こんにちは。今回はひっさびさにバルサ以外のレビューを書きます。今朝のリーガの注目試合、アトレティコ対セビージャです。今季僅か1敗で首位をひた走るアトレティコとCL圏内を争うセビージャの上位陣対決になります。
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尚、毎試合両チームの試合を観れているわけでは勿論ないのでそこは加味した上で読んで頂けると幸いです。今季前半戦セビージャにもアトレティコにも勝てなかったチームの1ファンの戯言なので笑
スタメン
ホームのアトレティコは敗退を喫した国王杯から9人の先発変更。システム変更に伴い、昨季と序列が変化しています。左利きCBのエルモソ、アタッカーのレマルの出場機会が増え、昨季まで絶対的な主力であったロディ、サウールの先発の機会が減っています。この試合はフェリックスがベンチスタートでアンヘル・コレアが先発しています。
アウェイのセビージャは週末のソシエダ戦から中3日のゲーム。大雪の影響により、1週間空いたアトレティコよりも日程的には厳しくなっていますが、フルメンバーで来ました。昨季からの変化としては、レギロン、バネガが退団し、彼らのポジションに新加入のアクーニャ、ラキティッチが入っています。また昨季の中断明けあたりからエンネシリ、スソの序列が上がりましたね。
アトレティコのボール保持
まずはアトレティコのボール保持から見ていきましょう。
今季のアトレティコはボール保持時に3-1-4-2のような形を取ることが多くなっています。昨季までの4-4-2ではあまり見られなかった、3バックのビルドアップです。この3バック+アンカーのコケがビルドアップの中心となります。ビルドアップの局面でコレアやレマルが過度に下りることはなく、ポジションをある程度保ったまま前進を試みます。
4人のビルドアップになるので誰かしらは必ずフリーになります。特に左HVに左利きのエルモソを置けているのは大きいですね。彼は元々ビルドアップが上手いCBなので、左足にボールを置いて円滑に進みます。ヒメネス、サビッチも水準以上のビルドアップ能力を有しているので、ここのビルドアップが問題になる事はあまりありませんでした。
幅取り役は右がトリッピアー、左がカラスコ。ただ、アトレティコのサイド攻撃は左右それぞれ違う特徴を持っています。
右サイドはコレアが流れてくるので、トリッピアー&ジョレンテ&コレアのトライアングルによる連携が光ります。この3人が真っ先に狙うのはニアゾーン攻略。大外のトリッピアーが相手のSBを引っ張り出してジョレンテもしくはコレアがニアゾーンに飛び込む形は今季の定番となっています。ジョレンテやコレアのフリーランニングもさることながら、大外から高精度のボールを配給できるトリッピアーの能力が際立つ攻撃です。
一方の左サイドは左側のCFであるスアレスが真ん中からほぼ動かないので、ハーフスペースにレマル、大外にカラスコというシンプルな配置に。たまにLHVのエルモソがヘルプに来たりもしますが、基本的にカラスコは単騎での突破、レマルはライン間の攻略を試みていました。スピードのある2人なのでわざとこのような配置にしているのでしょうかね。あまり連携で崩すシーンは見られませんでした。
主な攻撃のパターンとして見られたのは前述の右のニアゾーン攻略、スアレスのレイオフからのレマル、コレアの仕掛け、そしてカラスコの単独突破。メカニズムは違えど、それぞれ左右中央の攻撃ルートを持っているのは大きいですね。
それに対してのセビージャの守備。
セビージャはいつも通りの4-3-3が基本ですが、いつもと前線の配置が違います。オカンポスが右、エンネシリが左、そしてスソが真ん中の配置になっていました。これがどういう意図だったのかはセビージャを毎試合観ているわけではないので、ちょっと分かりません。スソの守備面を考慮したものなのかそれとも攻撃のことを考えたのか・・。
それほど高い位置からプレスはかけず、ブロックを作って構えながらパスカットを狙う戦法を取ります。中盤はアトレティコの逆三角形の形に合わせて、ラキティッチが1つ前に出る正三角形の形に変わります。非保持時はわりと4-2-3-1に近い局面が多かったかもしれません。
セビージャが後手を踏んでしまったのは、左サイドの局面。アトレティコの右サイドのトライアングルに対して数的不利になってしまう場面が多く、押し込まれてしまいました。噛み合わせ的に対面するのは左SB(アクーニャ)、アンカー(フェルナンド)、左WG(エンネシリ)になるわけですが、ここの対応が難しかったですね。
