Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】20-21シーズン版 フレンキ―・デ・ヨングの最適な起用法を考える 

こんにちは。超久々の考察記事です。と思ったらそんなに久々でもありませんでした。前回はこちら。クーマンまたメッシをCFで起用しそうな感じはありますね。

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さて、最近はマッチレビューばかりになってしまっているので(試合間隔が短すぎて書けん!)、そろそろ誰か選手1人にフォーカスした記事を書きたいなと。昨季は頻繁に書いてて、多分10選手以上書いた気がするんですけど、今季はゼロ。

記念すべき20-21最初のフォーカスプレーヤーはやっぱり売り出し中のペドリかなと思ったんですが、あまりに素晴らしすぎて褒めることしかないので止めました笑。ペドリは毎回のレビューでも散々褒めているので、今回は見送ります。

で、迷った挙句、今回はフレンキ―について書いていきたいと思います。今季オランダ代表で共に戦っていたクーマンが指揮官に就任し、さらなる飛躍を求められたフレンキ―の前半戦を振り返り、昨季のプレーと比較しながら、ベストな起用法を考えていきたいと思います。

ではでは。

 

今季前半戦のフレンキ―

今季のフレンキ―はここまでリーガでの試合、全試合に出場中。うち先発は16試合、フル出場は14試合とフル稼働。先発を外れた1試合も足に違和感を感じてのものでしたし、クーマンバルサで不可欠な存在として君臨しています。CLの消化試合では休んだものの、代表戦も含めて働きすぎですね。

今季の基本ポジションは4-2-3-1の2の左ボランチクーマンは就任当初からこのシステムを使用しました。

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ボランチが定位置に

昨季のバルベルデ、セティエンの元では4-1-2-3のインテリオールを担うことが多かったため、これは今季の1つの大きな変更点です。フレンキ―が躍動していたアヤックス時代もこのポジションでプレーしていましたし、本人もこの中盤の底のポジションは好むところであります。

今季のフレンキ―の90分あたりのパス本数は77本。これは昨季と比べて約7本上昇キーパス数も早くも昨季の23本に迫る19本を記録するなど、より、チームの中で重要な存在となりましたね。

また、今季はDFリーダーのピケが長期離脱を強いられ、ラングレも不安定なプレーを見せているため、CBに入ることも。11月のBチーム所属のミンゲサの台頭以降はCBでプレーすることはなくなりましたが、CB不足に陥ったあの時期はフレンキ―にかなり救われました。

そして結果が出ずに方向転換を迫られた12月~1月の試合ではバルベルデ時代と同じく、4-1-2-3のインテリオールに入ることが多くなりましたクーマンの中でも4-1-2-3ではフレンキ―はアンカーよりもインテリオールなんですね。ブスケツがいるからってのもありそうですが。

試合途中からはトップ下や左SBも務めました。こう考えると今季は6つくらいの異なるポジションで起用されていますね。改めてユーティリティ性も示した今季前半戦と言えるのではないでしょうか。

 

適正は本当に左ボランチか?

と、ここまでチームの中心として君臨しているフレンキーですが、彼が本職の左ボランチで本領を発揮していたのかと問われれば、NOだと思います。

少なくとも「今のバルサにおいては」、フレンキーのベストポジションは左ボランチではないと僕は考えています。

フレンキー・デ・ヨングはしばしば「司令塔」、「ゲームメイカー」と称されることがありますが、これは彼のプレーヤーとしての本質ではないと思います。彼のプレーヤーとしての価値は高い技術に強靭なフィジカルが付随していること。特にスプリント能力はズバ抜けて高く、バルサの選手の中では珍しくショートスプリントよりもロングスプリントが得意な選手です。

勿論高い技術を活かしてビルドアップの中心になることもできますが、彼は「活かす」より「活かされる」プレーヤーに近いのだと思います。つまりシャビのようにボールを動かして全体をオーガナイズする役割ではなく、自らが動いて(またはボールをドリブルで持ち運んで)相手の守備を破壊するのが彼の最も得意とするプレーなのです。

