こんにちは。さて、とうとうやってまいりました今シーズン2回目のクラシコ。ここまで25試合を終えて、バルセロナが勝ち点55で首位、レアル・マドリードが勝ち点53で2位。勝ち点差2で迎える伝統の一戦です。バルサは勝てば2位との勝ち点を5に広げられる絶好の機会。逆に敗れれば首位陥落となります。
前半戦のカンプ・ノウでのクラシコでは、マドリ―の圧力に終始押されました。結果はドローでしたが、ほぼ内容として負け。今回のクラシコではその分のリベンジもして欲しいところです。
■スタメン
スタメンです。マドリ―の方でサプライズは左サイドバックのみ。今シーズンファーストチョイスになりつつあるメンディではなくマルセロがチョイスされました。モドリッチやベイルはベンチからのスタート。イスコやバルベルデの配置に注目が集まるところですね。
一方のバルサは、ジョルディ・アルバがこの大一番に間に合わせてきました。ぶっつけ本番ですがコンディションは大丈夫でしょうか。熾烈な争いが繰り広げられる左CBはラングレではなくウムティティが起用されます。前線の一角にはブライスワイトやアンス・ファティではなく、ビダルが入ります。彼が左なのか右なのか、それともトップ下なのか。僕の試合前の予想としては右に置いておきます笑
■前半
マドリ―の方針
試合開始からいきなり僕の戦前の予想は外れました。マドリ―は4-3-3ではなく、イスコをトップ下においた4-2-3-1を基本システムにしてきました。バルサはボール非保持は明確な4-4-2で守ります。
マドリ―は当然、ホームなので前からプレスをかけます。イスコトップ下ということでブスケツに貼り付けるのかなとも思いましたが、必ずしもそういうわけではなく。ハイプレス時はイスコはCBまでプレスをかけ、ブスケツはカゼミーロかクロースが監視していることが多かったですね。
結構特徴的なのはSB(特に右サイドバックのカルバハル)が内側にポジションを取って中盤中央に位置する選手(フレンキ―)を掴まえにいきます。その分、サイドのスペースは空いてしまいますが、そこはスピードのあるヴァラン、ラモスの両CBで十分カバーできる!が前提の構築ですね。ヴィニシウスとバルベルデの両SHは中央を気にしつつ、バルサの両SBを監視する役割を担います。
プレスが搔い潜られれば、自陣で4-4-1-1(もしくは4-4-2)のブロックを築きます。フィジカルに優れた選手が多いので、この辺りの切り替えは早いです。狙いとしてはまずボールを奪ったらベンゼマやイスコを経由したショートorロングカウンター。カウンターが無理な場合は、クロース・マルセロのいる左サイドを中心とした遅攻。
速攻時も遅攻時もキーになったのは左サイドのヴィニシウス。積極的に左サイドの高い位置でボールを受けて、仕掛け・クロスで度々脅威になりました。これはいつも通りですが、ベンゼマやイスコは左に寄る傾向があるので、攻めは左サイドに偏ります。右はバルベルデが何度か単騎で攻め込んだくらいですかね。
バルサの方針
先日発売されたフットボール戦術批評での、西部謙司さんの言葉を借りるとレアル・マドリードは「それぞれの分野で世界2番目くらいの実力を持った」チームです。突出した特徴がない一方、ハイプレスもリトリートも、カウンターもボール保持も、それなりにこなせてしまうのがマドリ―の凄さです。あらゆる局面に対応しやすいチームということですね。
一方、バルサはそれとは逆に得意なことと苦手なことがはっきりしているチームです。それが魅力でもあり、脆いところでもあります笑。
さて、セティエンは初クラシコでどのようなプランを練ったのでしょうか。方針は大きく分けて2つ。
- 無理にハイプレスにいかず4-4ブロックを後方に築く。
- カウンターを仕掛けずゆったりとしたテンポでボール保持
2つの方針に共通して見える狙いはプレースピードを落とすこと。素早いトランジション対決を避ける意図があったのだと思われます。1はバルベルデバルサの遺産ですね。4-1-4-1や4-4-1-1で守らなかったのは選手たちが4-4-2に慣れているからでしょうか。後ろに重心を置くことでマドリ―の速攻の機会をできるだけ削ぎたかったのだと思われます。
そして、ボールを奪ってから急いで攻める意図はほとんどありませんでした。速攻のチャンスでもあまりスピードは上げず、ボール保持を優先していました。ここはバルベルデバルサとは異なるところ。4-4ブロック+ボール保持。バルベルデバルサとセティエンバルサのミックスのような構成ですね。現在のチームが得意なことで勝負したという格好です。
何だかセティエンって意外とリアリストだと思いません?もう少しクライフ主義に傾倒したロマンチストかと思っていたので、そこはちょっと意外だったなと。
