Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】19-20 ラ・リーガ第36節 バジャドリード対バルセロナ

こんにちは!前節、最下位エスパニョールに辛くも勝利したバルサは今節、アウェイでバジャドリードと対戦します。バジャドリードはここまで勝ち点39で14位。残留に向けて相当優位な位置にはつけているものの(18位マジョルカが残り試合全勝しない限り残留)、早めに確定はさせたいはずです。前半戦のカンプノウでの一戦はバルサに5-1と大敗していますが、今回はどのようなアプローチでくるでしょうか。

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■スタメン

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バジャドリードは前節バレンシア戦から7人の先発変更。連戦が続いているとはいえ、ここまで大幅にメンバーを変えてくるんですね。元バルサのサンドロ・ラミレス、今季6ゴールを挙げているCFのエネス・ウナルはベンチからのスタートとなりました。

一方のバルサは前節から2人の先発変更。スアレスがまさかのベンチスタートとなり、代わりにリキが先発に選ばれます。バルサに関しては控え選手の負傷や、バルサBがプレーオフを控えていることもあり、ローテーションは最低限といったところでしょうか。前節一発退場のアンスは当然出場停止ですが、ブライスワイトをそれでも起用しないのはCLを睨んでのことでしょうかね。ブライスワイトはCLに出られませんから。

 

■前半

両者奇策を打つ

先発発表の時点での現地予想は、バジャドリードが4-1-4-1、バルサがここ数試合の流れを踏襲した4-3-1-2というものでした。しかし、蓋を開けてみるとバジャドリードが4-3-1-2、バルサが3-1-4-2という予想外の布陣を敷いてきました笑。

バジャドリード視点で考えると、バルサは4-3-1-2で来ると予想した上で、ミラーゲームを挑むという意味での4-3-1-2だったのではないでしょうか。前節のエスパニョールは5バックにして裏のスペースを消すことでMSGの連携と裏抜けを遮断しましたが、バジャドリードのアプローチとしてはミラーゲームに持ち込み、中盤の攻防で負けない!といったところでしょうか。

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前節のエスパニョールのアプローチ

しかし、バルサは予想に反して3-1-4-2のフォーメーション。これはセティエンが就任後3試合で採用していたフォーメーションですね。21節バレンシア戦で粉々にされて以来の採用です。このシステムは相手ありきというよりもCLに向けたテストのような気はします。

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ということでバルサボール保持時の噛み合わせはこんな感じに。

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バルサボール保持時

バジャドリードのトップ下のキケはブスケツマンマーク気味に張り付いていました。バルサの2人のインテリオールに対しては3枚の中盤で守る形になります。バルサのWBに対しては位置が低ければ、インサイドハーフが対応。高い位置を取るのであれば、SBがそのままマークにつく形になります。噛み合わせ的にはそこまでよくないですね。

前半のバジャドリード守備陣に打撃を与えたのは、右CBのセルジ・ロベルト。

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鍵を握ったセルジ・ロベルト

定位置は右CBながら、バジャドリードを敵陣に押し込むと中盤のラインまでポジションをあげます。彼はポジショニングも正確な上に、ドリブルで運ぶこともできますから、4-3-1-2では守れない脇のスペースに度々侵入することになります。このスペースに出てくるセルジ・ロベルトのケアはバジャドリードにとって悩ましいものでした。

流石に2トップのどちらかが下がって対応するのは無理がありますし、左CHのアルカラスが不用意に出て行くとメッシやビダルへのパスコースが空くことになるわけです。セルジ・ロベルトにつけば、メッシが空く。メッシをケアすればセルジ・ロベルトがフリーで侵入してくるという中々に苦しい展開に。

さらにセルジ・ロベルトが低い位置で支配的に振舞うことで、セメドは苦手な低い位置でのビルドアップから解放され、存分にサイドの高い位置でそのスピードを存分に活かすことができていました。いいラインブレイクからグリーズマンのシュートも演出しましたし。さらに、セメドが高い位置に張っていることで相手の左SBがメッシやビダルを掴まえに行くことは難しいですよね。

ということでバルサはこの右サイドの4人の連携から最後はビダルがストライカーのようなゴールを決め、早々と先制に成功します。バジャドリードからすると、せっかくブスケツを抑えても、セルジロベルトを止められないとバルサが止まらないわけです。チーム内で色んなタスクをこなせるセルジ・ロベルトは偉大ですね。

