Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】クーマンバルサ、システムとコンセプトの変遷 前編

こんにちは。久々の考察記事になります。

今回はクーマンバルサについて。シーズン途中ではありますが、ここまでクーマンバルサをまとめていきたいと思います。今季は週2ペースがずっと続いていたので、こういう記事がなかなか書けていませんでしたが、ようやく試合間隔が空いたので、ここぞとばかりに書いていきたいと思います。

 

ここまでの戦績

クーマンバルサのここまでの戦績はこちら。

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クーマンバルサ戦績

PK戦の勝ちは引き分けでカウントしています。勝率としては昨季と大差なしです。1試合あたりの得失点は2.16点と若干低めですが、セティエン時代よりは向上しています。

CLでは敗退してしまいましたし、スーペルコパも逃してしまいました。しかし、リーグ戦では2位まで順位を上げてきましたし、国王杯でも決勝進出を果たしています。

今季のバルサの成績はまさに「圧倒的な右肩上がり」。徐々に成績が向上しています。それはリーグ戦の勝ち点推移を見ると一目瞭然です。

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リーグ戦勝ち点推移

ご覧の様に12節(カディス戦)までは悲惨な状況でした。最初の10試合で稼いだ勝ち点は僅か14。この時期のクレの反応をちょっとプレイバックしてみましょう。

「リーグ戦のタイトルもCLも無理だな」

アトレティコ強すぎて今季は無理」

クーマン解任しろ」

大体こんな感じで絶望的な雰囲気が流れていました、

しかし、次の13節(レバンテ戦)からなんとリーグ戦では無敗。勝ち点を落としたのは3試合のみ。勝利を重ね、気がつけば首位の背中が良く見える位置まで順位をあげたのです。

これは決して偶然ではありませんし、クーマン戦術に選手たちが慣れた結果でもありません。この約半年間、クーマンとチームは様々な試行錯誤を重ねてこの結果に辿り着きました。もし、クーマンが評判通り、頑固に自分の持ち込んだやり方を貫いていればここまで順位を回復することはできなかったと思います。

ということで、ここからが本題。クーマンバルサの今季の変遷を僕独自の区分で振り返って行きたいと思います。あくまで僕の主観での記事なので、その辺はご了承ください。

尚、区分ごとに代表的な試合のマッチレビューのリンクも貼っておくのでよろしければそちらも合わせてお楽しみください。

 

序盤(3節~5節)

リーグ戦勝敗:2勝1分 8得点1失点

基本フォーメーション:

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クーマンは就任すると早速自分の色を出していきます。システムを従来の4-3-3ではなく、アタッカーを4人並べる4-2-3-1に変更。PSMを全勝で終えると、開幕からこのシステムで試合に臨みます。

開幕戦となったのは3節ビジャレアル戦。ウナイ・エメリを新監督に迎え大型補強を敢行したチームを新生バルサは4-0で一蹴。続くセルタ戦も退場者を出しながら3-0で勝利するなどこれ以上ないスタートを切りました。

この時期の最大のトピックはメッシのCF起用。守備貢献度の低い彼を最前線に置くことで、チームのバランスを是正。彼の下にはグリーズマンコウチーニョの高額投資組とカンテラの新星アンス・ファティが並びます。

前会長の無計画な補強策の結果、2列目要員が飽和していたため、クーマンの趣向どうこうに関わらず4-2-3-1の採用自体はスカッドに即したものではあったのかなと思います。むしろメッシを最前線に置くことは肯定的に見られるべきものでした。

メッシは退団騒動の影響で状態はよくありませんでしたが、この2試合で躍動したのはアンス・ファティとコウチーニョ

アンスは左サイドで圧巻の存在感を発揮し、ビジャレアル戦とセルタ戦で計3ゴールを挙げる暴れっぷり。次代エースは俺だ!と言わんばかりの活躍にファンは熱狂しました。

コウチーニョは本来のポジションであるトップ下で自由にボールを引き出し、運ぶ役割で貢献しました。この時期は身体のキレも良く、調子は上々でした。そう、この時は…。

戦術的なトピックとしては、昨季に比べて前線からのプレッシングに行く回数が増えたこと。

クーマン右サイドのグリーズマンに攻守両面でハードワークすることを要求。彼に「死に役」をさせることで、チーム全体のバランスを保つことを試みました。プレス時はCBのところまで走り、撤退時は自陣深くまで下がるという彼以外の選手には難しいタスクでした。

グリーズマンのチームへの貢献度は中々のものでしたが、決定機逸の印象が悪すぎて彼自身の評価は上がらず。また高額の移籍金と年俸の選手の宿命というか目に見える結果を残さないと認められないのはもう仕方ないですね。

まあこんな感じで特定の選手に負荷がかかるコンセプトではあったものの、滑り出しとしては良く、意気揚々と5節セビージャ戦に臨んだわけですが、ここは1-1の引き分けに終わってしまいます。

この引き分けは残念でしたが、どちらかと言えばビジャレアル戦とセルタ戦が上手く行きすぎでしたし、相手は初年度にELを優勝したロペテギ率いるセビージャだったので、この時点で成熟度に差が出てくるのはもう仕方なかったかなと思います。

