Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】キケ・セティエン解任 この半シーズンに意味はあったのか

こんにちは。あのバイエルン戦の歴史的大敗からもう1週間が経ちました。僕もあの試合のレビューからブログを書いていませんでしたが、色々バルサが動き出しているので、ここからはしっかりと書いていきたいと思います。www.footballhikota.com

まずは8月18日、バルセロナはキケ・セティエンの解任を発表しました。まあこれは既定路線。流石にセティエン続投の道理はありませんでした。後任にはクラブOBでオランダ代表の指揮官だったロナウドクーマンが選ばれました。

クーマンについては後日書くとして、今回は退任するキケ・セティエンについて綴っていきたいと思います。

 

■最悪だった半年間

結果として大失敗だったとしか言えません。

今年1月にエルネスト・バルベルデの後任としてバルセロナの監督に就任したキケ・セティエン監督。大本命のシャビ・エルナンデスに断られたバルサフロントが白羽の矢を立てた形での就任でした。

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戦績はリーガでマドリ―の後塵を拝して2位。コパ・デル・レイではビルバオに屈し、一縷の望みをかけて挑んだCLでは先述した通り、クラブ史上に残る大敗を喫し、13-14シーズン以来の無冠が決定したのです。

結果に関しては、セティエンに情状酌量の余地はあります。途中就任は非常に難しかったと思います。自分のアイデアをチームに落とし込む時間が十分なかったのでしょうし、セティエンは状況に応じて、戦い方を変えるやり方に長けた監督ではありません。リオネル・メッシという巨大な才能を擁した現チームをコントロールするには理想だけでは不十分ですから。

セティエンはリーグ戦の19試合で勝ち点42を挙げました。これはバルベルデが指揮した前半戦19試合より2ポイント多い結果となっています。この数字に正直意味はありませんが、びっくりするくらい結果が悪くなったわけではありません。

しかし、セティエンがチームに明確なアイデアを植え付けられず、チームに混乱をもたらしたのも事実。3-1-4-2、4-3-3、4-3-1-2、4-4-2と色んなシステムを試しては、捨てるの繰り返し。最後まで明確なスタイルを打ち出すことができず、最後は付け焼き刃のバルベルデ流4-4-2でバイエルンに挑み、無残に散りました。

最も悲惨だったのは、選手との関係性。バルサの選手たち、特にベテラン選手たちは明らかにセティエンとそのコーチングスタッフを信頼していませんでした。特に助監督のエデル・サラビアとメッシの溝は深そうでしたね。僕自身がInstagramをやっていないので、確認はできていませんが、セティエン退任にあたってバルサの選手たちは感謝の言葉をSNSでセティエンに送らなかったとの話もありました。

あれだけ批判され、CLで2年連続で惨敗した前任者のバルベルデですが、選手たちとの不和が表面化したことは一度もありませんでした。むしろブスケツやピケは積極的にピッチサイドに寄って行ってバルベルデの指示を仰いでいましたし、2年半通してメッシとバルベルデの関係性は良好だったようです。

今のバルサにとってフロントは絶対悪です。あんなフロントを抱えているからこそ、現場(選手とコーチングスタッフ)は強固に団結している必要があるのです。選手とセティエンサイドが別の方向を向いてしまった時点で今季は詰んでしまったと言えるでしょう。

 

■結局何がしたかったのか

セティエンは1月の就任会見でこのような言葉を残しました。

「何年も前に決めた自分のやり方とここでも心中する」

「私が唯一保証するのは、私のチームは良いプレーをすること」

クライフ信者として大変結構なコメントでしたが、この発言を見たとき、一抹の不安を感じずにはいられませんでした。もし、これが本心だったとすれば、「今」のバルサの状況を正しく認識していたとは思えません。

当ブログでは何度も述べてきましたが、今のバルサは極めて特殊な状況下にあります。現場無視金満補強体質のフロントと、カンテラーノ起用と哲学復活を求めるファン。そして勝利を求める選手と、現場・フロント・ファンがそれぞれ別の方向を向いてしまっているのです。ここに自分のやり方を追求したいセティエンが入ってきたのだから、いよいよカオスです。

セティエンは就任早々、ベティス時代に愛用していた3バックシステムをバルサに持ち込むも、就任2試合目で3部所属のイビサにあっさり弱点を見破られ、バレンシアに完敗したことで、早々と3バックに見切りをつけました。

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初陣グラナダ

あっさりと従来の4-3-3に戻して持ち直したものの、コパ・デル・レイ準々決勝のビルバオ戦で痛恨の敗北を喫してしまいます。続くCLナポリ戦1stレグ、クラシコでは中盤の選手を4人起用し、逃げ腰のまま勝ち点を落としました。

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セティエンになってからのバルサはボール保持率が向上。ロングボールに頼らず、勇気を持って後方からショートパスでビルドアップを試みるシーンが多く見られました。そのため、相手のハイプレス対バルサのビルドアップの攻防は観ていて面白い側面はありました。