今朝のクラシコで確信したのは、セティエンは思ってたよりずっと保守的だったってこと。保守的って言い方よくないか、リアリスト。就任当初のイメージからすると、「ベルナベウクラシコでもアタッカー3枚+リキでガンガン行くぜ!」だったんだけど。
— Hikota (@BarcaHikota) 2020年3月2日
これが良いのか悪いのかは人によって違うよね。
ということでバルサの前半の優先事項は「攻める」よりも「ゲームのスピードを殺してコントロールする」ことだったように感じました。まあアウェイですからね。それにしても冷静な判断ですよね。多分助監督のサラビアさんが色々と助言しているのだと思いますが。良いのか悪いのかは分かりません。
なので前半は、序盤はマドリ―が押し気味な印象もありましたが、徐々にバルサが試合をコントロールし始めて主導権を握った印象です。決定機もバルサは3つほど作りました(どれかは決めておきたかった!)。
バルサのボール保持の肝は中央の流動性です。中盤から前の6人(ブスケツ・アルトゥール・フレンキ―・ビダル・メッシ・グリーズマン)はポジションレスに動き回ります。多かったパターンとしてはグリーズマンやビダルなどが相手のCBを引っ張り出してその裏を突く動き。
例えば38分のメッシの決定機。メッシがブスケツからのスルーパスを受けてクルトワとの1対1を迎えたシーンです。このシーンでは本来左インテリオール/左SHのフレンキ―と、グリーズマンがマドリ―の両CBの注意を引き、メッシがその背後を突く完璧な崩しでした。
■後半
サイドハーフの立ち位置変更
後半からの選手交代はなし。バルサはここからギアを上げようとしますが、マドリ―の立ち位置の修正がバルサを機能不全に追い込んでいきます。具体的にはSHの2人、特にヴィニシウスが内側を意識したポジションを取るようになりました。前半は対面のセメドについていくことの多かった彼ですが、後半は意図的にセメドを空けている立ち位置が目立ちました。
意図は恐らく2つ。
- SBにボールを誘導し、そこでボールを奪う
- 中央に人を集めることでバルサの中央の選手たちからスペースを奪う
という方向にチームの意識を統一したように感じました。これによりバルサのボール保持を徐々に制限し、リズムを奪っていきます。バルサは中盤中央でパスミスを連発し、主導権を握れなくなってしまいました。
特にこの戦術変更により苦境に立たされたのがビダル。ほとんどのタスクをさらっとこなせてしまう彼ですが、やはりこのレベルのインテンシティの中盤でボール保持できるほどのスキルはありません。彼のところでボールロストやパスカットされるシーンは目立ちました。
では、バルサはどうすればよかったのか。僕は後半のマドリ―のやり方を見て、もっとサイドを使うべきだと思いました。バルサの悪いところとして、徐々に中央に攻撃が偏ってしまうことが挙げられます。このように厳重に中央を閉じてくる相手に対してサイドを使えないのは致命的です。
特にこの試合を通してマドリ―の右SBカルバハルはほぼボランチのような位置でフレンキ―をマークしていました。もちろん理由はバルサに中央で数的優位を作らせないためです。これはかなり徹底されていて63分のベンゼマの決定機は、カルバハルがピッチの真ん中でフレンキ―への縦パスをカットして生まれたものでした。
カルバハルがこのようなポジションを取れるのは、シンプルに対面のサイドの選手がいないからです。バルサはこの試合ウイングを置いていませんからね。ゾーンベースで守っているのであれば、サイドのスペースを埋めるところですが、カルバハルは積極的に人を捕まえにいきます。
例えば中央で苦戦しているビダルを左サイドに回してカルバハルをピン留め。フレンキ―のマークを緩めてそこから起点を作る。このような対策があってもよかったはず。もちろんビダルに代えてアンスを左に入れるのも良いですね。
まあリスクもありますし、これは単なる机上の空論ですが、結果的にセティエンはこのマドリ―の勢いを止める処方箋を出すことはできませんでした。セティエンとサラビアがこのクラシコに向けてかなり周到な準備をしてきたことは、前半の試合巧者ぶりから伝わってきます。しかし、相手の変化に対しての対応力は少々甘かったですね。
こうして上手くいかなくなってきたタイミングであの55分のピンチが訪れるわけです。相手のCKに対して全員が目線を切っている状態でクロースが素早くショートコーナー。イスコのコウチーニョ砲は間違いなくゴールに値するものでしたが、テア・シュテーゲンの超人セーブで難を逃れたあのシーン。この55分のシーンに軸を置いたRioSamさんのレビューがこちらです。素晴らしい記事なのでこちらも是非。
