こんにちは。今回はミッドウィークリーガです。第6節はバルサがホームカンプ・ノウに7位ビジャレアルを迎えます。昨シーズンは下位に沈んでしまったビジャレアルですが、戦力で言えばCL出場権を争ってもおかしくないほどです。昨シーズンは4-4の激闘を演じましたし。今回も好ゲームを期待したいところです。
バルサは前節昇格組のグラナダに手痛い敗北を喫してしまいましたので、ホームに戻ってきての仕切り直しが求められます。
■スタメン
連敗を避けたいバルセロナはメッシを今シーズン初のスタメンで起用します。フレンキ―はベンチスタートとなり、アルトゥールがスタメン復帰。アルバが離脱中の左サイドバックには前節散々だったジュニオルが引き続き起用されます。ラキティッチは招集外となりました。
ビジャレアル戦スタメン。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月24日
前節から3人入れ替え。メッシが待望の今シーズン初先発。出場が続いていたフレンキーは一旦ここでお休み。
さて、このメンバーでどこまでやれるのか楽しみにしましょう。何だかんだメッシスタメンは期待してしまいます笑 https://t.co/170v4E9F4B
一方のビジャレアルは前節バジャドリード戦から2人のメンバー変更。バッカ、モイ・ゴメスがベンチに置かれ、チュクエーゼ、オンティヴェロスが両サイドハーフに入ります。チュクエーゼには昨シーズンあまりいい思い出がありませんね笑。ちなみに右サイドバックのルベン・ペーニャは個人的にとても好きな選手です。
■前半
昨シーズンとは異なる点
バルセロナはこの試合で初めてスタメンでMSG(メッシ、スアレス、グリーズマン)を同時起用してきました。ドルトムント戦とグラナダ戦では、後半からそろい踏みという形だったので、この3人の真価を測る絶好の機会となりました。
バルサの基本システムは4-1-2-3。しかし、中央でのプレーをより好むメッシが右サイドに配置されていることで、このシステムは可変を余儀なくされます。昨シーズンはこのような形になっていました。
サイドバックが高い位置を取り、WGがハーフスペースに位置しています。インテリオールは低い位置をカバーし、サポートをします。全てはメッシを活かすことを目的とした布陣になっていました。
しかし、この試合においてはこれらの配置とは異なるようになっていました。特にセルジ・ロベルト、アルトゥールの両インテリオールのタスクは昨シーズンとかなり異なっていましたね。各選手のボール保持時のタスクを簡単にまとめたのがこちら(図の見やすさの観点から相手のコマは省いています)。
CBとGKはさほどタスクが変わらないので、省略しました。まずタスクの前に配置が左右で非対称になっていることが見て取れますね。右の幅はインテリオールのセルジ・ロベルト、左の幅は左のウイングのグリーズマンが取るようになっています。メッシはほとんどの時間、中央のスペースで、スアレスの近くでプレーしていました。もちろん立ち位置は流れによって変化しますが。
かなり印象に残ったのはインテリオールの積極性です。セルジ・ロベルトもアルトゥールもかなり前線に飛び出していくアクティブさを見せました。メッシ・スアレス同時起用時もこのようなプレーが出てくるということは今シーズンバルベルデの方針としてインテリオールの崩しへの介入はテーマの1つなのかもしれません。その代わり、SBは比較的控えめのポジション取りになっていました。
昨シーズンの4-4-2再び。
— Hikota (@BarcaHikota) September 24, 2019
だが、変化も。メッシはほぼトップ下のような位置。グリーズマンはコウチーニョよりもワイドに。SBの上がりはある程度制限され、インテリオールは積極的に飛び出す。
ただ、4-4ブロックの強度は当然落ちる。
この変化がコンセプトか選手の色かはもう少し見る必要がある。
またセルジ・ロベルトがなぜ今シーズン積極的にインテリオールで起用されているのか、その理由もこの試合で垣間見ることができましたね。
セルジロベルトがこのポジションで使われる理由は、メッシとセメドにある。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月24日
