Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】不動のアンカーが遂に交代? セルヒオ・ブスケツの今と今後

はい、こんにちは!ようやくインターナショナルウィークが終わり、週末にはリーガが戻ってきますが、何やらバルセロナで大規模なデモが起こっているようですね。この影響により、26日にカンプ・ノウで行われる予定だったレアル・マドリーとのエル・クラシコは延期が決定してしまいました。

スペインとカタルーニャの政治的な因縁は中々に根深いものがあるようで、安易にコメントは出来ませんが、1日も早い問題解決を願いたいところです。できればスポーツに政治は持ち込みたくないのですが、バルサカタルーニャの象徴になっているクラブでもあるので、それはそれ、これはこれにはなりませんよね。とにかく経過を注意深く見守っていきたいです。

さて、今回の考察記事はセルヒオ・ブスケツについて。この10年、バルサのアンカーのポジションを守り続けてきた彼の現状、そして今後について書いていきたいと思います。

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↑前回の考察記事はこちらから!

 

◼︎デビューから10年不動の存在であり続ける

ブスケツをトップチームに昇格させ、デビューさせたのはあのペップ・グアルディオラ。前年に率いていたBチームで中心的な役割を担っていたブスケツを自らのトップチームの監督就任と共に昇格させました。ブスケツは瞬く間に名手ヤヤ・トゥーレからポジションを奪うと、以後バルサの不動のレギュラーに君臨します。ペップはブスケツに対する賛辞を惜しみません。

「もし私がピッチにいる誰かになれるなら、彼を選ぶだろう。」

自身も世界有数のアンカーであったグアルディオラがここまで言うとは純粋な驚きですね。そして、現代最高の選手であるリオネル・メッシは、練習3日目にしてブスケツな非凡な才能に気がつき、グアルディオラにこう耳打ちしたといいます。

「監督、今後チーム分けをする時は、セルヒオ(ブスケツ)を僕のチームに入れてくださいね。」

当代随一の監督と選手にここまで認められているブスケツ。派手さとは無縁の彼がここまで評価され、バルサという大きなクラブで絶対的な存在を築き上げたのは何故でしょう。彼のアンカーとしての魅力はどこにあるのでしょうか。

 

◼︎鍵を握る2つの「スピード」

ブスケツを語る上で欠かせないのは「スピード」でしょう。ブスケツの特徴の1つとして挙げられるのが、アスリートとしての「スピード」の低さ。小柄で鈍足だったシャビ・エルナンデスは、ブスケツの足の遅さをシンプルにこう語ります。

 「私に負けるほど彼の足は遅い」

実際、オープンスペースで競争させたらほとんどのアタッカーに走り負けてしまうほど、彼の足は遅いです。一応身長は189㎝ありますが、細身なのでフィジカル的強度は従来のアンカーと比べるとかなり低いと言わざるを得ません。アンカーはDFラインの前でフィルターとなるべき存在なのでブスケツのようなタイプは現代サッカーではかなり異色なのでしょう。

しかし、ブスケツにはそのフィジカル的ハンディを帳消しにするほどの「スピード」が備わっています。それは判断の早さです。もし、機会があればグアルディオラ監督時代のバルセロナの試合を一度見てみてください。ブスケツは殆ど目立つことなく、90分を終えています。なぜならプレーのほとんどをワンタッチで済ませてしまうからです。

かつて故ヨハン・クライフ氏はこのような名言を残しています。

「1タッチでプレーできる選手は素晴らしい。2タッチはまずまず。3タッチはダメな選手だ。」

シャビ・アロンソアンドレア・ピルロのように後方から素晴らしいロングパスを飛ばすことも、アンドレス・イニエスタのようにドリブルで密集地帯を潜り抜けることもしない彼が持つ特異な才能がその1タッチプレーなのです。傍から見ると特に難しいプレーをしているように思えないのですが、1タッチプレーには精緻な技術が必要とされます。

ボールが来る前に首を振り、味方と相手の位置、スペースを認知し、1タッチで素早く正しく叩き続ける。これは文字で簡単に表現できるほど容易なプレーではありません。どんなにフィジカルに優れた守備者でも1タッチでプレーする選手からボールを取り上げることはできません。現実にはあり得ませんが全員が1タッチでプレーすれば相手はボールを奪うことができません。そういった意味でクライフにとって1タッチプレーは理想だったのでしょう。

ブスケツの役割はとにかく1タッチ、ないしは2タッチを駆使してDFと中盤の中継地点になることです。特にペップバルサにおいて、シャビ・イニエスタ・メッシの3人に時間とスペースを与えることはチームの至上命題でした。ブスケツはテンポを落とさず、彼らにボールを供給し、受け直し、また供給する。シンプルな作業ですが、接着剤たる彼がいるのといないのとでは大きくチームは変わります。

もう1つ、ブスケツの特殊能力として挙げられるのが、ボール奪取能力の高さです。いや、フィジカル的に弱いのにボール取れるの?という当然の疑問にブスケツは頭の中身で回答してしまいます。彼が優れているのはネガティブ・トランジションの局面でのボール奪回能力。とにかくポジショニングと読みが良いので、相手のカウンターをいとも簡単に潰せてしまいます。