あのリバプール戦を想起させるようなプレー。「またかよ!」と突っ込みたくなるような醜態に対してファン・サポーターが不満を募らせるのも無理はありません。そのため、チームのメンタルに敗因を求める論調は結構ありますね。
間違いなくこのチームの弱点は「熱量」であったり「メンタル」の部分です。しかし、少なくともこのブログで「チームの弱点はメンタルが弱いこと!お前ら気合入れろよ!」と書いても仕方ありません。
勝負を決定的なものにした交代
セティエンがこの劣勢に対して対策を打ったのが69分。精彩を欠くビダルに代えてブライスワイトを投入します。ブライスワイトはビダルと同じ右サイドに入ります。個人的にはブライスワイトを左に持っていき、フレンキ―かグリーズマンを右に回すのかと思っていただけに少々意外でした。
そのブライスワイトがいきなり魅せます。右サイドから走りこみ、持ち前のスピードを活かしてスルーパスを引きだすと、マルセロに走り勝ち、クルトワと1対1。これはクルトワに阻まれますが、いきなり可能性を見せつけます。それにしてもこの試合のクルトワは当たりでしたね・・・。
これで持ち直せるかと思われましたが、その直後でした。クロースが左サイドでボールを持つとヴィニシウスが裏に抜け出し、スルーパスを引き出します。ヴィニシウスはそのまま中央に切れ込みシュート。これがピケに当たってコースが変わり、テアシュテーゲンが守るニアサイドを撃ち抜いてマドリ―が先制に成功します。
痛恨だったのが、この時ヴィニシウスにつくべきだったのが交代したばかりのブライスワイトだったこと。彼はクロースからスルーパスが出る瞬間棒立ちになっており、ヴィニシウスを掴まえることができませんでした。4-4-2で守るチームにおいてサイドハーフの守備挙動は非常に重要です。特にバルサの4-4-2ではサイドハーフの頑張りは不可欠です。ブライスワイトが悪いわけではありませんが。ビダルからブライスワイトの交代で単純に右サイドの守備力は落ちてしまいます。
前述の決定機でブライスワイトが決めていれば、セティエンの名采配!として評価されていたと思うので、結果で判断するのはできれば避けたいところです。ですが、合流したばかりのブライスワイトではなく、グリーズマンのほうを4-4の守備に組み込んだほうが合理的だったのではないかと思います。あくまで結果論ですが。
この一撃は非常に重く、セティエンは80分にラキティッチとアンスを投入し、同点弾を目指しますがシュートを撃つこともままならず。逆に後半ATには途中出場のマリアーノ(なんと今シーズンリーガ初出場!)に追加点を献上し、万事休す。このまま試合は終了。バルサはこれで首位陥落です。リーガの行方はこれでわからなくなりました。
■雑感
率直に悔しいですね。やはりクラシコで負けるのは悔しいです。しかし、言い訳することはできません。純粋にマドリ―の後半の対応力と、選手たちの頑張りに完敗です。本当にマドリ―に負けるのは久々ですね。バルベルデ1年目のスーパーカップ以来です。言い逃れできない完敗です。この現実を受け止めて前に進むしかありません。
前半は良かったと思います。しかし、後半の低調ぶりは大きな課題として残りました。後半のシュート数はわずか3本に抑えられました。クラシコにめっぽう強いルイス・スアレスの不在ももちろんあったと思います。ヴァランやラモスの行動範囲を狭めていたのはいつも彼でしたから。
今回はセティエンの采配どうかな?という部分も書きましたが、彼のチームがまだ始まったばかりであることを忘れてはなりません。厳しい条件の中で監督を務めていることもまた事実。ここは忍耐強く見守らなければなりません。クラシコの敗戦で風向きは悪くなるかもしれませんが、ファンは応援するしかありませんね。
最後になりますが、お知らせです。Twitterでは既に告知しましたが、このレビューをもってしばらくブログをお休みさせていただきます。毎回楽しみにされている方には本当に申し訳なく思っています。すみません。できるだけ早く戻ってきたいと思っていますが、もしかするとこれがシーズン最後のレビューになるかもしれません。
休止前最後のレビューが負け試合なのは残念でしたが、負け試合のほうがレビューの書き甲斐はあります。今後のバルサを考える上で、少しでもこのレビューが参考になれば嬉しいです。そして僕がいない間にたくさんの人がブログ書いてくれたらいいなと思います。
バルサの試合前後はTwitterにちょくちょく現れるかもしれないので、是非フォローお願い致します。
最後までお読みいただきありがとうございます。