Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】飛躍の1年。アルトゥールはバルサの核となれるか 前編

■「カンテラーノよりもカンテラーノらしい」MF

出色のデビューシーズンと形容してもいいのではないでしょうか。グレミオからやってきたアルトゥール・メロは今シーズンのリーガ・エスパニョーラで27試合に出場しました。22歳で欧州初挑戦、さらにはバルセロナという世界有数のビッグクラブでこれだけの出場機会を得られるだけでも賞賛に値します。

しかし、この数字以上にアルトゥールがピッチ上で残したインパクトは大きいものがありました。プレシーズンマッチでメッシに賞賛されたのは僅か1年前。最早違和感なくチームの一員となりましたね。不気味なほどバルサが求めるMF像に合致しており、そのプレースタイルは「カンテラーノよりもカンテラーノらしい」や「NEXTシャビ」と表現されるほど。

正直、アンドレス・イニエスタの退団に僕たちバルサファンが思ったほど苦しまなかったのは彼の出現によるものが大きかったと思います。1年目にしてファンに希望を与え、チームの重要な選手として活躍した彼には文句なしの及第点が与えられると思います。

ただ、それと共に課題も散見された今シーズン。レジェンドシャビに近づくにはまだまだ長い道のりがあります。本記事ではアルトゥールの今シーズンを振り返りながら、アルトゥールの長所、そして課題について触れていこうと思っています。是非。

※記事中のデータは全て『Whoscored』より引用しています

 

■前半戦の救世主に

バルセロナの監督であるエルネスト・バルベルデは度が過ぎると言っても決して過言ではないほど慎重な男です。その慎重さはアルトゥールの起用法にも如実に表れています。アルトゥールは今シーズンリーグ戦で19回先発を飾っていますが、フル出場はなんと0。欧州1年目のアルトゥールのコンディションに最大限に気を使っていました。

細かい負傷はあったものの、シーズンの最後まで戦力として活動できたことはアルトゥールにとって大きな自信になったのではないでしょうか。今シーズンのパス成功率は驚異の93.5%と、チームの中盤の選手の中でトップの数字を叩き出していることからも分かる通り、今最もバルサスタイルを体現している選手かもしれません。

第1節のアラベス戦で途中出場からコウチーニョのゴールをアシストする幸先の良いスタートを切ったアルトゥールですが、その後はあまり出番が回ってきませんでした。しかし、コウチーニョの中盤起用が失敗に終わると(当時はビダルも不貞腐れていたので)、ラキティッチブスケツの相方として白羽の矢が立ちます。

アルトゥールがその名を欧州中に轟かせたのはCLグループステージ第2節トットナム戦でした。CLの先発デビュー戦で堂々たるプレーをしたことで一気に主力の一人になりました。本来ならばこの試合、もしくは同じく評価の高かったCLインテル戦を分析したかったところなのですが、残念ながらDAZNは試合から1週間以降は視聴ができない仕様になっているため、当然観返すことができません。

しかし、リーガファンには他にも強い味方がいます。それがWOWOWオンデマンド!なんとリーガの注目カードであれば、スマートフォンiPadなどで全38試合視聴できるという優れもの。当然バルサのリーガの試合であればどの試合もいつでも観返ことができます。宣伝じゃないですけど、本当に素晴らしい機能ですので、リーガ好きな方WOWOWオススメですよ!

今回は38試合の中から、トットナム戦から2週間後にカンプ・ノウで開催されたセビージャ戦を分析対象にしてアルトゥールのプレーを分析していきたいと思います。メッシが腕を骨折した試合と言えば思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。それではいってみましょー!

 

■特筆すべきは「剥がしのドリブル」

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こちらがセビージャ戦のメンバーでした。アルトゥールは定位置の左インテリオールに入ります。彼はこの試合でパス成功率97%、キーパス3本という素晴らしい数字を残しています。まず彼の真骨頂が出たシーンは前半の2分。

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上図を見てください。CBのラングレが斜め前のアルトゥールにパスを出した時、両チームの陣形はこのようになっていました。セビージャはご覧のように幅と深さを狭め、バルサからスペースを奪おうとしています。アルトゥールにボールが入った瞬間、体面のサラビアが素早く寄せて彼に考える時間を与えません。

しかし、アルトゥールが優れているのはここからです。ここでアルトゥールが選択したのはラングレへのバックパスではなく、中央の僅かなスペースに向けてのドリブルでした。このプレーがサラビアのファウルを誘います。アルトゥールは素早く立ち上がり、クイックリスタート。コウチーニョが素早く空いている右サイドに展開するとセメドの素晴らしい縦突破から、最後はメッシ→コウチーニョラインでバルサが先制点を奪いました。

