Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】20-21 ラ・リーガ第15節 バジャドリード対バルセロナ

こんにちは。前節ホームでバレンシアと引き分けたバルサは、今節久々のアウェイゲームに臨みます。

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今節の相手はバジャドリード。ここまで3勝5分6敗で18位。降格圏に沈んでいます。 ただ、ここ6試合のリーガでは3勝2分1敗の成績を残しており、徐々に調子は上がっていそうですね。ここまで2シーズン連続で残留を果たしているセルヒオ・ゴンザレス監督の元、今季も残留を目指しています。

 

スタメン

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バジャドリードは前節から6人の先発変更。週末のセビージャ戦からメンバーがガラリと変わりました。オレジャナやロケ・メサなどのリーガファンにはお馴染みの選手たちはベンチスタート 。昨季のバルサ戦で印象的なプレーを見せたセルジ・グアルディオラもベンチからの登場となります。ちなみにGKのマシップはバルサカンテラーノですね。

一方のバルサラングレが3試合ぶりの先発。引き続きアラウホとミンゲサも先発なので、3バックが濃厚でしょうか。ピャニッチは今季2試合目のリーガでの先発。コウチーニョグリーズマンはベンチに置かれ、ブライスワイトとペドリは引き続き先発します

 

両チーム陣形・配置・噛み合わせ

今季初の3バック導入

さて、この試合の最も大きなトピックとしてはバルサの3バック導入でしょう。頭から3バックを使うのは今季初です。

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バルサビルドアップ

上図のようにはっきりとした3-4-2-1の形を取るバルサ。3バックの並びは右からミンゲサ、アラウホ、ラングレ。両サイドのデスト、アルバは高い位置を取り、両サイドのハーフスペースにはメッシ、ペドリが陣取ります。

なぜこのタイミングでクーマンが3バックをテストしたのかは分かりません。気まぐれなのかもしれないですし、元々プランにあってアラウホとミンゲサの台頭で実験に踏み切ったのかもしれません。ビルドアップ能力に優れるミンゲサとラングレを両脇に従え、スピード豊かなアラウホを中央に置く形で守備はある程度堅くなりそうです。

一方のバジャドリードはお馴染みの4-4-2。ホームということもあってかベタ引きにはならず、積極的に前から奪いに行くシーンも目立ちました。できるだけ高い位置で奪ってカウンターが狙いですね。

バルサがこの試合導入した3-4-2-1は、4-3-3に比べるとトライアングルが作りにくいシステムであり、バルサは序盤ビルドアップに苦しみました

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ビルドアップに苦しむバルサ

例えば、上図の様にサイドのCBがボールを持った時にサイドハーフに前のスペースを塞がれてしまうとパスコースを探すのが難しくなります。近くのピャニッチやデストは当然塞がれますから、パスの出し所が無くて蹴ってしまうという場面は何度かありました。

これは昨季セティエンが3-1-4-2を導入した際も困った問題で、バルサの選手たちは基本的にロングボールだったりサイドチェンジの数が少ないので、トライアングルの距離感が遠くなってしまうとビルドアップが詰まってしまうという課題があります。これはこのシステムの構造上仕方ない部分はあります。

さて、上記の通り、ビルドアップに苦戦はしたものの、前半で2得点を奪うことに成功したバルサ。その要因は何だったのでしょうか。

この試合は3+2の後方ユニットで後ろに重たい布陣になっていたことから、いつもに比べると前線の枚数が少なくなっていました。そして、それが逆に功を奏した感があるのが、このバジャドリード戦でした。

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今季のバルサに見られる渋滞感

今季のバルサの課題として上がってくるのが、前線の渋滞。特にバルサには足下でボール受けたい芸人、ライン間芸人が多く、後ろに引かれてスペースを消された時に相手のDFラインと中盤ラインの間のスペースが渋滞してしまい、攻撃が詰まってしまう現象が散見されます。

しかし、今日の前線の配置はストライカーの位置にブライスワイト、右ハーフスペースにメッシ、左ハーフスペースにペドリ、そして両ワイドはアルバとデストがそれぞれ埋めるシンプルな配置となりました。つまり、このシステムだとライン間に入る選手は基本的にメッシとペドリのみになります。

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バジャドリード戦配置のイメージ

これにより、いつものライン間渋滞現象が軽減されます。バジャドリードバルサの後ろ寄りの陣形に合わせていい感じに前に出てきてくれたので、ライン間のスペースでメッシがフリーで持てることが多くなります。メッシはこのスペースでボールを持てば、水を得た魚のようにチャンスを量産する選手です。

さらにこの日はすぐ横にペドリというサポート役、さらに後方にピャニッチという最高の出し手がいたことで、メッシは得意なエリアでの勝負に専念することができました。ペドリは18歳ながら、メッシとの連携が上々で上手くメッシの良さを引き出すことができます。

ピャニッチは縦パスを入れるタイミングが秀逸で、ブスケツやフレンキーに比べるとよりダイレクトな縦パスを前線に供給している場面が目立ちます。ボランチ3人の中で最もコントローラー感が強く、あまり前に出てこないのでメッシもプレーしやすそうでしたね。

そんなこんなで、この日のバルサ「メッシを最大限に活かす」ことができていたと思います。戦型としてはバルベルデ時代に近いですかね。そこに回帰するのはどうなの?って意見も出てくると思いますが、個人的にはメッシがいるうちは、ある程度それで仕方ないのかなと。

で、これ物凄く書きづらい話なんですけど、コウチーニョグリーズマンのようなライン間芸人をたくさん使ってしまうと、メッシのプレーエリアは制限されてこのようなプレーは難しくなります。「メッシのメリットは制限するけど、結果依存する」というコストの割にリターンの少ない形になってしまっていたのがここまでのクーマンバルサでした。

