Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】19-20 CL準々決勝 バルセロナ対バイエルン・ミュンヘン

こんにちは。さて、先日の決勝トーナメント1回戦でナポリを下したバルサは準々決勝でバイエルン・ミュンヘンと対戦します。今季のCLで最多得点を挙げる文句なしの優勝候補との激突です。
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■スタメン

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バルサは前回のナポリ戦から2人の先発変更。出場停止だったブスケツビダルがチームに戻ってきました。予想通り、セティエンはこの大一番でも中盤の選手を4人起用してきました。ラキティッチ、リキ、アンス、グリーズマンがベンチに控えます。

一方のバイエルンは1回戦のチェルシー戦と全く同じスターティングメンバー。練習中に軽い負傷を負った左SBのデイビスですが、ちゃんとスタメンに入ってきました。こちらはジューレ、トリッソ、コウチーニョ、コマンなどがベンチに入っています。

 

バルサの4-4-2とバイエルンのボール保持

バルサの基本的なフォーメーションは4-4-2。個人的にはビダルトップ下の4-3-1-2を予想していましたが、中盤フラットの4-4-2で来ましたね。このシステムを使うのは第26節のクラシコ以来。

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なぜ4-4-2だったかは、恐らくバイエルンの戦い方を睨んでの事でしょう。バイエルンの攻撃面での大きな特徴はサイド攻撃。右サイドのニャブリと左サイドのデイビスのスピードと突破力は凄まじく、サイドで数的不利になるのは流石にマズいと。4-3-1-2だと相手のSBのケアができないので、そこを恐れての4-4-2なのかなと。

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バイエルンボール保持時

このように明確にサイドハーフ(セルジ・ロベルト、ビダル)を相手のSBにぶつけることで、サイドの噛み合わせを明確にした形です。SBにある程度蓋をすることでバイエルンの得意なサイド攻撃に歯止めを利かせようとしたわけです。

しかし、4-3-1-2に比べると中央が薄くなってしまうのが4-4-2。

バイエルンはボール保持時、チアゴが2CB間に落ち、両SBが高い位置を取ります。WGはどちらかと言えば、内寄りにポジションを取ります。バイエルンの後方2CB+チアゴの3人に対してバルサは2トップ。今日のメッシ、スアレスはいつも以上にはプレスに行く姿勢は見せていましたが、誰か1人は必ずフリーになるわけです。

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頻繁に見られたサイドチェンジ

バイエルンの後方のユニットが厄介なのは3人が3人ともロングフィードが上手いということ。誰かがフリーになればすぐさま長い正確なロングボールを前線に供給することができるのです。

良く見られたのが右CBのボアテングから左SBのデイビスへの対角線のサイドチェンジ。ハーフスペースから逆サイドの大外へ一気に正確に飛ばせちゃうのは流石です。縦へのスピードに優れるデイビスがスペースが多分にある状況でパスを受けられちゃうのでこのサイドチェンジの効果は高いのです。

メッシもスアレスも目の前の相手には頑張れていましたが、流石に2人で3人を見れるほどは頑張れないので、どうしてもフリーでロングフィードを蹴られてしまう場面が多かったです。

ただ、正直この現象は織り込み済みだったはず。ちゃんとスカウティングできていれば。

おかしな状況だったのはブスケツとフレンキ―の守備挙動。ボアテングやチアゴがフリーで、フィードが蹴れる位置にボールを置いているにも関わらず、ゴレツカやミュラーを掴まえに行って、DFラインと中盤の間のスペースを不用意に空けてしまう場面が目立ちました。バイエルンの3点目はフレンキ―が中盤のチアゴにプレッシャーをかけ、その背後のスペースを突かれたものでした。ここに連動感がないのが大問題。

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奪いに行きたい中盤と下がるDFライン

一方のDFラインは裏へのロングボールが怖いので、ラインを上げることができません。特に2CBのピケとラングレはスピード勝負に弱いので、相手にプレッシャーがかかっていない状況ではラインを上げたくても上げられないのでしょう。結果、中盤とDFラインの間に広大なスペースが生まれてしまっていました。要するにチームとしてどう守るのかちぐはぐだったわけです。

どこで奪いたいのか。どこからプレスをかけるのか、DFラインの高さの設定はどこか。その辺りがチーム内で統一されていない感がありましたね。プレスに行ききれないならもう数メートル全体で後退すべきでしたし、行くなら行くで同数のリスクを背負ってでもプレスすべきでした。中途半端なバルサバイエルンレベルのチームは容赦してくれません。

やはりセティエンは細かい守備のディテールを詰めるのは苦手ですね。

 

■圧巻のトランジション

バイエルンのレベルが高かったのはボール保持だけではありません。圧巻だったのはトランジション(切り替え)の部分。流石、ドイツのチームです。

バイエルンの2点目のシーンを振り返ってみましょう。ボアテングがこの試合多く見せていたように左サイドへのサイドチェンジを狙いますが、これは短く、セメドにカットされます。しかし、セメドがカットしたのを見るや否やバイエルンの周りの選手は反応。セメドはすぐに至近距離のセルジ・ロベルトにパスを出すのですが、その間に既に4人の選手が2人の周りに集結していたのです。

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バイエルンのネガティブ・トランジション

結果ボールはあっさり奪われ、ペリシッチにゴールを許してしまったのです。バイエルンは試合を通して「奪われたボールをすぐに奪い返す作業」を怠りませんでした。素早く2~3人でボールホルダーを囲い込みボールを奪ってしまうのです。これができるのはボール保持時の距離感が良いからでしょう。特に前線の選手はかなり近い距離感でプレーしているのはこのネガトラを機能させるためでしょう。