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このドリブル、見方によっては危険なプレー選択にも思われますが、アルトゥールのドリブルには相手に奪われにくい秘密があります。それは「相手とボールの間に体を入れる技術」です。まあ秘密ってほどでもないんですが笑。このように相手からボールを「隠すように」置くことで、DFはボールを奪うことができません。もし強引に奪おうとすればファウルになりますからね。この持ち方がシャビやイニエスタっぽい所以です。

WhoScored』を眺めていて驚いたのは、今シーズンの90分あたりの被ファウル数。なんとメッシの2.2を上回る2.5という数値が出ていました。このようなドリブルを使えば単騎で相手のプレスを剥がすことができますから、DFとしてはファウルで止めがちにはなりますよね。セビージャ戦でもサラビアはたまらずファウルをしてしまいましたし。そのあとのリスタートも非常に速いのがアルトゥールの特長です。ファウルを誘うプレーを意識しているからこそ、切り替えの早さは抜群ですね。

余談ですが、コウチーニョとの違いはこのスキルにあります。コウチーニョはドリブルをする際、どうしても相手を抜き切ろうとしてしまいます。中盤で相手を躱そうとした結果、引っかかってカウンターを食らうというシーンは何度か散見されています。どちらが優れているという話ではなく、単純にプレースタイルの問題なんですがね。このプレーのクセが抜けないかぎり、コウチーニョを低い位置で起用するのは難しいでしょう。

とにかくバルサのビルドアップにおいて苦しいときにこの運ぶドリブルは非常に有用なオプションとなりました。勿論、プレー選択も正確です。ボールを持つところとダイレクトで放すところのリテラシーは1年目にしては文句の付け所がありません。今シーズン、ほとんど慌てるシーンは見受けられませんでしたし、技術に絶対の自信を持っていることが窺えますね。

 

■難しいタスクも難なく

何度も当ブログでは述べている通り、バルサの中盤を務めることは非常に難しいです。特に現在のバルサのインテリオールに課されるタスクは非常に重いものがあります。メッシが守備をしない右サイドは勿論のこと、サイドバックジョルディ・アルバが頻繁に後方のスペースを空ける左インテリオールの働きはトランジションを円滑に遂行する上で欠かせません。

よくアルトゥールの課題はラストパスだと言われていますが、この指摘には異議を唱えたいです。異議を唱えるというかラストパス云々を議論する材料がまだそこまでありません。なぜなら、アルトゥールが前線に積極的に顔を出すシーンは今シーズンそれほど多くないからです。

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こちらが大体のバルサの攻撃時の陣形です。展開によってはブスケツがCB間に下がることもあります。ここで注目したいのは両ウイングの位置。WGは大外に張るのではなく、内側(ハーフスペース)入ってプレーをします。サイドの幅は両SBが確保し、両インテリオールが低めの位置に入り、バランスを取ります。

今のバルサを語る上で欠かせないのは、WGの動きの少なさです。WGがラインブレイクをしたりサイドに流れることが少ないため、攻撃の流動性は少なめになっています。ということで、もし、例えばアルトゥールが前線に飛び出そうとしても、自身の前方のWGとポジションが被ってしまいます。コウチーニョデンベレも足元でボールを受けて何かしたいタイプなので、アルトゥールが距離を詰めると却ってスペースを消してしまい、彼らのプレーが窮屈になってしまいます。

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アルトゥールが無理に飛び出すと

彼らのスペースを埋めないように、かつ左SBのアルバの裏のスペースをケアするというタスクが攻撃時には重要になっています。正直、バルベルデにはあまり最後の局面での貢献は求められていないと思います。ネガティブ・トランジション対策でポジションを低めに取っているので、目には映っていなくても貢献度は大きいものがあります。

ラストパスに関してはこれからに期待って感じですかね。これからラストパスが出せる環境になれば多分簡単に出せちゃうかと笑。個人的にはWGにはもう少しラインと駆け引きしてほしいんですが、今はメッシが全てを解決してしまっていますからね笑。コウチーニョくらいですかね、裏に出ようとしているのは。彼も周りとあまり噛み合っていないので何とも言えませんが・・・。

少なくともアルトゥールはこの局面においては与えられたタスクはしっかりとこなしているかと思います。攻撃の主役になるのではなく、あくまで中継地点のような役割を担ってくれていますね。

 

如何だったでしょうか。前編はここまでにしておきます。後編ではアルトゥールの課題、さらには来シーズンの展望なんかも書いていけたらなと思います。後編も是非よろしくお願い致します。

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最後までお読みいただきありがとうございました。