しかし、特に中断明けの試合で多かったのは、後方にブロックを築いてスペースを消された時に攻めあぐねてしまう場面。相手のブロックの前で意味もなくパスを回してシュートすら撃てない試合は決して少なくなかったです。要するに「パス回しのためのパス回し」という極めて退屈でスローなポゼッションゲームが展開されたわけです。

セティエンは自分のスタイルを貫けなかったばかりか、攻撃面はリオネル・メッシに全てを依存。組み立てからフィニッシュまで彼におんぶにだっこで、メッシの能力を最大限に発揮することができませんでした。アルゼンチン代表が証明している様に、彼はいれば必ず輝く選手ではありません。タスクが多すぎて、その才能はフィニッシュの局面で発揮し切ることはできませんでした。

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さらに守備面のオーガナイズは不十分で、ポゼッションの向上により失点自体は減ったものの、守備強度自体はかなり低下したと思います。カウンター対策は杜撰であり、ボール非保持時の原則も曖昧なまま、少ない相手の攻撃機会がシュートに結び付いてしまう場面はよく見られました。

そして、最後のCLではバルベルデの劣化版4-4-2リトリートを披露。最終的にはセティエンの色は消え、「これならバルベルデで良かったじゃん!」と言われてしまう始末。セティエンは真っ青な顔でバイエルンに惨殺されるチームを眺めるほかありませんでした。

セティエンも当初は自分のやりたいことを表現する腹積もりだったのだと思います。しかし、徐々に現実とのギャップに苦しみ、結果的にリアリスト的に振舞わなければならなかったのでしょう。そのような状況に直面した時に、セティエンには監督しての引き出しが不足していることが浮き彫りになったのです。

「セティエンの功績はリキやアラウホをチームに引き入れたこと」という論調もありましたが、中断前はほとんど出場機会がなかったことを鑑みると、セティエンの功績というより、コロナウイルスによる過密日程と怪我人発生の副産物と解釈する方が自然なような気もします。リキは結局CLで起用されませんでしたし・・。

セティエンはシーズン中も「内容を評価して欲しい」と訴えてきましたが、正直その内容が説得力のあったものだとは思えません。少なくとも僕は、ボールポゼッションが上がったとしても、得点力が下がり、チームが同じ方向を向かないまま披露されたサッカーを「面白い」と思うことはできませんでした。

 

■全ての責任は監督ではなく

結局のところ、セティエンが就任したメリットはそれほどなかったように僕は思います。バルベルデ時代も問題は山ほどありましたし、バルベルデのままでタイトルが獲れたかどうかはわかりません。しかし、少なくともセティエンが就任してから、バルベルデ時代の良かった部分が失われてしまったのは事実。チームに一本筋は通らず、「メッシを活かす」という命題は果たせぬままでした。

唯一僕がポジティブになれたのはこれがシャビじゃなくて、セティエンで良かったという点。フロントはバルベルデの後任としてシャビの就任を考えていましたから、もしシャビが引き受けていたら、と思うとぞっとします。本当に残酷な言い方ですけど、セティエンでまだよかったなと。

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本当の意味で責任を問われるべきは、バルサのフロントでしょう。正直、今のバルサの監督は誰がやっても難しい仕事です。最終的にセティエンも4-4-2ブロックを敷いてしまったあたり、監督が人事権を持たない限り、誰がやっても同じようなチーム作りに落ち着いてしまうのかもしれません。

だからこそ、シーズン中のバルベルデ→セティエン(シャビ)への監督交代は不可解でしかありません。確かにバルベルデ政権は限界が見えていた部分もありましたが、セティエンへの監督変更はさらにチームが崩壊の一途を辿るような極めて悪い選択だったのです。セティエンのような監督は途中就任に最も向いていない部類でしょうから。

最近の報道でメッシがバルサ退団を検討しているとの情報が入ってきました。今の段階で実現の可能性は低いと思いますが、メッシがフロントに対して不信感を募らせているのは間違いないでしょう。このような監督人事を行っているので、それも無理はありません。

真っ先に辞めるべきなのはセティエンではなく、バルトメウ会長なんですけどね。選んだのはフロントですし。監督や選手に責任を押し付け、保身を図るバルトメウの姿勢にはもううんざりです。来年の3月に会長選が行われるようなので、そこまでとりあえず我慢です。

今のバルサにとってセティエンのような監督は残念ながらお呼びではありませんでした。今のバルサにセティエン監督の頭の中身を具現化するだけの余裕はありません。能力的にもパーソナリティ的にも不適当だったのだと思います。バルサのようなクラブを率いる経験もありませんでしたからね。

散々ボロクソに書いてきてしまいましたが、それでもこの難しい時期のバルサを率いてくれたことについては感謝しかありません。またリーガのどこかのクラブで指揮を振るう姿が見たいですね。ありがとうございました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。