ほとんどの時間中央に留まるメッシと幅が取れないセメド。
彼の役割はほぼ「偽インテリオール」と呼んでいいと思う。
さて、試合に触れていきましょうか。前半5分、メッシのCKからグリーズマンが綺麗にニアで合わせてバルセロナが幸先よく先制点を奪いました。グリーズマンのヘディングは見事でしたが、このCKを奪ったのは右SBのセメドの縦突破でした。
ボール保持時、特にビルドアップでの課題が問題視されているセメドですが、このような縦突破は大きな魅力ではありますよね。この試合でも何度かこのような突破は見せていました。恐らくセルジ・ロベルトが前にいるとやり易さはあるのだと思います。メッシだと距離が遠くて難しく、ペレスが右WGにいると自分の前のスペースが埋められてしまい、良さが出ない。内側と外側をいい塩梅で行き来するセルジ・ロベルトやデンベレがやり易いという部分はあるのでしょうか。
そして前半15分、アルトゥールがペナルティーエリア手前から豪快なミドルシュートを叩き込み、追加点を奪います。アルトゥールはオサスナ戦に続き、今シーズン2ゴール目。この試合に限らず、今シーズンのアルトゥールはかなり崩しにも関わる姿勢が見られますね。今後もっと決定的なプレーが出てくれば間違いなく、世界最高峰のMFになれるはずです。
アルトゥールは明らかに変わった。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月24日
昨シーズンのようにボールを欲しがって下がりすぎることもなく、バルサのインテリオールっぽくなりつつある。前線に飛び出していく姿は昨シーズンはほとんどお目にかかれなかった。
ミドルシュートはお見事。クラックへの道。
また、やはり見逃せないのはグリーズマンのネガティブ・トランジションにおける貢献。このゴールの直前、ボールロストをするや否や、CB及びSBに激しくプレッシャーをかけて高い位置でのスローインを勝ち取ったのは勿論グリーズマンでした。本当に頭が下がりますね。前線の選手があれだけプレスをかけてくれると後ろの選手たちが楽になります。
昨シーズンと変わらなかった点
ここまでメッシシステムのボール保持時の形が昨シーズンと異なっていると書いてきましたが、ではボール非保持時はどうだったのでしょうか。
結論から言うと非保持時は昨シーズンと変わらず、4-4-2の陣形を取っていましたね。まあ相も変わらずメッシとスアレスが大して下がってこないので当然なのですが。実際は4-4の8人で守っているようなものなので、2点のリードを奪ってペースダウンしたのか、前半20分過ぎ辺りから、かなりビジャレアルに押し込まれてしまいました。
ビジャレアルもかなりボールを持てるチームなので、サイドバックを高い位置に押し上げて主導権を握ろうという意図は見受けられました。しかし、面白いもので、このような状況になるとバルサの4-4の選手たちは割り切って撤退するので意外と崩れません。原則として内側を締めるという共通意識が徹底している証拠ですね。ビジャレアルもなかなか危険なゾーンにボールを運ぶことができません。
ただボールポゼッションはかなり相手に譲ってしまい、前半は51%対49%とほぼ互角のい戦いになってしまいました。押し込まれる→ボールを奪う位置が低くなる→カウンターが失敗する→ボールを奪い返されるの悪循環ですね。このまま2-0で終れば御の字かと思ってみていましたが、前半終了間際にカソルラの目の覚めるようなミドルシュートを叩き込まれ、点差を詰められてしまいます。
このゴールが決まったのは43分26秒のこと。この得点までにバルサは約1分間、ビジャレアルにボールを回され続けました。これではなかなか厳しいものがありますよね。当然奪いに行きたくても前の2人が守備をしないので、プレスに行くのはほぼ不可能です。罠を張って相手がミスをするのを待つしかない。そんな状況です。
それにしてもカソルラの一連のプレー、ミドルシュートもさることながらポジショニング、動きが素晴らしいと感じました。
図のようにスペースに対する感覚が本当に抜群ですね。最初から使いたいスペースに入っておくのではなく、自分にパスが出てくるであろうタイミングまでそのスペースを空けておくこの感覚。シャビが昔何かのインタビューで言ってました。「カソルラには天性の才能がある」と。バルサで見たかった選手ですね。
