Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】23-24シーズン FCバルセロナ前半戦総括

こんにちは。Hikotaです。あっという間に年末になりました。歳を取るにしたがって、月日が流れるのは本当に早くなります。光陰矢の如しとはよく言ったもので、最近は若手選手の生年月日に戦慄する日々です。

さて、年末なので2023年のバルセロナ総括をしましょう。とはいっても、22‐23の総括記事は夏に出したので、今回は23-24の前半戦に限定して書いていきたいと思います。

↓22‐23の総括は以下から。

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スモールスカッドの影響を受けて

23‐24の前半戦を一言で表すなら、「ひたすら耐え」の半シーズンだったと言えるでしょう。リーガでは11勝5分2敗の3位。首位(レアル・マドリー/ジローナ)との勝ち点差は7。組み合わせに恵まれたCLグループステージでは4勝2敗でなんとか2シーズンぶりの決勝トーナメント進出を決めています。

結果以上に、苦々しさを感じさせるのはその一貫性のないプレースタイル故でしょう。昨季もスペクタクル性に欠けるゲームを繰り返しましたが、武器と勝ち方がはっきりしていた分、選手たちもピッチ上でやることが明確になっていたように思います。昨季と比べてそういったところが不明瞭であることが、今季のシャビバルサがクライシスの香りを漂わせる大きな要因の1つです。

とはいえ、今季の苦戦はある程度予想ができました。昨季のチームからは、セルヒオ・ブスケツ、ウスマン・デンベレといったシャビにとって「アンタッチャブル」な選手が退団ブスケツの退団は既定路線でしたが、デンベレはシーズン開幕直前に電撃退団となり、チームビルディングに与える影響は少なくなかったと思います。

移籍市場では、使用できる資金がほとんどなく、シャビが「最優先事項」と掲げたブスケツの後継者には、移籍金僅か340万€でオリオル・ロメウを確保するので精一杯。フリートランスファーイルカイ・ギュンドアン、イニゴ・マルティネスの両ベテラン獲得。移籍市場閉幕間際でジョアン・カンセロ、ジョアン・フェリックスをローンで確保し、何とか戦力を整えました。

それでも今季はサラリーキャップを最小限に抑えるとの目標の元、トップチーム登録選手は僅か19名。Bチーム登録で常時トップ帯同のラミン・ヤマル、フェルミン・ロペスを計算に入れても21名で、紅白戦すら実施できない超絶スモールスカッド。2023年現在の超過密スケジュールにおいては、19名+2名でシーズンを戦い抜くのは極めて困難なミッションとなります。

23-24シーズン バルセロナスカッド(12月末時点)

案の定と言うべきか、現在のバルサは負傷者が5名出ており主戦力は16名と、やりくりが非常に厳しい状態に。1月にはサウジアラビアで開催されるスーペルコパがあり、国王杯も始まります。となってくればBチームからの突き上げを期待したいところですが、トップチーム同様選手層が薄く、下部組織も含めたトータルでのリソース不足は否めない部分はあります。

現在の欧州サッカーのカレンダーにおいては、週に3試合公式戦が入り込むことも珍しくなく、その日程を15~16名の選手たちで回すとなると、選手1人あたりの負担が増え、運動量と質が試合ごとに下がっていくのは必然でしかありません。言い訳のように聞こえてしまうかもしれませんが、今季のバルセロナの苦境を語る上で選手層の薄さは外せないファクターだと認識しています。

 

得点力を上げたいシーズンだったが…

とはいえ、3年目を迎えたシャビバルサが迷走気味なのは否定できません。

シンプルなデータを紹介します。18試合消化時点での得点と失点のベーシックなスタッツを昨シーズンの数字と比較しました。端的に表中の数字を解説すれば、「昨季に比べて、得点数は微妙に下がり、失点数は大幅に増えた」ということです。この数字がすべてだとは当然思いませんが、今季のバルサの停滞を表す象徴的な数字と言えるでしょう。

失点数の増加は必然なように思います。昨季と比べて1試合当たり3本近く多くシュートを撃たれているので、失点期待値も失点そのものも、そりゃあ増えるよねという感想でしかありません。

