こんにちは。ミッドウィークに延期されていたエルチェ戦に3-0で勝利したバルサは、セビージャとのアウェイ戦に挑みます。
セビージャはここまで15勝3分5敗で4位。バルサとの勝ち点差は僅か2であり、バルサはこの試合に負けると4位に陥落してしまいます。この試合と国王杯準決勝2ndレグで、セビージャ2連戦という厳しい日程ですが、ここ2つ勝たないとリーガも国王杯も可能性が潰えてしまいそうなだけに、2連勝を目指したいところです。
スタメン
ホームのセビージャの前回対戦からの変化としては、ヘススナバスが先発に戻ってきました。スソがベンチスタートとなり、元バルサのカンテラーノであるムニルが先発としてピッチに立ちます。冬に加入したパプ・ゴメスもスタメン入りです。
一方のバルサは、デスト、ミンゲサ、ピケ、ラングレ、アルバとDF登録の5人が先発。ちょっとこれは配置が気になるところです。グリーズマンは2試合連続の先発落ちとなりました。尚、2月頭のベティス戦で負傷したアラウホもこの大一番でベンチに戻ってきました。
変化したバルサの守備
国王杯1stレグで完敗を喫したバルサは、このリーグ戦での大一番で3バックを選択。ガッツリとセビージャ仕様の陣形で挑みます。
バルサのこの日の対セビージャのビルドアップの原則は「同数で嵌めに行くこと」 。明らかにバルサの3-5-2はセビージャの4-3-3に噛み合わせたものであり、自分たちのサッカーを貫く!というよりも「いつも通りのやり方じゃセビージャに勝てない!」とばかりにセビージャ仕様のサッカーに変えてきた形です。
セビージャは中盤が展開によって形を変えることは前回のレビューにも書いた通り。そのため、中盤はケースバイケースでマークを掴まえにいきますが、それ以外のマークは基本的に固定。
バルサのマーク
・2トップ(メッシ&デンベレ)→2CB
・2WB(デスト&アルバ)→2SB
・3CB(ミンゲサ&ピケ&ラングレ)→3トップ
基本1人1殺の構えでセビージャのビルドアップを遮断しに行きます。後方の同数を受け入れてDFラインに絶えずプレッシャーをかけ続ける方針でこのセビージャ戦に臨んだというわけですね。
これは今までのクーマンバルサでは対強豪チームであまり見られないガッツリ同数プレスなので、誰のアイディアなのかなと思ったら、フォロワーさんの1人がドイツ経由で来ているアシスタントのスロイデルの発想じゃない?と考察してくれました。納得感ありますね。
元ホッフェンハイム。ナーゲルスマンと同じ。つまりそっち系の同数でもガツガツはめるぜ!的な思想を持ってそうなのでスロイデルかなって思ってますw
— ゆうゆ (@yuuyu_cule) 2021年2月27日
同数で嵌めに行くことでDFラインにプレッシャーをかけられるようになったのは大きいのですが、当然後方も3対3の同数になるため、リスクとは隣り合わせです。
この試合良かったのは、セビージャの3トップに対して、バルサの3バックが優位性を保っていたこと。特に大きかったのがCFのルーク・デ・ヨングに対して、マーク担当のジェラール・ピケが空中戦で全く引けを取らなかったこと。リーガトップクラスの空中戦の強さを誇るCFである彼ですが、同じく空中戦で強さを発揮するピケの前では違いを作るに至らず。
流石のセビージャも同数で嵌められると、蹴るしかないってなるんですけど、そこで逃げ道となり得るルーク・デ・ヨングへのロングボールをピケが潰せたのは本当に大きかったです。ここはラングレやウムティティだと後手を踏んでいたと思うので、改めてピケの存在感の大きさを感じましたね。
ということで、セビージャのビルドアップを前で引っ掛けることに成功したバルサ。思いっきりセビージャに合わせた戦術になったので、賛否はあるでしょうが、個人的には引くしかなかった前回対戦やPSG戦と比べればこの戦い方で良かったと思います。メッシが前にいる以上ああでもしないとDFラインにプレッシャーをかけるのは難しいでしょうし。