まず左WGがどこまで下がるか問題。アトレティコのサイドハーフなんかは平気で深い位置まで下がってまた攻撃に出て行きますが、誰もがそれができるわけではありません。ましてやエンネシリは本職がCFなのでトリッピアーを基準に下がり続けるとどんどんゴールが遠くなってしまいます。
ただ、例えばエンネシリが右HVにプレッシャー、それに連動してアクーニャが右WBにプレッシャーをかけたとすると怖いのは裏のスペース。実際2点目はまさにSB裏をジョレンテに突かれてやられました。コレアやジョレンテがいるとこれが厄介で、ラインを安易に上げられないんですよね。
結果論ですが、後半に変更したように、スタートから守備で踏ん張れるオカンポスを左に置くべきだったかもしれません。そして最前線には身体を張って時間を作れるルーク・デ・ヨングをおくべきだったかも分かりません。まあ、それで上手くいくかどうかは定かではありませんが。
そしてもう1つの問題がフェルナンドがサイドに引っ張られ過ぎていいのか問題。非保持時は左ボランチのような立ち位置になることが多かったフェルナンドですが、本来はCB前のスペースを埋めるフィルター役。あまりサイドでのボール狩りに参加されるとチームとしては良いことありません。
ということでこの局面で後手を踏み、左SBのアクーニャはかなり厳しい対応を強いられるケースが多かったと思います。彼個人のパフォーマンスとして批判されるかもしれませんが、この局面においてはアトレティコが1枚上手でした。
これまた結果論ですが、セビージャとしてはフェルナンドをDFラインに組み込む5バックで5レーンを埋め、ニアゾーン攻撃を遮断してしまうという選択肢があったかもしれません。今日のアトレティコ相手では5-4-1ブロックのほうが守りやすかったかもです。尤も、5-4-1の1がスソだと厳しいとは思いますが・・・。
フェルナンドが3バックの一角に入る試合は何度か見た事あるので、ロペテギのプランとして選択肢にはあったはず。このようなソリューションがありだったのかどうかはセビジスタの方に聞いてみたいところです。第三者の目から見ると、それくらいアトレティコは完成された相手だったと思います。
セビージャのボール保持時
セビージャの攻撃の肝は遅攻が密集→サイドチェンジ。速攻がCFのレイオフからの縦に速い攻撃になります。この辺はバルサ戦のレビューにも書いているので、こちらを是非。
しかし、この試合は上手く攻撃がハマりませんでした。前後半合わせてシュートは13本放ちましたが、枠内シュートは僅か2本。決定機は終盤のセットプレーから訪れた1本のみ。ポゼッションは高かったものの、上手くそれをチャンスに結び付けられませんでした。
今季のアトレティコは攻撃力が上がった一方、守備力は健在。ここまで16試合でわずか6失点。むしろ自慢の守備力に磨きがかかった感すらあります。
この試合、アトレティコはボール非保持時の局面で3つの顔を見せます。
高い位置からボールを奪いに行くときはIHのどちらか(レマルorジョレンテ)が前に出てボールを奪いに行きます。外側はコレアとカラスコが埋めています。これは4-4-2に近い形ですね。
ボールが前進してくるとミドルサードでの4-1-4-1に陣形を切り替えます。これはコケがアンカーに入る形になりますね。スアレス1枚を残し、4-1-4-1でパスコースの遮断・サイドに追いやるのが目的の守備となります。
ハイプレスにおいてもミドルサードの局面に置いても際立ったのが両IHの守備意識の高さ。彼らの立ち位置で中央やハーフスペースへのパスコースを遮断して、セビージャに外回しを強いるシーンが目立ちました。カバーシャドウがきっちり仕込まれている感がありましたね。ジョレンテはともかくレマルってこんなに守れる選手でしたっけ?笑
そして、彼らの背後で絶妙に立ち位置を変えながらチームのバランスを保っているのがコケ。そこまで走っているようには見えないのに、走行距離がチームトップであるのは細かくポジショニングを修正している証拠でしょう。昨季の中断明けからコケは何か円熟味を増したような気がします。目立たないものの、チームに不可欠な存在ですね。
撤退時はカラスコを最終ラインに下げる5-4-1。押し込まれる展開が長かった後半は特にこの布陣が目立ちました。カラスコは非保持時でもかなり重要な存在になりましたね、そしてアトレティコからすると4-4-2でも5-4-1でも撤退守備は得意とするところです。