昨季は、「BACK」と命名された守備ユニット(バルデ、アラウホ、クリステンセン、クンデ)と、ガビの左ウイング起用でソリッドな守備組織を構築。守護神テア・シュテーゲンのキャリア最高のパフォーマンスも相まって、失点の少なさで接戦のゲームを勝ち切るのが定番のパターンでした。ウノゼロでの勝利の積み上げは、バルセロナの哲学よりもイタリアのカテナチオに近いとの評判でした。

しかし、今季は即戦力としてカンセロ、フェリックスを獲得。彼らはトップクラスの技術を持ち合わせている一方で、非保持時のデメリットが大きいがために前所属クラブで隅に追いやられた経緯がありました。彼らをレギュラーとして獲ってきた時点で、失点数の増加は十分に予想できること。昨季とは違う立て付けにしなければいけないのは明白でした。

シーズン当初は、「ダブル・ジョアン」の攻撃力ブーストが実り、得点を重ねました。アントワープ戦、ベティス戦で連続マニータ(5得点での勝利)を記録し、当時は希望を込めて僕自身も記事を書いたりしていました。

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しかし、ベティス戦での5-0の勝利を最後に、バルセロナの勝利は全て1点差の辛勝となってしまいます。今季のバルセロナの公式戦勝利試合のスコア内訳は以下の通り。

今季挙げた15勝の内、実に12試合が1点差の勝利となっています。そして、昨季のお家芸であった1‐0での勝利は半数に満たない5試合に留まっており、今季の失点数の多さが浮き彫りになるデータとも言えます。

つまり、今季においては昨季ほど守備が堅牢ではない中で、勝ち点を積み上げていくためには接戦の試合の中で得点を奪っていくしかない。得点力を上げなければならないシーズンであることは明白だったわけですが、結果はご覧の通り。

バルセロナの得点力が上がり切らなかった理由は主に3つ。①フィニッシュ設計の未整備②FW陣の不振③(カウンター)プレッシングの強度低下だと個人的には考えています。

①フィニッシュ設計の未整備

設計に関してはシャビの中ではレバンドフスキが空けたスペースにインサイドハーフが走りこむ形にこだわっていますが、しっかりと相手にスペースを消された時の崩しに困っているのは昨季から変わらず。綺麗な連携による崩しよりも個々人の強引な仕掛けのドリブル/ラストパスが目立つ形となっています。度重なる離脱に関わらず、個人での仕掛けにおいて右に出るものがいなかったウスマン・デンベレにシャビが固執したのはまさにこのポイント故です。

シャビの選手としてのキャリアで共にプレーした主なFWを振り返ると、ロナウジーニョサミュエル・エトーリオネル・メッシダビド・ビジャネイマールルイス・スアレスといった超絶クラックばかり。アタッカーにボールを渡せばどうとでもしてくれる、が染みついているのがシャビのこの辺りの設計の雑さの原因の根幹な気はしています(笑)。特にメッシが与えた影響は大きいんじゃないかなあと邪推しています。

データ上、チャンスは作れているから、アタッカー陣のクオリティ/メンタル面の問題だというのがシャビの主張のような気はしますが、もう少し工夫はしたいところです。特にウイングにボールが入った時の選択肢の乏しさは、シティやアーセナルと比べてもちょっと感じる部分があります。

②FW陣の不振

とはいっても今季のFW陣、外しすぎでは?が②の理由。チャンスもシュート数も昨季比で増えているので、もうちょっと決めてくれていれば感はあります。

23‐24ラ・リーガ 得点スタッツ(今季6G以上の選手のみ掲載)

上表は、今季のラ・リーガで6点以上取った選手を「PK以外のゴール数-ゴール期待値」の降順で並び替えたものです。ゴール期待値という数値がどこまで確度のあるスタッツと捉えるかは議論の余地がありますが、一つの目安としてここでは採用します。

6ゴール以上奪った全18選手中、もっとも「PK以外のゴール数-ゴール期待値」が低いのが我らがエース、レバンドフスキ。-4.1点はリーガ全体で見ても断トツの低さとなっています。今季のマドリーを牽引するベリンガムは+5.8点を記録しており、ここで10点の差がついてしまっているのは、共に負傷者続出中のマドリーとバルサの立ち位置の差を如実に表すデータかもしれません。

