こんにちは。今節は難所アルフォンソ・ペレスに乗り込み、ヘタフェとのアウェイゲームに臨むバルセロナ。今シーズンまだアウェイで勝利がないという異常事態を今節こそ抜け出せるでしょうか。
ヘタフェは現在勝ち点7の11位。なかなか勝ち切れない試合が続き、勝ち点3は下位に沈むマジョルカ相手に挙げた白星のみ。今シーズンはELとの兼任で確実に日程は苦しくなってくるだけに、早めに勝ち点を積み上げておきたいところでしょう。
■スタメン
ホームのヘタフェはいつも通りの4-4-2。37歳のホルヘ・モリ―ナはベンチスタートとなり、アンヘルとハイメ・マタが前線でコンビを組みます。両サイドハーフのハソン、ククレジャ、左サイドバックのニョムが新加入選手です。バルセロナの下部組織出身のククレジャは今シーズン既に2アシストを決めています。
アウェイのバルセロナは依然として負傷者が多い状況。ユムティティ、アルバに加えて前節のビジャレアル戦でメッシが足に違和感を抱え欠場。アンス・ファティ、さらには試合直前でデンベレの負傷が発表され、招集外に。前線の選手層が薄くなってしまっていますね。
ヘタフェ戦、スタメン
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
メッシ、デンベレ、アンスが招集外だからまあスアレススタメンは仕方なし。ここで結果を残せるか。
右サイドバックはペレスとの相性を考えてのセルジなのかな。
今シーズンアウェイ初勝利が欲しい。 https://t.co/5llJmNLpPv
またこの試合はセメドではなくセルジ・ロベルトが右サイドバックで起用されています。恐らく右ウイングにサイドに張るタイプのペレスが起用されていることでセルジ・ロベルトがチョイスされたのではないでしょうか。
■前半
ビルドアップの「8対6」バルサのビルドアップが上手く運ばない理由は?
大体バルサのほとんどの試合で言えることですが、ボールを保持するバルサと守るヘタフェという構図はこの試合でも変わりません。しかし、ヘタフェは単純に後ろに堅固なブロックを築き上げるだけではなく、極めて能動的にプレスをかけてきました。
こちらは前半3分のシーン。かなりヘタフェが前がかりになっているのがわかりますね。重要なブスケツ番はボランチのどちらかが務めます。ここまでやるとバルサのビルドアップにはかなり制限がかかりますよね。
ところで、この図ではピッチを2色で分けてみました。テア・シュテーゲン側の黄色で塗ったピッチではバルサの選手がGK含めて8人、ヘタフェの選手が6人いますよね。現代サッカーにおいて、このビルドアップの局面での「8対6」は極めてオーソドックスな形になっています。なぜプレス要員が6人かというと、図にも書き込みましたが、守備側は基本的に相手のアタッカーに対して1枚余らせるのが原則だからです。バルサのアタッカーは3人、ということでヘタフェは4枚を後方待機させ6人でバルサの8人でのビルドアップを阻害しにいきます。
つまりビルドアップの局面でボール保持側が意識するのは8人-6人=2人分発生するフリの選手を上手く活用しながら前進することであり、逆に非保持側はこのフリーマンをどこに設定するかが肝要になってきます。図で分かる通り、ヘタフェはGKのテアシュテーゲンとセルジ・ロベルトorジュニオルをフリーマンとし、SBに入った瞬間猛然とプレスをかけるというのを意識していたと思います。特にジュニオルは穴認定されていた可能性は大いにあると思います。
ジュニオルはうーんって感じ。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
大前提としてミスとファウルが多すぎて何とも。
アルバがいない今がチャンスなんだけど。
これだとセメドの方がまだマシって判断される。てかアップしてたし…。
ちなみにこのシーンではセルジ・ロベルトが得意の運ぶドリブルで猛然とプレスにくるククレジャを剥がしにかかりますが、ククレジャはファウルをして止めます。このようにヘタフェは危ない場面、自分たちに不利な局面になりそうな場合は容赦なくファウルで流れを切ってしまいます。こういうドリブルで剥がされると一気に数的不利に陥ってしまいますからね。
