こんにちは!Hikotaです。
インターナショナルウィーク明けでバルセロナは2試合を既に消化。一方の僕はベティス戦のレビューが間に合わず。どうしたもんかなと思っていましたが、2戦連続のマニータ(5得点での勝利)を飾り、さらにこの2試合で大きな変化が見られました。
なので、まとめて出してしまおう!ということで書きます。テーマはタイムリーな話題であるジョアン・カンセロ、ジョアン・フェリックスの2人の新戦力が見せた新しい可能性について。2人を軸に試合にも触れていけたらなと思います。では!
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2戦連続のマニータを導いた2人の”ジョアン”
ラ・リーガ第5節ベティス戦、CLグループステージ第1節アントワープ戦。2戦連続の5得点大勝は良くも悪くも「保守的」であったシャビバルサにとって大きなトピックとなりました。昨季リーガを制覇した1番の要因は紛れもなくその堅守。38試合で20失点という結果が全てを物語ります。
しかし、その一方でスペクタクル性に欠けるプレースタイルには批判が絶えません。昨シーズンのシャビバルサが安定感を得るに至ったのは「4人のMF同時起用」でした。ブスケツ、フレンキー、ペドリに加えてガビを左ウイングに起用することで、ボール保持とプレッシングの強度を担保。CL敗退という咎はあったものの、リーガではシーズンを通して安定した勝ち点を重ねました。
しかし、22‐23のバルサの枠組みにおいては、4人目のMFを起用することはアタッカーを1枚削ることと同義になるわけです。これはシャビバルサの得点数が少ない要因の1つになりました。左サイドのアタッカーはSBのバルデが上がってくる形になりますが、2年目の今露呈しているようにウインガーとしては引き出し不足が否めません。攻め勝てないという問題は欧州レベルの戦いにおいては致命的になりました。
この現状に対してレバンドフスキも先月「ピッチに立つアタッカーが少ない!」と苦言を呈していましたね。
Lewandowski: "Sometimes we don't play with enough attacking players, I don't get support... so I look for the best solution for the team." pic.twitter.com/bHMlp5m1Xd
— Barça Universal (@BarcaUniversal) 2023年8月29日
この状況に風穴を開けたのが、1人目のジョアンであるカンセロ。この2試合で見せた振る舞いは偽SBのそれ。ゾーン2以降、彼は右サイド大外に留まらず、右サイドハーフレーン、中央、時には左ハーフレーンまで進出し、4レーンを股にかける自由奔放な振る舞いを見せつけました。つまり、カンセロの登場により右SBが中盤化する選択肢をバルサを得たわけです。カンセロはシャビの基準でいうところの「360度の世界でプレーできる選手」ということですね。
特にありがたいのがピボーテの右側の位置、いわゆる6番の位置でボールを受け取ってくれること。昨季のバルサはここが不在であり、結果として右ウイングが孤立してしまうという問題を抱えていました。カンセロがここに入ることで全体配置のバランスが是正され、2-3-5の形で攻撃を構築できるようになったのは大きな収穫でしょう。
昨季見せていた3-2-5に比べると被カウンターのリスクは高まるものの、2-3-5のほうがよりピッチ上にトライアングルを作りやすいのでボールの循環はスムーズになります。フレンキーが最終ラインに落ちて3-2-5になることもこの2試合で確認できました。
この選択肢により、バルセロナは左ウイングを4人目の中盤枠として消費する必然性がなくなります。そこで登場するのが純粋なアタッカーであるもう1人のジョアン。フェリックスはペドリの負傷離脱という状況も相まって左ウイングでスターターとして起用されます。結果、2試合で3G1Aと素晴らしいスタートを切りました。アタッカーを増やした効果が目に見える形で発揮されたわけです。
フェリックスは左WGで起用された際のガビやギュンドアンと同じく、2列目左ハーフスペースを根城とするも、プレーの基本方針はセカンドトップのそれ。特に意識しているのはレバンドフスキとのリンク。できるだけレバンドフスキの近くでプレーし、いい関係を築こうとしているのが分かります。
