Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】CL準決勝1stレグ バルセロナ対リバプール 前編

「事実上の決勝戦」と称されるほどの好カードになりました準決勝。相手はリバプール。あと3勝で悲願のCL制覇ですが、目標達成に向けてこの上ない障害です。

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↑プレビュー記事はこちら!

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 スタメンです。ホームのバルセロナはいつも通りの4-3-3よりはかなり4-4-2寄りの可変システムを採用してきました。中盤にはアルトゥールではなく、経験豊富なビダルを起用しましたね。右SBにはセルジ・ロベルト、左WGにはコウチーニョがそれぞれチョイスされます。

一方のアウェイのリバプールは4-3-3。故障を抱える9番フィルミーノはベンチスタートとなり、彼のポジションには本来中盤のワイナルダムが入ります。右SBは本来レギュラーのアーノルドではなく、ジョー・ゴメスが務めます。中盤はファビーニョをアンカーに、ミルナーとケイタがインサイドハーフを形成しました。

 

■あくまで強気のリバプール

試合前にリバプールの監督のユルゲン・クロップは「カンプ・ノウは聖地ではない」と挑発的なコメントを残していました。まあ聖地かどうかは置いておいて、ホームで無類の強さを誇るバルセロナ。しかし、クロップのコメントを裏付けるかのようにリバプールは序盤から果敢に前線からプレッシャーをかけます。

プレビューで紹介したようにリバプールの3トップは基本的に外のパスコースを切るように立って真ん中にボールを誘導します。プレビューではあまり詳しくは触れられませんでしたが、この守備には2つの意図があります。

  1. できるだけ狭いスペースを守る
  2. ボール奪取後素早いショートカウンターに繋げる

当然の話ですが、守備するエリアは限定した方がいいですよね。1人1人の守備範囲が狭ければ狭いほど守りやすいですし。それならサイドのほうが追い込みやすいんじゃないかというのが一般的な考えですが、クロップの大きな狙いは2つめにあると個人的には考えています。

 リバプールの3トップは無闇に守備時に下がらず、前線に攻め残ります。この時両サイドのハーフスペースにスピードと技術を兼ね備えたサラーとマネが残るわけですから、ボールを保持しているチームのCBは常にプレッシャーを感じながらプレーすることになります。

3トップが下がらなくても守備が大崩れしないのは、プレビューでも取り上げたように中盤の機動力が高い故ですね。バルサ相手にも自分たちのスタンスを変えないあたり、クロップのスタイルに対する自信が窺えますね。

ちなみにバルサはMSN時代にかなりバランスが崩れてしまっていましたが、それは中盤の選手たちがリバプールほどプレスに優れた選手たちではなかったのが原因でした。これも当たり前のことですが、選手の特徴を考えなければ、サッカーを語ることはできませんね。

 

■想定外だったビダル先発起用、攻め筋を限定したバルベルデ

さて、積極的姿勢で試合に臨んできたリバプール。それに対してバルベルデはどのような策を講じたのでしょうか。

クロップが試合後、「想定外だった」と認めた通り、スターティングラインナップにビダルの名前があったことは1つの驚きでした。何を隠そう、僕もプレビュー記事で予想先発にビダルではなく、アルトゥールをチョイスしていました。何なら、キープレーヤーにアルトゥールを挙げていたくらいです笑。

そしてもう1つ、いつもとは違い、僕は冒頭でバルサのフォーメーションを4-4-2と紹介しました。この2点にはバルベルデの試合に対するスタンスが良く現れていたと考えています。

バルベルデの意図を端的にまとめるとこのようになりますかね。

  1. ブスケツラキティッチを真ん中に配置し、中央突破をさせない
  2. ビダルを右サイドで起用し、守備に不安のあるセルジのヘルプに回す
  3. 攻め筋をメッシのいる真ん中、アルバ&コウチーニョの左サイドに限定

もう少しあるとは思いますが、僕が感じたのはこの辺りですかね。

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まずは1。サッカーで裏のスペースの次にケアしなければならないのが、図に示したようにDFラインと中盤のラインの間のスペース、所謂「バイタルエリア」です。先述したように、リバプールの攻撃で怖いのはハーフスペースに位置するサラーとマネがこのスペースでボールを持つことです。チームとしてここにはまず蓋をしたいということで、ブスケツ&ラキティッチコンビが選ばれました。現時点で彼らが1番中盤センターでの守備力を有していますから妥当ですね。アルトゥールも悪くありませんが、まだ2人のレベルではありません。