ヘタフェはファウル数があまりに多いので、嫌われがちなチームではありますよ。しかし、バルサのようなチームにとってファウルでブツブツ流れが切られる状況は望ましいものではありません。ヘタフェのようなやり方は褒められるものではありませんが、一応ルールの範囲内で行われているものです(それにしても主審のヒル・マンサーノのジャッジはかなり曖昧なものだったと思いますが・・)。
さらに、芝の長さとヘタフェのスライドの早さも相まって、ヘタフェの守備陣形をなかなか崩すには至りません。ヘタフェはプレスに行くのが難しいと判断すれば、すぐに4-4-2のブロックを築いてミドルプレスに潔く切り替えていました。この辺りは本当にボルダラス監督のサッカーが浸透しているなと思います。
前半の序盤から何度かあったのが、左CBのラングレから右サイドのタッチライン際に張るペレスへのサイドチェンジ。コンパクトに守るチームには有効そうですが、これも素早いスライドで簡単に対応されてしまっていましたね。
ラングレからペレスへのサイドチェンジが序盤から何本かあったようにプレス回避は選手たちも意識していると思うが、いかんせん今日はサイドバックのパフォーマンスが良くない。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
サイドバックを上手く使えないから中盤は常にプレッシャーを受けている。
「圧縮」するヘタフェの戦術
サッカーをやったことのある人であれば、「攻撃の時は広く攻め、守備の時は狭く守る」という基本的な原則はなんとなく体に染みついていると思います。ちなみに僕は小学生の頃、コーチから「攻めるときはパー、守るときはグー」になるように指示を受けていた記憶があります笑。まあこれは至極真っ当な話でして、ボール持つ選手はは広いスペースのほうがプレーしやすいですし、狭いスペースを守る方が守備側は簡単ですよね。
しかし、ヘタフェの攻撃戦術はこのような原則にあてはまるものではありませんでした。というのも片側のサイドに選手を集め、片側のサイドのみを使って攻略していこうという意図が窺えました。
敢えて同サイドに人数を割いて、自チームの選手と相手チームの選手を密集させる戦術ですね。こういうのを最近の戦術用語で「オーバーロード」って呼んだりします。え、これだとプレーしづらくない?って僕は最初思ったりしたんですが、この戦術には明確な意図が主に2つあります。
- オーバーロードをしていない方のサイドがフリーになりやすい
- ボールを奪われても密集しているので即時奪回がしやすい
1は「アイソレーション」という用語があるんですが、片側のサイドに選手の密集を作るとその逆側はかなり手薄になりますよね。例えば、よくあるのが右サイドに「オーバーロード」を作って相手を右サイドに集結させ、一気に左へサイドチェンジ!スピードのあるアタッカーにスペースを提供する。というイメージですです。
ヘタフェが重視しているのは2のほうだなという印象を受けました。敢えて密集を作ることでプレーのしづらさはありますが、その分奪われた後、プレスに行きやすくなります。
僕のコーチの言葉を借りるのであれば、「パーからグーに戻るのは大変だけど、グーからグーだと楽」という感じです笑。つまりトランジションの部分が相当速くなります。その代償として、その密集を搔い潜られると大ピンチ!にはなるんですが。日本だとJ2のFC町田ゼルビアがこういう戦術を使っていますね。
前半20分のアンヘルの決定機も、ヘタフェはバルサからボールを奪うとそのままの陣形でカウンターを繰り出し、シュートまで持っていきました。このトランジションの部分はかなり成熟していますね。止めてくれたテア・シュテーゲン様様です。
ハーフスペースに人がいない問題
バルサの前半のもう1つの大きな問題点として挙げられるのは、なかなかハーフスペースに入ってくる選手がいなかったことでしょうか。特にヘタフェのCB‐SB‐SH‐CHの4人の間になかなか人とボールが入らないなという印象を受けました。
昨シーズンであれば、このスペースはウイングが担当していました。メッシ・デンベレ・コウチーニョがこの狭いスペースでパスを受け、ドリブルやスルーパス、シュートを繰り出すのが昨シーズンの主要な攻撃パターンでした。
