こんにちは。先週からリーガも再開し、僕達の日常が戻ってきましたね笑。バルサは既に2試合を消化して、2連勝。残留争い中の下位チーム相手とはいえ、幸先の良いスタートが切れたのは誇るべきでしょう。
しかし、何かも順調なわけではありません。色々と解決しなければならない問題はあります。その1つがグリーズマンの起用法問題。今回はグリーズマン問題の根幹を考えた上で、どのような起用法がベストなのか考えてみたいと思います。
※記事内のデータは全て『WhoScored』より。
■ここまでのグリーズマンの評価は?
昨年夏、グリーズマンは1億2000万€もの移籍金でアトレティコ・マドリーからバルサに加入しました。アトレティコ時代は加入した14-15シーズンから毎シーズンリーグ戦だけで15ゴール以上を挙げ、文字通りエースとして君臨しました。守備に多くのエネルギーを割くことが求められるシメオネサッカーにおいて、この得点数は素晴らしいの一言です。
グリーズマンがバルサに加入する以前、「バルサ以外で好きな選手は誰?」と問われていれば、必ずグリーズマンの名前を挙げていたくらい、彼は好きな選手です。守備を精力的にこなし、味方をサポートする姿勢を忘れず、自らも得点を奪うことができるアタッカーとして非常に好感度が高かったのです。
グリーズマン加入時の記事にも書いた通り、バルサはメッシ・スアレスが積極的に守備の局面に参加しないという特殊な状況下にあります。そのため、守備に大きなエネルギーを使いながら得点力を発揮できる第3のアタッカーの獲得は急務でありました。という流れでグリーズマンに白羽の矢が立ったのはまあ分からないでもありません。
バルサ初年度の今季は、29節消化時点で、8ゴール4アシストを記録。この数字をどう評価するか人によると思います。初年度にしてはよくやっていると評価する人もいれば、1億2000万でこの成績は物足りない!という人もいるでしょう。守備面を評価している人がほとんどだと思いますが、アタッカーとしては不満を持っている人は多いのではないでしょうか。
僕個人としては、深い位置まで下がって未然にピンチを潰すシーンも目立ちますし、、特にアウェイ戦においていくつか重要なゴールを挙げているので、そこは評価したいところ。特にメッシ・スアレスの離脱期間が長かったので、負傷離脱がないタフな彼がいなければかなり苦しかったと思います。ですが、彼が真価を発揮しているとは思いませんし、正直苦しんでいる時間の方が長いなと思っています。
■グリーズマンが苦しんでいる理由
グリーズマンがバルサで苦しんでいる理由を考えるためには、まずはバルサというチームの組織について語る必要があります。これは何度も当ブログで書いてきましたが、今のバルサは「メッシのチーム」です。たまに「FCメッシ」と揶揄されることありますが、間違った表現ではないと思います笑。
ということでメッシのスタメンフル出場は絶対。彼は2014年以降、バルサ伝統の4-3-3において右ウイングを主戦場としています。ということでバルサのアタッカーは残りの2枠、CFと左ウイングでの定位置確保を目指すことになります。ただ、ストライカーに関してはメッシと抜群の連携を見せつける最愛の相方、ルイス・スアレスでほぼ確定。となると、彼ら以外のアタッカーは必然的に左ウイングに回されることになります。
ということで、グリーズマンが起用されるのはこのフォーメーションにおいて、左サイドになるわけです。スアレス離脱時はストライカーの位置で起用されますが、とりあえず左ウイングのポジションにおける課題をここからは詳細に見ていきましょう。
スアレス、メッシが万全であればここで起用されるしかありません。バルサの左ウイングはとっても難しいタスクとなっています。これはコウチーニョも苦しんだことですが、自由に動くメッシの存在、中央でCBと駆け引きをするスアレス。さらにメッシからスルーパスを引き出す左SBのアルバの存在により、左WGの選手が使えるスペースは極めて狭いものがあります。
もし、左WGの選手がメッシと同じく奔放に動き回ってしまうと途端にチームの配置のバランスは崩れ、チームはネガティブ・トランジション(攻撃から守備への切り替え)で重大な欠陥を抱えてしまうことになってしまいます。左WGの選手にはボール非保持時、左SHとしてのお仕事が待ってますから。つまり左WGの選手はボール保持時、限られたスペースでプレーし、結果を出すことを求められるわけです。
グリーズマンは元来、かなり広範囲に動いて、ボールを引き出して周りとの連動感で崩していくスタイルの選手です。動きながらのワンタッチ、ツータッチでのプレーの精度がずば抜けて高く、周りとの連携が良ければ良いほど力を発揮できるタイプです。