前半はこのまま2-1で終了。なんとなく消化不良のまま後半を迎えます。
■後半
進撃のデンベレ
後半開始からバルサは前半半ばで足を痛めたメッシに代えてデンベレを投入します。デンベレは1節ビルバオ戦以来の出場になります。
デンベレが右ウイングに入ったことで、より4-3-3らしい布陣になりました。メッシの状態は気になるところですが、バルサはこの交代で徐々に息を吹き返していきます。
火つけ役になったのは途中出場のデンベレ。後半開始早々、対面のキンティージャを持ち前のスピードを駆使して縦にぶっちぎるとペナルティーエリア内に鋭いクロス。グリーズマンのボレーがヒットせず、残念ながら得点とはなりませんでしたが、非常にいい突破でした。
ということでもっとシンプルにかつダイレクトにゴールに向かうプレーを心がけたほうが怖さは増すのではないでしょうか。サイドのレーンに置くことでそのスピードを存分に活かしてもらうのがベターでしょう。僕が2年間ずっと気になっているのは、デンベレってスピードのわりに意外と縦突破しないんですよね。もっと縦に仕掛けた方が、相手のSBは脅威を感じるのではないでしょうか。遠慮しているんでしょうかね。
シンプルにサイドのレーンでデンベレが縦に、そして内側に仕掛けられる選手に変われば、チームの幅は劇的に広がります。サイドのレーンで脅威になれる選手がいれば、それだけ中央が空いてきます。そうすればメッシやグリースマンは勿論のこと、最近右インテリオールで起用され始めたセルジ・ロベルトやアレニャの活躍の幅も広がるでしょう。
こちらは先日書いたデンベレの記事からの引用です。僕はこのように考えていたため、この突破を見たときに思わず「そう!そう!」と叫んでしまいました笑。このように縦突破があるウインガーは相手SBにとって脅威になるはずです。1度縦を見せておけば、確実に相手は警戒して距離を取ってくれますからその後のプレーもしやすくなります。
この後も素晴らしいフェイントからスアレスにグラウンダーのクロスを供給したデンベレ。それからはトーンダウンしてしまったのも彼ららしさですが、これが継続的にやれると本当に怖いアタッカーになるんですがね。変わることはできるでしょうか。
あとは明らかに守備をしないアタッカーが1人になったことでビジャレアルのビルドアップに制限がかかるようになりました。デンベレは懸命にプレスをかけるタイプでは決してありませんが、一応後ろには戻ってくるので数的不利にはなりにくいですよね。やはりスアレスとメッシどちらか1人をチョイスしなければならないのかもしれません。
よく分からなかったカジェハ采配
得点が欲しいビジャレアルは後半12分左サイドハーフのオンティヴェロスを下げて、トコ・エカンビを投入します。この選手も昨シーズン嫌な思い出のある選手ですね笑。カソルラが左サイドハーフに回り、エカンビとモレノがツートップを組みます。シンプルに前線の枚数を増やしてバルサ守備陣にプレッシャーをかけようという意図ですかね。
しかし、この11分後、カジェハ監督は自らの采配を覆してしまいます。モレノ→モイ・ゴメスの交代。これにより再びカソルラがトップ下、モイ・ゴメスが左サイドハーフに入ります。32分にはカソルラを下げてCFのバッカを投入。再び4-4-2に戻します。
ビジャレアルの試合は毎回観ているわけではないので、はっきりしたことは言えませんが、この一連の交代の意図はどこにあったのでしょうか。ビジャレアルのやりたいこともあるのでしょうが、正直エカンビやチュクエーゼのフィジカル的な能力を活かすようなサッカーに切り替えてくれたほうがバルサにとっては嫌だったなと思います。
夢を見させるアンス
ビジャレアルの迷走(?)にも助けられ、後半は積極的にボール保持することができていたバルサですが、今度はなかなかフィニッシュに持ち込むことができません。やはりルイス・スアレスの不調は痛く、決定的なシーンは先述したデンベレのクロス2本のみ。フレンキ―を投入するものの、そこまで状況は変わりません。
