皆さん、こんにちは!さて、今回はセティエンバルサを読み解くシリーズ第6弾です。なんだかんだ、6回目まで来ましたね笑。ちなみに前回の記事はこちら。
今回は、バルベルデ時代のバルサと比較しながら、セティエンバルサの今後解決するべきある課題を論じていきたいと思います。データは『FBREF』、『WhoScored』から引用しています。尚、コパ・デル・レイ、スーペルコパの試合はデータが少ないため、外しています。データは第31節終了時点のものです。
■バルベルデバルサと比較すると・・
まずはバルベルデバルサとセティエンバルサで一体何が変わったのか見ていきましょう。まずは重要なゴールの要素から。
エクセルで適当に作った味気ないグラフですみません笑。試合数が違うので、あくまで参考程度ですが、バルベルデ時代は得点も失点も多かったのに対し、セティエンが就任して以降は得点も失点も1試合あたりかなり減っていますね。バルベルデ時代は点がたくさん入って、それに比べるとセティエンになってからだとやや静かなゲームになることが多い印象はありますよね。
そして実際のシュート数はこんな感じに。
シュート数はほぼ変わらず、相手のシュート数が1試合当たり約2.5本減っている格好です。シンプルに相手の攻撃回数(シュート数)を減らすことで、失点が減っているという見方はしていいでしょう。特に中断明けてからはクリーンシートが続いていますし、バルベルデ時代よりも守備の安定感はあるのかもしれません。
その一方で、シュート数がほとんど変わらないのに、ゴール数が下がっているのは課題として挙げられます。これは原因を考える必要がありそうですね。最近流行りの指数として、ゴール期待値というものがあります。簡単に言ってしまうと1本のシュートに対してどれほどゴールの確率があるのかを様々な観点から計算した数値です。詳しくはこちらの記事を是非。
で、バルサの1試合あたりのゴール期待値がこちら。分かりやすく、実際のゴール数も合わせて載せておきました。
ご覧いただければ分かる通り、ゴール期待値が高い、つまり入りそうなシュートをより撃っているのはセティエンバルサになりますが、実際の数値として得点を多く挙げているのはバルベルデバルサということになります。なんだかヘンテコなデータですよね笑。
■ゴール数が減った理由は?
セティエンバルサの得点があまり多くない理由として、1人の選手に触れないわけにはいきません。ルイス・スアレス。リオネル・メッシ最愛の相方であり、バルサの絶対的なストライカーの彼はバルサの得点という部分に関して重要なカギを握っています。セティエンの就任と共に手術を受け、離脱した彼はセティエンバルサではまだ4試合の出場、うち先発は2試合です。
中断明けはまだコンディションも上がってきていないようですし、スアレスが本調子に戻れば、自ずとセティエンバルサの得点数も上がるのではないでしょうか!スアレスに大いに期待しましょう!だけだと面白くないので、もう少し深掘りしてみましょうか。
セティエンが就任して以来、劇的に変わったのがポゼッション。ビルドアップの設計に拘るセティエンはまず第一にボールを保持することをチームに求めます。時にはボールを放すことも厭わなかったバルベルデ政権に比べるとこれは大きな変化です。本来ボールと主導権を握るのがバルサ流ではあるので、これは正しい流れだと思います。
しかしながらボールポゼッションが向上しているにも関わらず、シュート数のスタッツが上がっていないのはやはり気になるところ。ボール保持は目的ではなく、あくまでゴールへ向かう手段であるわけですから。
気になったので、今季のボールポゼッションが60%を超えているチームとセティエンバルサを比較してみました。
今季欧州のチームでポゼッションが60%を超えているのは、バルサ以外だとバイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、そしてパリ・サンジェルマンの4チームです。リーグが違うのであくまで参考までに。セティエンバルサのボール支配率はこれらのクラブと比べてもダントツの数字を誇っています。ですが、シュート数は4チームの中で断トツの最下位。
今季のボール保持率が高いチームでセティエンバルサよりもシュート数が低いのは、欧州全体で13位の保持率55%のベティスまで下らなければなりません。明らかに今のバルサはヨーロッパの中でも「高いポゼッションがシュート数に結び付いていないチーム」と形容することができそうです。