Joao Felix: "I tried to stay close to Lewandowski so he wouldn't be isolated in attack. The striker can't be left alone like that. He talked to me at the start of the match." pic.twitter.com/2WyUk23vbq
— Barça Universal (@BarcaUniversal) 2023年9月16日
この発言なんかはあざといというか、ちゃんとツボを分かっているなあという感じですよね笑。代理人あたりがブレーンとしてアドバイスしてるのかもしれませんが、レバンドフスキのハートを掴み行くのは賢いです。結局レバンドフスキのここ2試合の2ゴールを演出したのはフェリックスでしたし、チームのエースといい関係を築くのはポジション争いにおいて本当に大切です。それは昨季アンスが苦しんだ1つの要因でもあったわけですが...。
より攻撃的な選手が2人チームに入ったことでチームは活性化。ベティスとアントワープを寄せ付けず計10ゴールの結果となったわけです。無論、2チームともにどちらかと言えばボール保持に特長のあるチームだと思うので、バルサにとって与しやすい相手だったという事実は加味しなければいけませんが、ピッチ上で起こった変化は間違いのないものだったように感じました。
カンセロの中盤化によるもう1つの発見
カンセロが中盤化することによるもう1つの効果はフレンキーのアンカー起用の際のメカニズムが安定したことです。
当ブログでは一貫してフレンキーのアンカー起用に反対の立場をとってきました。フレンキーはあくまで「アンカー+1」の選手であり、背後を任せられるピボーテと組ませてこそ真価を発揮するというのが僕の主張でした。少なくともバルセロナというクラブにおいてはアンカーの選手ではないな、と。
しかしアントワープ戦で見せたアンカーフレンキーのプレーはバルサのアンカーに求められるそれでした。列移動は最終ラインと3列目ラインの間に留め、中央に鎮座。安定したボールキープとパスワークで上手くボールを散らしながらゲームをコントロールしていました。目立ちすぎることはなく「静的に」試合を完遂した印象です。
その要因はカンセロが入って完成した2-3-5システム。このシステムではフレンキーの両脇に2人(左はガビ、右はカンセロ)が入る形になります。無論、カンセロもガビもケースバイケースで2列目もしくは大外に出ていきますが、ベーシックな立ち位置はここ。両脇を挟まれることによってフレンキーの横移動はシンプルに制限されます。
フレンキーがガビやカンセロにシンプルにボールを預けることで展開はスムーズになりました。特にガビが3列目で一定レベル以上のパフォーマンスを見せたことも発見の1つでした。ロングキックのレンジが短く、やや展開力に難がありますが、ミスが少なくネガティブ・トランジションの局面で強さを発揮するガビを3列目で登用する旨味は今後ありそうです。
ガビとカンセロの存在によってフレンキーがアンカーで起用されていた際に引き起こされた無秩序がこの試合では見られませんでした。彼が加入した2019年以降、個人的にはアンカーとしてのベストパフォーマンスでした。
フレンキーのバルサでのベストポジションはそれでもやはりアンカー横だなと思います。ただ、オリオル・ロメウのリプレイスどうするんだろうと思っていた矢先のアンカーへの適応だったのでこれは大きなイベントだったと言えるでしょう。ペドリが戻ってくれば本格的にフレンキーの今季の主戦場がアンカーになることは大いに想定できます。
想定される懸念点
最後に2人のジョアン起用に対する懸念点だけまとめておきましょう。全部杞憂に終わることを願います。
1,スタメン争い
これはいい面もあるかと思いますが、2人の登場により今のバルサはスターティングメンバーを選ぶのが本当に難しいチームになりました。
上図のスタメンはアントワープ戦のメンバー。それ以外の序列はイメージです。
まずはDFライン。カンセロを右SBで起用するとなればCBはクンデ、アラウホ、クリステンセンの中から2人選ぶ形になるわけです。これはなかなか難しい所です。カンセロを起用する分背後が怖いので能力だけ見ればアラウホとクンデを並べたいところですが、左CBが3人の中で1番上手いのはクリステンセン。という状況。いい感じでアラウホ、クリステンセンが順番に離脱していくかもしれませんが。。。