ただ、繰り返しになりますが、リスクと隣り合わせではありますし、かなりのインテンシティは必要になるので毎試合できるわけではないです。例えばセビージャの前線にエンネシリやオカンポスなど個人の能力に優れたアタッカーが並んでいれば違う展開になったかもしれません。
また、このシステムはペドリやフレンキ―の負担が大きいのも特徴です。どっちみち彼らの負担は大きいんですけど、ボールホルダーにプレッシャーがかかっていること前提の戦術なので、マンマークとは言っても誰かが無理をしないと成り立たないのは変わらないです。
デンベレもメッシも頑張って目の前の相手に対してはアプローチには行くものの、攻守の流れで自分のマーカーとの距離が出来てしまうと、流石に長い距離をダッシュして追いかけるというのは難しいです。その分を補完するのはインテリオール2人の役目です。特にペドリのカバー範囲は広く、右サイドまで出てきてマークのズレを埋めるシーンもしばしばあります。
だからこそペドリの離脱は最悪のニュースですし、ここまでのハードワークを考慮に入れると必然でもあります…。
良い守備は良い攻撃へ
そんなこんなで守備が機能して前半はシュートをセビージャに撃たせなかったバルサ。ここまでボール非保持時の局面で上手く運んだのは今季初で、ボール保持ではなくボール非保持時でセビージャをコントロールしていた感がありました。
クーマン(スロイデル)の狙いはセビージャのビルドアップを遮断するだけでなく、ボール奪取後の縦に早いカウンターでした。
それを裏付けたのがデンベレのCF起用です。今季は内側のレーンではあまり上手く行っていないデンベレ。狭い局面でプレーできるだけのセンシティビティに欠けており、コンビネーションでの崩しもまだ難があるため、メッシのいるバルサで中央で起用するのは無理があります。
しかし、カウンターとなれば話は別です。カウンター時の広大なスペースは、爆発的なスピードを誇るデンベレにとって格好の餌。ウイングで起用されていれば、サイドの深い位置まで下がる必要がありますが、この日の非保持時の主なタスクはCBの監視だったので高い位置に残れるという利点がありました。
先制点の場面もそうですし、デンベレを前に残すことでオープンな展開での攻撃に迫力のあったバルセロナ。セビージャは堅固な中央の守備に定評がありますが、オープンな展開となれば流石にメッシとデンベレの方に分があります。
デンベレを前線に置くことのもう1つのメリットが対面のクンデの攻め上がりをある程度牽制できたことでした。
この記事でも書いた通り、クンデのオーバーラップはセビージャにとって大きな武器になっています。バルサも国王杯でまんまとやられました。
初期配置を見た時、デンベレが対面のクンデにどこまでついて行けるか不安だったのですが、実際は逆でした。バルサがいい守備からのカウンターでセビージャ守備陣にプレッシャーをかけ続けたことで、クンデの攻め上がりはほとんどありませんでした。
流石のクンデも自分よりも速い相手を後ろに残して攻め上がるのはリスクだと判断したのでしょう。この日のプレーは一般的なCBに近く、デンベレのカウンターに警戒している感がありました。スロイデル的にこれはしてやったりだったのかもしれません。
狙いの形で先制点を奪い,セビージャにチャンスを与えなかった前半。まさにバルサの意図通りの展開になりました。アプローチはあまりバルサっぽくありませんでしたが、強豪相手にここまで戦術が嵌まったのは今季初です。この采配は良かったと思います。
いい守備をすればいい攻撃に繋がるという展開した。
セビージャは本気で勝ちに来たのか?