かと言って彼らは高い金額を払って購入している選手たちなので、簡単にベンチに置いたり、放出することは現実的ではありません。メッシと彼らを共存させるというのはやはり難しいなと感じさせられたのがこのバジャドリード戦でしたね。まあもうそれは仕方ないので、何とか彼らはサイドハーフとしてのタスクを果たしてチームのピースになる道しかないと思います。

それこそ、グリーズマンを右ウイングに置いて、攻守にハードワークさせるタスクを課して、バランスを取らせるのは悪くないと思います。尤も、彼がもう少しチャンスを決めないと成立はしませんが…。逆に彼がもう少し簡単なシュートを決めていれば、話はもうちょっと単純だったと思います笑。

5-3-2でボール非保持時

ボール保持時はシンプルな配置でチャンスを量産し、3ゴールを挙げたバルサ。一方のボール非保持時の局面になると両WBが下がり、ブライスワイトとメッシが前線に残る5-3-2の形でセットします。左シャドーのペドリはボール非保持時の局面では中盤に加わります。

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5-3-2での守備

例えば、上図の様に相手のSBがボールを持った際には、ボールサイドのWBがプレッシャーをかけ、それに連動してDFラインの残りの4枚が1つずつズレてスペースを埋めていくような守り方をします。中盤はピャニッチ、フレンキー、ペドリがちょっとずつ無理をしながら3枚で守るイメージです。プレッシャーがかからなければ、完全に5-3-2でブロックを作ってしまうのが特徴ですね。

どちらにしてもこの5-3-2で明らかに負荷がかかるのは中盤の3人。この試合はビルドアップがそれほど上手くないバジャドリードとの対戦だったので、大事には至らなかった感がありますが、横幅を3人で守るのはかなり厳しく、ボールと逆サイドのハーフスペースが浮いてしまうのが大きな弱点です。

バルサには基本的に守備能力の高いカゼミーロやカンテのような選手がいないので、中盤3人の根気と能力に賭ける守り方はあまり得策ではありません。セティエン時代に4-3-1-2をやって失敗したのも、中盤の3人ではとても相手の攻撃を封じ込めなかったからです。

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少なくとも現メンバーだと馬力とスピードのあるフレンキ―と、運動量があってスペースを埋める感覚に長けたペドリがいてギリギリ成り立つか成り立たないかくらいのイメージを僕は持っています。相手によっては、多分このやり方ではボコボコにされてしまうでしょう。CB3枚起用で強度自体は上がっているのである程度は跳ね返せるでしょうが、そうなってくるとピケの不在も響いてくるような。

強豪相手にちゃんと守ろうと思ったら無理矢理ブライスワイトを下げて中盤の守備に参加させるしかないと思います。それで5-4-1で守ると。バルサは数的不利とかで守れるチームでは本来ないはずなので、そこは人員を増やすしかない感はあります。そうなってくると今度はブライスワイトがパンクしてしまいそうなので何とも言えませんが笑。

状況によっては5-3-2からはっきりとした4-4-2に可変するのも一つの手かもしれません。例えば、デストを右サイドハーフ、ミンゲサを右SB、ペドリを左サイドハーフにスライドをさせて4-4-2にするような柔軟性があれば、話は変わってくるかもしれません。そうすればブライスワイトの守備はCFのそれに留めることができますし、状況に応じて中盤を厚くすることも、DFラインを増強することもこのメンバーならできるはず。

まあ、今回の3バックはぶっつけ本番だったみたいですし、クーマンとしてもテストの意味合いが強かったのだと思いますが、今後このシステムを使いたいのであれば工夫は必要だなと思います。まあ現段階ではオプションの1つとして持っておく、くらいでいいんじゃないですかね。引き出しを持っておくのは良いことですし。

 

試合雑感

アウェイでクリーンシート、3得点、勝ち点3。チーム状態がそれほど良くない中で、苦手なアウェイ戦で結果が出たのはひとまずポジティブなことでしょう。相手云々っていうのは勿論言われるとは思うんですけど、今のバルサは先のことを考えず、1試合1試合やるしかないので、この勝利は大きいと思います。

この試合では3バックを採用しましたし、クーマンもかなり試行錯誤している感がありますね。この4連戦で4-1-2-3、4-2-3-1、3-4-2-1と3つのシステムを使用しました。未だに最適解を探っているフェーズというのは観ている僕らも認識していたほうが良さそうですね。

一方、この4連戦で先発したメンバーは僅か14選手。中2日ペースの超過密日程の4連戦でしたが、 主力メンバーはかなり固定されてきた感がありますね。特にこの4連戦で全て先発したデスト、アラウホはクーマンの信頼を一気に掴み取った感すらあります。ミンゲサも含めてDFラインに若手が増えた中で、4連戦で3勝1分はホームが多いとはいえ、悪くない成果だと思います。

一方、この4連戦で殆ど試合に絡めなかった選手たちは1月の退団が視野に入っているかもしれませんね。特にリキはこの過密日程で1分も出場することができませんでした。市場前でここまで起用されないとなると、これはクーマンの明確なメッセージと受け取っていいのではないでしょうか。残念ですが、1月レンタルを模索するのがリキのキャリアにとってはベターな選択になるのではないでしょうか。

さて、この過密連戦も終わり、バルサの選手たちはしばしのクリスマス休暇の後、30日のエイバル戦を持って2020年の試合を終えます。年明けからまた週2ペースで試合が続くので、選手たちの負担は心配ですが、何とか順位は5位まで上がってきました。アトレティコとマドリ―の状態がいいだけに優勝という点では厳しいかもしれません。現実的にはCL出場権獲得が目標になると思いますが、2021年に弾みをつけるという意味でもしっかりとエイバル戦勝って終わりたいですね。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。