Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】20-21 CL第3節 バルセロナ対ディナモ・キエフ

こんにちは。前節アラベス戦で辛くも引き分けたバルサはCLディナモ・キエフ戦に挑みます。

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バルサはここまでCL2連勝中。勝ち点6。対戦相手のディナモ・キエフは1分1敗で勝ち点1。ディナモ・キエフはコロナ感染者が多く、11名が陽性反応という厳しい状況に陥っています。そのため、この試合も一時は中止も危ぶまれました。 とにかくバルサとしては勝利は勿論のこと、感染者やけが人は出したくないところですね。気をつけて欲しいです。

 

スタメン

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ホームのバルサアラベス戦から4人の先発変更。チームの正守護神テア・シュテーゲンがケガから復帰し、今季初出場。デストはクラシコ以来の先発出場。ピャニッチはCLで3試合連続先発出場を果たしています。

アウェイのディナモ・キエフは先述した通り、コロナウイルスで厳しい状況に。GKには18歳のネシュチェレトが起用されるので、若い選手も多くこのバルセロナ戦のスタメンに名を連ねました。キャプテンマークを巻く右サイドのツィハンコウも22歳と全体的に若いですね。

 

両チーム陣形・配置・噛み合わせ

バルサの選手起用の意図は?

この試合のクーマンの先発メンバー選定と配置において、大きなトピックは2つ。1つ目はフレンキ―のCB起用。もう1つはメッシの右サイドです

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ディナモ・キエフ戦選手起用

アラウホが負傷退場したユベントス戦及び1点ビハインドを負ったアラベス戦の後半から2試合連続でCBで起用されたフレンキ―ですが、CBとして先発出場するのはこれが初めて。前2試合はスクランブル起用でしたが、今回は明確にクーマンの意志でCB起用してきた格好です。

意図として考えられるのはシンプルにラングレを休ませたかったという線。アラウホは離脱中で、ウムティティも未だに長い怪我から戻ってこれていません。単純にCBの頭数が足りないという事情はあります。

尤も、ラングレよりもフレンキ―のほうが稼働率が高いという現実はあるので、「休ませるならフレンキ―でしょ」感もありますよね。クーマンのもう1つの意図として、「CBの機動力不足問題」をフィジカル面での能力が高いフレンキ―で解決してしまおうという考えがあるのかもしれませんね。

そして、メッシの右サイド。メッシのスタートポジションが明確に右サイドになるのは第6節ヘタフェ戦以来。メンバー的にはクラシコの様にペドリが右サイドを務めるのかと思いましたが、この試合ではペドリトップ下、メッシ右が基本陣形でした。

相手によってこの辺の配置は変えているのですが、どのような基準で配置しているのかはまだ分かりません。恐らく相手のレベル、言葉を選ばずに言うと「メッシを右サイドに置いてもある程度大丈夫」という相手ならメッシは右サイドまたはトップ下で起用したいということでしょう。やはりメッシのCF起用はクーマンにとって本意ではないんでしょうかね

ディナモ・キエフの陣形

ディナモ・キエフのシステムは4-1-4-1。これは第1節ユベントス戦でも同じだったので、チームの基本フォーメーションなのだと思われます。バルサ相手に対してはプレスよりも4-5-1で後方のスペースを消すことを優先していました。

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ディナモ・キエフボール非保持時

今のバルサ相手には闇雲にプレスをかけるのではなく、後方のスペースを埋めて攻撃のスピードを落とし、ボールロストを突いて薄い後方ユニットをロングカウンターで仕留めるのが有効な戦略になっています。ディナモ・キエフのアプローチは最近のバルサの試合を鑑みると非常に理に叶っていたと思います。

不運だったのは、開始早々にPKを与えて失点してしまったこと。メッシに上手くブロックの隙間を突かれてのPK献上でした。あれはメッシを褒めるべきでしょうね。ただ、試合全体としてディナモ・キエフのDFライン・中盤は若干ライン間にボールが入った時の反応(囲い込み)が鈍いような印象はありました。

