Hikotaのバルサ考察ブログ

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【プレビュー】19-20シーズン アトレティコ・マドリ―分析

こんにちは!今回は前半戦の山場の1つであるアトレティコ戦に向けてのプレビュー企画!ということで今シーズンのアトレティコを分析していきたいと思います。12月はクラシコもあるので、盛り上がっていきたいところですね。マドリ―編もやりますよ、多分笑。それでは。

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 ↑前回記事はこちらから!

 

■変化したアトレティコ

昨シーズンのまでの主力であったディエゴ・ゴディン、フィリペ・ルイス、リュカ・エルナンデス、ロドリ、そしてアントワーヌ・グリーズマンが昨夏に退団したアトレティコは、新たにフェリペ、マリオ・エルモソ、キーラン・トリッピアー、レナン・ロディ、マルコス・ジョレンテエクトル・エレーラジョアン・フェリックスなどを獲得。一気にチームの新陳代謝を図りました。

刷新したのはチームのスカッドだけではありません。従来のアトレティコのイメージは堅守速攻でしょう。今シーズンのアトレティコは、より能動的に自分たちでボールを動かして試合を支配するスタイルを志向しています。シメオネはこれに毎シーズントライしているような気もしますが・・笑。

昨シーズンの失敗、特に1stレグで2-0でリードをしておきながら、アウェイで0-3で敗れひっくり返された去年のCLユベントス戦はアトレティコにとって大きな教訓になったはずです(これバルサファンにとって死ぬほどブーメランですね笑)。ということで今シーズンは、より後方からボールを配給し、支配をするスタイルへの転換を図っているようです。

昨季CL王者のリバプールは快速3トップの存在から速攻をイメージされがちですが、彼らがリーグでグアルディオラ率いるマンチェスター・シティに肩を並べ、CLを制覇するに至ったのは遅攻を磨いたのが大きなファクターでした。リバプールはこれまで「相手に引かれると弱い」と言われていましたが、SBを絡めた攻撃を磨き上げることでより隙のないチームに進化を遂げました。

最早「堅守速攻」だけではヨーロッパで勝つことはできない時代になったのです。当然、その時代の流れをシメオネは重々承知していると思います。そのため、スタイルの転換を(ほぼ毎年)図っているのです。

 

■ポジショナルな配置を志向

アトレティコと言えば、中盤フラットの4-4-2がお馴染みですが、この4-4-2も今シーズンかなり変化が加えられています。

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アトレティコボール保持(対レアル・マドリー後半)

サイドバックが高い位置をとり、サイドハーフは内側へ。トーマスがアンカーのポジションに入り、サウールは状況に応じてポジションを変化させます。よりポジショナルな配置になっていることが確認できます。中央にかなり人が密集し、サイドバックが幅を取るやり方は今シーズンのレアル・ソシエダに近い部分がありますよね。

ビルドアップの局面でカギを握るのは主に中盤のコケとトーマスです。

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コケのビルドアップ

コケを最終ライン脇に落として数的優位を持って前進を試みるのは、マドリ―のクロースの使い方と近いところがあります。このコケのところを安全地帯としつつ、アンカーに入っているトーマスのダイナミックな縦パスやサイドチェンジで一気に攻撃のスイッチを入れるのが特徴です。

ピケやラングレ、セルヒオ・ラモスほどアトレティコのCBはビルドアップに積極的に関与する印象はありません。あくまでもスイッチを入れるのはコケやトーマスの役割になっています。ビルドアップの局面にCBやGKを上手く組み込めれば、大幅に改善しそうですが、そこは選手のタイプもあるので難しいのかもしれませんね。いる選手とやりたいことが噛み合わないのは過渡期あるあるです。

ビルドアップのフェーズを通過した後は主に高い位置を取る両サイドバックのクロスもしくは2ライン間のコンビネーションがメインウェポンとなりますが、現在アトレティコは13試合を終えて僅か15得点に留まっています。これはリーグでワースト9位の数字になっています。それでもリーグ戦の順位は3位につけているのですから、流石の守備力なわけですが、この得点力の低さは看過できるものではないでしょう。

