Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】CL準決勝1stレグ バルセロナ対リバプール 後編

こんにちは!CLリバプール戦、後編です!前編でなんと13分しか進められなかったので、後編では少々駆け足で進んでいきたいと思います!是非!

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  ↑前編はこちら!

 

■必然だった先制点

前半24分、リバプールにアクシンデントが発生します。数分前にラキティッチと激しく接触したケイタが負傷退場。代わりにキャプテンのヘンダーソンが投入されます。この交代に伴い、右インサイドハーフミルナーが左インサイドハーフに移行し、ヘンダーソンが右に入りました。

その2分後、バルサが試合を動かします。前半9分のシーンと同じように大外に開いたセルジ・ロベルトが斜め後ろのビダルにパス。ここでもビダルにプレスはかかっていませんでした。再び時間とスペースを与えられたビダルは悠々とサイドチェンジ。今度はコウチーニョがターゲットです。コウチーニョはピタリと足元にボールを収めると、後方のアルバにバックパス。アルバのアーリークロスに、2CB間に上手くポジションを取ったスアレスが飛び込み、ネットを揺らして先制点をゲット。ホームのバルサが先手を取ります。

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ビダルのサイドチェンジの瞬間の陣形

ここでもポイントになったのは、前半でも触れたサイドチェンジとリバプールの中盤の守備の関係です。上図を見れば分かるように、ビダルのサイドチェンジの瞬間、右インサイドハーフヘンダーソンは中央寄りにポジションを取ってスペースを埋めています。チーム全体としてもかなり左サイドに寄っていますね。

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しかし、サイドチェンジが成功し、ボールがバルサの左サイドに渡るとスライドして左サイドバックのアルバのマークをする必要性があります。結局ここのスライドが間に合わず、アルバは余裕を持ってクロスを上げることができました。投入されたばかりのヘンダーソンの責任にすることはできないでしょう。リバプールというチームの構造からして、必然的な失点だったと思います。

あと、スアレスのポジショニングも秀逸でしたね。彼の良さとしてシュート技術や勝負強さがよく挙げられますが、個人的にはボールを受ける前の動作が素晴らしいと考えています。相手の嫌がるポジションに、嫌なタイミングで動き出しますからね。今回は彼自信の得点に結びつきましたが、彼のこのような動きがDFを引きつけ、メッシが自由を享受している点は見逃せません。後釜探しは至難の技ですね…笑。

 

▪️リバプールの攻撃

首尾よく先制に成功したホームのバルサリバプールとしては互角に試合運びを進めてきただけに手痛い失点となりました。アウェイゴールを持って帰ることができればアンフィールドでの第2戦を優位に進めることができますから、引き続き果敢にゴールを狙います。カウンターによる中央突破を封じられたリバプールが必然的に取る攻撃の策はサイドからのクロスボールです。ここにも工夫が見られました。

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前半35分リバプールの攻撃

前半35分のシーン。リバプールの後方からのビルドアップです。右CBのマティプがボールを持った時の陣形が上図です。ご覧の通り、マティプにはプレッシャーがかかっていない状況です。マティプの右前方には右SBのジョー・ゴメス、さらにその前方には右IHのヘンダーソンがサイドに流れてきています。この時バルサの左ウイングのコウチーニョはゴメスとヘンダーソンの間に何となくポジションをとっており、ここで2対1の数的不利が生まれています。結局、マティプからヘンダーソンに簡単にパスが通ってしまい、フリーのヘンダーソンはそのまま前進。鋭いアーリークロスを受け取ったマネのシュートはクロスバーを越えましたが、非常に危険な攻撃でした。

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この左右のインサイドハーフがサイドに流れて数的優位を作る攻め方は非常に有効です。もし仮にこのシーンで左SBのアルバがヘンダーソンを掴まえに行っていたら、彼の後方のスペースが空き、サラーとラングレの1対1が生まれてしまいます。ラングレはアジリティとスピードがさほどありませんから、サラーとスペースのあるシチュエーションでマッチアップすればほとんど勝ち目がありません。事実、前半38分にはサラーのドリブルを止めるためにユニフォームを引っ張ってイエローカードをもらっていますし。アルバは迂闊に裏のスペースを空けにくいという戦術的側面があります。