続いて2。中央が塞がれたということでリバプールが必然的に活路を見出すのはサイドになります。左サイドはともかくとして、右サイドのセルジ・ロベルトの対人守備能力で、リバプールのマネ&ロバートソンコンビを相手にするのは些か不安が残ります。ということであらゆる守備能力に精通するビダルが右サイドに入り、セルジ・ロベルトをサポートする形を取りました。ちなみになぜ、対人守備に優れたセメドではなく、セルジ・ロベルトがチョイスされたのかは後述します。

最後に3。ここが最も重要なポイントだったかもしれません。非常に興味深いことに、バルベルデは右サイドの攻撃を「捨てました」。正確に言うと、右サイドはビルドアップのために使い、仕掛け・崩しは中央から左サイドにかけてのみ行われていました。右サイドのセルジ・ロベルトはいつもような高い位置を取ることなく、後ろに待機していましたし、ビダルは内側にポジションを取ってネガトラに備えています。メッシは2トップの一角としてプレーしていました。これが観ている側としては非常に面白くて。カンプノウだから両サイドに高い位置取らせてガンガンボール回すのかとこっちは思っていたわけですよ。にも関わらず敢えて強みであるセルジ・ロベルトの攻め上がりを殺しちゃうんだから、まあバルベルデは本当見えてるところが違いますよね笑。

要するにバルベルデからすると、「リバプールのカウンターは怖い、でも攻めないわけにはいかないという狭間に立った結果、可能性の高いところだけ仕掛けさせてあとはカウンターに備えよう」という結論に達したのだと思います笑。リスクを最小限にした上でチームの強みを最大限に引き出すといううちの監督の十八番ですね。まあ良いのか悪いのかは個人によって判断が分かれるところかと思いますが。個人的にはこの采配をカンプ・ノウで振るえるのは流石だなと。

そして右SBにセメドじゃなくてセルジが選ばれた理由、もう大体想像ついてる方多いんじゃないかと思いますが、円滑にビルドアップを進めるためだったのではないかと個人的には考えています。敵陣奥深くまで攻め上がる必要はないけれど、右サイドで試合を作る必要性は当然あります。例えば、セメド&ビダルの右サイドだったら確実にビルドアップ詰まりますよね笑。そこで円滑にボールを運べず、低い位置でボールを奪われてカウンターを食らったら本末転倒ですし。安全にボールを運ぶという技術も立派な守備力の1つです。ってことでセルジが先発です。彼も幾分か守備は上達していると思います!

 

■試合の鍵を握ったサイドチェンジと中盤の負荷

非常に前置きが長くなってしましたが、そろそろ試合の方に入っていきましょうか笑。開始30秒でリバプールのハイプレスを剥がして、クロスまでいくバルセロナ。このあたりはクオリティが非常に高いですね。一方のリバプールバルサの高い位置からのプレスを最終ラインからショートパスを繋いで搔い潜るなど、負けじとビルドアップの完成度を見せつけます。

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リバプールのプレス

上図は前半5分のシーンを再現した図です。バルサがボールを自陣深くで奪い返してビルドアップを開始した場面です。右CBのピケから左CBのラングレにパスが渡ったとき、既にリバプールの陣形は完成していました。3トップが2CB+ブスケツを監視し、ミルナーがSBのアルバを、ファビーニョとケイタはラキティッチビダルをそれぞれマークしています。画面には映っていませんが、前線では恐らくメッシ・スアレスコウチーニョをDFラインの4人でケアしているのだと思います。DFは相手に対して1枚余らせるのが原則です。図にも示しましたが、セルジ・ロベルトのみがフリーになっています。ただ、ボールホルダーのラングレから1番遠い位置にいるため、仮にサイドチェンジをしても、リバプールの選手たちにはスプリントしてスライドする時間的猶予が与えられます。そのため、敢えて逆サイドの選手は捨てて「狭く守る」を実践していました。この場面ではラングレはラキティッチへの縦パスを選択しました。完全にプレスの罠にハマった恰好でしたが、ラキティッチが上手くファウルをもらって事なきを得ました。この守備に対してバルサはどうしたのかっていうと、鍵になったのはやはりサイドチェンジでした。いやいや、さっきサイドチェンジは対応できるって言ったじゃんって思いますよね。確かに普通のサイドチェンジなら何とか対応できますが、では球足の速いサイドチェンジならどうでしょうか。

