Hikotaのバルサ考察ブログ

主にFCバルセロナが好きです。他サポの方大歓迎です

【考察】飛躍の1年。アルトゥールはバルサの核になれるか 後編

お待たせしました!アルトゥールの記事、後編です!

www.footballhikota.com

↑前編はこちら!

 

それでは後編入っていきます!

 

◼︎改善すべき「ボール欲しい欲しい病」

前編ではアルトゥールの良いところを中心に書きましたが、後編は課題・改善点について論を進めていきたいと思います。

今回の記事はこちらのKすけさんのリクエストを頂きまして、作成することにしました。もう1ヶ月も前のことですが笑。今回はこのアルトゥールの動きがブスケツのスペースを奪っているのでは?という部分を見ていきましょう。

 今回参考にした試合はリーガエスパニョーラ第26節レアルマドリー戦です。国王杯クラシコから3日後、ラキティッチのゴールで1-0で勝った試合ですね。

f:id:hikotafootball:20190303234345p:plain

スタメンはこのようになっていました。両チームとも今シーズンのベストと表現してもいいくらいのメンバーを揃えてきました。この時はまだ監督はソラーリでしたからレギロンがレギュラーとして使われていますね。

さて具体的にあるアルトゥールのプレーの問題点を見ていきましょうか。まずは前半3分のプレーから。ベイルのFKが大きく枠を外れ、テアシュテーゲンが素早くゴールキックをリスタートさせ、左CBのラングレにパスを出します。ただマドリーのトランジションも速く、ベイルがアルバへのパスコースを切りながらラングレにプレッシャーをかけました。

f:id:hikotafootball:20190604180319p:plain

上図はその時の状況です。尚、図のなかに引いてある白線の手前側は映像では映っていなかったため、大体こんな感じであっただろうという予想で配置してみました。注目してほしいのはマドリ―の守備陣形。セットプレー崩れということもあり、かなり陣形が乱れてしまっています。具体的には真ん中、モドリッチ&クロースとカゼミーロの間に広大なスペースが空いています。ここを上手くつければボールは簡単に運べそうです。

f:id:hikotafootball:20190604181528p:plain

しかし、アルトゥールはボールを受けようとして下がってしまいます。まさにブスケツとかぶる位置に。アルトゥールとしてはプラス回避の一手としてラングレに近づいたのでしょうが、これではシンプルにモドリッチの守備範囲に入り込んだだけです。パスはかえって貰いにくくなります。

よくパスコースを作るためには動かなければならないと言われますが、全ての場合でそれが適用されるわけではありません。自分がボールに近づけば相手もボールに近づいてしまうため、かえってボールホルダーを苦しめてしまうというケースもあります。

この場合、もし仮にアルトゥールが中央の広大なスペースに陣取っていればマドリーの守備は相当難しくなったはずです。ラングレの技術をもってすれば、そのスペースに正確なボールを送り込むのも難しくはないでしょう。そのスペースを潰そうとカゼミーロを釣り出せたら儲け物。前方でスアレスデンベレがCBと2対2の状況が創出できます。

ちなみにこの場面では選択肢のなくなったラングレはドリブルで持ち運ぶと最前線のスアレスへのパスを選択。これは難なくカゼミーロにカットされてボールを奪われてしまいました。

f:id:hikotafootball:20190605014718p:plain

続いては前半17分の場面。ラキティッチが中央やや右寄りでボールを持っています。この時バルサの中盤3人が綺麗に横並びになっていますね。バルベルデバルサお馴染みの横並びですが、何故横並びが問題なのかは後述します。マドリ―の守備陣形は右CBヴァランの位置を見れば分かる通りかなり左に寄っています。その結果カゼミーロの右のスペースが大きく空いていますね。ここでデンベレもしくはアルトゥールがボールを受けることができればチャンスになりそうな予感がありますが、アルトゥールはどのように動いたのでしょうか。

f:id:hikotafootball:20190605015833p:plain

正解はこちら。先ほどの状況からラキティッチブスケツと細かいパス交換をしながら数歩下がり深さを生み出します。おかしいのはここから。ラキティッチが下がったことによって生まれたスペースになぜかアルトゥールが寄って行ってしまいます。ブスケツを邪魔しているどころの騒ぎではありません。もう侵入ですね笑。でブスケツは気が利く選手なので、アルトゥールが入ってくるのを確認すると自分はライン間に消えていきます。こうして中盤横並びから中盤縦並びが完成しました笑。や、これはさすがにビルドアップ詰まりますよねってことでラキティッチはセルジ・ロベルトにパスを出してやり直しを図ります。

この例はさすがに極端なんですが、結構アルトゥールには多い動きです。ここでは寄っていくことで、ブスケツと自身へのパスコースを完全に遮断してしましました。別に寄ること自体が悪いということではありません。チームとして、アルトゥールが寄る→密集を作る→相手を集める→逆サイドに展開みたいな決まり事があればいいとは思いますがそういった様子もあまり見られません。

ちなみにブスケツはこの場面のように、落ちてくるアルトゥールの動きに合わせて1つ前にポジションを上げるという作業をよくこなしています。が、あくまでそれも定められたものではなく、アルトゥールの動きにブスケツが即興で合わせているという印象の方が強いですかね。そもそもブスケツにこの作業をさせるのはチームとしてはあまり得策ではありません…。

これらの場面から分かるのはアルトゥールはボールが欲しいあまり、下がりすぎてチームとブスケツのスペースを消してしまう傾向があるということです。技術や判断は優れたものがあるアルトゥールですがこのポジショニングには課題が残ったシーズンでもありました。恐らく欧州1年目のアルトゥールにはまだスペースに対する感覚が乏しいのだと思います。そこはバルサスタイルに対する慣れもあるかと思いますので、来季に期待ですかね。

