さあ、遂にやってまいりました。エル・クラシコ。僕達バルサファンが1年の中で最も熱くなれる試合、レアル・マドリードとの対決です。もともとは10/26に開催予定でしたが、カタルーニャのデモ騒動の影響で開催が延期されており、ミッドウィークの12/18に開催が決定しました。
その甲斐あって(?)、バルサもマドリ―もここまで勝ち点を35積み上げており、同勝ち点での首位決戦となりました。両チームともに問題を抱えているものの、10月に比べると調子は上向きであるので、この時期でのクラシコは両チームにとって好都合だったかもしれません。ちなみにバルサは中3日、マドリ―は中2日での試合になります。
■スタメン
ホームのバルサは試合直前にアクシデント。アンカーでのスタメンが予定されていたブスケツが体調不良でベンチスタートに。代わりにセメドが先発に名を連ね、セルジ・ロベルトが右インテリオールに、ラキティッチがアンカーにスライドします。この直前の変更がどう響くでしょうか。
一方のマドリ―。こちらは怪我人が多いですね。アザール、マルセロ、アセンシオ、バスケス、ハメスが負傷により欠場。人選が注目された左SBと右インテリオールには若いメンディとフェデリコ・バルベルデが名を連ねます。アタッカーは進境著しいロドリゴの起用も想定されましたが、ベイルとイスコの古株に落ち着きました。
クラシコ両チームスタメン。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
バルサはブスケツが体調不良らしく、代わりにセメドがスタメン入り。恐らくセルジ・ロベルトがインテリオール。これがどう影響するか。。
マドリー。ナチョ、モドリッチをベンチに、メンディ、バルベルデの若手がスタメン入り。逆に前線はロドリゴが外れ、ベイル、イスコ。 pic.twitter.com/ctGLaBp3Ye
■前半
バルサ対策を完璧に施したジダン・マドリ―
前節、ソシエダが示したようにバルベルデバルサ対策には以下の2つが有効になってきます。
- 積極的にハイプレスをかける、特にインテリオールにプレッシャーをかけ続ける
- ボールを保持してバルサを自陣にくぎ付けにする。
この2つが出来ればわりと機能不全になってしまうのが今のバルサですね。明らかな格下であれば、選手の質で蹂躙できたりするのですが、ソシエダくらい強力なチームだと圧倒されてしまいました。当然この試合も、それ以前の試合も綿密に分析しているであろうマドリ―がそういう対策をしてくることは予想できることですね。
まずはボール非保持時。
こちらは3:36のシーンを切り取ったものです。ご覧になれば分かる通り、殆どマンツーマンで対応していることが分かります。 守備の立ち位置に関しては状況によって変わりますが、意図としてはとにかくGK以外のフィールドプレーヤーにプレッシャーをかけ続けるのが主ですね。かなりリスキーに思われますが、メッシ&スアレス&グリーズマン対ラモス&ヴァラン&カゼミーロでは後者が圧倒的に制空権握っています。カゼミーロの守備範囲は異次元です笑
マドリーは基本、非保持時にはカゼミーロが「フリーマン」になって落ちてくるバルサの前線の選手を捕まえる、もしくは前に出るCBをカバーする役割。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
だからこそカゼミーロのカバーが効かないサイド裏を突くアルバが有効。
実はこの後、テア・シュテーゲンからスアレスに低い弾道の縦パスが入り、スアレスの落としを受けたメッシがロングフライスルーパスを供給。そこにアルバが走りこんで決定機を作ります。早速ピンチになってるじゃんって感じなんですが、こうやってセットされるとほとんどテア・シュテーゲンからスアレスに当てるパターンしかないんですよね。
これもテア・シュテーゲンのキック精度故なのですが、スアレスはめちゃくちゃポストプレー強い選手でもないので(昔はもっと強かったんですけど最近はフィジカルの衰えですかね)、失敗がかなり多いんですよね。もうこれならいっそのこと空中戦と競り合いにべらぼうに強いCFを取ってくるべきかもしれませんね。
そしてハイプレスに行かない時、マドリ―は4-4-1-1のシステムでコンパクトなブロックを敷きます。これはがっちりバルサの4-3-3と噛み合う形ですね。
