Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】20-21 コパ・デル・レイ準決勝1stレグ セビージャ対バルセロナ

こんにちは。週末のリーガでベティスに逆転勝利を収めたバルサは、同じくアンダルシアのセビージャとの対戦を迎えます。

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ロペテギ体制2年目で、リーガではバルサと1ポイント差の4位、CLのグループステージも難なく突破するなど、安定した強さを披露しています。この国王杯でもベスト4に進出しており、カップ戦での強さは際立つばかりです。冬にはアタランタからアレハンドロ・ゴメスを獲得しており、戦力補強にも成功しています。

バルサは前半戦にセビージャと1-1の引き分け。ビジャレアル、セルタに大勝し、勢いに乗りそうだったクーマンバルサの鼻を最初にへし折ったのがセビージャでした。

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国王杯は準決勝のみ2ラウンド制なので、セビージャとは2試合戦うことになります。この過密日程の中でセビージャ戦が2試合もスケジュールに入るのは厄介極まりないですが、2021年に入ってから好調を維持するクーマンバルサがCLレベルのチーム相手にどこまでやれるのかは楽しみですね。

 

スタメン

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ホームのセビージャはヘスス・ナバス、アクーニャ、オカンポスの主力組が負傷で離脱中。両SBのレギュラーと攻撃の要が不在になっています。SBにはアレイシュビダルエスクデロが起用され、前線の一角に新加入のゴメスが入っています。それ以外はベストメンバーを並べてきました。

一方のバルサは、ただでさえ負傷者が多いにも関わらず、ピャニッチブライスワイトが負傷でメンバーから外れます。これでバルサのトップチーム登録の起用可能なフィールドプレーヤーは13人になってしまいました。特に負傷者が多い最終ラインの人選が注目されましたが、ラングレではなく今季出番が少ないジュニオルがチョイスされました。

 

両チーム陣形・配置・嚙み合わせ

この試合のボール保持率は54:46。バルサが僅かに上回りましたが、ボールを支配したとは言えない展開でした。まずはバルサのボール保持時から見ていきましょう。

バルサボール保持時

バルサのビルドアップに対してセビージャは下図のような形で守ります。

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セビージャのボール非保持時

エンネシリ+片側のWGがCBを監視、中盤の3人は正三角形に可変してバルサの中盤ユニットとガッツリ噛み合う形になります。これはこれまでのセビージャ戦とさほど変化がありませんでした。テア・シュテーゲンのところにはほとんどプレッシャーに行かず、ガッツリ高い位置で奪いに行く!というよりは「前から制限をかけていく」くらいの感じだったと思います。

一方のバルサのビルドアップは試合を通して、ブスケツがほとんど最終ラインに降りなかったのが特徴的でした。2021年に入ってからはブスケツのサリーダが目立ちましたが、ベティス戦に続きブスケツはDFラインに下がらず、アンカーの位置に留まってビルドアップに参加

これは中盤で数的均衡を作る狙いがあると思われます。中盤が数的同数になることで、中盤化するメッシを浮かせる意図があったのではないでしょうか。特にセビージャは左インテリオールのラキティッチブスケツを掴まえに行くので、右ハーフスペースに落ちるメッシをフリーにしやすいという状況はありました。ブスケツが最終ラインに下がると流石にラキティッチもそこまで追わないでしょうから。

ということで、ビルドアップは低い位置まで落ちてくるメッシを上手く使って前に進むことになります。ジエゴカルロスがメッシについてくるケースもありましたが、そこまで前に出てくると裏が怖いので、状況が整っていないと潰しには行けません。

セビージャのラインが徐々に下がっていくと目立ったのは左から右大外のデンベレへの展開

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目立った左から右への展開

例えば上図のようなウムティティからデンベレへのフィードは前半何度か見られました。左から右への展開は今のバルサの武器の1つで、スペースのある状態でデンベレにボールを渡し、深さを一旦作ってから後ろから入ってくるメッシを使うのはシンプルながら効果的な攻撃です。前半唯一の決定機も左からデンベレに展開して生まれたものでした。

ただ、セビージャもここのケアは怠らず準備しており、エスクデロとゴメスの2人でデンベレには対応するのがルールになっていたようです。流石のデンベレも毎回2人を相手に綺麗に突破できるわけではないので、この局面ではかなり孤立気味だったと思います。