しかし、この左WGのタスクでは極めて窮屈なプレーを強いられてしまいます。グリーズマン基準で動き回ることは極めて難しく、自分の欲しいタイミングでボールはなかなか来てくれません。ボールを多く触りながらパス&ゴーで崩していくグリーズマンの良さは全くこのポジションのタスクでは発揮されません。
グリーズマンの動きを見ていると、「良い動きをしているんだけど、パスが出てこないorタイミングが合っていない」ことがよくあります。これはグリーズマンがメッシ中心のチームの文脈ではなく、まだ自らのタイミングで動いてしまっている証拠です。グリーズマンにスペースを作ろうという動きも、グリーズマンが空けたスペースに誰かが入っていくようなメカニズム自体ありませんからね。
また、グリーズマンがこのウイングというポジションで抱える致命的な欠陥は、単独突破力が低いという点にあります。グリーズマンの左WG起用時のドリブル成功数は1試合あたり僅か0.4回。DFとして仕掛けてこないと分かっていれば対応も簡単です。グリーズマンはポジションを固定して良さが出る選手では絶対にないのです。
順足のウイングであれば、縦突破かクロスのどちらかが武器であって欲しいのですね。左利きの選手から左サイドから決定的なパスを送るのは角度的に結構難易度高いですからね。たまに右サイドで起用された時の方がグリーズマンは良いパスを前線に送っている印象です。グリーズマンが左利きであるというのも意外と見逃せないですね。
これに加えて、ボール非保持時は4-4-2の中盤左サイドまで下がることが要求されるわけです。まあこのタスクは前述した通りお手の物で、かなり深い位置まで戻ることも珍しくありません。これは本当にチームとして有難い部分で、グリーズマンを左サイドで起用することの一番のメリットであると思います。
なので、やはりグリーズマンの課題はボール保持時にあるわけですね。
■無視できない2人の選手
ただ、苦しみながらも、前述した通りにチームにある程度貢献しているのも事実。1年目ですし、長い目で見ることも必要でしょう。と悠長に構えてられなくなってしまったんですよね。その理由は強力なライバルの出現にあります。
下部組織出身の17歳アンス・ファティと2月に緊急補強で購入したマルティン・ブライスワイト。ブライスワイトはマジョルカ戦で、アンスはレガネス戦でそれぞれゴールを挙げ、左WGのレギュラー候補に一気に名乗りを上げました。
グリーズマンになくて、2人にある能力として挙げられるのが、縦へのスピードです。どちらかといえばアンスがサイドアタッカーよりで、ブライスワイトはストライカータイプですが、縦に仕掛ける選択肢を持っていることはバルサのエストレーモ(ウイング)として重要なファクターです。
特にアンスは一見するとオープンスペースで力を発揮する典型的なドリブラーかと思いきや、密集をドリブルで潜り抜けることも、狭いスペースに入ってフィニッシュまで結びつける力も持っているので、若くしてプレーの幅が広いウインガーなんですよね。
これはほんの一例ですが、大外でも中央でもプレー場所を選ばないウイングは今のバルサにとって非常に有難い存在です。アンスの記事は改めて出しますが、本当に逸材ですよね彼。今季リーグ戦では738分の出場で5ゴールを挙げていますし、プレーのインパクトだけでなく、結果も残していますから。
ブライスワイトはレガネス時代、ストライカーの位置でも起用されていますから、展開によっては2人目のストライカーとして振舞えるのがミソです。コンディションも良さそうですし、中断前のソシエダ戦ではメッシからの右からのスルーパスを上手く引き出していた印象です。アンスもそうですが右利きの選手の方が左から内側に入っていく動きはスムーズですね。
ということでこの2人の存在により、グリーズマンの左WGとしての立場は極めて微妙なもののなってしまったと僕は考えています。再開後の2戦はスアレスがまだおじいちゃんみたいなコンディションであったため、3トップの中央でスタメンとして出場しましたが、スアレスが万全な状態になれば、その地位は危うくなるでしょう。
そもそも17歳の下部組織の選手と1800万€で埋め合わせ的に獲った選手に、1億2000万€の選手がポジションを脅かされるってチームの戦略としてどうなの??と突っ込みたくなってしまいますが笑。まあとりあえず現状整理としてはこんなところでしょうか。
長くなってしまったので、前編はここまで!後編では実際にこれからグリーズマンはバルサで生き残っていくためにどうするべきなのか考えていきたいと思います。何かご意見あれば、Twitterやブログのコメント欄でお待ちしております。
最後までお読みいただきありがとうございます。