Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】現代サッカーに欠かせない「幅」 セルジ・ロベルトがSBで起用される理由

皆さん、こんにちは。日本代表のコパ・アメリカが終了してしまったので、久々のバルサ記事を書いていこうと思います。と言っても日本代表にも大いに関係ある話でもあるので、代表ファンの方も是非。今回のテーマは「サイドバック」です。

 

■守備面の弱点はあるものの

さて、バルササイドバックと言えば、左にジョルディ・アルバ、右にセルジ・ロベルトがお馴染みですよね。今回は右サイドのサイドバックであるセルジ・ロベルトに焦点を当てていくわけですが、彼がSBを務めることに異議を唱えるファンも少なくありません。理由は単純明快で守備力が低いからです。彼はスピードもパワーもせいぜい並以下。スピードのあるアタッカーと1対1になったり、空中戦で狙い撃ちにされたらたちまちその弱点は露呈してしまいます。

そのような明確な弱点があるにも関わらず、彼がバルサの右サイドバックのファーストチョイスとして出場しているのは当然理由があります。事実、セルジ・ロベルトは15-16シーズン以降右サイドバックとして84試合に出場しています。何故彼はこれほどまでにサイドバックとして起用されるのでしょうか。

 

■ちなみにコンバートしたのはルイス・エンリケ

セルジロベルトがSBとしてのキャリアをスタートさせたのは15-16シーズンのプレシーズンだったと記憶しています。当時の監督はルイスエンリケ。本職のインテリオールでインパクトを残せずにいたこのカンテラーノにとってサイドバックへのコンバートはまさにキャリアの転機となりました。

本人も「何かに怯えながらプレーしていた」と述懐していたように、中盤でプレーしていた時のセルジ・ロベルトはどこか吹っ切れない様子でした。ボールを受けるのを怖がり、ポジショニングもバラバラで前線へのフリーランニングを繰り返すものの、ボールは全く出てこないという状況でした。

恐らくSBにコンバートされていなければ彼のキャリアは全く違うものになっていたでしょう。少なくとも現在もバルサでプレーしていることはなかったでしょう。

 

■セルジ・ロベルトがサイドバックとして優れている部分

セルジがサイドバックとして優れている部分は主に2つです。

  1. 単体でプレスを剥がせる能力
  2. サイドのレーンでチームに「幅」をもたせることができる
1、単体でプレスを剥がせる能力

現代サッカーの大きなテーマとして「プレス耐性」というものがあります。最早相手が組織的なプレスを仕掛けてくるのは当たり前で、バルサのようにショートパスを基調とするチームにおいて相手のプレッシャーを搔い潜ることはチームのビルドアップを機能させる上で、重要なファクターになってきます。

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バルサのビルドアップです。相手は4-4-2を想定します。今右CBがボールを保持している状況です。相手はブロックを作ってボールを奪いにきています。図のように相手CFがアンカーへのパスコースを切りながらCBにプレッシャーをかけてきています。相手のボランチ2枚がバルサのインテリオールのマークについており、中央にパスを送るのは厳しそうなので、右SBのセルジ・ロベルトにパスを出します。ただセルジにも相手の左SHが迫っています。さてどのようにこの状況を打開するでしょう。

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答えは「スペースへのドリブル」です。これこそセルジ・ロベルトの十八番です。追い込まれた時にパスではなく単騎で相手のプレスを剥がせる能力は非常に高いものがあります。ポイントはあくまでこのドリブルは「相手を抜くドリブル」ではなく「運ぶドリブル」なので見かけほどリスクを負わずに済むというところです。そしてこのドリブルは相手にとって非常に厄介なものと言えます。当然ドリブルで永遠に前進させるわけにはいきませんから他の選手がスライドしてカバーに入ります。

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相手ボランチが出てきたら

相手のボランチが出てくればラキティッチが空き、中盤で一時的に3対2の数的優位を作ることが出来ます。

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相手SBが出てきたら

相手のサイドバックが出てきたら儲けもの。前方でバルサの強力3トップと相手守備陣の数的同数が生まれます。個人技が凄まじいバルサの3トップは質でかなりの優位性を保っていますから状況としてはかなり望ましいですね。選択肢としては自陣に撤退というのがベターでしょうか。いずれにしてもボールは前に進んでいるのでビルドアップは成功と言えるでしょう。

これは誰にでもできることではなく、セルジロベルトの高度な戦術眼と技術があってこそ成せるものです。バルサのような後方からショートパスを繋いでビルドアップしたいチームに置いてこのドリブルは意外にも大きな効力を発揮するのです。

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ワンツーでも回避

ドリブルではありませんが、このようにプレス回避することも。とにかく落ち着いて相手のプレスを躱せるの、魅力的です。守備力とは単に対人やヘディングの強さで表現できるわけではありません。特にバルサのようなチームにおいて「ボールを失わない」というのは立派な守備力の1つです。

2、サイドのレーンでチームに「幅」をもたせることができる

ここも非常に重要なポイントです。

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再三当ブログでは申し上げていることですが、現在のバルサは攻撃時に3-4-2-1のような形を取っています。WGは外に開かず、ハーフスペースと呼ばれるサイドと中央の間のスペースで構えます。ちなみにバルサのウイングでワイドで仕掛ける従来のタイプはほとんど出場機会のなかったマルコムのみです。デンベレも時折外に流れますが、基本的にはライン間での仕掛けを好んで(指示されて?)いるようです。