サイド後方で数的優位を作ることによってリバプールのビルドアップは非常にスムーズでした。中盤の選手が外に流れることで真ん中が手薄になってしまうというデメリットもありますが、ファビーニョの守備範囲の広さでどうにか成り立っていましたね。改めてリバプールの選手たちの柔軟性と能力の高さを感じました。

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例えばこういう対応を

ちなみにこのシーンでのコウチーニョの守備対応もあまり褒められたものではありませんでした。CBのマティプにプレッシャーがかかっていない時点でコウチーニョが取るべきだったのはサラーへのパスコースを切りながら、ヘンダーソンの位置まで下がること。この場面ではボールを奪うことはできませんから、ゴメスは捨ててリトリートの構えを見せるべきでした。デンベレよりはコウチーニョのほうが守備面では計算できると思いますが、やはりこの辺の状況判断はアタッカーだなあって感じです笑。ビダルはよくボールを奪う技術が評価されがちですが、ここの取りに行くべき時とそうではない時の状況判断が抜群なんですよね。

 

リバプールの猛攻

前半はこのまま1-0で終了しますが、両チームが高度な駆け引きの中でチャンスを作りました。非常に密度の高い前半でした。後半開始からのメンバー交代はなし。しかし、試合再開直後からリバプールは素晴らしい攻撃を仕掛けバルサゴールを脅かします。

まずは47分、高い位置からのプレスでコウチーニョからゴメスがボールを奪うと、そのまま速攻を開始。PA内でサラーが見事のトラップを披露すると、最後は左サイドに位置していたミルナーが右足でシュート。これはなんとかテアシュテーゲンが防ぎます。リバプールにとってはこれがこの試合最初の枠内シュートであり、後半の猛攻の狼煙となりましたね。

リードされている場面ということもあり、リバプールのDF陣もラインを高く上げ、積極的にインターセプトを狙うようになっていました。普段、DFと中盤のライン間のスペースが圧迫されたことによってバルサとしてもプレーし辛い状況に陥ってしまいました。リバプールの猛攻で自陣に押し込まれている上に、リバプールのネガティブ・トランジションのスピードが素晴らしく、セカンドボールも拾われてしまっていたため、苦しい試合展開になっています。

53分にはサラーがエリア外からグラウンダーのシュートを放ちますが、こちらもテアシュテーゲンがスーパーセーブ。DFがブラインドになっていた難しいシュートでしたが、難なく防ぎましたね。本当に頼もしい守護神です。59分にはサラーのクロスをミルナーが中央でシュート。コースが甘く、テアシュテーゲンがキャッチして難を逃れましたが、決定的なシーンでした。

 

バルベルデの采配がチームを救う

さて、このサンドバッグ状況に対して、バルベルデは早くもチームに処方箋を与えます。60分、コウチーニョに代えてセメドを投入します。この交代でチームはこのように形を変えます。

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これが非常に秀逸な一手でした。セルジ・ロベルトとビダルという守備センスの高い2人が両サイドハーフに入ることで、プレス陣形がかなり整理された印象を受けましたね。このメンバーなら前からハメにいくことも、後ろで耐久力の高いブロックを作ることもお手の物。特にリトリート時のスペースの埋め方、マークの受け渡しのスムーズさはさすがのバルベルデバルサ。「外側では自由にさせるけど内には絶対入れないよ」という守備が非常に機能するようになりました。

これによりポゼッション率は相手に譲ってはいるものの、勢いのあるリバプールの攻撃をある程度コントロールすることができていましたね。

 

■そしてやっぱりメッシ…。

試合が始まること75分、ついにバルセロナの王が牙をむきます。ビダルの鬼プレスで相手にロングボールを蹴らせると、これをラングレが空中戦で競り勝ち、ボールは中央のブスケツへ。ブスケツがすぐさま前方のメッシに縦パスを送ります。ドリブルを開始するメッシ。全速力で戻ったファビーニョが足にボールを当てたものの、ボールは斜めに走りこんでいたセルジ・ロベルトの元へ。セルジ・ロベルトは咄嗟の動きで真横のスアレスにパス。浮いたボールに対してスアレスは膝でシュートを打ちますが、これはバーを直撃したものの、こぼれ球をメッシが押し込みバルサに待望の追加点が入ります。

