Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】20-21 ラ・リーガ第22節 ベティス対バルセロナ

こんにちは!ミッドウィークの国王杯準々決勝で苦しみながらも延長戦の末、グラナダを退けたバルサ。今節はアウェイでベティスと対戦します。

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ベティスはここまで9勝3分9敗。シーズン序盤はあまり調子が上がらなかったチームですが、ここ最近は好調を維持。EL出場権に手が届くところまで順位を上げてきました。選手は揃っていますし、監督は経験豊富なペジェグリーニなので、後半戦かなり巻き返しを図ってきそうなチームですね。

 

スタメン

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バルサと同じくミッドウィークに120分の試合をこなしたベティスは、その国王杯の試合から5人の先発変更。ギド・ロドリゲス、ウィリアム・カルバーリョ、カナーレスがベンチスタートとなりました。特に今季ベティスを牽引してきたカナーレスのベンチスタートは驚きでした。

一方のバルサもローテーションを敢行。メッシ、ペドリ、フレンキーがまさかのベンチスタートになりました。流石に疲労が心配なので、ローテは歓迎ですが今季の攻撃の要であるこの3人が揃って先発から外れるのは予想していませんでした。ミッドウィークの国王杯でセビージャとの対戦が決まったので、ここで休ませるしかない!って感じですかね。代わりにブライスワイト、ピャニッチ、リキが先発で起用されます。

 

 両チーム陣形・配置・噛み合わせ

 ベティスは前半戦の対戦と同じく4-2-3-1の陣形が基本。主力3人が不在のバルサもいつも通りの4-1-2-3の形になりました。

まずはバルサのボール非保持時の局面から見てみましょう。

噛み合わない非保持時の意図

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バルサボール非保持時

上図の様にバルサはボール非保持時にリキが1枚前に出る4-4-2の陣形を取ることが多かったと思います。国王杯のグラナダ戦でもこの傾向が見られましたね。リキは持ち前のスピードで相手DFラインやGKまでプレッシャーに行くシーンが目立ち、彼らにロングボールを蹴らせるなどエネルギッシュなプレーを披露しました。彼らしいプレーだったと思います。

しかし、このリキのプレスのかけ方はチームとして統一感があるものではなく、どちらかと言うと「リキが単独でプレスをかけている」ように見えました。つまり「全体の準備が整う前に彼が単独でプレスをかけてしまい、結果全体が間延びした陣形になってしまうという場面は多々ありました。

4-4-2の陣形を基本としてプレスをかけるのは悪くないと思うのですが、この日のベティスは2ボランチ+フェキルで中盤は3人。リキが前に出て行きすぎると、ブスケツピャニッチは数的不利の状況に陥ってしまうことになります。リキのプレスをトリガーとして全体で奪いに行く!という意図がチーム全体にあればいいんですけど、あんまりそういった様子は見られませんでした。

リキ個人の守備の最優先事項として「高い位置でボールを奪いに行く」というものがあります。これは決して間違ったことではないものの、サッカーは単独でボールを奪うのが難しいスポーツです。大切なのは連動感なので、彼が1人で奪取して奪いに行っても簡単に剥がされてしまい、逆に後方が手薄になってしまいます。昨季のセルタ戦でもこの課題は見られました。

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そして、クーマンは「ボールをある程度持てる相手には4-1-4-1でミドルサードにブロックを構える」という基本方針を掲げていると僕は思います。ベティスは今季のリーガ全体で6番目にポゼッションが高いチームなので、「ボールをある程度持てるチーム」には該当しますね。つまり、本来であればそれほど高い位置からボールを奪いに行ってないんじゃないかなと。

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前半戦の対戦ではハイプレスに行かなかった

上図は前半戦のレビューで使った図です。前回対戦はホームでしたが、高い位置から激しいプレスには行っていませんでした。まあこの試合は逆にブロックを作るのはいいものの、どこからボールホルダーにアプローチに行けばいいのか不明瞭で守備がグダグダだったという別の問題があったんですけどね笑

なので、この試合も恐らくチームの意図としてはじっくり守ろうっていう感じではあったと思うんですけど、その意図とリキの意識が若干噛み合ってないのかなという印象はありました。これはリキ個人が悪いというわけではなく、全員の意識が噛み合っていない時点ででチームに問題があると思います。

