Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】クーマンバルサ、システムとコンセプトの変遷 後編

こんにちは。

変遷記事後編です!
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前編、中編では2020年に行われた3節~16節(19節を含む)を振り返ってきました。後編では2021年に行われた試合を一気に振り返っていきたいと思います。

それでは。

 

安定期(17節~24節※延期試合も含む)

リーグ戦勝敗:8勝1分 24得点7失点

基本フォーメーション:

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メッシをCFに据えた4-1-2-3(あるいは4-2-3-1)である程度上手くいったにも関わらず、何故か3バックを試行し、後味悪く2020年を終えてしまったクーマンバルサ。やはり3バックは手ごたえがなかったのか、年明け最初の試合となったウエスカ戦では4バックに戻してきました。本当にあの2試合は何だったんでしょう笑

諦めきれなかったのか、ウエスカ戦ではメッシを右サイドで起用したクーマンですが、次のビルバオ戦以降はメッシをCFに固定。それに伴い、右にデンベレ、左にグリーズマンの前線の配置が定番となりました。

このタイミングでついにシステムがバルセロナ伝統の4-1-2-3に回帰したわけです。中盤は12月のソシエダ戦と同じフレンキー、ペドリ、ブスケツのトライアングルが固定となりました。最終ラインは基本は画像の4人がレギュラーですが、調子や負傷によってメンバーの入れ替えはありました。

このクーマンバルサの4-1-2-3が上手くハマった理由の1つが「個々の特性を活かした配置とタスク」になっていたことでした。

特に恩恵を受けたのが、フレンキー、デンベレグリーズマンの3選手。

フレンキーは4-2-3-1時代の低いポジションから一転、ビルドアップからフィニッシュまで幅広く関わるオールラウンドなタスクを課され、その圧倒的な走力を存分に発揮しました。特に左からのクロスに飛び込む形で得点とアシストを量産しました。

デンベレは右の大外のレーンでのプレーが多くなり、持ち前のスピードを活かした突破力を遺憾なく発揮。大外でやることがシンプルになったことで、以前のような不用意なロストが減り、より効果的に自分の武器を使えるようになりました。

グリーズマンは左サイドを起点として、メッシの動きに合わせてストライカーの位置へ入るセカンドストライカーのタスク。彼の動きはアルバの攻め上がりを促すものでもあるので、プレーエリアが被ることもなく、中央でプレーしていた時と比べると居心地は良さそうでした。特に1月はゴールを量産し、守備面も含めてチームへの貢献度は高かったですね。

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各選手ボール保持時の動きイメージ

特に大きかったのがフレンキーとグリーズマンをフィニッシャーに据えたことでメッシがボールを受けに降りたときの得点源が確保されたこと。先述したようにフレンキーのエリア内への飛び込みによって、サイドからのクロス攻撃の威力が増しました。

今まではアルバからの速いグラウンダークロスもしくはマイナス方向のクロスしかなかったものが、ファーサイドのフレンキーへのアーリークロスの選択肢が出てきたのは良かったのだと思います。

4-1-2-3を導入したウエスカ戦から2月の延期試合1節エルチェ戦まで9試合で8勝1分と破竹の勢いでリーグ戦で勝ち点を積み上げたバルサ。ようやく最適解を見つけたという向きもありました。

しかし、1月のスーペルコパ決勝でビルバオに敗れてタイトルを逃してしまうと、2月には国王杯準決勝1stレグでセビージャに、CLでPSGに完敗を喫してしまいます。リーグ戦以外のコンペティションでは力の無さを痛感するような結果と内容になりました。

特にセビージャ戦とPSG戦で浮き彫りになった問題点は2点。

1つはプレッシングの機能不全。これはこの時点で始まった現象ではありませんが、CL決勝トーナメントレベルの相手にボールを持たれるとどうしようもなくなってしまうという弱点が「リーグ戦では上手くいってただけに」露わになってしまいました。

リーグの格下相手であれば個の力で誤魔化しが効いたものの、ボールを握る力を十分に持った同格以上の相手になると、途端に無力になってしまうのです。

セビージャやPSG相手にバルサは中途半端に引く逃げ腰の姿勢で挑み、結果殴られて無惨に散りました。

「ボールを持っていればある程度強いけど、ボールを持ってないと弱い。そしてボールを奪い返す力も弱い」というのがこの時点でのチームだったと思います。

もうひとつは、全体的に前がかり気味でボール保持時のチームのバランスが悪かった点

両インテリオールも両サイドバックもアグレッシブに前に出て行くタイプであるため、必然的に後方にはブスケツとCBしか残らず、ブスケツのカバーエリアが広くなってパンクするというシーンは散見されました。

これらの課題を抱えたまま、クーマンバルサは2月末を迎えることになりました。

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対策期(25節~)

リーグ戦勝敗:4勝 14得点2失点

基本フォーメーション:

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セビージャ戦とPSG戦の敗北は順調だった2021年のクーマンバルサに暗い影を落としました。「結局バルサは弱いままではないのか」そのような雰囲気がありました。