今日に限らず見逃せないのはブスケツの躍動です。彼の真骨頂はパスや体格ではなく、その卓越した認知力にあります。危機察知能力とポジショニングセンスが抜群に高く、その能力を活かした相手のカウンター潰しは特筆に値します。ただフィジカル能力(特にスピード)は極端に低いので、広大なスペースをカバーする役割には向いていませんね。そしてここ5年くらいはブスケツはその苦手なタスクを負わされ続けてきました。

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ボール保持時に絶えず、ポジションを微調整することで、ボールロストの瞬間に相手に襲い掛かれるような態勢を整えているのがわかります。常にボールを握ってプレーしたいバルサにとって、このブスケツの能力は極めて重要なものになっています。

ヤヤ・トゥーレセイドゥ・ケイタハビエル・マスチェラーノ、アレキサンドル・ソング、アンドレ・ゴメス、イバン・ラキティッチ。この名立たる名手がブスケツの代役や後釜を狙い、無残に敗れ去っていく姿を僕たちは10年見続けてきました。この10年バルサの中盤を仕切るドンは間違いなくこの男でした。

 

■新たな可能性を示した中盤ユニット

しかし2019-2020シーズンになり、安泰だったはずのブスケツのポジションはこの10年で初めて脅かされることになりました。新たな刺客の名前はフレンキー・デ・ヨング。18-19シーズンの欧州最優秀MFのタイトルと7000万€の値札を引っさげて加入した彼は、今ブスケツのアンカーのポジションを虎視眈々と狙っています。

実際、今シーズンのブスケツの出場機会は極端に少なくなっています。ここまで公式戦10試合中、フル出場したのは僅かに3試合のみ。特に象徴的だったのはインテンシティの高いCLの2試合。ブスケツは2試合ともに先発したものの、ドルトムント戦では60分、インテル戦では53分という比較的早い時間でベンチに下がっています。これは近年では考えられなかったことです。

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僕のブログを毎回読んでくださる方がいれば、こう思われるかもしれません。「あれ、Hikota、この前の記事でフレンキーは今シーズンインテリオールで起用すべきって言ってなかった?」と。そうなんです。僕は以前の記事でフレンキーは今シーズンインテリオールで起用すべきでは?と書きました。

結論を言うと、現状「バルサのアンカー」としてフレンキ―はブスケツに及びません。近年衰えが目立ち、批判や不要論もささやかれ始めましたが、依然として彼以上のアンカーはいないと個人的には考えています。

こちらで書いたネガティブ・トランジションでのボール奪取力は勿論のこと、ビルドアップにおけるポジショニング、判断力は芸術の域に達しています。ワンタッチでシンプルに捌き続けたかと思えば、長い脚を利用して相手の逆を突くプレーでビルドアップを円滑に進めます。
まさにバルサのアンカーになるために生まれてきたような選手です。特に今シーズンは本来のバルサのサッカーに戻りつつあるため、ブスケツの輝きが戻っているように思えます。少なくとも今の序列を考えると、フレンキ―がブスケツに代わってアンカーの定位置を確保するのは難しいのではないでしょうか。

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わずか1ヶ月前の記事では僕はこんなこと言っていました。話が違うじゃねえかというツッコミ、ごもっともです笑。状況が変わってしまったのは、CLのインテル戦の後半、リーガ第8節のセビージャ戦で新たな中盤ユニットが一定の機能性を示したからです。

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以下、セビージャ戦マッチレビューの引用です。

そして1点目、2点目ともに見逃せないのが選手間のポジションチェンジ。特にフレンキ―がアンカーに入るとき、この傾向は強くなります。例えば1点目のシーンではフレンキ―が左インテリオール、アルトゥールがアンカーのポジションに入っていました。

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ブスケツがアンカーに入るときは、基本的に彼は中央にポジションを取るので、あまりこのような配置換えは頻繁には見られませんね。フレンキ―は後方からドリブルで突っかけたり、華麗なルーレットを見せたりと、幾分ブスケツとは違った特色を持っている選手です。彼が頻繁に動く分、アルトゥールとビダルは上手く自らの役割を変えながら、トライアングルを保っていました

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この中盤ユニットのテーマは「流動性」。広範囲に渡って動き回りたいフレンキーと、急激にプレーの幅を広げつつあるアルトゥール、万能戦士のビダルは頻繁にその役割が入れ替えながらボールを運びフィニッシュに繋げることができます。僕はフレンキーがアンカーとして必要以上にドリブルでつっかけたり、頻繁にポジションを空けてしまう癖を危惧していたのですが、この2人のインテリオール、特にビダルが気を利かせてスペースを埋めてくれるので、思ったほどバランスは崩れませんでした。