昨シーズンまでのエースであったグリーズマンの退団、ジエゴ・コスタの不調の影響は否定できないですが、シンプルに現チームの攻撃メカニズムが上手くいっていないと個人的には見ています。昨シーズンと比べてもかなり中央の密集度が高まったことで(CF2人とサイドハーフ2人)、中央の選手たちはより繊細なプレーが要求されることになります。

特にモラタやジエゴ・コスタは「密集地帯で息ができる」タイプではありません。フェリックス負傷後は、彼ら二人が前線に蓋をしてしまい、攻撃が詰まってしまうシーンが散見されています。裏に抜けたりサイドに流れたりするアクション自体も少ないので、攻撃大渋滞!みたいな状況はよく起きてしまっていますね。その後ジエゴ・コスタも負傷してしまいましたが。モラタはクロスボールには滅法強いのですが、フィニッシュ以外の貢献度は気になるところです。

これも先述したスカッドと志向するサッカーの齟齬が生まれてしまっている現象ですね。夏の移籍市場でバレンシアロドリゴを獲得しようとしていたのも今の状況を見れば頷けるところがあります。

 

アトレティコの優位性って何?

最近サッカー界隈で「優位性」という言葉が頻繁に使われるようになっています。「数的優位」とか「位置的優位」とか「質的優位」とかいうやつですよね。これはグアルディオラやリージョ、キケ・セティエンが信奉するポジショナルプレーの考え方から生まれたワードですが、実際を考えればそれほど難しい話でもないと個人的には思っています。

局面において相手より人数が多く(数的優位)、良いポジションにいたほう(位置的優位)が相手よりも有利に立てる。チーム内で一番うまい子が真価を発揮できれば(質的優位)試合に勝てる可能性が高まる。「優位性」という言葉こそ使いませんが、これらの考え方は小学生年代のサッカーでもなんとなく理解されている概念だと思います。少なくとも一般レベルでそこまで深刻に捉える必要はないのかなと(少なくとも僕はそう解釈しています。そんなに単純じゃない!と詳しい方に怒られてしまうかもしれませんが笑)。

基本的にサッカーチームは何らかの優位性をもって、試合を優位に進めています。ここで重要なのはチームにとって何が優位性になるのだろうかという点です。例えば、バルサにとっての優位性はメッシ一択で、現チームにとってメッシを活かすことは至上命題であり、それができれば勝利に近づくことができます。

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では、アトレティコの「優位性」は何なのでしょうか。僕が考える彼らの最大の優位性はディエゴ・シメオネ監督の存在に他なりません。彼の率いるチームのスタイルが好きかと問われればNOですが、彼ほどエネルギーを持って仕事に取組み、自分のスタイルをチームに植え付けられる監督は世界に5人といないでしょう。彼のマネジメントはほぼ「調教」に近いです笑。

シメオネが就任してからサッカーを観始めた人には信じがたいことかもしれませんが、彼が就任する以前のアトレティコは「FWはいいんだけど、守備が・・・」のチームでした。そんなチームに自分のマインドを植え付け、180度スタイルを転換させてしまったシメオネを僕は非常にリスペクトしています。

彼のチームが武器にしているのは中盤のインテンシティの高さです。これに関しては(少なくともリーガにおいては)他の追随を許さない要素です。チーム全体がコンパクトな陣形を取り、相手からスペースと時間を奪う。このインテンシティを武器に相手の中盤を封殺し、試合を塩漬けにして少ないチャンスをものにするのが本来のシメオネアトレティコのスタイルです。

象徴的な試合だったのが、第12節のセビージャ戦です。

 

■セビージャ戦で見せた二つの顔

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12節 セビージャ対アトレティコ

スタメンとフォーメーションはこのようになっていました。アトレティコは前半からボールを保持するセビージャに手を焼きます。特にセビージャの技術の高い中盤の3人(バネガ・フランコバスケス・オリベル)に自由を与えてしまい、1点先制されてしまいます。中盤の勝負で負けていると感じたシメオネは失点直後に、4-3-1-2に立ち位置を変えますが、これは不発に終わります。