夏にCLで2-8のスコアで敗れ、監督が代わり、チームのキャプテンであり絶対的な存在の退団騒動が起こったチームが開幕3試合(しかもビジャレアルとセビージャといきなり対戦!)で勝ち点7を手にしたことは、控えめに言ってもかなりポジティブなものだったとは思います。

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低迷期(6節~12節)

リーグ戦勝敗:2勝1分4敗 12得点10失点

基本フォーメーション:

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セビージャに引き分けはしたものの、悪くない滑り出しを見せたクーマンバルサ。セビージャ戦の後は代表ウィークにより2週間ほど間隔が空き、仕切り直しの6節ヘタフェ戦。このヘタフェ戦でクーマン驚きの采配に出ます。

なんとグリーズマンとメッシの位置を変えたのです。つまり、グリーズマンがCF、メッシが右サイドのスアレス不在時のセティエン体制に近い形になったわけです。案の定、バランスは悪くなり、この試合を0-1で落としてしまいます。

ただ、この時点ではあくまで引いてくることが予想されるヘタフェ対策としてのメッシ右サイドかなとは思いましたし、一時的な処置だと僕は考えていました。

しかし、この期間にメッシが最前線で起用されたのはCLのフェレンツヴァーロシュ戦のみ。メッシの主戦場は右サイド、もしくはトップ下になりました。一時的なものではなく、明確なアイディアとしてメッシを2列目に置いたわけです。

なぜクーマンがこの決断を開幕早々に下したのかはよく分かりません。セビージャ戦であまり上手くいかなかったからなのか、グリーズマンが真ん中でのプレーを望んだのか、それともメッシを2列目で使って攻撃力を上げたかったのか。いずれにしても方向転換が早すぎる感はありました。

メッシを2列目に置くということはチームの守備に大きな負荷がかかることに直結します。4-3-3の右サイドでも厳しかったわけですから、中盤がブスケツとフレンキーのみの4-2-3-1ではその弊害は非常に大きなものになります

当然、プレッシングもかかりにくくなります。メッシを最前線に置くからこそ、開幕3試合はある程度前からプレッシャーに行けていた時間があった部分は大いにありました。右サイドやトップ下のメッシがSBやボランチを掴まえられない以上、プレッシングもクソもありません。

また、右サイドハーフにメッシかデンベレが入ることが多かったため、右サイドの守備は非常に脆くなりました。ただでさえ、スピードの足りないセルジ・ロベルト、ブスケツ、ピケで構成される守備ユニットはかなり苦戦を強いられることになったのです。

まずかったのは守備だけではありません。攻撃では流動性が失われ、「ライン間渋滞現象」が起こります。バルサにはDFラインと中盤のラインの間のスペースを生業にする選手が多く、その結果1番点が取れる選手であるメッシが使いたいスペースを味方選手が埋めてしまうという深刻な状況になってしまいます。

結果、攻撃は詰まり下位チームでも引いて守れば勝ち点が奪うチャンスが十分あるようなチームに成り下がってしまったわけです。とにかく引いた相手を壊せる見込みは立ちませんでしたね。

最前線に置かれたグリーズマンはポジションを固定され、完全に沈黙。彼がチームに与える付加価値はバイタリティと献身性であるわけですが、動かずにポスト役を求められるCFの業務に彼の適性はありません

コウチーニョもプチ負傷から戻ってくるとなぜか18-19の状態に逆戻り。デンベレはたまに煌きを見せるも継続性はなし。十分なサポートを得られないメッシはピッチ上で路頭に迷ってしまいます。

この時期のクーマン4-2-3-1という型にただ選手を当てはめて試合に臨んでいる感がありました。その結果、選手間の相互作用は消えて無くなりました。個の力で殴り切れる相手には大勝するものの、たったそれだけのチームだったのです。

4-2-3-1の恩恵を最も受けるのはフレンキーだと目されていました。しかし、彼も彼で真横にブスケツがおり、ガンガン攻撃に上がるアルバのカバーリングに追われて本領を発揮することは叶わず。むしろ不均衡なチームのバランスをギリギリで成り立たせることに四苦八苦していました。明らかに構造的に無理がありました。

さらに悪いことに、11月にセルジ・ロベルト、ピケ、アンスを長期離脱で失ってしまいます。中心選手が1ヶ月の内に3人も離脱するという厳しい状況に追い込まれたわけです。

クーマンの選手起用・采配面の迷走と主力選手の離脱が重なって低迷したこの時期。クラシコアトレティコ戦は勿論敗れ、カディス、ヘタフェ、アラベス相手に勝ち点を落とす体たらくを見せました。7試合で僅かに2勝。流石にこの時点ではクーマンの手腕を疑わざるを得ません

この暗黒期に逆に評価を上げたのが徐々に出場機会と存在感を増したペドリ、そしてクラシコで出色のパフォーマンスを見せたデスト、そしてCBのアラウホでした。この期間に存在感を見せたこの選手たちがここからのV字回復の立役者になっていきます。

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はい、長くなったので前編はここまで。後編はボロボロのチームが如何に立ち直ったのか?というの部分にフォーカスを当てますので、お楽しみに。

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最後までお読みいただきありがとうございました。