オーガナイザー的な性格も持ち合わせてはいるものの、彼はソリストの一面が強い中盤であると言えます。「独力」でプレスを剥がし、「独力」のドリブルで数10メートル突破することができる。さらに鋭いトランジションから「独力」でボールを奪い返すこともできる。つまり1人で出来ることが非常に多いプレーヤーなわけですね。これまでのバルサの中盤の選手と比べるとかなり異質でスペシャルな選手だと思います。

では、なぜフレンキーは左ボランチで本領を発揮できていないのでしょうか。左ボランチという位置だけでそのようなプレーができない理由にはなりませんよね。その答えはここ数年バルサが抱える構造上の問題にあります。

ネイマール退団以降、バルサの左サイドはジョルディ・アルバの聖域となっています。チームの大黒柱であるメッシとのコンビネーションは成熟しており、メッシのスルーパス&アルバの抜け出しはバルサの攻撃に欠かせない要素の一つです。

ということで、アルバを左サイドの高い位置に置くというのはチームの中の一つのルールになっています。SBが高い位置を取るため、左ウイングは基本的に内側にポジションを取ります。加えて4-2-3-1ならトップ下の選手も左に流れてくることが多いです。

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動けないフレンキ―

上図のように左サイドはアルバ、左ウイング、トップ下の3選手で既に埋まっており、フレンキーが前線に飛び込もうにもそのスペースがありません。加えて、アルバがかなり高い位置を取るのでボランチはその背後のスペースもケアする必要があるのです。フレンキーは今季最も得意なポジションに移った代わりに最も制約の多いタスクを任されたと言えるでしょう。

アルバの存在は現在のバルサで最も鋭い武器であると同時に、チームのシステムを大きく制限してしまう要因でもあります。まさに諸刃の刃ってやつです。ただ、メッシがいる以上はアルバは外せません。

これがフレンキーが左ボランチで本領を発揮できていない大きな原因だと僕は考えます。高い技術を発揮しながら幅広くピッチを駆け回ることが持ち味であるにも関わらず、却ってプレーエリアを制限されてしまっているというわけです。

似たような理由で1アンカーもバルサでは難しいような気がしています。これは昨季の記事でも書いたのでこちらも是非。

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適正は2.5列目で自由に

ダブルボランチやアンカーでないとするならば、やはり、フレンキーの今のバルサでのベストポジションはここ3試合で使われている右インテリオールではないでしょうか。

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ここ3試合のバルサ

あれ?昨季も右インテリオールで使われてなかった?と思った方もいるかと思いますが、昨季までのインテリオールと今季のインテリオールではポジションは同じでも役割が異なります

昨季までの右インテリオールには所謂「ラキティッチロール」が求められてきました。斜め前の右ウイングにメッシがいたため、彼のサポートと穴埋めが求められるポジションだったのです。このタスクは非常に難度が高く、ラキティッチ本人がいないと中々バランスが取れないことが多かったです。

しかし、ここ3試合のメッシの定位置は開幕当時と同様のCF。そして右サイドには突如として守備を頑張るようになったデンベレが入っています。

その影響もあり、右インテリオールのカバーリングの負担は昨季と比べると激減。そしてこのポジションに入ったフレンキーは水を得た魚のように暴れ始めます。

年明け1試合目のウエスカ戦ではメッシの左からのアーリークロスに飛び込み、決勝点。続くビルバオ戦でもメッシのクロスに飛び出し、ペドリの同点弾をアシストしました。グラナダ戦では数字は付かなかったものの、長いドリブルで敵陣を切り裂き鋭いシュートを放つなど、フィニッシュの局面で脅威となりました。

ここ3試合で見せたのはセカンドストライカーのようなタスクです。積極的にフィニッシュの局面に関わろうとするプレーが目立ちます。これは左ボランチでプレーしていた頃には見られなかった積極性です。

しかし、彼は常時高い位置にいるわけでは当然ありません。ビルドアップ時には下図のような立ち位置になっています。ブスケツがDFラインに下がる動きに伴って第二のアンカーとして3バックの前に君臨するようなイメージです

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グラナダ戦レビューより

つまり、ビルドアップ時はアンカー、崩しの時はセカンドストライカー役と縦方向の動きが非常に多いタスクになっており、これはフレンキーの特性とマッチしています。ピッチを上下に駆け回り、あらゆる局面に関わるのはまさに彼の望むところでしょう。