そのような空気の中で迎えたのが2月末のセビージャとの2連戦。この2連戦を落とすとリーガも国王杯のタイトルも遠のいてしまう状況でした。

この大一番でクーマン3バックを選択しました。嫌な予感がしました。2020年年末の謎の3バック採用を思い出したからです(詳しくは中編参照)。

しかし、この日のバルサの3バックは12月のそれとは全く別物でした。

バルサは3-5-2のシステムのまま、立ち上がりからセビージャのDFラインに激しいプレッシングをかけていったのです。後方の数的同数を受け入れ、オールコートマンツーマンに近い形でセビージャのボールを奪いにかかりました。

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当然リスクはありますが、基本的に自分のマーカーが決まっているこの戦法であればメッシを無理なくプレスに参加させることができ、相手のDFラインにプレッシャーをかけ続けることができます。前からプレッシャーに行く手段を得たことは今のバルサにとってかなり意味を持つ変化でした。

リーグ戦のセビージャ戦を2-0で制すると、続く国王杯も終了間際の劇的な同点弾が飛び出し、結果的に3-0で勝利して決勝進出を決めました。逆転突破は難しい目標でしたが、見事クリアしました。

しかし、その代償として再びピケを負傷で失ってしまいます。ピケはセビージャ2連戦で3バックの中央として素晴らしいパフォーマンスを示していただけに、彼不在で3バックを機能させるのは難しいと思われました。

しかし、クーマンは次のビッグマッチであるPSGとの2ndレグで思い切った手に出ます。システムを3-4-2-1に変更し、フレンキーをピケのポジションに下げたのです。

これが見事にハマり、フレンキーは3バックの中央で躍動しました。フレンキーのポジション下がったことで中盤は薄くなりますが、3トップの一角にグリーズマンを入れることでインテンシティを確保

セビージャ戦と同じくPSGにも前半からフルスロットルでプレッシャーをかけたバルサ。結果は1-1に終わって敗退が決まってしまいましたが、前半のデンベレの決定機やメッシのPKが入ってれば…って思いたくなるようなゲームはできたと思います。

いずれにしても、セビージャ戦とPSG戦で見せた戦い方は今季残りのバルサの方向性を決定づけるようなものだったのではないでしょうか。

これまでは「メッシのいるチームはハイプレスにいけない」が定説でした。ルイス・エンリケバルベルデもセティエンも、そしてセビージャ戦以前のクーマンも、メッシに守備の局面にコミットすることは求めてきませんでした。

ここでクーマンバルサが示したのは、後方のリスクを受け入れれば、メッシがいても相手からボールを奪うことができるという事実です。そしてボールを相手から取り上げることができれば、バルサは強さを発揮するのです。

また、前からプレッシャーをかけられるようになっただけでなく、このバルサの3バックはそれぞれの能力を最大限に引き出すようなタスクを各自に振り分けていることも特徴のひとつです。

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例えば、先日のソシエダ戦ではスタメンで出場した全選手が持ち味を発揮した好ゲームでした。

特にデスト、ミンゲサは3バックの方が明らかに持ち味を発揮していますし、フレンキーやデンベレは4-3-3時代とは異なる形で新たな才能を開花させつつあります。チームが上手くいっているだけでなく、各選手たちが気持ち良くプレーできるのは重要です。なんてたってやるのはAIではなく人間ですから。

1月から始めた4-1-2-3がチームを安定して勝たせるためのものだったとすれば、ここ数試合の3バックはまさに強豪チーム対策としての効果が強いと僕は考えています。

バルサがCLやリーガ上位陣に勝つための施策です。事実セビージャに2勝、PSGには引き分け、ソシエダには6-1て大勝しました。

勿論、今後3-5-2や3-4-2-1は研究され、対策を打たれると思います。しかし、重要なのはシステムの並びではなく、今のチームが見せている姿勢やコンセプトであり、アグレッシブに相手からボールを奪う姿勢を見せ続ければ、今後待ち受けるクラシコ、国王杯決勝ビルバオ戦、そして首位アトレティコ戦を制することもできるのではないでしょうか。

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まとめ

ここまで3記事を使ってクーマンバルサを振り返ってきましたが、いかがでしたか?

個人的には書きながら今季を振り返ることができたので書いてよかったな~と思いました笑

振り返ってみると今季は本当に色々ありましたね。特に序盤10試合で勝ち点14しか取れなかった時期から考えると、紆余曲折ありながらもよくここまで持ち直したなと思います。

今季を見てて改めて思ったのは選手だけでなく監督も変化し、成長するものだということ。序盤はかなり怪しかったクーマンですが、今やチームの信頼を勝ち得た指揮官です。彼のことを認めないわけにはいきませんね。素晴らしいと思います。彼が来てくれて本当に良かったです。

今季はリーグ戦11試合と国王杯の決勝を残すのみとなりました。ここまで苦しみながらも成長してきた今季のバルサ。その歩みを振り返ると感慨深いものが込み上げてきます。

ここまで来たらこのチームにタイトルを勝ち取って欲しい。そんな気持ちで一杯です。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。