全ての守備陣形に共通しているのは守備で大きな貢献が難しいスアレスの穴を埋めるような設計になっていること。昨季は4-4-2が原則だったアトレティコですが、今季はトップの守備貢献があまり計算できないので、このような守備のやり方に変えたという説が濃厚ですかね。
さて、それに対してセビージャの攻撃ですが、先述の通り、アトレティコは中央とハーフスペースへの攻撃を封鎖。セビージャは真ん中に純粋なCFがいないこともあり、外回りの攻撃になってしまいます。個人的にはやはりスソの偽9番ではなく、ルーク・デ・ヨングやエンネシリのCFが見たかったなと思います。
恐らく狙いの1つとしては「スソを偽9番的に動かし、右サイドに密集を作って左サイドに展開」だったのでしょうが、左WGは大外のプレーヤーではないエンネシリで左SBのアクーニャはそれほど高い位置を取り切れなかったので、右から左への大きな展開はあまり見られませんでした。アクーニャは馬力のある良い選手ですが、左で幅を取っていたレギロンのような選手がこの試合では必要だったかもしれません。
また、ジョルダンやラキティッチはリーガ屈指のクオリティを持つ中盤の2人ですが、展開力という意味ではやはりバネガは別格でした。ゲームを長短のパスでゲームをコントロールできる存在が1人いるとまた違うのかなと思いました。それがオリベルになるのかどうかは分かりませんが、僕はオリベル好きです。
後半、セビージャの攻撃の活路を開いたのはCBのクンデでした。彼がフリーでボールを持ち運んだり、ニアゾーンに走りこむなどして攻撃を活性化させました。CBのオーバーラップは流石のアトレティコでも防ぎきれません。
それにしてもオーバーラップを仕掛けて攻撃を完結させられるクンデのポテンシャルは計り知れません。上背はないものの、対人・空中戦両方とも強く、ハイライン戦術に不可欠なスピードも備えています。ビルドアップ能力も高く、オーバーラップでチャンスを演出することもできるスーパーモダンな選手です。全世界のどのビッグクラブも欲しい超逸材でしょうねこれは。
「運べる」どころか「突破できる」系超現代型CBのジュール・クンデ選手。
— Hikota (@BarcaHikota) 2021年1月12日
ただ、これ以外に活路が見いだせなかったのはセビージャとして苦しかったですね。サイドのレーンもWBに蓋をされてしまっていましたし、先制したアトレティコの守備を崩すのは容易ではありません。良いところまで運んだとしても素早いプレスバックで潰されてしまうので八方塞がりでした。
コンディション的にも不利でしたし、先制された時点で苦戦は必至だったのかもしれませんね。
まとめ
アトレティコがあまりに強かった試合でした。これまでの強みを保ちながら、攻守両面で進化を遂げたアトレティコ。シメオネ政権になって2度目のリーガ制覇は現実的な目標ですね。2試合未消化で2位マドリ―と勝ち点差4、3位バルサと勝ち点差7なのでここから大コケしてくれないとタイトルレースはこのままアトレティコの独走になるでしょう。
前半はボールを持ちながら攻撃をしかけ、先制。後半は相手にボールを渡して塩漬けにしながら、一瞬の隙を突いて追加点。完璧な試合運びでした。ポゼッションは33%でしたが、試合を支配したのは間違いなくアトレティコでした。ボールを持っても持たなくても試合を支配できるチームになりつつあるのだとすれば、ちょっとこれは脅威ですね。
現状のバルサだとちょっとこのチームに勝てる気がしません。前半戦の試合も普通に完敗でしたし、逆になぜ今季ポロポロ取りこぼすマドリ―がどうやってアトレティコに勝ったのか知りたいですね笑。バルサのアトレティコとの対戦は5月10日。それまでにチームが熟成されて、このアトレティコを倒せたら最高ですね。
セビージャは日程的に厳しかっただけに、アウェイで勝ち点1なら御の字の試合だったと思いますが、前半の内に先制を許してしまったのが痛かったですね。アンヘル・コレアのあの一撃はスーパーでした。
現実的な話をすると、アトレティコ以外のCL出場権はマドリ―、バルサ、セビージャ、ビジャレアル、ソシエダの5クラブを軸に争われると思うので、セビージャは直接のライバルになりますね。引き続き動向を追いたいクラブです。
勢いよくレビューを書いてしまいましたが、如何だったでしょうか。バルサの試合以外を書くのは久々だったので至らないところだらけだったと思います。是非ご意見頂ければ嬉しいです。時間があれば他の試合も書いてみたいなと思うのでその時も是非よろしくお願いします。
さて、明日はスーペルコパ準決勝。勝ちたいですね。アトレティの方もセビジスタの方も応援してください!笑
最後までお読みいただきありがとうございます。