Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】セティエンバルサを読み解く其の壱 18-19バルセロナ対ベティス分析

はい、こんにちは。さてバルセロナの監督が交代してから早3日が経ちます。前回の記事で新監督キケ・セティエンについて期待と不安を書きました。結構不安要素は多いよ!という趣旨で書きましたが、実際はやっぱりワクワクしている自分もいるわけです笑。やっぱり新しい監督来るとスタイルはガラッと変わりますし、どんな風になるんだろうという高揚感はありますね。

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 月曜の早朝のグラナダ戦まで待てばその答えが出るわけですが、いてもたってもいられないHikotaはとりあえずこの期間ブログを更新しまくるわけです笑。10日のスーペルコパから昨日16日まで更新した記事数はなんと5つ。シャビの就任報道に怒り、バルベルデの解任を悲しみ、不安を抱きつつもセティエンにワクワクするというなかなかにジェットコースターな一週間でした笑。

ということで今回も新監督キケ・セティエンについての記事を書いていきたいと思います。まずは改めてキケ・セティエンがどのようなサッカーをするのかを整理していきたいと思います。まずはやはり彼の率いたチームの試合を改めて観るべきであろうということで、昨シーズンのベティスの試合のマッチレビューを書いていきます。

ちょうどバルサの公式アプリで昨シーズンの試合が全て見れるので、今回教材にするのは18-19シーズン第12節バルセロナベティスの試合です。ご存じの通り、この試合はベティスが4-3で勝利するわけですが、如何にしてセティエンベティスは格上のバルサを破るに至ったのか。詳しく見ていきたいと思います。読んでいる皆さんにも何か参考になる要素があれば幸いです。それでは。

 

 

■スタメン

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ホームのバルサはこのシーズンのほぼベストメンバーで試合に挑みます。唯一違ったのが左ウイング。今はゼニトにいるマルコムが先発に抜擢されています。懐かしいですね、半年前までいたのに何かすごく昔の選手かのように感じてしまうのは僕だけでしょうか。時の流れが速いんだか遅いんだかよく分かりませんが笑。

一方のベティスはいつも通りの3バック。一応形は3-4-2-1と記しておきましたが、実際はホアキンがロレンと並んで2トップとも解釈できます。まあそこはわりとケースバイケースかなと思います。状況に応じて前線は上手く配置を変えていますね。ちなみにCBのバルトラと右WBのテージョは元バルサ。ジュニオルは現バルサですね笑。

 

■「高い位置でボールを奪う」ではなく「ボールを奪う」

ひとまずボール保持を志向するベティスなので序盤からハイプレスをかけてバルサのビルドアップを制限していきます。

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ベティスプレス時の守備陣形

このように人ベースで1人1人の選手にマークがつきます。ほぼほぼハーフコートマンツーマンですね。ちなみにホアキンはCB、ロチェルソはブスケツ番としてのタスクが与えられます。当然、マンツーマンということで後方ではバルサの3トップに対して3バックが同数で対応するという相当リスクの高い戦術ですね。リスク上等!なセティエンの志向が窺えますね。

そのぶん、裏を取られる形も何度かありました。序盤は、この試合スタメンに抜擢されたマルコムが左サイドを攻略している姿が印象的でした。まあ後方の広大のスペースを3枚のDFで対応すればこのような形ができてしまうのもやむをえないですよね。そのリスクはセティエン的にはOKなのでしょう。裏を取られるのを恐れてボールを相手に渡すくらいなら、リスクを冒してボールを奪いにいきたい監督です。

ただ、チームとしては「高い位置でボールを奪う」というより「ボールを奪う」ほうに重きを置いているように感じました。これは結構大きな違いで、例えばショートカウンターを志向しているチームだと、高い位置でボールを奪うことは重要な守備の要素の1つですよね。一方、ベティスの目的はあくまで「ボールを保持して試合を支配すること」なんですよ。

なので、「高い位置」でボールを奪うことは別にチームとしてマストではなく、できるだけ早くボールを奪い返すことがあくまで目的なわけです。そのため、一応マンツーマンなんですけど、CBに対してそこまで厳しいプレッシャーをかけることはありませんでした。GKのテア・シュテーゲンにもプレスにほとんど行きませんでした。