面白いのはイスコのタスクで、ボール保持時は左WGが定位置でしたが、非保持時は真ん中に入って中盤を掴まえることに専念します。そこまで目立ったわけではありませんが、かなりこの試合は運動量と貢献度が高かったと思います。イスコが中央に入る分、クロースが中盤の左サイドのスペースを埋めていましたね。
この可変の仕方はバルサの4-3-3→4-4-2の可変とメカニズム自体は似ているのですが、ベンゼマもイスコもかなり守備にエネルギーを割いていたので機能性が全く異なります。昨年のバロンドール受賞者であるモドリッチをベンチに置いて、若いバルベルデを先発起用するあたり、ジダンはかなりインテンシティの部分を意識していたと言えそうですね。
続いて攻撃の局面。まず序盤から目立ったのは右ウイングのベイルの斜めのランニングを活かそうという狙い。後方からのロングフィードでアルバ、ラングレの間のスペースを突いていこうという意図は見受けられました。この動きからそこまでチャンスは生まれませんでしたが。ベイルはわりと深い位置に下がる場面が多かったので、攻撃面で躍動!とまでは行きませんでしたね。
ボール保持時はやはりクロースが左ハーフスペースに落ちるいつものパターン。バルサの4-4-2は基本的にこの低い位置に激しくプレッシャーをかけられないので、ビルドアップは楽でしたね。 キープ力のあるイスコがいる左サイドはボールが収まるので、かなり起点になっていましたね。ベンゼマも流れてきますし。
パターンとしては大外からクロス、または左サイドに密集を作ってバルサの選手を引き付けて中央の選手にパス、フリーでミドルシュートが多かったかなと。前者に関しては左サイドバックのメンディからのクロスが多かったですが、精度を欠いていましたね。後者は左に密集を作って、右インテリのバルベルデがシュート!がメインでした。
ただ、バルサを自陣に押し込めることはできていたものの、バルサの守備陣を「壊す」までには至りませんでした。やはり最後の30メートルのクオリティはとても大事です。そういう意味でアザールやマルセロを欠いたのは誤算だったかもしれません。もっとも、彼らが先発していればこれほどプレスがハマらなかったかもしれませんし、そこのバランスはサッカーの難しいところですね。
マドリーはロナウドやアザールのようなスーパーな選手がいないぶん、チームとして機能していた。だけど最後の決定力に欠ける。逆にバルサはチームとしては穴だらけだけど、最後の30メートルの個で全てを解決して勝利。っていうのが筋書きだったわけだけど、そうなっていない試合で異論は出るよね。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
■バルサの散発的な決定機創出
そんなこんなでほとんど術中に嵌まっていたバルサでしたが、意外と決定機は作ります。作った決定機はほとんどメッシ→アルバラインですが笑。クラシコでは特にその傾向がみられるのですが、わりとマドリ―のカルバハルって落ちる左ウイングに張り付いて後ろのスペースを空けがちなんですよね。
で、このカルバハルの動きに対して、ヴァランがそこをカバーする意識よりも、中央のレーンを守る意識が強いので、結構近年のマドリ―戦では相手の右サイドの裏を突っついてチャンスを量産しています。これわりとずっとマドリ―の課題だと思っているのですが、なかなか修正されません。何か理由があるのかもしれませんね。
ただ、前からアグレッシブにいく分、当然後方にはスペースが空きます。ジダンも恐らくカウンターである程度ピンチを作られることは織り込み済みだったのでしょう。そのリスクは当然考慮に入れて選手たちも試合に臨んでいたでしょうから、それで失点したら仕方ないとアウェイチームだからこその割り切り方はしていたと思います。
逆に言うと、バルサは前半何度かあったチャンスをモノにできなかったのが痛かったです。テア・シュテーゲンの超絶高精度のロングフィードとメッシという絶対的な2つの個は単体でマドリ―の戦術を破壊するだけの武器ではありましたが。ちょっと今シーズン怪我がちなアルバのパフォーマンスが気になるところです。
前半終了。0-0
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
基本的にマドリーペース。人に対して意識の強いマドリーのプレスに苦しみ続けた45分。かなりバルサ対策を準備してきた感が強いなぁ。バルサのビルドアップの局面はほぼマンマークで対応。
