こんちは。また一段と寒い時期になりましたね。今回はスーペルコパの準決勝、アトレティコ戦のマッチレビューです。そもそもスーペルコパってシーズン開始前にスペイン国内で前季のリーガ王者とコパ・デル・レイ王者が試合をするってやつだったんですけど、今シーズンはフォーマットが変わり、サウジアラビアで4チームのトーナメント戦が行われます。
正直移動含めて日程が厳しくなり、選手たちの負担とかどうなの?と突っ込みたくなりますが、お金やら利権関係色々複雑なのでしょう。サウジとリーガは何かと繋がりが深い気がしますね。
バルサとしてはあまりチーム状態が良くない上に、厳しい日程を強いられる格好になったわけですが、一応タイトルがかかっているため手は抜けませんね。それはアトレティコも同じでしょう。リーガでは1-0でバルサに軍配が上がりましたが、今回はいかに。
■スタメン
バルサはいつも通りの4-3-3。前節エスパニョール戦からの変更点は2か所。ラングレ、ラキティッチがベンチに置かれ、代わりにウムティティとビダルがスタメンで起用されます。負傷中のテア・シュテーゲンの代役は引き続き、ネトが務めます。
アトレティコもいつも通りの4-4-2。負傷明けのキャプテンのコケはベンチからのスタート。サウールが左サイドハーフ、ロディが左サイドバックで起用されます。サヴィッチは3か月ぶりの出場だそうです。まだエルモソよりもサヴィッチの序列のほうが高いのですね。
■前半
アトレティコの意図
アトレティコのやり方は前回対戦とさほど変化が見られませんでした。ボール非保持時は4-4-2、ボール保持時は4-3-2-1へと変わる可変システムを用いてきました。
前回対戦と同様、アトレティコはハイプレスをかけませんでした。2トップに課された役割は中盤のラインまで下がることと、CBにボールが入ればコースを限定することくらいで、あまり高い位置でボールを奪う意図は見られませんでした。対バルサではハイプレス&ボール保持が有効!と最近のブログで何度か述べてきましたが、アトレティコのスタンスはあくまで従来のものでした。
続いてボール保持時。
ボール保持時はこれも前回対戦と似ていますが、2-3-5(4-3-2-1)のような形を取るアトレティコ。コレアとサウールの両サイドハーフが内側にポジションを取り、SBが高い位置を取ります。これはソシエダの配置とも似ていますね。このシステムの利点としては中央で数的優位が作りやすいこと。実際の狙いとして、SBを使ってバルサの守備をサイドに引っ張り出して、シャドーをニアゾーンに走らせる意図は見受けられました。
バルサの4-4-2は中央が手薄になりがちです。SBやCBがアトレティコのシャドーやSBの選手に釣られるとたちまち後方のスペースを突かれてしまいます。このようなやりかたへの対策として僕は以前、3バック(5バック)のオプション化を提唱しました。特に後半ですが、この試合バルサは裏を突かれまくったので笑
このような配置になっていたアトレティコですが、ゆっくりボールを回すというよりは素早くシャドーやSBの選手にボールを届けるようなプレーが多かったです。とにかく先制点を取ればこちらのものだという想いがシメオネの頭にあったのかもしれません。
ボコボコに殴ったバルサ
序盤こそアトレティコの勢いに押されましたが、結局前半は圧倒的バルサペースで進みます。理由は簡単で、先述した通りアトレティコがハイプレスとボール保持を捨て、自陣に籠ったからです。15節アトレティコ戦の後半、バルサが盛り返した理由の1つとしてインテリオールのポジショニングがありました。
このように配給能力の高いインテリオールを相手の2トップ脇に下げることで、ビルドアップを安定させるやりかたです。前回対戦を踏まえてアトレティコはここに蓋をしてくると予想していましたが、特にそういった様子は見られませんでした。この位置でフレンキ―が比較的自由にボールを持てることでバルサのビルドアップはスムーズに運びます。
また、モラタとフェリックスの守備時の挙動が不明瞭なので、ブスケツにも頻繁に良い形でボールが入っていました。この2人を自由にすれば、そりゃあバルサのペースになるよねってことで、10分以降はバルサがアトレティコを自陣にくぎ付けにします。
フレンキ―を誰が見るの?が不明瞭なアトレティコは守備の基準点が狂い、バルサの選手に上手くプレッシャーをかけることができません。バルサのほうでこの試合特徴的だったのはメッシ。いつもの中央ではなくサイドのレーンに張り、対面のロディやサウール相手にドリブルを仕掛けるプレーが目立ちました。
この試合のメッシのドリブル数は10。前節のエスパニョール戦でもメッシがサイドに張るシーンは目立ちましたが、ここまでサイドのレーンでドリブルはしていなかったので、何か具体的な指示が出ていたのかもしれませんね。アトレティコの中央の守備は堅いので、その分手薄になるサイドから切り崩していこうという発想ですね。
メッシはサイドでも1人、2人と剥がせるので少しずつアトレティコの守備は崩れていきます。サイドで仕掛けることによってCKやFKはとりやすくなり、アトレティコを押しこむのに役立ちましたね。