しかし、今シーズンは昨シーズンとメカニズムが異なるのは既に何度かこのブログでお伝えしている通り。この試合で言えば、右ウイングのペレスはサイドのレーンで輝く選手であり、左ウイングのグリーズマンはサイドやハーフスペースのレーンに留まらず、幅広く動きたい選手です。
ならばインテリオールがここのスペースまで進出したいところですが、前半の2人(特にフレンキ―)はあまり高い位置をとることができませんでした。ヘタフェのプレスに苦しんだことで位置取りが下がってしまったのでしょうが・・。ということでペレスやジュニオルがサイドのレーンでボールを持っても孤立してしまい、ロストをしてしまうというシーンが目立っていました。
これは相当厳しいな・・と思い始めた前半40分、突如としてバルサが試合を動かします。裏へ飛び出したアンヘルに浮き球のスルーパスが出ますが、これを鋭い読みでテア・シュテーゲンがカットすると逆足である左足でヘタフェ守備陣の裏にスルーパスを落とすと、これにスアレスが走りこみループシュート。思いがけなくバルサが先手を取ります。
ヘタフェのGKダビド・ソリアの反応が遅れた印象もあるのですが、テア・シュテーゲンのこのパスは傑出していましたね。丁度日本代表戦を見たばかりだったので、ラグビーを想起させられました。いずれテアの考察記事は出そうと思います。多分べた褒めだけの記事になりますが笑。
また苦境のスアレスにゴールが出たのは大きかったですね。
前半はこのまま1-0で終了。苦しみながらもバルサが1点をリードして試合を折り返します。
■後半
選手を代えたボルダラス、立ち位置を変えたバルベルデ
後半、バルサの交代はなし。セメドがアップをしていたのでジュニオルとの交代も考えられましたが、前半終盤の1点で踏みとどまりましたかね。逆にヘタフェは左サイドバックのニョムに代わってアタッカーのケネディが投入されます。これに伴い、ククレジャが左サイドバックに下がります。
まあもうこれは点を取りに行く采配でしょうね。ケネディは新加入選手なのでまだ戦術理解の部分でボルダラスを満足させられていないのでしょうが、ボールを持った時の迫力は凄まじい選手です。後半開始1分でラングレを振り切りかけてイエローカードを誘発したプレーに代表されるように。
しかし、より効果的に修正を施したのは選手交代をしていないバルベルデのほうかもしれません。 バルベルデが変えたのはインテリオールの立ち位置でした。明らかに前半と比べるとポジションが上がっており、頻繁に崩しの局面に顔を出すようになります。
このように高い位置にポジションを取ることで相手のボランチをDFラインまで押し込むことに成功しています。このように立ち位置とフリーランニングで相手の組織を壊すことは十分に可能なのです。
そしてこれらの変更を伏線として生まれたのが後半4分の追加点でした。
右サイドで細かいパス回しで相手を崩すとセルジ・ロベルトが中央のペレスにパス。フリーで受けることが出来たペレスは強烈なミドルシュート。これはソリアが防ぎますが、こぼれ球を走りこんだジュニオルが押し込んで嬉しいバルサ初ゴールを奪います。結果論ですが、代えなくてよかったですね笑。
ここでもカギになったのはインテリオールの動きです。ペレスにボールが渡る前にアルトゥールがチャンネル裏へとランニングをかけ、またしてもボランチを引き付けています。この動きで中央が手薄になり、ペレスにはシュートを打つ十分なスペースが与えられました。
図を見てもらえればわかるかと思いますが、この得点時かなり各選手がポジションチェンジしています。グリーズマンは右、アルトゥールとフレンキーも入れ替わっています。流動性のある崩しは今シーズンのバルサで見ていて面白い部分の1つですかね。
フレンキ―が前線にポジション取りすることで相手のDFラインは「ピン留め」され、自由にグリーズマンが動き回ることができます。特にフレンキ―がチャンネルに入り、グリーズマンが中盤に落ちるというのはここ数試合のバルサの崩しの1つのパターンになりつつあります。
また疑問だったのは、ケネディの守備対応。セルジ・ロベルトにプレッシャーをかけたのは彼でしたが、内側ではなく外側をケアし、あえなくセルジ・ロベルトの内側への侵入を許してしまいました。やはり守備面では難ありか。ボルダラスからするとリスクを取って勝ちに行ったと思いますが、ここでは裏目に出てしまったかもしれませんね。