カンセロを左に回して、右はクンデorアラウホという昨季に近い形に戻す選択肢も存在します。しかしそうなると昨季の右サイド問題が解決しないので、個人的にはあまり推していません。バルデ頑張れ。
続いて中盤。3枚だと仮定すると、フレンキー、ロメウ、ガビ、ギュンドアン、ペドリの中から3枚を選ぶ形に。こちらの方が悩ましいですね。アントワープ戦で見せた2-3-5におけるフレンキーピボーテは一定の成果を見せましたが、やはり彼の真価は+1でこそ発揮されます。ギュンドアン、ペドリはベンチに置けるレベルの選手ではないですし、ガビは担っているタスクが大きいので3トップにするならバランス的にますます外せない選手になりそうで...。
ペドリが復帰した時にフェリックスも含めてシャビがどう序列をつけていくのか気になるところです。
ちなみに右ウイングこそ激戦区で、実力的にはヤマルがトップですがまだフィジカルが仕上がっていないということで、結果を出しているラフィーニャ、フェランとの競争になります。個人的にはフェラン、ラフィーニャを軸にしつつ、ヤマルはジョーカーとしての役割、あるいはカディスのように引いて守ることが明確なチーム相手の先発が望ましいかなと思っています。
2,モチベーション問題
素晴らしいスタートを切った2人ですが、前所属クラブでも露呈した懸念として上手くいかない時や控えに回った時の振る舞いやモチベーションを保てるかというところは要注意かなと思います。
ジョゼップ・グアルディオラ、ディエゴ・シメオネという世界トップクラスの規律を求める指揮官の元で、カンセロもフェリックスもどちらかと言えば不良生徒寄りだったはずです。勿論、彼らが100悪いとは思いませんが、出場機会が制限された時に良い反応はしないタイプでしょう。
そもそもフェラン・トーレスが今季見せているように明らかな構想外の扱いでも振る舞いとパフォーマンスでカムバックする例の方が少ないかなとも思います笑
彼らは単年ローン買取オプション無しの契約なので来季以降の契約はパフォーマンス(とバルサのお財布事情)次第という状況はカンセロとフェリックスにとっては良いモチベーションになるかもしれませんね。今のバルサの財政状況だと両者買い取りは困難な目標だと思いますが…。
3,非保持時の強度、失点数増加のリスク
非保持時の貢献度、という意味で問題視されてきたのも2人の共通点の1つです。
そもそもバルセロナの昨季の堅守は、組織的な緻密さよりもネガティブ・トランジションと個々の守備能力に依存したものでした。クンデ、アラウホ、クリステンセン、バルデの4バックはここ10年のバルセロナで最もディフェンス能力のアベレージが高いユニットと言えるでしょう。
仮にカンセロとフェリックスが右サイドバック、左ウイングの定位置を掴んだとすると昨季との対比は右SB(クンデ→カンセロ)、左WG(ガビ→フェリックス)となるわけなのでどう考えても非保持時の強度は落ちてしまいますよね。昨季のような失点数をキープするのは難しいと思います。
尤も、クンデのCB希望が出た時点で得点数を伸ばすアプローチになっていたのは必然の流れでした。個人的には守り勝つよりも不安定な部分もありつつ大量得点を狙うバルサの方が魅力的だと思うので、この変化は好意的に受け止めています。
CLやクラシコなど同格以上のチームが相手になった時にカンセロとフェリックスがどこまで頑張れるかはここから見ていきたいポイントになります。
独り言
久々に楽しいバルサを観ることができている今シーズンです。2人がチームに入る前から今季はアグレッシブな様相を醸し出していたシャビバルサですが、良い形で2人がラストピースになってくれましたね。
カンセロはともかくとしてフェリックス獲得には反対の立場だったので、今の活躍と意欲的な姿勢は望外の喜びです。バルサで全力を尽くす姿勢を見せてくれるのはいいですね。どこかのフランス人とは全然違いました。そこはフェリックスを過小評価してた部分です。すみませんでした。
ただ、完全に掌返しをするのはまだ先にしましょう。ローコストで獲得できた分、バルサは来季以降もフェリックスをチームに留めておける保証はどこにもありません。むしろ活躍すればするほど買取難易度は上がっていくジレンマはあります。あとはどこまでこのフォームを維持してくれるかですね。慣れ始めた時と、定位置が揺らいだ時の姿勢には注目したいなと思います。
カンセロはもう30歳で、カンセロはカンセロだと思うので伸び伸びやってくれれば(笑)。
最後までお読みいただきありがとうございました。