急造チームで難しい部分はあったと思いますが・・

ベティスの狙い

さて、若干チグハグなバルサを前にベティスが狙ったのはバルサの右サイド。前回対戦も左攻めが多かったので、ここは1つのストロングポイントなのかもしれません。

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多かった左攻め

鍵になったのは左SBのアレックス・モレノ。縦へのスピードに優れる彼は高い位置を取り、何度もバルサの右サイドを壊しかけました。左サイドハーフのファンミはどちらかと言うとセカンドトップタイプ。中央のエリアでプレーすることが多かったため、左大外のレーンはモレノの独壇場でした。これはウインガータイプのテージョが左SHの先発だった前回対戦との大きな違いですね。

最近は守備を目覚ましく頑張るようになったデンベレですが、モレノがかなり高い位置まで張り出すのでどこまでついて行くかどうかは難しいところ。モレノに張り付いて自陣深くまで下がるのも手ですが、何度も長い距離をスプリントしながら攻撃でフレアが放てるほどのバイタリティとスタミナをデンベレは有していません。

本来ならばミンゲサと上手く受け渡したいところなのですが、左SHのファンミがハーフスペースから中央にかけて頻繁に背後のスペースを狙ってくるので、ミンゲサもなかなか対応に苦戦しており、ここの守備の連携はあまり上手くいっていませんでした。個人的には右インテリオールのピャニッチのサポートがもう少しあるといいと思ったのですが・・・。

個で何とかしてしまう右CBのアラウホが早々に負傷交代してしまったことも右サイドの守備の不安定さに拍車をかけました。フレンキ―はフィジカル的には優れているものの、やはりCBとしてのポジショニングに不安は残るので、ミンゲサとフレンキ―の間のスペースなんかはかなり怪しいところがありました。

デストが万全であれば、デストを右SBに入れて、ミンゲサを右CBということもできたと思うのですが…。まあ、今の戦力だと仕方ないですね、アラウホの捻挫はちょっと痛手すぎます。

中盤沈殿現象

一方のバルサのボール保持時。この試合はいつもと中盤の構成が違っただけに形は気になるところです。

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バルサボール保持時

ベティスは4-4-2でセット。DFラインは比較的浅め、コンパクトな陣形バルサを迎え撃ちます。

さて、問題のバルサの中盤ですが、上図のようなイメージを持っていただけるといいのかなと思います。中盤3人が相手のブロックの前でボールを受けに行って、陣形が後ろに重たくなっているのが分かります。

ここ数試合のバルサと比べると違いは一目瞭然です。

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第21節ビルバオ戦レビューより

最近のバルサはアンカーが最終ラインに降りて3バックを形成。3バックの前に右インテリオールの選手がアンカーとして君臨する3-1の形でビルドアップすることが多かったのですが、この試合ではブスケツが最終ラインに下がるシーンはあまり見られませんでした。理由はよく分からないので、分かる方いらっしゃったら教えてください。

ブスケツが下がらない状況かつ、ピャニッチもリキもボールを足下に入れて試合をコントロールしたいタイプなので必然的に中盤3人の距離感は近くなってしまいます。距離感が近いだけならそこまで問題ではないのですが、この場合問題になってくるのは角度

中盤の3人の立ち位置に角度がついていないので、相手からすると非常に守りやすい。例えばブスケツからリキへパスが出たとして、それが相手にダメージを与えないただの横パスになってしまっているという感じです。一昨季のブスケツとアルトゥールが渋滞を起こしてしまった現象に似ていますね。

右のハーフスペースにはグリーズマンが落ちてくるので、そこで起点を作るというのはありましたが、問題は左サイド。ブライスワイトは技術的にハーフスペースでプレーするのは難しく、このスペースを有効に活用する選手がいないのがこの試合の前半の大きな問題でした。

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使いたかったスペース

図で赤で示したスペースを有効活用したかったところです。他のチームの右SHと同様に、ルイバルはかなりアルバについて行く姿勢を見せていたので、RSHとRDHの間のスペースをリキが使ってくれれば…!という場面はありました。

先ほど書いたボール非保持時の局面と並んで、ここがリキとペドリの差なのかなと思います。Bチームに詳しい方のツイートで見たのですが、「リキはBチームでの王様期間が長すぎた」という意見もあるようです。Bチームでの感覚のままプレーしているという仮説は頷けますね。技術というよりもマインドの問題な気がしてならないので、ここが改善してくればクーマンの評価ももう少し上がるのかなと思います。

ブライスワイトは改めてWGとしての限界を感じさせる出来となりました。チーム事情で仕方ないのですが、彼が左に入るとサイドのトライアングルが機能しなくなってしまうので、アルバの飛び出しがいまいち活きてきません。

本来ならブライスワイトをCFに置き、グリーズマンをトップ下に置く4-2-3-1がブライスワイトとグリーズマンの共存としてはいいのかなと思うのですが、それだと中盤の選手を2枚しか使えなくなってしまうので、悩ましいところ。ブライスワイトCF、グリーズマンの左WGも何とも言えないかなって感じではあります笑

