Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】イバン・ラキティッチの進化が止まらない。万能MFの凄さを語る 前編

He does everything on the pitch. 

直訳すると、「彼(ラキティッチ)はピッチ上で何でもやってのける。」といったところでしょうか。発言の主はジョゼ・モウリーニョ。彼のイバン・ラキティッチへのこのコメントが、ラキティッチという選手の全てを表しています。モウリーニョは個人的にあまり好きではありませんが、この発言は純粋に嬉しいものでした。

今シーズン、ラキティッチはチームで唯一CL全10試合で先発を飾るなど、バルサの主力選手としてその座を揺るぎないものにしています。今シーズンに限って言えば、長年中盤の主だったセルヒオ・ブスケツを存在感で凌ぐほど。カンテラ出身でもなく、スペイン人でもない彼が、なぜバルサでこれだけ重要度の高い存在になることができたのでしょうか。

 

セビリアの王からメッシの従者に

2014年夏、ラキティッチはセビージャから1800万€の移籍金でバルサに加入します。今振り返ったらバーゲン価格だったわけですが。4シーズン過ごしたセビージャではキャプテンを務めるなど、中心選手として活躍しました。それ故にスター集団のバルセロナでどのようなプレーをするのか一抹の不安がありました。

ラキティッチと入れ替わりでチェルシーに去ったセスク・ファブレガスの二の舞になってしまう可能性もあると、個人的には考えていました。セスクもまたアーセナルでは文字通り中心選手でしたからね。

しかし、その心配は杞憂に終わりました。慢性的な故障に苦しむシャビ・エルナンデスの代わりにの右インサイドハーフのポジションを掴むと、特にCLでは11試合に出場するなど主力として活躍し、加入初年度から3冠を達成しました。

ラキティッチが優れていたのは、単なる足元の技術に留まりませんでした。特筆すべきは、その圧倒的な適応力。ラキティッチは当時のルイス・エンリケ監督から、セビージャ時代とは異なるタスクを与えられました。そのタスクとはズバリ「メッシの従者になること」。

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こちらがルイス・エンリケ監督1年目のバルサの基本的なスターティングメンバ―です。ブラボやアウベスなど懐かしい名前も並んでいますが、このチームの特徴はとにかく前線の個の強さです。MSNと呼ばれたこの攻撃ユニットを活かすことがチームの最優先事項でした。このシステムの大きなトピックとしてメッシの「右ウイング回帰」が挙げられます。

右ウイングとしてキャリアをスタートさせたメッシですが、09-10シーズン以降はジョゼップ・グアルディオラ監督によって真ん中(偽9番)にポジションを移されました。偽9番の大きなメリットとして、守備負担の軽減があります。当然、ウイングであれば相手のSBと対面するわけですから、SBの上がりには原則として着いていかなければなりません。

一方、CF(偽9番)であれば、相対するのは両CBです。SBとは違い、CBは余程のことがない限りオーバーラップしませんから、メッシはボール非保持時に守備参加する必要性自体薄れるというカラクリがありました。

しかし、世界最高の9番であるスアレスの獲得により、メッシは自動的に右ウイングのポジションに移りました。メッシはウイングになってもほとんど守備をしませんから、相手の左SBがフリーになってしまうという構造的欠陥がありました。そして、この欠陥を埋めるために選ばれたのがラキティッチでした。

ラキティッチありきの右サイドの守備

スアレスが加入した14年以降チームの大エースメッシは主戦場をそれまでの偽9番のポジションから右ウイングに移します。しかし右ウイングに留まっている時間帯は非常に短く、頻繁に中央に入り込みゲームを司ります。つまり多くの時間バルサの右サイドは人がいないという状況に陥ることになります(攻撃ではアウベスやセルジ・ロベルトが幅を確保)。おまけにメッシは守備を免除されているため、相手の左サイドの攻撃に対して数が足りません。そこで輝いたのが2014年の夏にセビージャから加入したイバン・ラキティッチです。この男、ただのイケメンテクニシャンかと思いきや、半端じゃない戦術的インテリジェンスとフィジカルの持ち主でした。瞬く間にバルサスタイルに馴染むと右インサイドハーフの位置で真ん中を埋めつつ相手のSBもケアするという非常に難度の高いタスクを任されます。

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こちらは当ブログの過去記事からの引用です。こちらを読んでいただければラキティッチエンリケバルサにおいていかに重要な選手だったか分かるかと思います。中央の守備強度を高めつつ、メッシがケアしない右サイドのスペースもカバーしてしまう万能ぶり。インサイドハーフ兼右サイドハーフのような役割ですね。マルチタスクは現代サッカーでは一般的になっていますが、口で言うほど簡単ではありません。その能力もさることながら、やはりこれだけ与えられたタスクを完璧にこなせてしまうのは、驚嘆に値しますね。ラキティッチのフィジカル面とタクティカル面での充実ぶりがわかります。