メッシが右サイドに張ることで恩恵を受けたのが、グリーズマンでした。メッシが中央にいない時間帯が増えることで、グリーズマンが縦横無尽に動くことが許されました。そのため、左サイドに留まらず、中央のエレーラやトーマスの間のポジションでボール引き出したり、右サイドまでレーン移動してメッシと連携したりと、キーになる動きが多かったです。
グリーズマンが自由に動き回り、アルバが高い位置を取って手薄になる左サイドはしっかりとフレンキ―が埋めました。もうこのタスクも板についてきましたね。技術はもちろん彼の高いフィジカル的な能力がいかんなく発揮されています。毎回驚かされます。
相手を押し込んだことによってブスケツやビダルのネガトラもハマり、セカンドボールがほとんど二次攻撃に繋がりましたね。ブスケツが大いに輝く試合だったと思います。こういう相手を押し込む試合であれば、ブスケツは今でも世界一のアンカーなんです。
惜しむらくは、圧倒したこの前半で点が奪えなかったこと。それ以外はほぼ完璧だったと思います。オブラクは本当に反則なので、今後のバルサ戦は出場しない契約を結んで欲しいです。アトレティコのプランは失敗だったと思いますが、それ以上にこの展開になるとバルサは強いを示した前半だったと思います。
■後半
アトレティコ先制、だが・・
後半開始とともに、シメオネは選手交代を決断します。エレーラに代えて負傷明けのコケを投入します。自由を謳歌するフレンキ―に蓋をするのが主な意図だったと思いますが、これが思わぬ効果を生みます。
後半開始早々、いきなり試合が動きます。アトレティコが中盤でボールを奪うと、フェリックス、コレア、コケの連携で中央を攻略すると、最後はコケがGKとの1対1で制して先制点を奪います。電光石火の一発でアトレティコが先制に成功してしまいました。
前半ほとんどなかったショートカウンターを後半の頭に決められてしまったのはバルサにとって痛手でしたね。CBが引っ張り出されてその裏を突かれるという危惧していた形でやられてしまいました。
ただ、バルサも上手くいっている自負があったのでしょう。ここで焦らなかったのはよかったですね。あくまでスタンスを変えず、ボールを支配する姿勢をそのままにゴールを狙い続けました。それが実ったのが50分。ビダルが右サイドから低弾道のクロスをスアレスに供給すると、これをメッシに落とします。メッシは囲まれながらも強引にDFの間を割って入り、右足シュート。これがオブラクの手をすり抜け、ゴールに吸い込まれます。これで同点。
前半に比べると、点を奪うためにメッシが中央にいる時間が長くなりました。その分、ビダルが右サイドに張り出すようになりました。この辺は臨機応変にやっていたと思います。
さらにグリーズマンがオブラクとの1対1を迎えるなど決定機を作るバルサ。60分にはセカンドボールの浮き球をメッシが完璧なトラップでコントロールしてシュート。ネットを揺らしますがこれはVARによりハンドの判定。ちょっと微妙でしたが、VARで見られると微妙なのもハンドになるのでまあ仕方のない面もありますね。
しかし、この1分後。アルバのアーリークロスにスアレスが強烈なヘディングシュートで合わせます。これにはオブラクがファインセーブで応えますが、そのこぼれをグリーズマンが頭で押し込み、遂に逆転に成功します。このあともバルサは攻め続け、チャンスを築きます。
シメオネの反撃
この状況を受けて、シメオネはメンバーチェンジ。左サイドバックのロディに代えてビトロを投入します。これに伴い、サウールが左サイドバックにポジションを下げます。
ビトロ投入後のアトレティコの配置はこんな感じでした。モラタとコレアとフェリックスの3トップの下にビトロを配置するイメージです。中央に人を密集させ、ボールを後方から運ぶのが得意なビトロを低めの位置からドリブルさせることで状況の打開を図りました。
それでもバルサのチャンスは続きます。75分、バルサがFKを低めの位置で得ると、メッシが右サイドのビダルと呼吸を合わせ、浮き球のパス。これをビダルが目一杯足を伸ばして折り返し、これにピケが合わせて点差を広げます。しかし、これもVARでオフサイドの判定。完璧なゴールに思われましたが、またしてもVARでゴールが取り消されてしまいました。
するとアトレティコが遂に同点に追い付きます。80分、中盤でボールを奪うとモラタのスルーパスに後ろから走りこんだビトロが反応。ビトロはネトと接触しPKを獲得。このPKをモラタが決めます。ビトロが後ろから走りこむ狙い通りの形でしょう。またしてもCBが引っ張り出されるパターンですね。
慌ててバルベルデはブスケツに代えてラキティッチを投入しますが、その直後、再びショートカウンターからCBの裏を突かれ、コレアのゴールで逆転されてしまいました。この試合素晴らしかったのはコレア。前半押し込まれてあれだけ守備に奔走した中、この終盤に攻撃でエネルギーを発揮できるのは流石ですね。