今季のレバンドフスキの滑り出しは悪くありませんでしたが、10月の負傷離脱からの復帰後にパフォーマンスが停滞。試行回数自体は少なくありませんが、シュート1本あたりのゴール数0.11も上記18選手中最低の数字であり、今季のラ・リーガで「最も得点効率の悪い選手」との評価を受けても仕方のない状況ではあります。

無論、責任の所在はレバンドフスキだけにあるわけでなく、ラフィーニャ、ラミン・ヤマル、ジョアン・フェリックスといったウインガーの得点効率も決して良くはありません。今季のバルセロナのアタッカー陣で件の「PK以外のゴール数-ゴール期待値」がプラスに転じているのは、途中出場の多いフェラン・トーレスのみ。寂しい数値ですが、印象通りの数字です。

後半戦はブラジルの新星ヴィトール・ロケも合流しますが、欧州初挑戦の18歳に過度な期待は禁物。やはり既存のメンバーの奮起に期待がかかります。

③(カウンター)プレッシングの強度低下

最後の③が結構自分の中では大きい要素で、今季はプレッシングの強度不足が際立ちます。プレスの機能不全は、失点数の増加だけでなく、チャンスシーンの減少の要因にもなります。

昨シーズンのバルサガビとブスケツを中心としたカウンタープレスが猛威を振るい、ネガティブ・トランジション(ボールを奪われた瞬間のプレッシング)→ポジティブ・トランジション(手数をかけず素早く前線にボールを送り込む)の2つのトランジションの鋭さで多くのゴールを奪いました。

しかしブスケツの退団と、ガビの長期離脱、そしてジョアン・フェリックスのスタメン定着によってシャビバルサの武器であったはずのトランジションの強度は限りなく低下。ボールを奪う位置が低くなることは、攻撃開始位置からゴールまでの距離が遠くなることと同義なので、相手が撤退しきる前に素早くスペースにアタックすることを志向するシャビバルサにとってはあまりいい状況ではありません。

強度は下がっているものの、チームの志向としては「高い位置で奪う」の優先度が高いのは変わっていないので、ふらふらっとボールを何となく奪いに行って簡単に自陣まで運ばれるシーンが目立つのは、得点・失点の両面に良くない影響を及ぼしています。

 

指揮官の迷いは、チームの迷いに

悪いことを沢山書いてきましたが、今季、全部が全部悪いわけではありません。第11節のクラシコまでは不安定ながらも無敗を続けており、序盤戦の結果は決して悪くありませんでした。

そのクラシコでの敗戦が歯車を大きく狂わせた感があります。クラシコの試合自体は悪くありませんでした。3CB+カンセロ・バルデの起用は消極的ではあるものの、負傷者続出の状況の中で、合理的な判断ではあったと思います。

第11節クラシコ スターティングメンバー

3CB+ギュンドアン+ガビで土台をしっかり築きながら、スローテンポなボール保持で時間を進めつつ先制したところまでのゲームプランはハマっていました。交代選手の選択肢が少ないことも相まってプランBを用意していなかったのが仇となり、新スターのベリンガムの衝撃の2発に結果としては沈むわけですが、彼がここまでの選手でなければ同点には持ち込めたかなくらいのゲームではあったと思います。

しかし、クラシコ後のシャビとチームは明らかにグラつきます。クラシコに続くソシエダ戦でも引き続き5バックを採用。しかし、終始ソシエダに圧倒され90分間何もできず。最終的にはアディショナルタイムのアラウホ弾で1‐0の勝利を収めるものの、チームの雰囲気は悪いまま、次のCLシャフタール戦でシーズン2敗目を喫することになります。

以降、チームのメンタリティと団結感がグラついたように感じました。クラシコの敗戦がショッキングだったのでしょうが、個人的にはクラシコの流れを中途半端に引き継ぐ形でソシエダ戦の5バックを採用したのがよくなかったのではないかと思っていて、クラシコからのリバウンドメンタリティを示す試合のアプローチとしては相応しくなかったのではないかなと感じています。

シャビは今季結構迷っているなというのは試合を見ていて思います。昨季と比べて非保持とトランジションが弱くなっているのは明らかで、そこに手を打ちたいんだけど、上手くいかず、今季何を拠り所に勝っていくのかちょっと分からなくなっているというのは何となく透けて見えます。

そしてそういった迷いがチームに伝播して、自信を失っていくという悪循環に陥ってしまったのが11月のバルセロナを取り巻く雰囲気でした。その雰囲気の中で、苦しみながらもポルト戦で逆転勝利を収め、前半戦最大の目的だったCL決勝トーナメント進出を決めたことが一番の成果でもあります。

