こんにちは。いよいよ明日CLの決勝トーナメントが始まります。我らがバルセロナのベスト16での対戦相手はパリ・サンジェルマン。2位でグループを通過したことで、いきなり1回戦から昨季のファイナリストとの決戦になりましたね。
ベスト16の中ではかなりの注目カードなので、普段バルサを見ていない人もこの試合は観戦すると思われます。そこで本記事では、あまり普段バルセロナを見ないよ〜という方向けに今季のバルサのここまでと現状をまとめてみたいと思います。少しでも観戦の助けになれば嬉しいです。
普段読んでくださっているバルサファンの皆さんには既知の内容が多いですが、改めて復習として試合前に読んでいただければ幸いです。
それでは参りましょう。
チーム成績
今季新たな指揮官としてロナルド・クーマンを迎えたバルサはここまで以下のような戦績を収めています。
シーズン前半戦は悲惨な状態であり、一時はCL出場権すら危ういのではないかと囁かれましたが、ここに来て盛り返してきました。特に2021年に入ってからリーガの試合は全勝(7連勝中)。スーペルコパと国王杯では土をつけられたものの、新年に入ってからチーム成績は上り調子です。
躓き続けたリーガとは異なり、CLは開幕直後から順調に勝ちを重ねて5連勝。「グループステージのバルサ」の異名(?)の通り、素晴らしい歩みで1位通過を狙ったものの、最終節のユベントス戦で完敗。2位通過となりPSGと対戦する羽目になったのは前述の通りです。
この戦績を見て「バルサも落ちたな」と思われるかもしれませんが、全くもってその通りです。ただ、シーズン通して考えるとかなり持ち直した方だと思います。一時はクーマンの解任待ったなしのような状態でしたし、非常にどんよりとした暗雲がチームを覆っている感がありましたが、今は幾分かそれを払いのけることができました。
戦績面で1つ懸念点を上げると、同格以上の相手、CLレベルのチーム相手の戦績が悪いこと。相手が主力不在で逃げ腰だったアウェイのユベントス戦以外は中身のないサッカーで敗戦、もしくは辛くも引き分けに終わっています。最近調子が良いとはいえ、強豪相手の対戦は別物になってくるかもしれません。
注目したいのはボール保持率。6試合全てで60%を切っており、相手にボールを握られる時間帯が長くなると苦戦する傾向があります。これについては後ろで詳しく言及しますが、PSGとの試合ではいかにボールを握ることができるかがカギになってきそうです。
負傷者状況
これをトピックとして挙げなければならないのが心苦しいですが…。現在バルセロナは多くの怪我人を抱えるチームになってしまっています。
上図は現在の負傷者状況。特に痛手なのがレギュラー格であるロナルド・アラウホ、セルジ・ロベルト、アンス・ファティの欠場です。特にピケ離脱後にDFラインを獅子奮迅の活躍と支えたアラウホの欠場はバルサにとってかなり厳しいニュースになりました。
マルティン・ブライスワイトは国王杯と前節はメンバーから外れていましたが、練習には戻ってきているので、問題なくメンバー入りするでしょう。コンディションに不安は残るものの、セルジーニョ・デストやミラレム・ピャニッチもメンバー入りできるはず。
かなりのサプライズとなったのがジェラール・ピケの練習復帰。昨年11月にシーズン絶望の負傷を負ったはずですが、まさかの3ケ月でのスピード復帰。いくら何でも復活が早すぎますね。ただ、これだけの期間離脱してて復帰戦がいきなりPSG戦というのは流石にリスクが高い。本人は出る気満々でしょうが、スタメンは避けるべきでしょう。
システム・戦術
※システムとか戦術興味ない!という方は飛ばしてください。
就任当初から一貫して4-2-3-1を基本システムとして使ってきたクーマンですが、4-3-3(4-1-2-3)に慣れきっているチームにフィットせず。12月のCL6節ユベントス戦で完敗して以降、4-1-2-3を導入する試合が増えました。
方針が固まったのは年明けの延期されていた第2節ビルバオ戦。この試合で現チームの骨格が出来上がりました。