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ビダルの素晴らしい守備

上図は得点の直前、バルサのプレスの図です。素晴らしいのはビダルの立ち位置。ミルナーに対して完璧なアプローチを見せ、ロングボールを蹴らざるを得ない状況をつくりました。近くのSBやCBは他の選手がきっちりマークしていますし、非常にいい守備だったと思います。リバプールの前線は高さはありませんので、ロングボールを蹴らせてしまえば非常に楽に守ることができます。ビダルの守備能力を改めて実感するシーンでした。もちろん、これはバルベルデの采配による得点であることは間違いないですし、得点に絡んだスアレスとセルジ・ロベルト、決め切ったメッシも流石ですね。

そして81分、ファビーニョに倒されたメッシがゴール正面でFKのチャンスを得ます。距離はありましたが、このFKをメッシが完璧なコースに叩き込み、この試合2点目を奪います。 コース、スピード共にほとんどパーフェクトなシュートであり、GKのアリソンはノーチャンスでした。いや、本当にすごいシュートでした笑。本当にすごい選手すぎて…。余談ですけど、僕このゴールが決まったとき、気が付いたらテレビの前で跪いていました笑。やっぱりこういう舞台であれができるからこそのリオネル・メッシですね。

 

■最後はチーム全員で

3-0という試合内容とは噛み合わないアドバンテージを得たバルセロナ。このまま無失点で終わりたいところですが、メッシのFKの直後、リバプールがこの試合最大の決定機を迎えます。ブスケツのクリアミスからフィルミーノが右足でシュート。これはテアシュテーゲンの脇を潜り抜けますが、何とかゴール前に戻ったラキティッチゴールライン間際で掻き出します。しかし、このクリアがゴール前のサラーの目前にこぼれてしまいます。万事休すかと思われましたが、サラーの右足シュートはなんとポストを直撃。何とか守り切ることができました。

ポストにももちろん感謝ですが、ラキティッチのクリアはメッシのFKと同じくらい価値がありました。3-0と3-1では全く違う結果ですし。あの時間帯で躊躇なくゴールカバーに入れるからこそラキティッチは重宝されるんですよね。本当に見上げた献身性です。

その後は、リバプールの攻撃を上手くシャットアウト。最後はメッシまでもが守備に奔走してリバプールの攻めを妨害していました。ラストプレーでデンベレが大チャンスでGK正面にシュートを放ってしまうというケチはついたものの、試合はこのまま3-0で終了。バルサが決勝進出に向けて大きなアドバンテージを得る結果になりました。

 

■感想・雑感

まあ、結構記事の中で色んなところに触れて来たので、改めて言及することもないんですが、とにかく面白い試合でした。結果だけ見ればバルサの快勝ですが、恐らく快勝だと思っているクレはいないでしょうし、惨敗だと思っているKOPもいないでしょう。記事ですべてに触れることはできませんでしたが、様々なエッセンスが詰まったこれぞチャンピオンズリーグといったハイレベルな戦いを見ることができましたね。

極端の言い方をすると、この試合は「スタイルを曲げても勝ちに行った」バルサと「自分たちのスタンスを崩さずに戦った」リバプールの戦いだったわけです。バルサはポゼッションで負けてしまいましたし。逆にリバプールカンプ・ノウでも攻撃的な姿勢を崩しませんでした。どちらが正解というわけではなく、勝敗を分けたのはほんの僅かなディテールの差だったかと思います。

しかし、このディテールを追求しているからこそ、今のバルサは強いとも言えます。リバプールを上回ったのは決してリオネル・メッシの存在だけではありません。チームとしての力量に若干の分があったと個人的には考えています。

ただ、あくまでCLは180分勝負。まだアンフィールドでの90分が残っています。リバプールはCL決勝の舞台の45分で0-3の状況から3-3に持ち込んだ歴史のあるクラブですし、当然諦めることはしないはず。バルサとしても去年のローマ戦の苦い失態を経験しているため、気を抜くことはないでしょう。セカンドレグもファーストレグのような好勝負になると期待しつつ、バルサの勝利を祈りたいと思います。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。