがバルサの大きなポイントになってきそうです。
最後までお読みいただきありがとうございます。