ルイス・スアレスの不在は確かに大きなファクターの1つではありますが、シュートを「決める・決めない」以前にシュートが撃てていないのはチーム全体で考えるべき問題であるのではないでしょうか。もちろん、スアレスの貢献はゴールだけではないので、そこも深く関わっているんですけどね。
ただ、このデータから、「ボールを保持するために保持している」と形容されてもおかしくはないのかなと思います。ポゼッション向上=得点の増加とならないのがサッカーの面白さではあるわけですが、ちょっとこの数字は問題視すべきでしょう。
■改善すべき崩しの局面
ここで、ここまで見てきたセティエンバルサの特徴を整理をしてみましょうか。
・ボール保持率の向上
・失点・被シュート数の減少
・得点の減少・シュート数は横ばい
ボール保持率の向上と、失点・被シュート数減少は密接に関係していると考えて良いでしょう。シンプルにボールを持っている時間が長い分、相手の攻撃回数を減らすことに繋がっているということですね。バルベルデ時代と比べても守り方や守備陣のメンバーが大きく変わったということもありませんし。という意味では、セティエンバルサのボールポゼッションには全く意味がないぜ!ということではないわけです。
よって、今後バルサがボール保持時に解決していく問題としては「如何にボールポゼッションの高さをシュート・ゴールに繋げていくのか?」がメインになってくるわけです。具体的には、崩しの局面でどのようにして相手の整った守備ブロックを崩していくのか?に主眼を置くべきではあるわけです。
ボール保持率が高くなった副作用として、バルベルデの時に比べるとカウンターの機会が減ったように思われます。カウンターは定義が難しく、データにはしにくいようなので、あくまでこれは僕の主観ではあるのですが、セティエンになってからのバルサはカウンターにいけそうな場面でもボール保持を優先する振る舞いは目立つところです。これは後半戦のクラシコで特に目立ちました。
つまり相手を自陣に誘い込んで敵陣にスペースを作ったうえで、オープンスペースにアタッカーが襲い掛かるカウンターアタックは減少し、ゆっくりとボールポゼッションをするために、整った守備陣形を相手にすることが多くなっているのではないでしょうか。「崩しの局面で相手が待ち構えていて、それをどう崩すの?」というのが問われてくるわけです。
特に中断明けに良く見られるのが、相手が中央で待ち換えているにも関わらず強引な中央突破を試みて潰されるシーン。広くサイドのレーンを使うのではなく、あくまでメッシ‐スアレスのリンクを駆使した中央突破を試みる傾向は非常に強いです。
バルベルデ時代に良く見せていたカウンターであれば、強引な中央突破も成立します。しかし、セティエンバルサでは保持率が高いために、相手が守備を整える時間も多分にあるわけです。つまりビルドアップの局面から、ファイナルサードへの侵入はスムーズに改善されたバルサですが、そこからの崩しの局面ではあまり工夫が見られないのが現状です。
何というか、バルベルデ時代の感覚のままで崩しは行っているような感覚すらあります。ならば、もう少し崩しの局面でサイドを広く使い、相手の守備陣を1枚ずつ剥がしていく根気強さが今後セティエンバルサに求められるところではないでしょうか。そう、根気強さです。今のバルサは焦れて勝負のボールを入れるのが早すぎるのです。
サイドのレーンを効果的に利用するために、各駅停車のショートパスではなく、ダイレクトやサイドチェンジのパスを多用することで相手の守備陣に揺さぶりをかけるべきです。正直いまのバルサの敵陣でのパス回しは、なかなか相手の陣形が横に動かないので、効果的とは言い難いことが多いのは事実。
「そんなこと言われても、そもそもサイドプレーヤーがいねえんだよ!何怪我してくれてんだデンベレの野郎!」がセティエンの本音かもしれません。サイドのレーンで幅を取れるセルジ・ロベルトの離脱も正直痛すぎます。しかし、この課題を解決しない限り、セティエンバルサに未来はないと僕は思っています。
これでもかと中央突破とコンビネーションに固執するメッシ・スアレスに全てを委ねるのか。それとも、別のアプローチを選手に植え付けるのか。全てはセティエン次第です。
試金石は、33節に控えるアトレティコ戦。中央の堅さは世界有数です。バルサは今季のアトレティコ戦で計3ゴールを奪っていますが、そのうち2つはカウンター、1つは大外からのクロスによるゴラッソでした。アトレティコの守備ブロックを崩すのは至難の業ですが、セティエンはどのような策を練るのか。未来はここで分かれるような気がしてます。
最後までお読みいただきありがとうございます。