左はそんな感じなので、メッシ不在だったエルチェ戦と同じくチームの攻撃は右サイドに偏ることにデンベレグリーズマンの連携は随所に見られたものの、決定的なものにはならず。やはりデンベレを活かすなら、逆サイドからの攻撃が機能していないと難しいですね。

全てを変えたメッシと台無しになるところだった采配

そんなこんなで前半先制されるなど上手くいかなかったバルサですが、後半結局ひっくり返したのは途中投入されたメッシ。投入後2分で同点弾を叩き込み、チームを活性化。メッシ投入前後でチームは見違えるほど変わりました。これ以上の言葉が見つからないので、メッシの話はここまでにします笑

問題にしたいのはOGで逆転に成功した後。ペドリ、メッシ、トリンコンの投入でバルサはこのような布陣になっていました。

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バルサ後半の陣形

アタッカー4人が並ぶ4-2-4のような陣形。得点が欲しい時にクーマンが良くやるシステムです。グラナダ戦とこのベティス戦と2試合連続でちゃんと得点に結びついているので、まあここはいいとしましょう。個人でこじ開けられる相手なら有効なんでしょうし。

問題は逆転後もこの陣形のまま戦ってしまったこと。逆転弾が決まったのは68分で、そこから試合終了まで22分もあり、ベティスの反撃の余地は残されていました。無論、この陣形のまま3点目を狙いに行くという考えも分からないでもないですが、中盤がブスケツ、ペドリだけで、CBにフレンキ―が入っている状況なので、逆転後はバランスを保つ方向に行くべきだったのではないかと思います。

具体的にはデンベレグリーズマンを下げて、ウムティティを投入。レンキ―を中盤に上げて4-3-3で試合をコントロールしながら3点目を狙う、の方がベターだったのではないかと思います。結局ブスケツが広いエリアをカバーする必要性に駆られて犯したファウルから失点ですし、ここは明確なミスでした。

クーマンは12月のバレンシア戦でも同じミスを犯しています。あの試合でもアタッカー4枚を使って逆転に成功したものの、そのままの陣形で試合を進めた結果、同点弾を許して勝ち点2を落としてしまいました。

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怪我人が多く、ベンチのコマが少ないので難しい状況ですが、選手それぞれの疲労も溜まっているだけにもう少し柔軟な采配を見せてくれるといいのかなとは思います。幸いなことにクーマンは選手たちとはいい関係を築いているようですし、思ったほど独裁的にも振舞っていないので、今後采配面が彼の課題になってきますかね。

信じて使い続けたトリンコンのゴールに救われるあたり、クーマンも何か持っている監督なのかもしれません笑

 

試合雑感

何とか勝ちました。まずはトリンコン、初ゴールおめでとうですね。チームを勝ち点3に導く一発には痺れました。長らく苦しんでいただけにこのゴールで自信を取り戻してくれればいいですね。アンスが今季中に戻ってこれるかどうか分からないので、彼がここからフィットしてくれると嬉しいですね。

メッシのプレーに今更言及する必要もないと思いますが、この試合でも勝ちたいという闘志が前面に現れており、途中出場ながらチームを牽引しました。前半戦はメンタル的にかなり落ち込んでいましたが、その反動で2021年に入ってからのメッシのモチベーションには目を見張るものがあります。この試合の終了のホイッスル時に強くガッツポーズした姿が印象に残っています。

メッシがチームを前方で引っ張ったとするならば、それを後方で支えたのがこれまた途中出場のペドリ。この試合では左WG、左ボランチと普段と異なるポジションでプレーしましたが、難なくプレー。見えないところでチームのバランスを取る名脇役の顔を見せました。33歳のキャプテンが引っ張り、18歳のルーキーが支える現チーム。最高です。

ただ、勝利を素直に喜びきれない理由はアラウホの負傷離脱。最も怪我されては困る選手だったのでショックは大きいです。スーペルコパの準決勝から7試合連続フル出場で、内4試合が120分のゲームだったので無理もありません。できればどこかのタイミングで休ませたかったですが休ませる前に故障してしました…。

セルジ・ロベルトも再離脱ですし、デストもまだ万全ではないとのことでDFラインはかなり苦しいですね。デストがダメなら次の国王杯のCBコンビはラングレとウムティティの左利きコンビになってしまいそうです。

次の試合はミッドウィークにセビージャとの国王杯準決勝1stレグ。2021年は好調が続いているバルサですが、CLクラスのチームと対戦するのは今年初になるので、どこまでやれるか注目です。

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