ポジティブな点をあげるならこの展開で失点をしなかったこと。
ただ、意外と決定機は作れそうだし、前半終盤は作れた。相手が人ベースで来る分、ジャストのタイミングで人とボールが動けば剥がせる。剥がした先にはバランスの崩れたマドリー守備陣。前半は相手の出方とブスケツの不在に戸惑った部分はあったはず。後半勝負でしょ。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
■後半
静かすぎる後半
さて、後半に入り、挽回したいバルサはラキティッチのポジションを1つ下げてビルドアップの改善を図ります。最近の戦術用語で言うと、「サリーダ・ラボルピアーナ」ですね。
後方を3人にすることで当然、ビルドアップは改善します。マドリ―も流石に後ろ3枚に対して同数でプレスをかけるのは難しいですし、インテンシティも当然前半に比べると落ちてしまいます。ので、前半に比べると、落ち着いてビルドアップができる状況下ではあったものの、上手くテンポアップはできないバルサ。
フレンキ―はかなり対面のバルベルデに手を焼いていましたし、ラキティッチは無難ですが決してブスケツではありません。セルジ・ロベルトは最早サイドの選手ですし、なんだかなあと言った感じです。
また厄介なのが、マドリ―の選手は当たり前ですけどボール持ったらみんな上手いんですよね。なのでなかなか奪い返せません。まあそもそもほぼ8人で守っているうえに相手がトップクラスに上手いわけで、そんな状況で奪い返して攻める作業が上手く行くはずもなく。
結局54分に、セメドを下げてボールを奪えるビダルを中盤に投入します。これに伴い、セルジ・ロベルトが右サイドバックにポジションを下げます。正直、最初からこの形でよかった感はありますね。セメドのパフォーマンスは良くなかったですし。当然、試合前に決まったであろうブスケツのベンチスタートで、急な判断を強いられたのでしょうが・・。
セメドが試合に入れてない感が強いけど、緊急出場だろうからなぁ。ブスケツが無理なら、後半からビダルかアレニャ入れてセルジをサイドバックへ。アレニャが良いけど現実的にはビダルがチョイスされるかな。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
ちなみにビダルは自らがクラシコのスタメンから外れて激怒したという報道が出ていましたね。真偽は分かりませんが。ブスケツが出れないなら、俺がスタメンだろうと思っても決しておかしくはありませんよね。ビダルも去就が不確定ですけどどうなりますかね。ベンチにいてくれたらすごく助かるんですけど、その役割だけじゃ本人は満足しないでしょうし。
後半のシュート数はバルサが6、マドリ―が5と比較的静かな展開となりました。マドリ―は前半12本打っているだけに少しトーンダウンした格好ですかね。バルサの修正もありますし、インテンシティの低下も一因でしょうか。
59分、グリーズマンのパスをメッシがペナルティーエリアで受けるもまさかの空振り。67分にはマドリ―がカウンターで決定機を迎えるもビダルの懸命なディフェンスの甲斐もあって、ベイルのシュートは枠外に。72分にはノープレッシャーのカゼミーロからの浮き玉スルーパスを受けたメンディがクロス。ベイルが合わせてネットを揺らしますがこれはオフサイド。73分、グリーズマンが中央でカルバハルを振り切ると、スアレス→ビダル→メッシ→ビダルと繋いで最後はスアレスがシュートを放つも大きく外れます。
後半のハイライトは本当にこれくらいでした笑。どちらもギアを上げきれなかった格好ですかね。クラシコなのでもっと攻め合う展開になってくれれば良かったのですが。
落第点は
先述の72分のマドリ―の決定機はカゼミーロがフリーになって生まれたものでした。結局今のバルサは相手のアンカーにプレッシャーがほとんどかからないのが残念なところです。前節ソシエダ戦もゲバラに大いに苦しめられました。
ソシエダ戦ではブスケツがゲバラの位置までプレスをかけて後方を突かれまくって2失点しました。この試合やあのリバプール戦ではアンカーのカゼミーロやファビーニョをフリーにして、サンドバックにされました。
結局無理なんですよね。8人で守るっていうのは。どう考えても人が足りなくなるわけですよ。不可能なんです。でもバルベルデも選手たちもそれを理解した上でやっているわけです。この不可能な守備戦術を肯定する手段はただ一つで、メッシとスアレスが毎試合得点とアシストを重ねて相手よりも多く点を取って勝つことだけです。