2列目や3列目に固定されると攻守に幅広く関わりづらくなってしまいます。やはりバルサでは2.5列目で攻守両輪、ビルドアップもフィニッシュも、というスタンスが彼の持ち味が最も発揮しやすい環境になるのではないでしょうか。

また、最近のバルサはペドリの台頭で一層左からの崩しに磨きがかかっています。アルバ、グリーズマン、ペドリに加えてメッシが流れてくるので左サイドからの攻撃が増えるのはまあ自然の流れです。

ここ3試合の得点を見ても、前述のフレンキーの1G1Aは左に流れたメッシのクロスから生まれました。ビルバオ戦とグラナダ戦の2年目は左サイドの連携から生まれたもの。そしてグラナダ戦の4点目は人が集まる左サイドから逆サイド大外のデンベレに展開して生まれたものでした。

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グラナダ戦4点目

最近のチームは密集の左サイドとスペースのある右サイドというコントラストになっています。フレンキーやデンベレのようなフィジカルモンスターはソーシャルディスタンスよろしく人との距離一定以上空いている状況下の方がより力を発揮することができます。フレンキーは勿論密集地帯でもプレーできますが、ペドリほど俊敏かつ繊細ではないので、左右のインテリオールのそれぞれの役割としては適材適所と言えるでしょう。

今までは右のメッシからから左のアルバというのが必殺パターンでしたが、左のメッシから右のフレンキー(またはデンベレ)というルートが怖さを増してくればよりバルサの攻撃はバリエーションが広がりそうです。

現時点での不安要素を挙げるとすれば、右SB。デストは大外にデンベレ、ハーフスペースにフレンキーがいる中で、立ち位置を少々見失っている感があります。フレンキーを今後もフィニッシュの局面に深く関わらせるのであれば、もう少しSBがチームのバランスを取る場面も必要なのかなと思います。

ただ、新加入の20歳にそこまで望むのも酷かなとも思いますし、この過密日程の中で右SBのポジションを1人で支えているだけでも十分に合格点です。そのようなタスクはセルジ・ロベルトが復帰した時に期待してみましょうか。

右SBに限らずですが、フレンキーが前線に顔を出した時のリスクマネジメントはこれからの課題になってきそうですね。

また、もう1つの不安要素としてはチームにフレンキ―と同じタスクを担える選手がいないこと。チームにというか世界にもそんなにこれだけのものを提供してくれる選手もいないと思うので、そこはないものねだりなのですが。攻守でスプリントが多いので、負担がちょっと心配ですね。

 

まとめ

この記事で言いたかったのは「フレンキーは左ボランチよりも右インテリオールの方がいいよ!」ということではありません。僕の主張はあくまでもフレンキーはある程度スペースのある状態でビルドアップからフィニッシュまで幅広く関われるタスク及びポジションの方が活きる」というものです。

今のチームでは右インテリオールがベストだよねってだけで、またチームのコンセプトや配置が変われば適正ポジションも変わることでしょう。仮に新しい9番が来て、メッシが再び右サイドに入れば右インテリオールの役割も変わりますから。

フレンキーはその技術やフィジカル能力故にもうしても便利屋的に使われてしまう危険性を孕んでいます。勿論、チームの歯車として機能させることも恐らくはできるのでしょうが、それでは勿体無い。フレンキーの存在感がもっと攻守にわたって出てくれば、バルサのサッカーは面白くなりそうです。

それにしてもクーマンはよくフレンキーの位置を動かしましたね。しばらくは頑なにフレンキーをボランチから動かそうとしませんでしたが、システム変更に伴い、フレンキーのサイドと列を変えました。勿論、愛弟子のペドリの存在が大きいのだと思いますが、この方向転換は評価されるべきですね。

昨季からずっと気になっていたのはメッシとフレンキ―の関係。パス交換こそあるものの、2人の連携で崩したケースがあまりなく、好連携とは言い難い関係性でした。しかし、ここ数試合見せているようなメッシが出し手、フレンキ―が受け手という関係性が確立すれば、その逆も生まれてくるはずです。期待しましょう!

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。