ブスケツが出ても、勿論ポジションチェンジはあるのですが、ブスケツは彼らほどプレーの幅は広くないので流動性という面では劣ってしまいますよね。

あとはやはり右インテリオールにはラキティッチビダルのようなタイプを置いておきたいのがバルベルデの本音なのでしょう。右ウイングには守備貢献度の低いメッシがいますし。となると今の大ブレイク中のアルトゥールは外せない。ならば、7000万€で買った22歳のフレンキ―と31歳のブスケツでは前者を使いたくなるのも理解できます。

 

◾︎機動力で完敗

その他に重要なポイントとしてあげられるのが機動力です。ブスケツに機動力がないことはこれまで散々当ブログでも書いてきました。特にエンリケバルサ以降、中盤の選手は広大なスペースをカバーするタスクを課されるようになりました。

ここで問題にしたいのはブスケツイニエスタの中盤センターです。世界最高峰のアンカーと世界最高の攻撃的MFのコンビですが、彼ら二人には明快な弱点があります。機動力がないことです。ブスケツは、鈍足のシャビに「僕より遅い」と言われるレベルの鈍足であり、俊敏性もかなりの低さです。イニエスタは見るからに小柄で非力。そんな彼らが広大な中盤のスペースのカバーを余儀なくされたわけです。

ボールを持たせれば右に出るもののいない二人ですが、オープンスペースでの守備は不得手。おまけにMSNの守備意識の低さによりファーストプレスが効かなくなり、ブスケツイニエスタの守備負荷はかなりのものでした。

しかしそこはあくまでバルセロナブスケツイニエスタを外すことなど考えられません。シーズンが進むにつれて次第にチームはMSNの攻撃力を最大限に生かすために長い縦パスやロングカウンターを多用するようになります。

パス距離が長ければ長いほど中盤のスプリント距離も長くなります。MSNの栄光の陰で近年のバルセロナの象徴とも言うべきブスケツイニエスタの二人が犠牲になっている。僕は彼ら二人の姿を見て大きなジレンマに襲われたのです。ちなみに余談ですがエンリケがあれだけアンドレ・ゴメスに執着したのもこの守備の問題の解決を図ったからだと僕は推察しています。

こちらはMSN時代のことを書いた記事ですが、状況はバルベルデが監督になっても多少好転した程度。ブスケツは自分の最も苦手な広いスペースの守備を担うことを求められ、そのギャップに苦しんできました。元々苦手な上、年齢を重ねてさらにフィジカル能力が落ちてしまっているので、年々厳しくなっている印象です。今シーズンのドルトムント戦ではかなりロイスにやられてしまっていましたし。

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一方のフレンキー、実はテクニックだけではなく足も速いのです。なんとそのアスリートとしての能力はオリンピック選手級だといいます。

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先述したように長い距離をドリブルで駆け上がって一気にボールを運んだり、ネガティブ・トランジションで敵陣からロングスプリントで回帰して相手からボールを奪い返すなど、ブスケツには決してできないプレーをやってのけることができます。

メッシやスアレスが自陣に戻ってこない分、中盤の選手には機動力とハードワークが求められます。その観点から考えると、現在のバルサのアンカーに必要なのはブスケツではなく、フレンキーのほうなのかもしれません。

いや、はっきり言ってこの選手は本当に化け物です。十分彼の能力は理解しているつもりでしたが、見れば見るほど彼の能力の高さに驚かされてしまいます。7000万€は決して高い買い物ではなかったのでしょう。

 

■道を逸れたのはブスケツか、バルサ

この10年間、ブスケツアンタッチャブルな存在として扱われてきました。しかし、正直に言うのであれば、ルイス・エンリケ以降のバルサにおいてブスケツが最適なアンカーだったかと問われれば、必ずしもYESとは言えません。

その原因はブスケツではなく、ここまで見てきたようにチームにあるのではないでしょうか。いくら年齢を重ねて衰えたとしても、依然としてブスケツが本来のバルサにとって理想のアンカーであることに変わりはありません。ブスケツが輝けないのであれば、それはバルサではない、とすら僕は考えています。

しかし、現状な非情なものです。僕がフレンキ―のインテリオール起用を推した理由の1つとして、ブスケツが輝くバルサであって欲しいという想いがあったのは否定のしようがありません。ブスケツへの思いの強さを、彼のポジションがグラついて改めて再確認したようなものです笑。

フットボールの世界に変化は付き物です。ブスケツももう31歳。世代交代のいい機会なのかもしれません。決して変化を恐れてはいけないのです。それでも、僕が欧州サッカーを観始めた時期にトップチームデビューした選手の地位が下がっていくのは観ていて何とも寂しさを覚えてしまいます。

個人的にこの流れであれば、ブスケツの今季限りの退団もありえると考えています。何となくですがイニエスタバルサ最終年度の感じと似ていると思いませんか?ブスケツはかねてよりMLSアメリカ)への憧れを口にしており、イニエスタと同じくバルサに相応しいレベルでプレーできなくなれば、退団or引退を選ぶ腹積もりのようです。

今回も僕の見立てが間違っていることを願いますが、覚悟は必要かなと思っています。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。