痺れを切らしたバルベルデは後半33分、遂にスアレスを下げ、アンス・ファティを投入します。これはかなり意外な決断でした。というのもこのような緊迫したスコアと展開でバルベルデは今までスアレスを下げてこなかったからです。今回それでもスアレスに代えて16歳の選手を投入するということはバルベルデも今のスアレスの状態は相当悪いと判断しているということでしょう。
さて、皆さんお待ちかね。ここからがアンス劇場です笑。
まずは34分、ジュニオルからボールを受けると中央に向かってドリブル開始。右に流れたグリーズマンにボールを預けると自らはゴール前へ。グリースマンからのリターンを受けるとシュート!これは惜しくもオフサイドにかかりましたが、良い連携からのフィニッシュでした。
さらに35分、今度は大外のスペースでボールを受けるとまたしてもドリブルを開始。2人を十分に引き付けるとチャンネルを走ったジュニオルにクロス。これはアルビオルに阻まれますが、このこぼれを拾ったグリーズマンがアンスにヒールパス。アンスは3人をキックフェイントでいなすと左足でシュート。これは枠の右に外れます。
意外と大きかったのはジュニオルのサポート。前節に比べると格段にポジションの取り方は改善しました。守備の部分は改善の余地がまだまだありますが、アルバと違う特徴をもっているだけにいいオプションになれればいいですね。
アンス劇場はまだ終わりせん。37分にはエリア内でルベン・ペーニャ相手に仕掛けます。倒されてPKをアピールしますが、これはVAR判定の末にノーファウル。しかし、エリア内で仕掛けられるアタッカーはやはりアタッカーとして脅威。先ほども述べましたが、ウイングは「縦に仕掛けてナンボ」です。
44分にはアルトゥールの動きを上手く利用して中央へドリブルを仕掛け、ペナルティーエリア手前でFKを獲得。
ロスタイムにもフレンキ―とワンツーで左サイドを突破するなど 、出場した約15分間でバルサの攻撃を牽引してくれました。これだけ短時間で見せ場を作れる選手はそうはいません。勿論、終盤で前がかりになっており、疲労の溜まったビジャレアル相手ということは加味しなければなりませんが、裏を返すとこの試合のように終盤の出場であれば十分な切り札になり得るということです。
最近の活躍でスタメン起用を望む声もあるようですが、ドルトムント戦を見る限り、まだまだこれからの選手です。バルベルデからすると「言われなくても分かっている!」という感じでしょうが、これからも慎重な起用をお願いしたいと思います。
このまま試合は2-1で終了。バルサは何とか連敗を避けた形になりました。
試合終了。2-1勝利。
— Hikota (@BarcaHikota) 2019年9月24日
カンプ・ノウでの全勝を維持。殊勲は間違いなくアルトゥール。素晴らしいパフォーマンスを見せる。
危ない場面も多々あったが、失点はカソルラのゴラッソのみに留める。
■雑感
とりあえず結果が出て良かったです。やはりメッシ・スアレスの4-4-2はもう厳しいものがあるなと痛感させられた前半45分間でしたね。今後、バルベルデはどうするのでしょうか。スアレスを外してメッシの偽9番、またはグリーズマンCFを採用するのでしょうか。ピッチ上の問題はそれで解決するのかもしれませんが・・。
とにかく中盤と前線の人選には今シーズン悩まされそうな予感がします。選手層が厚いのは素晴らしいことですが、その分控え選手の不満も溜まりやすいです。まあ今シーズンは負傷者の影響もあって様々な選手に出場機会が与えられているほうだとは思いますが。
あとはこの選手に触れないわけにはいきません。この試合の陰のMOTMであるラングレ。素晴らしいパフォーマンスでした。特に予防的カバーリングが素晴らしく、未然にビジャレアルのカウンターの芽を摘んだシーンは多々ありました。昨シーズンのアウェイビジャレアル戦がいい教訓になったのかもしれません。もうすっかり絶対的レギュラーですね。
さて、次は敵地とヘタフェと対戦します。アウェイで勝利がない中でまた嫌な相手と戦いますね笑。恐らく次の試合はメッシ欠場になると思います。メッシ不在ならそのままスアレスをトップにしてグリーズマンとデンベレを両翼に置くのか、それともスアレスをベンチに置くのでしょうか。バルベルデの決断に注目が集まります。
最後までお読みいただきありがとうございます。