一方、バルサトランジションに対する反応は鈍く、どうしてもボールを奪うと一息ついてしまう悪癖はしっかりとこの試合でも出ていました。ボールを奪った瞬間、どうしても頭が止まってしまうのです。それこそ、すぐさまボールを受ける態勢を作ったり、攻撃・ポゼッションに対する予備動作ができている選手が殆どいないのが現状です。

バイエルンが走るのはトランジションの局面だけではなく、バルサボール保持時もです。基本的にはハイプレス。アラバ・ボアテングのスピードとノイアーの守備範囲を信じ、果敢に全選手が敵陣に入り、ボール狩りに参加します。

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バイエルンプレス

明確な弱点はノイアーが出てこれないSB裏のスペース。現にアラバのオウンゴールを誘発したバルサの同点弾はこのスペースを突いて生まれたものでした。逆に言うとここくらいしか弱点がなく、またバルサバイエルンの圧力を受け、ビルドアップもままならない状態。

中盤に入ったセルジ・ロベルト及び右SBのセメド、ブスケツでさえもバイエルンのインテンシティの前ではまともにボールを繋ぐこともできませんでした。ショッキングだったのは世界で屈指のボールテクニックを誇るGKであるテア・シュテーゲンバイエルンのプレッシャーに屈し、信じられないようなキックミスを繰り返しました。唯一このプレスに対抗できそうだったのはフレンキ―くらいですかね。

バイエルンはよく走る上に、プレスもなるべく相手の利き足を切るようなコース取りをしていました。多く見られたのが、右利きのテア・シュテーゲンに対して左足でのフィードを強いる場面。テア・シュテーゲンはどちらの足でも蹴れる選手なのですが、あれほどのインテンシティの中でやはり右に比べると左の精度は落ちてしまいます。

まともにパスが繋がらないバルサは当然まともな攻撃もできません。シュート数はバイエルンの26本に対して、僅かに7本。前述したサイド裏のスペースとセットプレーくらいにしか可能性を感じない完全に格下のサッカーに終始したのです。文字通り蹂躙されましたね。

リードが広がっても、このプレスを90分間止めないのがバイエルンの恐ろしいところです。ボールを保持して試合を殺すこともできたはずですが、バイエルンバルサを殴り続けることを選びました。ドイツのチームって本当残酷です。

 

■必然の結果に終着

かつて、グアルディオラに率いられたバルセロナは対戦するチームを悉く、そのサッカーの完成度で圧倒してきました。まるで「フットボールとはこうやってプレーするんだ」と言わんばかりに、自分たちのスタイルを世界中に誇示していたのです。

しかし、今回フットボールのレッスンを受けたのはバルサのほうです。現代フットボールのプレーの仕方をバイエルンの監督や選手から学んだような90分間でした。バイエルンは4局面全てで力強く、隙のないチームでした。この試合最も走ったのはトップ下のミュラーでした。前線の選手が脅威の11km越え。これだけのクオリティを持った選手たちがあれだけ走ればそりゃあ強いですよね。

今季メッシよりも点を取っているレバンドフスキですら走っていました。プレスバックも厭わないその献身性は称賛に値します。本当に良いチームでした。これが現代サッカーとしてあるべき姿だと思います。

前半1-4の時点で殆ど勝負は決まっていたと思いますが、バイエルンは手を緩めることなく、バルサのゴールを目指し続けました。一方のバルサは交代枠も2つしか使えず(リキ・プッチは最後まで呼ばれることもなく)、スアレスの一撃以外でバイエルンを殴り返すことはできませんでした。

バルサはまともにブロックを作って守ることも、連動感のあるプレスをかけることも、後方からボールを繋ぐことも、可能性のある攻撃をすることさえも許されませんでした。モダンなバイエルンに対して、カビの生えたような古いサッカーのバルサはただひたすらに無力だったのです。

2-8というスコアは恐らくバルサの歴史に残ることでしょう。しかし、このスコアに何の異議も違和感もありません。僕が今まで観てきた中で一番悲惨だった試合は2014年ブラジルW杯のブラジル対ドイツの1-7だったのですが、それに匹敵するような大惨敗でした。あまりの負けっぷりに悔しいという気持ちすら今は出てきません。

セティエンについては後日じっくり書くつもりですが、今日の試合に関しては監督・選手・フロント全てのセクションに擁護できる要素はありません。「〇〇がミスしていなければ」「セティエンがまともな采配を振るっていれば」このようなタラレバで結果は動きません。クラブとしてチームとして、バルサバイエルンに完敗したのです。

近年バルサは「FCメッシ」、「メッシ依存症」と揶揄されてきました。それは正しい認識です。バルサはこの10年のテーマはいかにしてこのクラブ史上最高の才能を活かしきるか、でした。しかし、今日の試合に関しては「FCメッシ」ですらなかったと思います。メッシにもチームにも輝きはありませんでした。

チームとして何の強みも魅力もなく、敗れてしまったバルサ。これで3年連続でCLからインパクトのある敗退ということになります。当然ここを0地点として変わらなければなりません。何をどう変えればいいのかはまだ見えてきませんが。前回の記事でも書きましたが、監督を変えれば改善するほどバルサの問題は甘くありません。

それにしても途中出場のコウチーニョが2ゴール1アシストできっちりオチをつけているのが切ないですね・・。バイエルンのCLでの健闘を祈ります。

さて、これでバルサの19-20シーズンは終わりを迎えました。皆様、1年間お疲れさまでした。同時に今季のマッチレビューもこれでおしまいとなります。読んでくださった方々には厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。ここからいくつか今季の総括記事も出すので、そちらも是非よろしくお願いします。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。