当然ポゼッション勝負ではロペテギセビージャには敵わないアトレティコ。左右に開く両SBも上手く有効活用することもできず、厳しい前半を過ごしました。

するとシメオネは後半頭からトリッピアーに代えてアリアス、レマルに代えてジエゴ・コスタを投入します。選手を代えただけではなく、戦い方も大きく変えてきました。

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圧縮アトレティコ

前半と大きく変わったのはボール保持時のSBの立ち位置。特に左SBのロディが内よりのポジションを取るようになっていました。これにより後半のアトレティコはより狭く攻めるようになります。幅を取る選手がいない代わりに中央の密集度は高まり、相手の自由を奪いつつ、中盤のトランジション勝負に持ち込んだのです。

この勝負になれば圧倒的に有利なのはアトレティコ。後半8分には、素早いネガティブ・トランジションでCBからボールを奪ったコレアがドリブルで持ち込み、シュート。アトレティコの勢いに押されてセビージャは引き気味になってしまいます。アトレティコの同点弾は15分。コレアがハーフスペースでレギロンを躱すと内寄りをオーバーラップしたアリアスにパス。アリアスのクロスにモラタが合わせ、ゴール。

この時、アトレティコの選手は全員ペナルティーエリアの幅に収まっていました。個人的にはこれぞアトレティコ!というゴールでした。まさに自分たちの土俵に相手を引きずりこんで主導権を奪い返しました。

 

シメオネの実験は続く

正直、アトレティコシメオネスタイルのままのほうが幸せなのかもしれません。シメオネ就任以前の2シーズンの成績が9位と7位だったことからも、分かるように今のアトレティコにとってシメオネは単なる監督以上の存在になっています。間違いなく彼はクラブレジェンドの1人です。

しかし、前述した通り、シメオネの従来のスタイルだけで悲願のC L制覇を成し遂げるのは難しいのではないでしょうか。バルセロナレアル・マドリーのあの調子がこれからも続くのであればリーガなら可能性はあると思いますが…笑。

それを理解しているからこそ、シメオネも何かを変えようとしています。第13節のエスパニョール戦では可変式の3-4-2-1に挑戦していました。

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ボール非保持時

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ボール保持時

この試合ではボール非保持時に3-4-2-1、ボール保持時に2-3-4-1に変化するシステムを志向していました。特に負担が大きいのは非保持時は3バックの左、保持時は左サイドの高い位置を取るサウールのタスク。長距離のスプリントを厭わないサウールありきの戦術感はありますかねこれは。コケはボール非保持時WB、保持時は中盤化してビルドアップに深く関わります。

ちなみにこの試合の後半からは4-3-2-1にフォーメーションを変えて戦っていました。この配置は解決策になり得るかもしれません。3ボランチで中央のインテンシティを高めつつ、両サイドは高い位置を取って相手を押し込む。現在アトレティコはコレアやフェリックス、レマルなどシャドー適正がありそうな選手が多くいますし。なんだか昨シーズンのバルサに近い配置ですね笑。

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特に今シーズンエースのモラタといい関係を築いているアンヘル・コレアには注目です。スルスルと抜けていくドリブルを武器にしている彼にとって2シャドーの一角は天職になるかもしれません。となると、不安要素は1トップモラタのポストプレーの質ですかね。これからはフィニッシュ以外の局面での貢献も求められてくるはずです。当然この配置の鍵は2列目、3列目の飛び出しですから。

このようなシメオネの実験はこれからも続くと思います。この先アトレティコが従来のスタイルから進化を遂げられるかどうかは分かりませんが、いずれにせよ時間はかかりそうです。問題はクラブや選手、ファンがこの過渡期の時期に我慢ができるかでしょう。何かを得ようとすれば犠牲は付き物です。果たしてアトレティコの挑戦はどこに行き着くのでしょうか。引き続き経過を見守りたいところです。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。