後半になると流石に修正したきたロペテギ。怒涛の3枚替えを見せます。システムは3-4-1-2に変更になります。
システムを変えたことでバルサとの噛み合わせをズラす意図があったと思います。上図の赤で塗られた箇所がマークがズレているところです。バルサのプレスは人をそれぞれが掴まえることで成立していたので、マークがズレてしまうと一気に機能不全に陥ってしまうという構造的な弱みがあります。
バルサが前半のようにDFラインにプレッシャーをかけようとするとメッシ、デンベレ以外にもう1人プレス隊が必要になります。例えばペドリが出ていくと中盤が3対2の数的不利になってしまいます。ペドリが出ていかなければ3バックのうちの誰かがフリーになるという塩梅になるわけですね。
セビージャはこのズレを利用して少しずつバルサを押し込み始めます。バルサからすると構造上の問題と並んで、体力的な問題も後半になると出てきます。前半あれだけ飛ばしたら無理もありません。
ただ、結局のところセビージャもバルサを攻めきれず、終わってみればシュートは4本のみでした。
勿論、バルサの守備陣が粘りを見せ、前線の選手も踏ん張ってプレッシャーをかけ続けたのが大きかったのですが、ちょっとセビージャの攻撃にエネルギーが足りなかった感が強いです。
ここでちょっと思ってしまったのは、ロペテギはこのバルサ戦、本気で勝ちに来たのかだろうかという疑問です。
そもそも今季のレギュラーであるエン・ネシリやスソはバルサ戦にも関わらず、ベンチスタートでしたし、同じくビハインドを背負ったCLドルトムント戦の後半はもっとアグレッシブな姿勢が見られました。
ここでチラつくのは4日後の国王杯2ndレグ。セビージャは2点を先行しており、勝ち抜けに有利なポジションにいます。セビージャがどれだけ3位以上でのフィニッシュに拘っているかは分かりませんが、より現実味があるタイトルは明らかに国王杯なので、そっちを優先した可能性は大いにあります。
勿論、あわよくば勝ち点1以上という意図もあったと思いますが、前半でジエゴ・カルロス、ラキティッチの主力組もベンチに引っ込めていることから勝利が絶対の姿勢ではなかったような気はしています。
バルサは2連勝が必須だったので、フルインテンシティしか選択肢がありませんでしたが、セビージャが2ndレグに向けてエネルギーをある程度温存しているとすればちょっと怖いですね。多分この試合のやり方もロペテギはめちゃくちゃ分析しているでしょうし笑
試合雑感
何はともあれ勝ちました!勝たなければいけない試合にちゃんと勝てたのは物凄くポジティブです。ちゃんとリスクを負ってセビージャにDFラインにプレッシャーかけられたのは良かったですね。やり方云々はありますが、チームのアグレッシブな姿勢は感じられました。
個人的に嬉しかったのはブスケツの躍動。衰えを指摘されて久しい彼ですが、やはり前から相手を掴まえに行く試合では悪魔的な活躍を見せます。使い方次第ではまだやれる選手です。今後のバルサの方向性次第ですね。
ネガティブはペドリとアラウホの負傷交代。幸いなことにアラウホは軽症のようですが、ペドリは2〜3週間の離脱になるようです。まだ軽くて良かったというレベルですが、国王杯セビージャ戦は欠場確実、PSG戦も出場微妙となるとかなり痛いですね。ここまでフル稼働だったので仕方ありませんが…。まだ若い選手なので焦らず万全な状態で戻って来て欲しいですね。
さて、次は再三書いているようにセビージャとの国王杯準決勝2ndレグ。0-2のビハインドを背負ってのカンプノウでのゲームなので、この試合とはまた違ったものになりそうですね。ロペテギはまだ余力を残してそうですし、バルサは勝利したものの追い込まれていることに変わりありません。
ただ、バルサがここで逆転突破でもしようものなら、再びチームは勢いを取り戻すはず。依然として国王杯が最も現実味のあるタイトルであるのは間違いありません。勝ちたいですね。
最後までお読みいただきありがとうございます。