前半9分の場面、大外に開いたセルジ・ロベルトに対して斜め後ろにポジションを取ってボールを受けたのはビダルビダルのマーク担当は基本的にケイタですが、さすがにこの状況ではプレスにきません。時間とスペースを与えられたビダルは余裕を持って逆サイドに鋭いサイドチェンジを送ります。これが逆サイドでフリーになっていたアルバに渡ります。右サイドのハーフスペースをケアしていたミルナーがプレスの来る前に、アルバは最前線のスアレス目掛けてアーリークロス。これは息が合わず、アリソンに処理されましたが、この攻撃の可能性を感じさせるものでした。結局たとえカンテが3人いても、68メートルの横幅を守るのは物理的に不可能なんですよね。

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前半13分、バルサの左サイド崩し

そして前半の13分、またも印象的な攻撃が生まれました。ラングレがハーフスペースに入ってきたラキティッチに縦パスを入れます。この時の陣形は上図の通りです。先ほどと同じようなマークの付き方をするリバプールですが、この時まずポイントになるのが左サイドのコウチーニョの動き。ファビーニョラキティッチをケアするために空けたスペースに入り込む動きを見せます。この動きに対面のジョー・ゴメスは漫然と付いていき、結果として左サイド(リバプールの右サイド)にスペースが生まれます。ここにアルバが走り込み、ラキティッチのスルーパスを受けてマイナスにクロス。メッシのシュートはロバートソンにブロックされてしまいましたが決定的な場面でした。リバプールとしてはルール通りの守備対応でしたが、なぜこのように完璧に崩されてしまったのでしょうか。

リバプールの中盤から前の守備は原則として人ベースです。まず人を捕まえるのが原則でそこにプレッシャーをかけてボールを奪いたい意図があります。それに対して、DFラインはロングボールを警戒して若干低めに設定されています。つまり、DFラインと中盤の間のスペースが空きやすいという構造的弱点を持っているのです。

まあ普通の相手だったらプレッシャーを受けて大抵長いボールを蹴るか、無理に繋いで奪われるかのどちらかに終始してリバプールの思うツボっていう展開になるんでしょうが、そこはやはりバルセロナ。このシーンでもコウチーニョが空きやすいスペースに巧みに侵入することで裏のスペースを創出することに成功しましたね。左サイドの攻撃はアルバばかりがクローズアップされますが、コウチーニョのこのような動きも評価してあげたいところです。

もう1つポイントとして挙げたいのが、リバプールの中盤、このシーンではミルナーの負担の大きさです。中盤のラキティッチ、SBのアルバのケアでも一苦労なのに、このシーンでは裏のスペースまでカバーさせられる羽目になりました。いくら機動力があると言っても正直このタスクはキツいと思います。右ウイングのサラーが守備に戻ってくれば、負担は減るんですがほとんど守備には戻らず、前線待機をしていました。チームとしては多少中盤に負荷がかかったとしてもサラーやマネにオフェンス面で最大限力を発揮してもらったほうが、利があると判断しているのでしょうが…。いずれにしてもバルサの左サイドの攻撃に対してミルナーとゴメスだけで対応するのは厳しいものがありました。

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例えば、このように守備時にワイナルダムを中盤に下げて4-4-2を形成。サラーとマネを前線に残すという選択もできたかと思います。しかし、クロップはあくまで3人を前線に残すという強気の選択をしましたね。

とにかく以上の2シーンでバルサの選手たちは左サイドは崩せる!と確信を持ったのではないでしょうか。そして、この2シーンがスアレスの先制点に繋がりました。

 

ということで長くなってしまったので、続きは後編に回すことにします!なんとまだ前半13分までしか試合に触れられていないという…笑。マッチレビューはなかなか難しいです。この試合は観返しながら記事を書いていますが、とにかく再生→停止→再生の繰り返しです笑。まあそれだけ密度の濃いゲームだったということですかね。見どころが本当に多いです。試合は観返さないって方もいるかと思いますが、2回目観ると驚くほど新しい発見がありますよ!時間的に全試合観返すのは到底無理ですが、ビッグマッチは是非おすすめです!

とりあえず後編も力入れて書くので是非お読みください!

 

後編↓

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最後までお読みいただきありがとうございます。