こんにちは!ミッドウィークに行われた試合で、首位ソシエダをホームで下したバルセロナ。今季初のリーガでの3連勝を目指すバルサの今節の相手はバレンシアになります。
バレンシアと言えば、今夏、フロントが荒れに荒れて、主力の大量放出を敢行。ダニ・パレホ、コンドグビア、コクラン、ロドリゴ、フェラン・トーレスなどの主力がチームを離れました。今季はここまで3勝5分5敗。名門チームとしては物足りない成績ではあるものの、3勝のうち2勝がマドリ―とソシエダという何とも評価のしづらいチームになっています笑。
主力が抜けた分、カンテラの若い選手が躍動しているようですし、ガヤやカルロス・ソレール、マキシ・ゴメスなどのリーガの一級線のプレーヤーは依然としてチームに残っているので決して侮れません。
スタメン
バルセロナはソシエダ戦から先発変更は1人のみ。大腿骨に違和感を覚えたフレンキ―・デ・ヨングがベンチスタート。代わって最近出場率が低いコウチーニョが起用されます。ソシエダ戦で上々のパフォーマンスを見せたアラウホ・ミンゲサのコンビは継続。気になるのは右SBのデスト。これで8試合連続先発出場。彼だけではありませんが、疲労は気になります。
対するバレンシアはミッドウィークのコパ・デル・レイで、主力を休ませました。そのため、コンディション的にはバレンシアの方が有利やもしれません。右サイドに入るムサは今季台頭した18歳のスピードスターです。ちなみにチームのトップスコアラーはカルロス・ソレールの5得点ですが、いずれもPKでのゴールのようです。
両チーム陣形・配置・噛み合わせ
大方の予想通り、序盤はバルサがボールを保持して、バレンシアがブロックを作って受けながらカウンターを狙う展開に。今回のレビューではバルサのボール保持時にフォーカスを当てて書いていきます。
バルサのこの日の基本フォーメーションは4-1-2ー3。これ4-2-3-1と見分けるのは難しくて、主観によって分かれると思いますが、ペドリとコウチーニョの位置からそう判断しました。フレンキ―が先発から外れたというのが4-2-3-1からの変更の大きな理由ですかね。
対するバレンシアは、お馴染みの4-4-2で守ります。これはマルセリーノ時代からのバレンシアのトレードマークのようなもの。上図の様に中央をしっかり固めることに重きを置いた守り方になっています。大外はある程度捨てて、内側を締めながらバルサの中央突破を阻む狙いでしょう。
さて、序盤の方はバレンシアを押し込んだバルサ。前述のバレンシアの守り方により、大外のデスト、アルバからのチャンスメイクが多めになります。ただ、バレンシアが中央を固めている上に、バルサにはクロスに強いFWがいないので、大外からの攻撃がなかなかシュートに結び付きません。
で、そうこうしている内にバレンシアが陣地を回復して、前に出てきます。少しずつカウンターが決まり、シュートを撃たれ始めました。前半のバルサボール保持率は76%でしたが、バレンシアに撃たれたシュートは9本。一方のバルサは僅か6本なので、攻撃の効率という意味では明らかにバレンシアに分がありました。
その原因の一端となったのが、インテリオール2人のポジショニングです。
先ほどの画像をもう一度。今度はメッシとインテリオールの位置関係に注目してください。メッシはいつものように下がってボールを受けるのですが、その際、ペドリとコウチーニョはメッシよりも高い位置(ライン間)に移動します。ということでメッシが低い位置でボールを持つと、このようなバランス感覚になることが多かったバルセロナ。
両SBと両インテリオールの4人が揃ってボールよりも前に出て行っている状態です。何度も今季のレビューで述べている様に、メッシはゲームメイカーではなく、あくまでアタッカー・フィニッシャーなので、低い位置でボールを持たせると被カウンターのリスクと隣り合わせになってしまいます。