 

アンチェロッティマドリ―でも同じことが

余談になりますが、デシマを達成した13-14シーズンのアンチェロッティ監督指揮下のレアル・マドリーでもエンリケバルサと同じような構造になっていました。

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こちらが13-14シーズンの基本布陣でした。システムはバルサと同じ4-3-3で、BBCベンゼマ・ベイル・クリスティアーノ・ロナウド)という強力3トップを擁していた点もエンリケバルサとの共通項ですね。特にクリスティアーノ・ロナウドはメッシと同じくほぼ守備免除でしたので、彼の守備の穴をどのような埋めるのかが課題になっていました。

選ばれたのはアンヘル・ディ・マリアモウリーニョに鍛えられたこのアルゼンチン代表は、純粋なサイドアタッカーから中盤のオールラウンダーに変貌を遂げました。左インテリオールに配置された彼はその類まれなる機動力と運動量で中央から左サイドにかけて広大なスペースをカバーしていました。時には中盤の一角として、時にはサイドアタッカーとして、ロナウドが空けたスペースを埋めていましたね。

左右は違えど、これはエンリケバルサにおけるメッシとラキティッチの関係とほぼ同一です。メッシ擁するバルサと、ロナウド擁するマドリ―。世界を魅了してきた両チームですが、その陰でラキティッチディ・マリアのような選手がチームを支えていることを忘れてはなりませんね。というか、彼らレベルの選手がハードワークするチーム、そりゃ強いっしょって感じです笑。

ちなみにデシマを達成するにあたって多大な貢献を見せたディ・マリアですが、シーズンオフにあっさりとマンチェスター・ユナイテッドに売却されてしまいます。他チームのファンながら、このフロレンティーノ・ペレス会長の決断はスポーツ的観点からは明らかな失敗だったかと思います。案の定、ディ・マリアを失ってバランスを保てなくなったマドリ―は翌シーズン失速。アンチェロッティ監督はシーズン終了後、解任の憂き目にあいました。

 

ラキティッチの凄いところ

さて、話をラキティッチに戻しましょうか。ここまでラキティッチが如何にエンリケバルサにとって重要な存在だったのか見てきましたが、具体的にどのような点が優れているのでしょうか。

  • 基本技術、パス精度の高さ
  • ミドルシュートを始めとする得点力
  • 攻守におけるポジショニングセンス
  • 183cmの長身を活かした空中戦
  • 自己犠牲を厭わない献身性
  • サッカーIQ、インテリジェンスの高さ
  • 人間性、メンタル面のブレのなさ

こんなところですかね笑。とにかく何でもこなせるのがラキティッチの素晴らしいところです。恐らくパラメータを作ったらバランスのいい形になるのではないでしょうか。スピードが若干不足しているのが目立つ弱点でしょうか。また最近はあまり見せていませんが、2列目からの飛び出しもラキティッチの大きな武器です。

無難にパスを繋いでいたかと思いきや、今シーズンの後半戦のクラシコのゴールのような飛び出しからのエレガントなループシュートを放ったり、トットナム戦のような強烈なボレーシュートを叩き込むなどとにかくプレーの幅が広いのが特長ですかね。チーム状況や試合によって微妙にプレースタイルを変えることができているのはサッカーIQが高い証拠です。また、チームのためになると思えば、平然と自分を犠牲にできる献身性も併せ持っているからこそ、メッシシステムにも難なく適応できたのです。

また、ラキティッチのメンタル的強さを表す印象的なエピソードがあります。昨年のW杯の準決勝の前日、ラキティッチは39度超の高熱があったそうです。しかし、その翌日平然と試合にフル出場したラキティッチ。チームは見事に決勝進出を決めました。意志の強さが窺えますよね。
ただ、バルサにおけるラキティッチを語る上で、最も重要なのはフィジカル的な強度でしょう。バルサの中盤と言えば、真っ先にシャビとイニエスタの名前が挙がるかと思います。彼らはボールを持たせたら他の追従を許しませんが、一方でフィジカル的なコンタクトは不得手にしています。ラキティッチは彼らほどのボールスキルはないものの、フィジカルの強さは水準以上。支配力の落ちたペップ以後のバルサにとってうってつけの選手だったということですね。
 
 
如何だったでしょうか。前編はとりあえずここまで。後編ではバルベルデバルサにおけるラキティッチの重要性と進化を中心に論を進めていきたいと思っています。是非是非後編もよろしくお願いします。またコメントもお待ちしております!
 
 
最後までお読みいただきありがとうございます。
 
後編はこちら↓