ビルドアップの局面でもバルサには変化があり、フレンキ―がかなりサイドに流れてスペースメイクを意識するようになりました。
もう一回見直さないとはっきりとは分からないけど、後半フレンキーの立ち位置を変えたのが奏功したと思う。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
フレンキーがビルドアップ時サイドに寄ることで明確な逃げ道ができる。
本人は不本意なのかもしれないけど、柔軟性はピカイチ。
ラングレの退場、今シーズンの初の・・
さてここからは簡易的に試合の流れのみ。点が欲しいヘタフェはホルヘ・モリ―ナ、ポルティージョと攻撃的なカードを切ります。2点のリードを得たバルサはその後ペースを落とし、セルジ・ロベルトを下げてセメド、ブスケツを下げてラキティッチを投入し、試合の安定を図ります。
しかし、ここでアクシデント。後半37分、ラングレが2枚目の警告を受け、退場処分になってしまいます。ラングレは次節セビージャ戦を欠場することに。これは痛いですね。バルベルデは慌ててグリーズマンを下げて今シーズン初出場となるトディボを投入します。まあ見方によってはチャンスですね、トディボ。
ラングレの退場は勿体無かったなとは思いますが、ここで休ませられる +トディボを試せるのはプラスです。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
監督にとってCBのペアを変えるのは結構リスキーなので、こういうアクシデントの時こそ。
数的不利になってしましたが、このままヘタフェの攻撃をシャットアウト。今シーズン初のアウェイ戦勝利。そして今シーズン初のクリーンシート達成となりました笑。
試合終了。2-0
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
苦しんでいる2人のゴールで今シーズンアウェイ初勝利。そして今シーズン初のクリーンシート。
とりあえず勝てて良かった。内容は褒められたものじゃないけど、後半ある程度改善できたのはプラス。
あと密かに嬉しいのは、
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
今シーズンアウェイ戦で初めてシュート数で相手を上回りました笑
実はこれ気にしてたんですよね。
■雑感
とりあえずアウェイで勝つことが必要だったのでこの結果はプラスに捉えるべきでしょう。相変わらずチームがかみ合っていない感はあるのですが、これも産みの苦しみだと思えば。メッシがいなくて、選手が変わって。苦戦するのは当たり前なのかもしれません。特にアウェイ戦は昨シーズンもメッシの力で何とかなっていた部分は大きいので。
今から当たり前のこと言いますけど、
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月28日
昨シーズンだったらこういう厳しいアウェイ戦でどんなに内容が悪くても結果残す絶対神がいたわけじゃないですか。
今のスアレスに理不尽さはないし、グリジとペレスは機能したチームで輝くタイプなので。
まあそういう意味で今日はテアが神でしたね。
多分グリーズマンはCFで使うのがいいんだろうなというのは思います。グリースマンが動き回ってその空いたスペースにウイング、インテリオールの選手たちが入っていくという戦術を軸にするのがメッシ不在のこの状況では最も上手くいくソリューションなのかもしれません。特にジュニオルにとって左ウイングの選手が前方にいないというのはプレーしづらさはあるのだと思います。
しかし、それを軸にしてしまった場合、メッシが戻ってきたときにどうするんだろうというのは当然ありますよね。スアレスとの兼ね合いもありますし、色々と選択するのが難しい部分はやはりあります。
さて、次はミッドウィークにCLインテル戦、週末にセビージャ戦という1つの山を迎えます。負傷者が多く、まだコンセプトが定まらない状況ではありますが、ここはなんとか勝ち点6で切り抜けたいところです。
最後までお読みいただきありがとうございます。