メッシは右ハーフスペースに落ちることが多いので、その入れ替わりで右インテリオールのペドリが前に出るのはまあ配置上分からなくはないのですが、逆側のコウチーニョも揃って出て行ってしまうので、攻守のバランスを取る選手がいません。2インテリオールではなくダブルトップ下のようなイメージの立ち位置です。
よって相手の2トップに対して、バルサは3人、状況によっては2CBの2人で広大なスペースをケアしなければなりません。勿論、アラウホもミンゲサも良く対応をしていましたが、フィルターが機能しない分、やはり何度かカウンターに繋げられて陣地を回復されてしまいましたね。これは選手1人1人の頑張りの問題というより、構造上の問題です。
アラウホのスピードはかなりの広範囲なスペースをカバーできますし、実際彼がカウンターの芽を摘んでくれる場面は多いのですが、それでも1人が解決できる問題には限界があります。それでも、彼がいなければと思うとぞっとしますね。それくらい今のバルサの守備は彼のスピードに助けられている部分が大きいので。
例えば、コウチーニョ(またはアルバ)がもう少し下がり目の位置でバランスを取りながら、配給役になれればもう少し全体的なバランスは良くなりそうですが、彼はそういう選手ではないので、難しいですね。本当はペドリを左側に置きたいのですが、コウチーニョは左でプレーするのが好きなので、これまた難しいという。コウチーニョもまた低い位置でプレーしているのに適した選手ではありません。
で、どうなるかというと、インテリオールが高い位置を取るばかりに、アンカーのブスケツと2人の間の距離感がおかしくなってしまうんです。バレンシアの先制点の直前、立て続けにブスケツのミスがカウンターに繋がりました。無論、あそこで奪われるブスケツが1番悪いのですが、インテリオールが画面に映らないくらい遠くにいたのは見逃せません。
バルサあるあるとして、ブロックを作って引いて守られて攻めあぐねる→何とかこじ開けるためにライン間に人員を増やす→全体のバランスを崩す→崩れたバランスを突かれて失点、というのが王道のパターンです笑。バランスを崩して攻めの人数を増やすことは必ずしも得点に直結しません。払うコストに成果が見合っていないが現状です。
もう少し配置のバランスを整えながら、相手を横に揺さぶりたいところなのですが、今日のメンバーだとそれが難しかったと思います。4-1-2-3で中盤の選手は増えているはずが、却ってアタッカー役が増えてしまうのはレバンテ戦と同じ現象です。
4-1-2-3が採用されたレバンテ戦でもコウチーニョがインテリオールとして使われたのは何かの偶然でしょうか。もしやクーマンはトップ下を2枚使える便利なシステムとして使っているのではないかという説は一応僕の片隅にあります笑。
何度も言っているように、コウチーニョは僕の中では中盤の選手ではなく、アタッカーです。バルサのインテリオールではプレイできないという意見はこの試合でも変わることはありませんでした。そして、何となく彼のところで流れが止まってしまうのもいただけません。試合展開がオープンになった後半は彼の良さが出ていましたが、スペースがない状態だと苦しむ選手ではあります。
コウチーニョがボールを持つと、時が止まったような錯覚を覚える。悪い意味で。ボールの循環がそこで詰まってしまう悪癖は改善されず。彼が中心のチームであればそれで問題ないのかもしれないけど、バルサの王はメッシであるわけだから。それやられると中々苦しい。自分のリズムを変えられんのよな。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年12月19日
それともう1つ気になるのが、メッシとデストの関係。あまりコンビネーションで崩すシーンがなく、メッシが欲しいタイミングのパスが中々デストから出てきていない印象があります。勿論、1年目なので連携がまだまだなのは当たり前なんですけどね。メッシも試合中デストに何か言っていましたが、ここの連携はキャリアがある分、セルジ・ロベルトの方がスムーズです。
クーマンの怠慢が招いた2失点目