シーズン序盤のクーマンのチームの作り方は、4-2-3-1という型に選手を当てはめていくようなイメージでした。選手の特性や相互関係はあまり考慮されないまま、形だけできあがったチームは案の定迷走。特に崩しの局面では明確なルールや役割分担がなかったため、ライン間のスペースが渋滞し、チームのエースであるリオネル・メッシは輝きを失いました。
このままクーマンが頑固のイメージをそのままに自らの信念を貫いていたらチームは今でも悲惨な状態のままだったでしょう。しかし、クーマンはユベントスに粉砕されたことで方針転換。4-1-2-3というシステムを基本としながらも各選手の特性を活かした配置・タスク分配になっていきした。
上図が年明けからのクーマンバルサの基本システム・スタメンです。右SBと左CB以外は主力が固定されているのが特徴です。メッシは右サイドやトップ下ではなく、ワントップの位置がスタートポジションになります。
GKとCB以外のボール保持時のタスクは上図の通り。CFのメッシはフリーマンとして動き回るのが前提なので、「ストライカーのタスクを誰が務めるのか?」は非常に重要なポイントになります。今のチームでメッシが空けたスペースに飛び込むのは主にアントワーヌ・グリーズマンとフレンキ―・デ・ヨング。一昨夏の大型補強で加入したこの2人はようやくチーム内で最良のタスクを見つけた感があります。
フレンキ―は右インテリオールが初期位置ですが、従来のバルサの右インテリオールとは異なるタスクを担います。ビルドアップ時はブスケツが最終ラインに下がった際のヘソの部分でボールの前進に関わりながら、フィニッシュの局面でゴール前に出てくるという縦方向の動きが非常に多いのが特徴的です。走力と技術、得点力を持ち合わせた彼にしかできないタスクです。
一方のグリーズマンは左ウイングながら、ボールを足下に収めた状態でのドリブル突破や高精度のクロスに期待できる選手ではありません。彼の持ち味は運動量とポジショニング、非凡な裏への抜け出しです。メッシが空けたポジションに巧みに侵入し、エリア内でクロスを受けて押し込むパターンで得点を量産しました。
年明けからフレンキ―は5G2A、グリーズマンは7G8Aを記録しており、数字の上でも彼らがフィニッシャーとして機能していることが分かります。
相乗効果としてメッシの調子も上がってきました。年明けに出場したリーグ戦6試合で8Gを記録するなどようやく本領を発揮しつつあります。フレンキ―、グリーズマンとの連携もよくなる一方ですし、これは明確な改善点として誇っていい部分です。
大外はスピード自慢のアルバ、デンベレが務め、攻撃に幅を持たせます。デンベレの好パフォーマンスは今季のサプライズの1つですね。左はアルバ、ペドリ、グリーズマン、メッシの連携で、右はデンベレの個人技で崩すのがバルサの1つの形になっています。
今のバルサの主役がメッシ、グリーズマン、フレンキ―であるなら、縁の下で支えているのは18歳のペドリ。この選手だけは注目して欲しいです。高い技術と類まれなるインテリジェンスとカバーリングのセンスでチームのバランスをギリギリのところで保つネクストイニエスタ。彼がいなければ今季のバルサはとっくに壊れています。
唯一まだタスクが整理され切れていないのは右SB。本来のレギュラーであるセルジ・ロベルトの不在が痛いですね。左SBのアルバと右インテリオールのフレンキ―がかなり高い位置を取るので、バランサーとしての役割をお願いしたいところですが、若いミンゲサとデストにそこまで要求するのはちょっと酷ですね。
ここまで見てきたように、4-2-3-1時代と比べるとかなり各個人のタスクが整理され、強みが活かせるようなコンセプトに変貌したと言えるでしょう。ただ、チーム全体のバランスとしては若干前がかり気味で、危うい配置にはなっています。そのため、カウンターに脆いのが今のチームの弱点ですね。ネガティブ・トランジションには細心の注意を払う必要があります。
