こんにちは!週末の試合でアラベスを5-1と一蹴したバルサ。遂にミッドウィークにCLのノックアウトラウンドを迎えます。
対戦相手はパリ・サンジェルマン。昨シーズンのファイナリストといきなり顔を合わせることとなりました。パリはここまでリーグ戦17勝3分5敗で2位。今季のCLではライプツィヒ、マンチェスター・ユナイテッド、ベシクタシュと同居した厳しいグループを首位で通過しています。
今冬には衝撃的なトゥヘル解任、ポチェッティーノ就任劇がありましたが、それでも現在のヨーロッパで最も力を持つ1チームであることに変わりありません。バルサとしては強敵ですが、ホームであるこの1stレグで先勝しておきたいところです。
スタメン
バルサのサプライズはジェラール・ピケの復帰。11月のアトレティコ戦の負傷から約3ヶ月ぶりに戻ってきました。グループ練習を2回しか消化していない状態での復帰なので、コンディションは心配です。また、コンディション不良が続いたデストも先発に戻ってきており、現状の招集メンバーでベストの人選になりましたね。
PSGは崩しの要であるネイマール、ディマリアが負傷により欠場。一方、負傷していたヴェラッティがこの大一番に復帰しています。3トップはエンバペ、イカルディ、キーンで構成されます。中盤の形は要注目ですね。
両チーム陣形・配置・噛み合わせ
この試合のボール保持率はほぼ50:50と拮抗した展開になったのが特徴的でした。昨日出したプレビュー記事で「バルサはボールを保持できなければ弱い」ということを書きましたが、それを裏付けるようなそんな試合展開だったと思います。
パリのボール非保持時
PSGがどこまでプレッシャーに来るか注目していましたが、それほど前からハメには来ませんでした。
最初は4-4-2っぽいかなとも思いましたが、4-5-1のフォーメーションを基調にゾーン2の中盤の選手にボールが入ったタイミングでプレッシャーをかけるミドルプレスが基本方針でした。そのため、ピケとラングレのボール出しはある程度許容した上で、中盤は必ず掴まえる!というのがPSGの大まかな狙いだったかなと思います。CFのイカルディもブスケツへのパスコースを遮断するような立ち位置になっていました。
バルサからすると昨季のバイエルン戦のような息の詰まるハイプレスをかけられていたらどうしようもなかったので、そこは救いでした。PSGとしてもアウェイですし、ネイマールとディ・マリアが不在なのでそこまでリスクをかける必要はないという判断だったのでしょうか。
その代わり、中盤に入ってくる選手・ボールに関してはかなり厳しくチェックに行くことはポチェッティーノから言われている感がありました。CBは自由にするけど、バルサの中盤の選手達には自由を与えないぞ!的なイメージですね。
ピケとラングレにある程度フリーでボールを持たせる分、DFラインは若干深めに設定されていました。そのため、DFラインと中盤のラインにギャップが空いてしまう場面は散見されました。尤も、そこをバルサが有効活用できたかは別問題なのですが…。
また、両サイドハーフがかなり献身的に守備に参加するのも特徴的でした。キーンはしっかりアルバを監視できていましたし、スター選手であるエンバペもデンベレとクルザワが1対1にならないようにきっちり深い位置まで戻るシーンが多かったと思います。事前に見ていたリーグアンの試合とは全然違って、「話が違うじゃん」って感じでした。リーグ戦ではエンバペはサボりまくっていたので。
消極的なバルサ
ある程度ビルドアップの局面では余裕があったバルサですが、ボール保持で優位に立つことはできず。バルサもまたリスクを背負って攻撃に転じることはしませんでした。
前半のバルサのボール保持時は上図のようなイメージ。強いチームとやる時は決まってこのようにメッシが落ちてきて、ビルドアップの起点となります。2021年に入ってからの決まりで、メッシが中盤化するのと入れ替わりにフレンキ―は前線へ。彼ら2人の縦のポジションチェンジは頻繁に起きます。