後半からブスケツに代わって、フレンキ―を投入。4-2-3-1にシステムを戻し、現状最も火力の強いメンバーと配置で点を取りに行きます。
まあ1-1でそれほど焦る必要もないと思いましたが、ホームということもあり、得点を狙う采配は悪くはなかったと思います。それが実ってかは分かりませんが、後半開始7分後にアラウホが元FWらしい鮮やかなボレーシュートを決めて、逆転に成功します。あのシュートには本当に驚かされました。
問題なのはここから。逆転に成功したはいいものの、そこからバレンシアの猛攻を受けることになってしまったバルサ。カウンターがメインウェポンのバレンシアが攻撃の足掛かりにしたのが、メッシがいるバルサの右サイド。ここでは確実に数的優位が作れるので、左SBやCBは前進し放題。
で、ここを起点に攻め込まれてしまうわけです。バレンシアの左SBはリーガ屈指のラテラルであるガヤ。バレンシアで最も危険な選手であり、この選手を自由にプレーさせるのは流石にリスクが高すぎました。
バレンシアの同点弾も当然の様に、バルサの右サイドを壊して生まれたもの。右サイドが数的不利であるばかりに、デストもペドリもアラウホも釣りだされてしまい、最終的にはペナルティーエリア内中央には広大なスペースが出来、そこをマキシ・ゴメスに突かれて失点となりました。
この守備の問題を放置したままにしたのは正直驚きました。勿論、攻めの姿勢を崩すべきではなかったのかもしれませんが、それにしたって逆転後も露骨な弱点を抱えたままプレーする必要はなかったはずです。前半と同じように、再びメッシを最前線に配置すれば防げた失点だったのではないでしょうか。
クーマンの交代策が度々やり玉に挙げられますが、この日最も問題だったのは、この守備の問題に対して何もしなかったことでしょう。それがなければ勝っていたかどうかは分かりませんが、ちょっとこれは個人的に残念な采配でした。
試合雑感
「内容は全然よくなかったけど、それだけに勝ち点3を取れたのは大きいですね」となるはずが、結果としては勝ち点2を逃がす結果となりました。残念でしたね。せっかくソシエダ戦でいい雰囲気になりかけたと思ったのですが。
やはり引いた相手を崩すのはまだ難しそうですね。今日の2得点もカウンターとセットプレーですから。ソシエダのような相手よりも、今日のバレンシアのような対策を敷いてくるチームの方がリーガには多いので、これからも苦闘は続くでしょうね。悪いなりに勝ち点を積み上げていくしかないのですが、守備も不安定なだけに取りこぼしを減らすのはクーマン監督と現スカッドでは厳しいですかね。
Koeman: "We have many young players which is making the game a bit erratic. We have to grow."
— BarçaTimes (@BarcaTimes) 2020年12月19日
クーマンも試合後こんなことを言い出すようになっちゃいましたし、そろそろ本性を現してきたかな?といった印象。ファンとして一番辛いのは勝てないことそのものよりも、それが原因でチーム内がギスギスした雰囲気になってしまうこと。1月には会長選がありますが、それまでにチームが瓦解しないか心配です。
リーグ戦で殆ど先発の機会がないピャニッチや2試合連続でスタメンを外れたラングレ、怪我から復帰するも出場の気配すらないウムティティ、ここにきてなぜかネガティブな報道が多く出てきたリキなど、ベンチを温めているメンバーの精神状態も気になるところ。クーマンはその辺のマネジメントできてなさそうですし、、
さて、次節は再び中2日の休息を挟んでバジャドリードとのアウェイゲームに臨むバルサ。年内の試合も残すところあと2試合になりました。あっという間ですね。とにかくいつも言っていることですが、今のクーマンバルサに多くは望めません。1つでも多くの勝ち点を奪ってCL出場権を狙うが現実的な目標だと思います。
とにかく2020年の残り2試合、勝てるように祈ってます。
最後までお読みいただきありがとうございます。