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ボールホルダーには敢えて緩く その分パスコースを遮断

その分、ベティスが厳しい制限をかけたのがパスコース。先述したようにすべての選手にマークが付いているので、出しどころがありません。こういう時にバルサがとる選択はほぼスアレスへのロングボール一択。そう、つまりベティスの狙いはこのような陣形と守り方をすることで、バルサにロングボールを蹴らせることでした。

もしかするとピケやテアシュテーゲンの技術を鑑みて前方でボールを奪うのは難しいと判断してこの戦術にしたのかもしれませんが、要するにセティエンが優先したのはまずバルサにボール保持をさせないこと。当たり前ですが、相手がボール保持している時はボール非保持ですからね。超絶当たり前ですねごめんなさい笑。ロングボールを蹴らせてしまえば、怖さは半減します。スアレスは慢性的な膝の痛みでポストプレーで踏ん張れなくなっていますし。

 

ベティスのビルドアップ

さて、次はベティスのボール保持時を見ていきましょうか。バルサからするとマンマークで守備されている分、実はプレスに行くのも単純で、自分のマークについた選手につけばとりあえずプレスにいけば噛み合わせ的には成立します。

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序盤の形

ベティスのビルドアップで特徴的だったのは中央のCBが一列ポジションをあげて中盤化すること。これで中盤中央に数的優位を作ろうという意図ですね。GKをビルドアップに加えれば、DFラインに3枚を並べるよりも、1枚あげたほうが角度がつき、ビルドアップのルートが増えます。これは今シーズンのCLで対戦したインテルも採用していました。このCB上げに関しては是非こちらの記事を参照ください。

www.tacticas-magicas.com

セティエンのサッカーに関して重要なファクターは、相手の「プレッシャーライン」の背後でボールを受けるということ。相手のプレス隊の背後でボールを受けることをとにかく重視している印象です。

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メッシースアレスーマルコムラインの背後で

 バルトラのポジショニングは結構バルサからすると悩ましいもので、スアレスがここまで下がるのか、それとも中盤の選手が自分のマークを捨てて出て行くのか、判断が難しいところではありますよね。セティエンベティスはこのように前線から厳しくプレッシャーをかけられても安易に前線にボールを蹴りだすことを良しとしません。

あくまで優先事項は短いパスで相手のプレッシャーラインの背後の選手にボールを渡し、オープンな状況(前向きでプレッシャーがかかっていない)を創出することです。全くロングボールを蹴らないわけではありませんが、意味のない苦し紛れのロングボールはセティエンが嫌うプレーの1つでしょう。

ロングボールを蹴るのであれば、サイドに流れるキープ力のあるロレン、もしくは高い位置にポジションを取った両WBへの配給が目立ちました。ロングボールでのプレス回避をするのであれば、サイドに優先順位を置いているようでしたね。

無理に繋ごうとしてパスがひっかかり、ショートカウンターを受けるシーンも何度かありました。が、セティエンはこのリスクも当然許容しているはず。「プレスをかけられたらとりあえずロングボールで回避!」のマインドになっている今のバルサの意識を変えてくるのか注目していきたいところですね。

 

■ポジジョンチェンジを嫌うセティエン

システムががっちり噛み合ったこの試合でカギになったのがリオネル・メッシの存在。対面のシドネイから離れ、中盤に落ちることで、中盤で数的優位を確保し、ベティスのハイプレスを分解していきます。

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フリーマンメッシ

対面のシドネイからすると、流石にオールコートマンツーマンではないので、この低い位置までメッシを潰しにいくリスクは負えません。メッシがボールを持って相手の守備を破壊する手段は主に2つ。1つは中央を割って入るドリブル。もう1つは異次元のキック精度を活かした対角線のフライスルーパス。この2つを用いることでベティスの守備を壊していきます。

メッシはバルサにおいてまさに「フリーマン」であり、いつ何時どこにポジションを移すか彼が判断することを許容されています。そのため、この試合でも右サイドでボールを受けるのではなく、右のハーフスペースから左のハーフスペースにかけて幅広く動いてボールを引き出していました。

これ自体は別にそこまで特殊な事例ではないんですが、バルサが特殊なのはメッシが真ん中にポジションを取る際に、そのスペースを埋めようという発想があまりないこと。例えば、メッシが真ん中に入ってくれば、スアレスが右に流れるといった動きがそこまで多くないんですよ。むしろ、スアレスは真ん中に留まり、メッシと近い距離で連携することを好みます。