つまり現在のバルサのサイド攻撃はSBが一手に担っているのです。ただ、バルサの試合を見たことがある人はこう思うかもしれません。「ジョルディ・アルバの攻め上がりは凄いけど、別にセルジ・ロベルトはそこまで攻撃面で貢献してなくない?」はい、確かに見かけ上はそう映るのですが、実際セルジ・ロベルトが右サイドバックにいる試合といない試合ではバルサの攻撃の機能性は雲泥の差なのです。

理由は簡単、バルサの攻撃の機能性=リオネル・メッシの自由、であるからです。バルサの攻撃時の大きな目的は「メッシに右のハーフスペース及びライン間で前向きでプレーさせる」ことです。このスペースでボールを持つことができればメッシは何でもできますからね。ただ相手もここは警戒するポイントなので当然このスペースは埋めてきます。相手が4-4-2であれば図のようにコンパクトに守ってスペースを消してくるでしょう。

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ここで登場するのがセルジ・ロベルトです。高い位置を取ってボールを受けます。相手も深い位置でフリーでボールを持たせるわけにはいきませんから、SBやSHが対処にいきます。このときです。このとき初めてハーフスペースに待機するメッシに時間とスペースの猶予が生まれるのです。まあ現実問題、上図のように簡単にはいきませんが、このように幅を使って相手を揺さぶることで守備組織のどこかに「歪」を作ることができます。

ここも誰でもいればいいというわけではなく、セルジ・ロベルトのような能力の高い選手でないと務まらないタスクです。攻めあがるタイミング、ポジショニング、さらにはメッシに躊躇なくパスを打ち込める技術と判断力。いずれもライバルのセメドには欠落している要素ですよね。

セルジ・ロベルトがいない時のバルサは確実に攻撃が真ん中に寄ります。いくらメッシやスアレスといっても中央突破だけでは相手を崩し切ることは難しいでしょう(崩してしまう時も勿論ありますが・・・)。メッシはともかくスアレスは衰えが顕著ですし。中央を攻略したければ、サイドを有効活用するというのは最早基本ですよね。

 

■日本代表やアルゼンチンも

余談にはなりますが、日本代表の話もします。

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コパアメリカ前のキリンカップで日本代表は3-4-3(3-4-2-1)の布陣をテストしました。上図は0-0のドローに終わったトリニダード・トバゴ戦のメンバーです。この布陣はバルサの攻撃時の形とほぼ一緒です。日本にメッシはいませんが、中央の堂安、中島、大迫を活かしたいという意図もバルサと共通するところです。

格下(と言っていいのか分かりませんが・・)の相手にホームで得点を奪えなかった原因は色々あるかと思いますが、個人的にはWB2人のビルドアップ及び崩しの局面のクオリティが要求されたレベルではなかったことにあると考えています。知っての通り、長友佑都酒井宏樹は欧州でしのぎを削ってきた日本最高のSBの2人です。長友はインテルでレギュラーを張った経験があり、酒井はマルセイユで今シーズンのチームMVPに選ばれました。彼等の実力に疑う余地はありません。

しかし、彼らがWBとしても優秀かと言えばそれは別問題。守備力には絶対の自信を持つ二人ですが、ビルドアップや崩しの局面ではいまいち存在感を発揮できていません。そこは選手のタイプにもよるのですが、もう少しサイドのレーンで存在感を見せられる選手がいないと攻撃は詰まってしまいます。ロシアW杯では乾と原口がサイドハーフを務め、幅を確保しましたが、現チームの2列目は内側でのプレーを好む選手が多いですし・・。

同じことがアルゼンチン代表にも言えます。サイド攻撃のクオリティがいまいちなので、中央のメッシが活きていない感はあります。ディ・マリアは絶不調、ダグリアフィコは頑張っていますが状態。右サイドバックに至っては・・。W杯で輝きを見せたパボンという選手は何処へ・・。

 

■セルジ・ロベルトとセメドどちらを使うべき?

さて、話をバルサに戻しましょう。ここまでセルジ・ロベルトの魅力を述べてきましたが、冒頭でも紹介した通り、守備面での不安は否めません。個人的にはセメドがSBとして一本立ちしてくれるのがベストだとは思っています。しかし現状のセメドでは守備は向上しても攻撃の渋滞になってしまう傾向がありますから判断は難しいところですね。

特に右サイドはメッシがほとんどの時間お留守にしているので、どうしても幅を取れる選手が必要にはなってきます。セメドが急成長を遂げない限り、セルジ・ロベルトとの併用は続くと思います。または右サイドに純粋なウイングを起用してバルベルデ政権1年目のような4-4-2を基本フォーメーションにするのであれば話は別ですが、バルベルデの判断は如何に。

基本的には守備的にいきたいときにはセメドを使うべきかとは思っています。その観点から行くとリバプール戦のセカンドレグでセメドをスターターで使わなかったのはバルベルデの明らかなミスです(あの試合でセルジはほとんど攻めあがっていませんし)。選手のモチベーション的にも連携的にも併用はなかなか難しいというのは想像に難くありません。

セメドが移籍を希望しているという報道も出ていますし、何らかの変化は必要かもしれません。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

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