首尾よく先制したバルサディナモ・キエフのブロックに対して外からの攻撃で足掛かりを作ります。右はデスト、左はアンスを中心にいくつかのチャンスをサイドから生み出しました。特に単騎の仕掛け、ラインブレイク、大外からのクロスとバリエーションが豊富なアンスはこういう試合では生命線となります。

メッシを右サイドに置いたのも、外から崩していく意図が多少なりともあったからかもしれませんね。メッシが右から仕掛けるシーンはそれほど多くはありませんでしたが…。

しかし、グリーズマンやペドリが決定機を決められず、シュート13本を放ちながら前半に追加点を奪うことはできませんでした。この試合に関しては外からのチャンスメイクが上手くいっていただけに、決定力を欠いた格好です。追加点を奪えないバルサは徐々にペースをディナモ・キエフに握られることになります。

やっぱり弱い右側の守備

先制点を献上した後はしばらくバタバタしていたディナモ・キエフですが、やがて突破口を見つけます。

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脆いバルサの右サイド

当然、バルサの弱点はメッシが守備しない右サイドの守備。そこに気づき始めたディナモ・キエフは高確率でフリーになる左SBを使ってバルサを混乱させます。GKから始まるビルドアップなどはグリーズマンが右サイドを埋めていたりするのですが、そうでない時は右サイドハーフの位置に誰もいないという摩訶不思議な状況に陥ります。

となると負荷が掛かるのは右ボランチピャニッチ。広い範囲をプロテクトする必要性に迫られました。これはラキティッチビダルがやっても厳しいタスクだったので、彼らよりもフィジカル面で強度が低いピャニッチには酷なお仕事でしょう。

そのため、右SBのデストが数的不利に陥るシーンなんかもあったのですが、そこはギリギリなんとか対応してくれていました。ストの守備能力が前評判よりも遥かに高いのは本当に有難いですね。

これだからメッシの右サイドはどうなんだろうと思ってしまいます。今日はペドリをトップ下で使いたかったのでしょうが、メッシを右サイドに置くメリットよりも遥かにデメリットの方が大きいと思うのは僕だけでしょうか。ベストはCF、ダメならトップ下がギリギリの許容範囲かなと思います。

ディナモ・キエフはこの左サイドの攻防を足掛かりにカウンターでいくつかチャンスを作り始めます。完全に裏を取られるシーンが多く、この試合から復帰のテア・シュテーゲンのセーブがなければ負けてもおかしくなかったと思います。

そして前節アラベス戦のレビューでも指摘した通り、ボール保持時の配置、特に2ボランチのバランスがおかしくなっているので、CB前のフィルターが正常に作用しないという問題があります。

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アラベス戦でも見られたアンバランスな配置

ここの設計が甘々なので、最後はフレンキ―のカバーリングやGKのビッグセーブに祈る!みたいなカウンター対応になってしまうのです。ということで今のバルサはリトリート→ロングカウンターにめちゃくちゃ弱いわけです。リトリートする相手を崩そうと躍起になってバランスを崩し、ロスト後にそこを突かれてカウンターを受けるという悪循環です。ここはセティエン政権から変わらない課題です。

 

試合雑感

またしても上手いこと得点が奪えなかったバルサですが、この試合でのビッグチャンスは6回。アラベス戦は2回でした。アラベス戦はそもそも決定機を作れなかった試合で、このディナモ・キエフ戦は決定機を活かせなかった試合と表現することができるでしょうか。グリーズマンやペドリのが1つでも入っていたらもう少し試合は楽になっていたかと思います。ただ、相手のGKのレベルは非常に高かったですね。

そして相手のディナモ・キエフの決定機も5回。内4回は復帰初戦のテア・シュテーゲンが防ぎました。彼がGKとして優れている能力の1つがアタッカーとの1対1の局面で「我慢できる」こと。ギリギリまで上体を起こした状態でアタッカーと対峙できる体幹の強さを持っているので、最後に足が出るのです。今日のシュートストップは見事と言う他ありませんでしたね。