バルサの先制点に繋がったPKは、まさに低い位置で受けたメッシのフィードにフレンキ―が抜け出して奪ったもの。ここは明確に狙いの形が出ましたね。メッシ→フレンキーのラインは今のバルサの生命線の1つです。
一方、いつもとアプローチが異なったのが両SB。普段と比べると立ち位置は低めで上がりは控えめでした。メッシが下がったタイミングでジョルディ・アルバがランニングをかけるのが定番ですが、彼が背後を取ったシーンは1度あったかどうか。カウンターに備えていたのか、スプリントはいつもに比べると少なかったです。
それは右SBのデスト。彼が敵陣の奥深くに侵入することは本当に1度もありませんでした。現代ではSBが大外を駆け上がらないことは珍しくないですが、彼はビルドアップでの貢献度も高くないので、文字通り試合から「消えて」いました。
SBの存在感がこれだけないと攻撃に厚みがでるはずもありません。先述の通り、パリはかなり中盤を抑えにかかっていたため、外で起点を作ったり、背後を取る動きはもう少し必要だったかなと思います。
こういう状況だったので、後半のバルサはインテリオールの2人がサイドに流れて起点を作るシーンも目立ちました。何とかして相手の中盤のマークを剥がすorパリの中盤の選手を引っ張り出して、ギャップを突くという狙いは見えました。
前半は低い位置でのプレーに終始したメッシも、後半はあまり降りてこず、高い位置でボールを受けてフィニッシュの局面に関わろうとする修正はしていました。ただ、彼に良い形でボールが入る場面は多くありませんでした。
やはりこの試合ではどのみちSBの効果的なアタックが欲しかったところです。コンディション不良かつエンバペと対面したデストはともかく、アルバにはもう少しアグレッシブにプレーして欲しかったのが本音です。勿論、カウンターのリスクはあったと思いますが、それを恐れているようでは…。
ということで可能性があったのはグリーズマンの単発の裏抜けやデンベレのドリブル、フレンキーの飛び出しくらいですかね。ただ、デンベレはほとんどの場合で1対2の数的不利の状況で突破を試みなくてはならない状況でしたし、グリーズマンのラインブレイクはSBの攻め上がりとリンクしているので有効な一打にはならず。という感じでしたね。
厄介な中盤の2人
繰り返すようですが、ボールを持たれたら弱いのがバルサです。今のバルサはプレッシングが機能していませんし、引いた時の守備強度はバルベルデ時代と比べて明らかに低下しています。
そのため、ヴェラッティの復帰はバルサにとって最悪のニュースでした。キープ力とショートパスでの前進に優れる彼と、長いパスでアクセントをつけられるパレデスのコンビは厄介そのもの。バルサとしてはどっちにも蓋をしたいところですが、物理的に2人にべったり張り付くのは難しいので、どちらかにはフリーで持たれてしまいます。
結局PSGレベルの相手にはプレッシングでボールを奪いに行く力がないバルサは必然的に自陣に守備陣形を構えるほかなくなります。
試合開始から目を引いたのがグリーズマンの立ち位置で、右SBのフロレンツィの位置に合わせて深い位置まで下がっていました。左サイドははっきりとグリーズマン→フロレンツィ、アルバ→キーンとマークがちゃんと決まっていたように感じましたね。
一方の右サイドの守備。デンベレは守備にはきちんと参加するものの、対面のクルザワをそこまで深い位置までは追わず。そのため、右のフロレンツィに比べるとクルザワはフリーで上がってくる機会が多かったです。デンベレはグリーズマンに比べると持久力がありませんし、上下動が多くなると得意のドリブルの切れ味が落ちてしまいます。
これは少し疑問が残った対応で、パリの攻撃は明らかに左サイドに寄っています。それはこの試合に限った話ではなく、直近のリーグアンの試合でも同じ傾向がありました。どう考えてもフロレンツィ&キーンよりクルザワ&エンバペの方が怖いですから。なので左サイドはきっちりと人数かけて守って、右は緩くするというのはあまり納得のいかない話にはなります。