不運だったのはこの試合はセルジ・ロベルトもデストもおらず、左利きのジュニオルが右SBで起用されていたこと

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ジュニオルのポジショニング

上図の様にジュニオルは内側にポジションを取り、ほとんどデンベレを追い越すプレーが見られませんでした。恐らく自分の判断というよりはクーマンに上がらず内側のレーンでバランスを取るように言われていたのだと思います。左利きの選手なので外側を回った時に右足は使えないのはやはり問題なのでオーバーラップがなかったのは致し方ないです。

ただ見ているだけではなく、パスコースを提供してあげるなどもう少しデンベレを内側からサポートする動きはあっても良かったかなと思います。ただ、難しいのは今のバルサではフレンキ―がフィニッシュ役を担うので、SBが内側からアタックするとチームのバランスはどうしても崩れやすくなってしまいます。

勿論、セルジ・ロベルトがいれば…とは思ってしまうものの、不慣れなポジションを務めたジュニオルをそれほど責めることはできないのかなというのが本音です。いきなり右のハーフレーンで上手くプレーしろというのは酷ですね。むしろ配置としてはデンベレが外側、SBが内側が初期配置というのは理にかなっています。あとは臨機応変にプレーできるだけの臨機応変さが欲しかったなと思います。

そんなこんなでバルサの攻撃はわりとトーンダウンしていった印象です。セビージャが厄介なのは引いた時の守備がべらぼうに堅いこと。2ラインはコンパクトで、CBの2人+フェルナンドの安定感が異常に高いので、中央は難攻不落。昨季の対戦でもセビージャの中央を崩せず、勝ち点を落としたのは記憶に新しいところ。

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バルサの攻撃のキープレーヤーであるペドリのためのスペースは遮断され、ペドリはほとんど良い位置でボールを受けることができませんでした。そのためいつものライン間ではなく、前線にランニングをかけるシーンが目立ちましたね。ただ、そこはCBの守備範囲も広いのでそこまで上手く受けられず。

プレスを効果的にかけることができ、リトリートも堅い。セビージャがここまで結果を出している理由がよく分かりますね。

バルサボール非保持時

さて次はセビージャのビルドアップを見ていきましょう。

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セビージャのビルドアップその1

まずは昨季からあった形としてインテリオールのどちらかが、左ハーフスペースに落ちて脇のスペースから前進する形。クロースロールとよく呼ばれるやつですね。昨シーズンはこのスペースにバネガが落ちて右のナバスやオカンポスに高精度のサイドチェンジを供給するのが定番でした。

ラキティッチジョルダンはバネガに比べると展開力は劣るので、一発のサイドチェンジを狙うというよりはビルドアップを安定させるために落ちるという意味合いが強そうな今季のセビージャ。ラキティッチはショートパスでの繋ぎは安定しているので、ここでしっかりとボールを落ちつけながら前進しようというチーム全体の意図は感じられます。

面白いのはラキティッチが落ちたときの他の中盤2人の動き。ジョルダンが真ん中のヘソの部分に入り、アンカーのフェルナンドはCFのエンネシリの近くまで駆け上がっていくのが特徴です。上図で矢印を使って中盤3人の動きを表しましたが、かなり流動的ですよね。

インテリオールが中盤に落ちて、アンカーが前に上がっていくってこれマドリ―のやり方と似ていますよね。ロペテギはマドリ―の監督を半年だけやっていますし、それを参考にしている感じはします。インテリオールの選手の方がアンカーの選手よりビルドアップに長けているので、インテリオールを低い位置に配置し、フィジカルの強いアンカーを前に置いて攻撃に厚みを出す意図ですね。

配置的にはリスキーにも見えますが、セビージャの中盤3人はフィジカル的にいずれもアンカーを務められるだけの選手なので、配置を変えてもさほどネガティブ・トランジションが問題にならないのが大きな強みです。

また、シンプルにフェルナンドがDFラインに落ちるパターンも。

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セビージャのビルドアップその2

このように3-1のビルドアップと3-2のビルドアップを上手く使い分けるのがセビージャのビルドアップのやり方っぽいですね。SBは基本高い位置を取り、両WGのスソとゴメスは内側でプレーします。特にゴメスは自由を与えられているようで、右サイドまで出てきてスソと絡むシーンが前半特に目立ちました。CFのエンネシリは密集地帯よりも、サイドのスペースに抜けていく動きで裏を狙います。