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こんな感じのバランス

その分、右サイドはSBのセルジ・ロベルトが高い位置へ張り出します。ビダルが右インテリオールで起用される際はビダルが大外のレーンでプレーする機会が多いですね。まあともかくバランスが良いとは言い難いんですが、メッシを最大限に活かすためにこうなってしまうのはある程度仕方のない部分ではあります。

なぜ、ここでバルサのメカニズムをお話ししたかと言うとですね、セティエンは多分この状況をそこまでよくは思わないんじゃないかなと。こちらは過去にfootballistaに掲載されたキケ・セティエンのインタビューの引用です。

「私は君がポジション外で30回ボールを触ることよりも、君のポジションで5回ボールを触ることを選ぶ」

www.footballista.jp

この発言から察するに、セティエンは自由なポジションチェンジによって不用意にチームのバランスが崩れることを好んでいないように思われます。事実、この試合を通しても、ベティスはほとんど基本フォーメーションの形を崩さないまま戦っていました。もちろん、流れのなかで選手の配置が変わることもありますが、基本的には良いポジションを取り続ければ何の問題もないという考えですね。

ここで、クライフ監督時代のエピソードを1つ。現マンチェスター・シティSDのチキ・ベギリスタインはクライフのドリームチームの一員でした。クライフが就任した年のプレシーズンマッチでチキはクライフの指示通りにプレーしたものの、ボールにほとんど触ることなくノーインパクトで試合を終えてしまいます。「自分はなんて酷いプレーをしてしまったんだ」と落ち込むチキを待っていたのは、クライフの称賛の言葉でした。「君がサイドに開いてくれたおかげで中盤の選手たちは自由にプレーすることができた。」と。

これはこのクライフの考えとかなり近しいですよね。これはボール保持時だけの問題ではなく、ネガティブ・トランジションの際にも大きく関わってくる問題です。バルサはボール保持時、上図のようにバランスが崩れることがしばしばあります。この状態で悪い形でボールを失うと簡単に相手に危険なカウンターを許してしまいます。この事実からも攻守において正しいポジションを取ることをセティエン(クライフ)は求めているわけです。

 結局バルサはバランスを崩してベティスの守備を攻略しにかかり、ベティスはチームのバランスを保ったまま、プレーすることを望みました。攻撃的なサッカーと聞くとなんだか自由度が高そうなイメージはありますが、意外と制約が多いのがセティエンのサッカーと考えておいたほうがいいでしょう。

バランスとリズムを崩したバルサは前半2失点。後半は盛り返しますが、結局ベティスに4-3で敗北。ベティスは自分たちのスタイルで、格上相手に完勝を収めました。

 

■セティエン政権で気になる選手たち

ここまでいかがだったでしょうか。簡単にセティエンベティスの特徴をまとめてみました。もちろん、チームが変われば戦術も変わるので、この通りにバルサも戦う!というわけではありませんが、参考にはなると思います。前回記事でも述べた通り、セティエンは自分のスタイルを曲げない監督なので、根っこの部分は変わらないんじゃないかなと。

明日はブログ更新できないので、次の記事はグラナダ戦のマッチレビューとなります。ワクワクですね笑。流石にプレビューを書くまでの時間がなかったので、とりあえずセティエン政権でどうなるんだろう!が気になる選手の名前だけあげて終わりたいなと思います。

・サムエル・ウムティティ

2シーズン前までの絶対的なレギュラー。現在は負傷の影響もあり、ラングレにポジションを譲っていますが、ハイラインのセティエン体制においては、前で潰せるタイプの彼は重宝されるのではと予想しています。というか、右利きになって欲しい。

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 ・リキ・プッチ

早くもこの選手が重用されそうな雰囲気が漂っていますね。プレー次第では中盤の一角でレギュラーになるやもしれません。まあそれが無理でもセティエンはトップチームで頻繁に起用してきそうな感じはあります。まずはグラナダ戦で出場機会があるか。

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アントワーヌ・グリーズマン

一番気になるのがこの男。セティエンもメッシのポジションを固定するようなことはしないはず。となると、幅広く動き回ってボールに絡みたいタイプのグリーズマンにどのようなタスクが与えられるのか。となるとセティエンのサッカーとどう擦り合わせていくのか、楽しみでもあり、心配でもあります。

 

さあ、グラナダ戦、楽しみましょう!

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。