彼らがそれをできていなければ存分に叩かれる理由になると思いますし、それだけ重い十字架を彼らは背負っていると僕は解釈しています。だから彼ら2人はこのクラシコでは落第です。随所に良いプレーを見せたくらいではダメなんです。毎試合違いを見せて結果を残す必要があるのです。
思い返せば、昨シーズンのコパ・デル・レイ準決勝2ndレグもかなりマドリ―の勢いに押された試合でした。しかし後半スアレスが爆発して終わってみれば3-0で勝っていました。今のバルサってこういうチームなんです。この試合と昨シーズンの試合の違いは、結局点が入ってるか入ってないかの差が大きいんじゃないかなと。
だから僕はこの試合マドリ―に押されることも、劣勢になることも昨シーズンのクラシコを考慮にいれれば織り込み済みだったと思います。むしろ現チームのコンセプトからすると、内容が悪かったことよりも個の力で蹂躙できなかったことに問題があると考えるべきです。もう一度言います。今のバルサはこういうチームです。
メッシもスアレスも毎試合1ゴール1アシストできれば文句はないけど、今日に関しては全く割りにあってないわけで。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
例えばスアレスが「やべえ、俺今日調子悪いわ。その分プレスバック頑張るか!」とはならないからなぁ笑
たまに「スアレスとメッシに守備をさせられる監督を連れてきて欲しい」という意見がちらほら出ますが、個人的には物理的に無理だと思います。スアレスもメッシも来年33歳ですし。あとアタッカーの守備って結構勘違いされやすいのですが、決してCBにプレスをかけておしまいではありません。
大事なのは「プレスバック」。要するに、自分の後方のボールを中盤の選手と強力して奪いにいくことが求められます。例えばマドリ―のクロースがオープンなスペースでボールを持ったとして、単独でボールを奪うのはほぼ不可能に等しいでしょう。だからこそ「囲い込む」のです。囲い込んでスペースとパスコースを制限することで相手のコントロールと認知を狂わせてボールを奪うのです。
これがないから技術の高いチームはバルサ相手に快適にプレーできてしまうのです。バルサの中盤にカンテはいませんから。ビダルはいますが、カンテではないです笑。バルサの守備は基本的に1対1、または数的不利の状況で対応を強いられてしまいます。2人戻ってきませんからね。そうなるのも当然です。
前線から激しくプレッシャーをかけられる→ロングボールに逃げてボールを失う→ボールを奪い返せず自陣に押し込められる→セカンドボールも拾えない→サンドバック状態→奪い返すもカウンターを失敗→再びサンドバック。苦戦する試合は大抵このパターンです。だからこそプレスが強く、ボールを握る力を持つアグレッシブなチームには滅法弱いのです。
それでもメッシとスアレスが結果を残してくれれば問題はないのかもしれません。ただ、これからパフォーマンスは落ちていくでしょう。このクラシコのような試合がこれからも増えていくと思います。さて、そうなった時にバルサはどうするのか。もう予兆は出ています。どうするんでしょう。
※参考記事です
まあ仕方ない。これが今のバルサだと現実を見るしかない。誰々を使えばっていうレベルの問題じゃないから。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年12月18日
とりあえずもう一回試合観よう。もう一回…キツい笑
■雑感
うーん、味気ないクラシコでしたね。期待していたほどの熱狂は皆無でしたね笑。更新が遅れた理由もわかっていただけますよね、気が進まなかったのです笑。あまり期待しすぎないようにはしているものの、クラシコということでどうしても熱い試合を望んでしまいましたね。スコアレスドローはちょっと頭になかったので意外でした。
マドリ―の方が良いサッカーしていたと思います。決定打は欠いたものの、よくバルサを分析して戦略を練り、選手たちはほとんど完璧にそれを実行しました。お互いベストメンバーならどうなっていたんですかねー。アザールいたら変わってましたかね。
まあクラシコの感想に関しては近々noteにあげるかもしれません。余裕があれば笑。あ、そういえば僕noteを始めたので、気が向いたらこちらも是非お読みください。
最後までお読みいただきありがとうございます。