バルサの弱点と解決策
バルサの悪いところとして、挙げられるのは相手がアグレッシブに来ると途端に中盤以下と前線が分断され、オープンな展開になってしまうことです。
押し込められても基本スアレスとメッシは戻ってこないので、中盤と前線の間には広大なスペースができてしまいます。意図していようといまいと、必然的にオープンな展開になってしまうのが今のバルサの課題です。この試合でもオープンになったスペースをビトロに何度も攻略されました。スアレスかメッシの片方を下げて、中盤を厚くできるのであれば、簡単に解決しそうですが、そうもいかないようなので。
だとするとインテンシティの確保のためにブスケツを下げてラキティッチ投入!は一見すると理にかなっているような気もしますが、解決策として個人的には微妙でしたね。先述しましたが、勝ちにこだわるのであれば、3バックも視野にいれるべきだったと思います。バルサらしくないと言われそうですが、オープンな展開にされた時点でもうバルサらしくはないので。
例えばラングレを投入して、噛み合わせを明確にするこのソリューション。中央で数的不利になることを防ぐことができれば、ピケが引っ張り出されてもカバーリングができるCBが2枚いますから、もしかすると3失点のどれかは防げたかもしれません。まあ家でのんびりテレビを見ている1ファンの机上の空論ですが笑。
バルベルデからすると80分間上手くいっていたチームにあまり手を加えたくなかったのだと思います。だからこそ交代もしなかったのだと僕は解釈しています。しかし、結果として大逆転をくらったわけですから、采配はかなり後手に回ってしまった印象です。試合トータルで見れば素晴らしかったですが、最後の10分ですべてが否定されてしまうのがサッカーの面白いところですね。
勝てなければバルベルデにエクスキューズはない。それは間違いなく。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月10日
この展開を4-4-2で終らせるのではなく、相手の一手に対して何か策を授けて欲しかったというのが本音です。それができないわけではなかったと思うので。
試合はこのまま2-3で終了。アトレティコがマドリ―の待つ決勝へと駒を進めます。
はい、ようやくスーペルコパ見終わりました。リアタイした皆さま、お疲れ様でした。残念でしたね。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月10日
クラシコ見たかった気持ちは山々ですが、ポジティブに考えてみましょう。
とりあえず日程は楽になる。そして同点に追いつかれるまでは良かったと思います。
勝ちたかったけども…!
■雑感
残念でした。この大会の意義は正直疑問ですが、せっかくならクラシコが見たかったですね。ただ、不思議とそこまでネガティブな気持ちはありません。そこまで悪い負け方ではなかったと僕は思います。圧倒的に攻めて攻めて、高いラインの裏を突かれて失点する。印象は悪いですが、わりとバルサっぽい負け方だったなと笑
勝ったチームが強いとよく言われますが、内容では完全に勝っていました。負け惜しみのようですが、これは結構バルサとしては大事なことではないでしょうか。特に今シーズンは内容でも結果でも負けるという試合ばかりだったので。
普通におもしろい試合でしたし、勝ったアトレティコには素直に拍手。クラシコ見れないのは残念だけど、とりあえず光明もあったから切り替えてリーグ戦頑張ろー!と心のトランジションをした僕。この試合はリアタイしなかったので、試合を観終えるまでTwitterを開いていませんでした。
さて、みんなの感想を見よう、と思ってTwitterを開いたらビックリ。目に入ったのは「新監督としてシャビに接触」のニュース。いやいや、これには言いたいことがいっぱいありますぞということで、これについては記事を出したいと思います。もっとも、僕が記事を更新する前に何らかの公式発表があるかもしれませんが・・・。
シャビについては記事を出そうかなと思います。よく今の彼の状況とフロントの思惑は分かりませんが、今が最善ではないと思うので。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月11日
アトレティコには是非決勝でも頑張って欲しいですね!頑張れアトレティコ。
あ、あと今回試合を分ける要因となったVARについて。僕の意見はこんな感じです。結局どのチームも利益も不利益も被りますからね。
いろんな議論があるけど、僕はVAR賛成ですね。運用方法に課題はあるけど、どうせ判定に対する不満や文句はなくならないし。度を越えた誹謗中傷や罵詈雑言が生身の人間じゃなくて、制度や機械に向くんだったらそっちの方が健全な気がする。ルールさえもっと明確になればいい方向に向かうと思うな。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年1月11日
それでは。
最後までお読みいただきありがとうございます。