昨季と比べるとこの試合のメンバーはサイドチェンジやクロスよりも2ライン間でのコンビネーションの崩しが武器になっている印象を受けました。サイドからの攻撃は専らSBが担い、今日はヘスス・ナバスがいなかったのでそれほど脅威ではなかったものの、昨季とは違った要素を取り入れている感があります。

このようにビルドアップがきっちりと整備されているチームに対して脆いのが今季のバルセロナ。例えば、セビージャが3-1でビルドアップを開始したとして。奪いに行くなら同数でプレッシャーをかけるしかありません。なぜならメッシがいるからです。メッシは頑張らせて1人分。2度追い3度追いさせるのは現実的ではないので、奪いに行くなら後ろの同数のリスクを冒さねばなりません。

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プレスに行くと裏が怖い

先頭のメッシが二度追いしないとなると、これくらいガッツリ人に付かないとセビージャレベルのチームからボールを奪うことはできません。ただ、ここまでガッツリと前がかりにプレッシャーをかけると怖いのは当然裏のスペース

この試合でもミンゲサがエンネシリとの走り合いにあっさり負けたように、バルサの今のCB陣はお世辞にもオープンスペースでの対応が得意とはとても言えません。唯一爆発的なスピードを誇るアラウホだけがハイライン戦術を可能とするキープレーヤーですが、残念ながら負傷でいなくなってしまいました。

そのため、プレスに行きたくてもラインが上がり切らず、プレッシャーをかけたFW陣と中盤以下の間にスペースが出来てしまって難なくビルドアップで搔い潜られるといったシーンは目立ちます。ウムティティは不安定なパフォーマンスに終始し、ミンゲサはラインをコントロールできるだけの余裕はまだありません。

能力的に難しいのは百も承知ですが、ビハインドの時点でDFラインがリスクを負わなければなりません。そこは勇気を持ってラインを押し上げ、全体でボールに奪いに行く仕組みをもう一度作り直す必要があります

「ボールを奪い返す力の欠如」はここ数年のバルサの悩ましい課題の1つです。バルベルデはボールを持っていない時の守備力を底上げすることで何とか凌ぎましたが、もうそれも通用しないはず。CLレベルのチームと戦うためにはプレッシングの強化は不可欠ですね。フレンキ―もこう言っていますし。

まだまだ書き足りないですが、文字数の限界なのでここまでにします笑。バルサの守備を破壊した張本人である化け物CBに関しては後日別途記事を出します。お楽しみに。

 

試合雑感

残念でした!0-1での敗戦ならそれほど悪くなかったですが、終盤に喫した2失点目が痛かったですね。このセビージャを相手に2点ビハインドでゲームを始めなければならないのはカンプノウと言えどもなかなか大変です。ただ、2シーズン前は0-2で1stレグを折り返し、2ndレグで6-1の大勝を収めて突破した経験があります。今回も選手たちの奮起に期待したいところです。

こういう試合になると「○○が悪い」的な論調になってしまいがちですが、普通に力負けだと思います。主力が何人かいなかったのはセビージャも同じですし、チームとしてセビージャの方がこの試合では優れていたってだけだと思います。

スローテンポなボール保持でバルサからポゼッションを奪い、バルサの攻撃はプレスとリトリートの二段構えで封殺。ポゼッションはほぼ互角だったものの、試合を支配したのは間違いなくセビージャの方でした。試合巧者でしたね。完敗です。

2021年に入ってから好調を維持していたバルサですが、まだCLレベルのチームを相手にすると粗は目立ってしまいます。個の能力で圧倒出来ないとなかなか難しいというのが現チームの立ち位置なのかなと思います。そこは一朝一夕にはいきませんね。負傷者も多いですし、アトレティコやPSGを力でねじ伏せるにはまだ時が早すぎる感があります。

ただ、勝敗はまた別です。内容がダメでもいいので、とにかく勝つしかありません。バルサらしからぬ発想ですけどね笑。多分PSGと10回試合したら8回くらいは負けると思いますが、絶対勝てないというほどPSGも安定感のあるチームではないと思うので(ポチェッティーノ政権発足からまだ1か月くらいですし)、選手たちの頑張りに期待したいところ。前向きに応援したいですね。

そのPSG戦前にアラベス戦を迎えるバルサ。ここでも少しローテーションをしたいところですが、そもそも選手が全然いないという苦しい状況。先発で使われるとすればトリンコン、リキ、ラングレあたりですかね。負傷してメンバーを外れたピャニッチブライスワイト、そしてデストの状態も気がかりです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。