その後のアトレティコ戦でも1‐0で勝利したところで、復調したかに見えましたが、続くジローナ戦では2-4の力負け。

アトレティコはボール保持に拘らずどちらかと言えば深めに構えてくれたおかげで、バルサギュンドアンを中心としたパスワークで時間を使いながら支配率を高めることで、非保持時の問題を覆い隠すことに成功しました。アトレティコバルセロナをある程度リスペクトしてくれたのが大きかった形です。

対して、ゴリゴリの保持型チームであるジローナと、ボールの奪い合いをした際には得点力以上に、先述のプレッシングの未整備が原因で押し切られることになりました。プレッシングにしても、撤退守備に関しても、強度があまりに低いがゆえにボールを握れるチームと対戦するとどうしようもなくなってしまうのが浮き彫りになったわけです。

ジローナのように明確なフィロソフィーを持ち、チーム全員が共通認識を持ってプレーするチームに比べると、今のバルセロナは明らかにフワフワした状態です。ここが今季のバルセロナに対する個人的な不満ではあります。

 

後半戦目指すべきは

シャビが何よりも後半戦優先すべきは、この非保持時の不揃い感を是正することに他なりません。勿論、ビルドアップやフィニッシュ設計の部分にも課題はありますが、基本守れないチームは勝てません。非保持とトランジションの部分は、ガビに依存していた部分が大きく、大きな設計の部分で見直さなければなりません。

プレッシングに全部行くのは難しいので、もう少しプレス開始位置をコントロールできるといいなと思っていて、少なくとも脳死でハイプレスに行くのは止めたいなと。その辺の舵取りはブスケツがいなくなって誰がコントロール権を握っているのかよく分からない状態になっています。

良くある剝がされ方

3トップが果敢にDFライン・GKにプレッシャーをかけるも、中盤以下が連動しきれず簡単に相手の3列目の選手にフリーで前を向かれ一気にプレスが瓦解するのがよくあるパターン。プレスの初歩の初歩の部分がきちんと整備されていないのは大問題で、ここはシャビ以下コーチングスタッフに対する大きな不満の1つです。

先述した通り、過密日程かつ選手層が薄いので無駄走りを避けるという意味でもこの非保持の部分はもう少し意図と共通認識を持ってやって欲しいなと思います。奪えないなら、一旦ラインを下げる勇気も必要です。

基本線には今季のバルサは保持の時間少しでも長く増やしてテンポをコントロールしながら試合を展開していく方向に進むのがいいなと思っています。

そのためには奪われたボールをどういう形であれ、きちんと奪い返す枠組みが不可欠です。当然奪われ方が悪くてもよくないので、保持→トランジション→非保持時→トランジションの循環が上手く回ると良いですよね。口で言うほど簡単ではありませんが、トライはして欲しいです。

現在、リーガでは勝ち点7差の4位。負傷者続出のマドリーが勝ち点を落としそうで全然落とさないのがとても厄介でややこしいです。ベリンガム許すまじ。勿論、リーガも諦めるような段階ではありませんが、後半戦最も注視すべきはやはりCLベスト8進出。これはスポーツ面の理由というよりも、財政的な意味合いのほうが強いわけですが。予算的なミッションは達成したいところです。

奇しくも決勝トーナメント1回戦の相手はナポリ。ジローナと同じく、保持型のチームです。非保持の部分を整備しなければここは突破できないでしょう。尤も試合を見る限りは、ナポリナポリで今季上手くいっていないチームなので、2月までにお互いどこまで状態を上げられるかどうかにかかっていますね。

ナポリ観た感想はnoteのほうにまとめているのでよろしければ!

note.com

 

さて、まだまだ書き足りないところはありますが総括としてはここくらいにしておきます。色々不満はあれど、結果的にリーガでは優勝戦線にギリギリ留まることができていて、CLでは3季ぶりの決勝トーナメント進出を決めました。まだバルセロナの23-24は死んでないので、後半戦、チームが殻をもう1つ破ることを期待して2023年の結びとしたいと思います。

今年もありがとうございました!選手評価的なのは余力があれば別で出します!

 

最後までお読みいただきありがとうございました。