結果論ですが、この試合に限りグリーズマンとデンベレは配置を逆にすべきだったかもしれません。グリーズマンにクルザワを監視するタスクを与え、デンベレは左サイドでフロレンツィを睨みつつ、カウンターに備える形。もしくはデンベレとメッシを最前線にする4-4-2でも良かったかもしれません。
攻撃面を考えるとデンべレは右サイドの方がベターなのですが、今日は徹底マークにあってそれほど真価を発揮できなかったですし、アルバがあれだけ元気がないなら彼を左に置いた方が面白かったかもしれません。まあ超結果論ですけど、レビューなんて結果論の塊ですから()それをやってもちょっとマシだったかなくらいの効果かなとは思いますが。
そんなこんなできちんと整備され切っていないバルサの守備に対してPSGはヴェラッティとパレデスを中心にチャンスを作っていきます。
PSGの1点目はマルキーニョスがオープンな状態で対角線にフィード。フリーで抜け出したクルザワのクロスをヴェラッティが流してエンバペがフィニッシュ。2点目はまたしても低めの位置からパレデスのタッチダウンパスにフロレンツィが抜け出して最後はエンバペが押し込んだものでした。
セットプレーの3点目とカウンターの4点目はひとまず置いておいて、1失点目と2失点目はミドルゾーンからのミドルパスであっさりと背後を取られて生まれたものです。2失点目はあまりにパレデスが上手かったのですが、あの位置の選手に十分なプレッシャーがかかっていない時点で対応は難しいですよね。
バルサが現在抱えているジレンマは、「ボールを保持できないと勝てない、でもプレッシングは機能していない」という深刻なものです。この弱点を克服しない限り、バルサが再び欧州の舞台で主役になるのは難しいでしょう。運動量も戦術も不足しているのでしばらく時間はかかりますね。
試合雑感
プレビュー記事で「バルサがPSGに勝つ条件は、ポチェッティーノがバルサ及びメッシにビビること」と書きました。しかし、実際に逃げ腰であったのはクーマンでありバルサの方でした。両SBがそれぞれ2得点を演出したパリに対して、最後まで消極的だったバルサ。途中出場のミンゲサの攻撃参加が際立つくらい、バルサの選手たちは積極性に欠けました。
2021年に入って好調を維持していたことで見えづらくなっていましたが、今のバルサにこのレベルで勝ち切る力は戦術面でも精神面でもないことが再確認できました。直視するのは辛いですが。国王杯のセビージャ戦に引き続いての完敗は心にくるものがあります。
内容が悪いなりに勝てればいいのですが、今日のバルサはラストパスやクロスの精度を欠き、チャンスになりかけるシーンで勿体ないミスを連発。戦術的に負けていたのは勿論、ディテールの部分でも差を痛感する結果となりました。
クーマンはチームをまとめたという意味ではいい仕事をしたと思いますが、同格以上の相手に勝たせるためにチームに+αをもたらす力はやはり欠けています。そこは監督の能力としての限界かなと思います。連れてきた人が連れてきた人なので、あまり彼自身を責める気にはなれないのですが。
ホームでの1-4の敗戦により、バルサはベスト8進出のためにはセカンドレグで4-0以上の勝利を収める必要があります。アウェイでネイマールやディ・マリアが戻ってくるであろうPSGに失点せず、4得点を奪いきるのは至難の業です。正直、ベスト8進出を現実的な目標として捉えるのはあまりに楽観的でしょう。
ただ、予測不可能なことが起きるのがサッカーというスポーツ。それは他ならぬバルサがここ数シーズン証明しています。たとえ突破が叶わなかったとしてもセカンドレグではこの試合とは違う姿のバルサが見れることを願いたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。