正直ここまでのネトのパフォーマンスも悪くなかったと思いますが、やはりテアの存在感は別格ですね。特に最近はカウンターに対して異常に脆いので、1対1で止めてくれるテアの存在は大きいのでしょう。ただ、セティエン時代と比べるとGKがビルドアップに関わる回数は減っているので、テアが戻ってきてそこはどうなるのか気になるところです。

そのテアがいなければこの試合で勝ち点3を失っていたかもしれません。追加点を早めに奪えなかったのが大きな要因ですが、それだけではありません。今のバルサはボールポゼッションで試合をコントロールできていないのです。追加点を奪えないながらに、ボールを効果的に保持して相手のスタミナと戦意を削っていくことができていません。

カウンターを受けすぎてしまう理由の1つもまさにこれで、優れたゲームメイカーの不在が影を落としています。稀代の名手であったシャビ・エルナンデスの退団から早5年。その後継者たるアルトゥールはチームを追われ、リキ・プッチはベンチに置かれたまま。そのため、ボールは支配するけど、試合は支配できないという微妙な展開に陥ってしまうわけです。

クーマンはゆったりしたポゼッションをあまり好んでいないようで、早めに前線の選手にボールを供給するように指示しているような気はします。それはそれでいいのですが、もう少しボール保持時の緩急は必要なのかなと思います。もっと相手を揺さぶる・引っ張り出す・疲れさせるプレーが必要です。

ただ、メッシがいるとどうしても攻撃方向が直線的になってしまうのが難しいところ。アラベス戦でも書きましたが、メッシはあくまでラストパサーであって試合を作る選手ではないということは頭に入れておかなければなりません。だからこそメッシを低い位置に置くのはどうなんだろうって話です。もう少しライン間でフラフラしてくれていたほうが相手にとっては嫌な気はします。

特に低い位置で受けたメッシからアルバへのフライスルーパスの王道パターンは既にバレています。分かっていても止められないのが今まででしたが、怪我明けのアルバは本当にキレがないのでここ数試合は彼らしい裏抜けが見られていません。さらにスアレスという最愛のポスト役がいなくなったことで、楔からのシュートというもう1つの黄金パターンが無くなったのも痛いところです。

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封じられるアルバアタックの図

この試合でパフォーマンスが良かったのは左サイドのアンス(できれば得点が欲しかった!)でしょうか。やはり彼はスペースのない状況でも強みを出せるのが強いところです。フレンキ―の左CBは悪くなかったと思いますが、ポジショニングの部分でまだ改善は必要そうですし、そもそも中盤にもフレンキ―がいないと困るという話でもあります笑

あと、言及したいのはデンベレ。今季のデンベレはよく縦へのドリブルで違いを作っています。

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これは昨年の夏に書いた記事なのですが、まさに僕はデンベレに縦突破を求めていました。今季は吹っ切れたようにスピードを活かしたシンプルな突破が目立つので良い兆候ですね。一度縦を見せておけば、ユベントス戦で決めたような内側への切り返しからのシュートの効果もより高まるはずです。

ただ相変わらず守備面は適当です。失点シーンも暢気にジョギングしてちょっと足出しましたくらいの守備でしたし、途中出場にも関わらずいて欲しいところに立ってないことはやっぱり多いですね。この非保持時の甘さでデンベレもトリンコンも先発で使いづらいというのはちょっと勿体ないところですね。

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バルサはここまで9試合の公式戦を消化しました。フィールドプレーヤーの出場数をグラフにしてみました。過密日程ですが、一部の選手にかなり負荷がかかってしまっていますね。それこそフレンキ―やメッシは代表でもフル稼働でしょうから、どこかのタイミングで休ませて欲しいところです。リーグ戦は余裕がないでしょうから、CLの残り試合のどこかでベンチから外す勇気は必要ですね。

さて、次はベティスとのホームゲームに臨むバルサ。リーグ戦はここ3試合で白星がありませんから、良い形で勝利して代表ウィークを迎えたいところですね。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。