また、課題として挙がるはプレッシングの質。メッシを最前線に置いている以上、仕方のないことではあるのですが、ボールを持てるチーム相手にハイプレスが上手く機能しないのが悩みの種です。これが強豪相手に勝てていない理由の1つです。
ラキティッチやビダルの退団で守備ブロックの強度自体は下がっていますし、引いて守ってもどうしようもないことは過去数シーズンが証明してくれています。そういう意味でクーマンバルサがPSG相手にどのような守備を敷いてくるかは1つ注目ポイントになってくるはずです。
予想スタメン
あまり選択肢はありませんが、予想スタメンを。
定かではないのはDFライン。デストとピケの状態次第だとは思いますが、デストが万全であれば、右CBがBチーム所属のミンゲサ、右SBデストの配置で行くのではないでしょうか。パリはかなり左攻めが多いチームなので、いきなりのピケはやはり不安です。ただ、デストの状態があまり良くないようならピケ先発の線もなくはないです。
一応CBはフレンキ―を使うオプションもありますが、そうなってくると中盤がきつくなってしまいます。ピャニッチやリキ・プッチはこのビッグマッチで先発させられるほどクーマンの信頼を得てはないので…。デストもピケも先発させるコンディションではない、という場合を除いてフレンキ―のCB起用はないと思います。
もう1つ微妙なポジションは左CB。ここ数試合はクレマン・ラングレとサムエル・ウムティティが出場機会を分け合っている状態です。今季安定感に乏しく、コンディション不良に苦しんでいるラングレと、ここ数シーズン負傷の影響でトップフォームには程遠いウムティティ。どちらをチョイスするか悩ましいところです。
本調子であればこの試合は人に強く前で潰せるウムティティが適任だと思いますが、セビージャ戦ではスリップするシーンが目立つなど明らかにトップレベルの動きではありません。こちらもコンディションが良ければラングレの先発が有力でしょう。
試合展望
もう長くなってしまっているので、簡潔に書きます。
バルサがPSGに勝つ条件は「ポチェッティーノがバルサ及びメッシにビビること」です。必要以上にバルサとメッシを恐れ、ラインを下げてエンバペの高速カウンターに頼るようなことになれば、バルサとしては怖いけどおいしい展開になります。カウンター対応にさえ注意できれば勝機はあります。
ポチェッティーノはエスパニョール時代もトッテナム時代もバルサとメッシには嫌な思い出があるでしょうし、ネイマールとディ・マリアの不在でそういう方向に運んでくれれば、バルサとしては楽にはなってくると思います。
逆に立ち上がりからハイプレスをかけてきてガッツリボールを握られる展開はバルサにとって辛いです。厄介極まりないのがヴェッラッテイの復帰。ボールキープ力に優れ、ショートパスで展開を進めるのが巧みな彼と、展開力に優れるパレデスが並ぶとちょっと大変な展開になりそうです。
勿論、ネイマール、ディ・マリアの不在でPSGも崩しのクオリティは下がっているかもしれませんが、「ボールを持たれているクーマンバルサ」はバルベルデ時代以上に無力です。プレッシングもボール保持もまだ未熟なバルサですが、クラシコのようにボールを捨て、相手のプレーを受動的に待つサッカーでは先がありません。
エンバペのカウンターは恐怖でしかありませんが、それでもボールを握るバルサであって欲しいところです。
まとめ
思ったより長めの記事になってしまいましたが、いかがでしたか?この記事を読んで少しでもバルサに興味を持ってくださった方がいれば嬉しいです。
ぶっちゃけ今の未熟なチームがPSGに2試合を通じて勝つのは困難なミッションです。しかし、PSGも怪我人は多いですし、監督が代わってまだ2ヵ月経っていません。つけ入る隙は十分にあると思います。今季のベストパフォーマンスが出せれば、カンプノウで勝利できる可能性は大いにあるでしょう。
ローマ戦、リバプール戦、バイエルン戦と3季連続で歴史的な大敗を喫してきたバルセロナ。そろそろ、CLでファンを歓喜させる瞬間があってもいいはず。勝利あるのみです。
最後までお読みいただきありがとうございます。