 

▪️シャビとイニエスタにあってアルトゥールに足りない部分

シャビとイニエスタといえば、サッカー史においても並ぶ者がいないほとのマエストロですが、彼らはカンテラで鍛えられたこともあって、このスペースに対する感覚が抜群に優れていました。

具体的に言うと相手のライン間でボールを受ける、所謂「間受け」の上手い選手たちでありました。

f:id:hikotafootball:20190605021646p:plain

例えば上図をご覧ください。図のように相手のMFラインの前でブスケツがアルトゥールに横パスをしたとします。このパスは相手にとって非常に守りやすいパスと言えます。何故ならDFが①ブスケツ・アルトゥールを同時に視野に入れることができ、②必要とあらば1人で2人をケアすることも理論的には可能だからです。勿論状況にもよりますが、いくら横パスを回しても相手を崩すことはできません。自分の目の前で起こっていることに対しては、DFも対処がしやすいからです。

f:id:hikotafootball:20190605022127p:plain

一方、インテリオールの選手が相手のMFラインを超える位置にポジションを取ったとしたらどうでしょうか。ここではシャビ大先生に現チームに加わってもらいましょうか。このように角度がついた状態であれば相手は相当守りにくいはずです。先ほどのように2人を同一視野に入れることも、1人で2人を追う「2度追い」も角度的に難しいですよね。相手がブスケツに食いつけばSBやCB経由でシャビにパスを出し、シャビへの警戒を相手が強めればブスケツの自由度が増してビルドアップはスムーズに進みます。

シャビをケアしようとカゼミーロが出てくればスアレスが空き、クロースがシャビの位置まで下がればブスケツはかなり自由になりますよね。ブスケツのケアのためにベンゼマが戻ってきたときにはもう大体相手を押し込むことに成功しています。

ちなみにグアルディオラの監督時代にはこのブスケツとシャビのパス交換って頻繁に行われてたんですよね。何気ないダイレクトのパスだったんですが、角度がついていることでブスケツが前向きでボールを受けることができていました。

f:id:hikotafootball:20190605022834p:plain

ワンクッション入れることの重要性

例えばが多くてすみませんが、ピケからブスケツにそのままパスが渡ればブスケツは半身もしくは後ろ向きでパスを受けることになるため、相手のプレッシャーを受けやすくなってしまいます。しかしピケ→シャビ→ブスケツという手順を踏めばシャビとブスケツにはしっかり角度がついているため、ブスケツは前向きでボールを持つことができますよね。このひと手間で劇的にビルドアップって変わるんだなと感じますね。今のチームは今のチームなりのビルドアップを志向していますが、このようなエッセンスは次第に減少している感覚があります。

まあ、現時点のアルトゥールをシャビやイニエスタと比較するのはフェアではありませんが、バルサが今後スタイルの復権を掲げるなら間違いなく必要な能力の1つになってくるんじゃないかなと思います。

今のバルサはどうしてもメッシにスペースを作ってあげることが最優先になりがちなので、ついついインテリオールのポジションは沈殿してしまっています。この辺の部分は来シーズン改善してほしいポイントのひとつですかね。

 

▪️来シーズンに向けて

とりあえず1つに絞ってアルトゥールの課題を書いてきましたが、前編でも述べた通り1年目にしては良くやったと思います。2年目の来季は更なる飛躍が期待されます。しかしアルトゥールにとって障害になり得るのは今夏の獲得が既に決まっているフレンキー・デ・ヨングの存在です。7000万€という値札とCL4強の実績を引っ提げて加入してくるわけですから、アルトゥールにとっては強力なライバルになるでしょう。

ラキティッチの去就がまだ不確定ではあるので何とも言えませんが、監督とスカッドに変更が無いのであれば、ブスケツラキティッチがファーストチョイスであり、中盤最後の1枠をフレンキーとアルトゥール、さらにはアルトゥーロ・ビダルで争うことになるのではないでしょうか。

個人的にはアルトゥールにはアンカーのポジションに挑戦してほしいと考えています。球離れ自体はかなり良いほうかと思いますが、やはりボールを受けたがって下がってくる傾向を考えるのであれば、より後方でプレーさせる方が向いているのではないかと。アンカーであれば低い位置でビルドアップのタスクを担いやすいですし。アルトゥールよりもむしろフレンキーのほうに前線でメッシやデンベレと絡んでほしいと思っています。

そうなると今度は守備面が不安視されますが、最初からブスケツクラスの選手など存在しません。少しずつポジショニングやプレーの仕方を盗んでくれればなと考えています。アルトゥールをアンカーで使えれば、アレニャやリキ・プッチといったインテリオールを主戦場とするカンテラーノ組にチャンスが広がりますし。是非トライはしてほしいところです。

ブスケツの衰えもいよいよ深刻なものになってきましたし、アンカーのセカンドチョイスは同い年のラキティッチですから間違いなくテコ入れが必要になってくるポジショニングの1つですね。

 

如何だったでしょうか。今回はほぼ1つのテーマに絞って書いてきました。何度も言うようですが、初年度にしてはアルトゥールは非常によく貢献してくれました。しかし、バルサの絶対的な主力として信頼されるためにはまだまだ成すべきことがあります。CLリバプール戦で2試合とも先発起用されなかったように、まだ使い勝手のいい選手にはなり切れていないのが現状でしょう。今後のバルサのことを考えると、やはり主役は中盤であるべきです。その旗頭になるべき存在の1人は間違いなくアルトゥールです。来シーズンのさらなる飛躍を祈りましょう!

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。