カウンター対策という意味でも

この3バック採用の側面の1つとしてカウンター対策という意味合いもあるはずです。4-3-1-2採用時は後方が機動力のない2CB+ブスケツになっていることも珍しくなく、広大なスペースを突かれるとどうしようもなくなる現象が度々見られました。

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ビジャレアル戦より

ただ、この3-1-4-2システムでは後方が3CB+ブスケツなのでシンプルにカウンター予防策として人を割くことはできるわけです。3人と4人ではカバーできる範囲が全然違いますから、そういったメリットも当然あるわけですよね。

ただ、それでもやはりカウンターは脅威でしたし、そこはシステムで埋め切れるものでもないような気もしますよね。毎試合のレビューで言っている気がしますが、スピードのある守備者の獲得は急務だと思います。セメドを右CB、というのもなくはないですが、ビルドアップの局面で別の問題が浮上してしまいます。

バジャドリード側は、ストライカーのセルジ・グアルディオラのプレーが秀逸でした。大きな体格を活かしたポストプレーとキープでチーム全体を助けましたね。彼のようなFWはバジャドリードのようなチームにとってかなりありがたい存在です。

前半は1-0でバルサがリードして終わりますが、何となく消化不良のまま後半へ突入します。

 

■後半

4-4-2で3-1-4-2対策

後半開始からバジャドリードは2枚替え。前半はバルサの急な3バックに面食らいましたが、きっちり対策を打ってきました。この交代により、バジャドリードは4-4-2へフォーメーションを変えます。バルサは足に不快感を覚えたグリーズマンに代えて、スアレスを投入します。

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後半の両者

バジャドリードの4-4-2の意図としては、まずバルサの3-1-4-2でのビルドアップを止めること。先述した通り、このバルサの3-1-4-2はバレンシア、さらには国王杯で対戦したイビサが攻略法を示しています。

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21節バレンシア戦より

鍵を握るのはサイドハーフの守備。両サイドのCBがボールを持った時、サイドハーフが中央(ハーフスペース)へのパスルートを封鎖。WBへのパスを誘導し、孤立させて奪いきるという守備戦術でバレンシアバルサを0-2で粉砕しました。

今回のバジャドリードも左サイドハーフに入ったオスカル・プラーノがかなりハーフレーンを守ることに注力していました。ハーフレーンを抑えることでメッシ-セルジ・ロベルトのリンクを切ったのです。その甲斐あって、セルジ・ロベルトの効能は前半に比べると薄まり、バルサの右サイドは循環しづらくなって攻撃が詰まるようになりました。

そしてサイドハーフのいる4-4-2を採用したことで、バジャドリードはサイド攻撃からのクロスでゴールを目指すようになりました。これは中央密集の4-3-1-2ではできないことなので、4-4-2に変更した1つのメリットではあるわけです。右サイドに入ったヘルヴィアスはエネルギッシュな突破を披露しました。ウナルとグアルディオラの2トップへのクロスはシンプルながら脅威でしたね。

まあただ、このような対策はイビサバレンシアに既に打たれているわけですから、セティエンの記憶にも当然残っているはず。むしろ対策を打たれて、どのようにそれをかわしていくのか僕は注目していました。なぜならそれが3バックシステムの可否に繋がるからです。

例えば、セメドとセルジ・ロベルトの位置を入れ替えたり。もしくはラキティッチを右CBに入れ、セルジ・ロベルトを右インサイドハーフに配置し、物理的にメッシと近い距離でプレーさせることで状況の打開を図ったり。配置を変えずに打開策を見出して欲しかった感はありました。

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例えば
もしかして、情報戦?

しかし、セティエンは苦しい展開を見ると、あっさりと3バックをやめ、バジャドリードの形に合わせた4-4-2に変更。ラングレ、リキを下げ、アラウホとラキティッチを投入します。

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バルサ4-4-2に変更

メンバー的には3-1-4-2の継続も可能ではあったので明確な意図を持って4-4-2に変更したのは間違いありません。サイドからかなり際どいクロスが入っていたので、そこに対するケアということでしょうか。ただクロスが怖いならCBの数を1枚削るのはどうなんだろうって気はします。ミラーゲームにして、膠着を図ったのだとしたらこれも誤りで、メッシ・スアレスを使う限り、決してミラーゲームにはなりません笑

ということで意図がいまいちわかりませんね。疑念にさらに拍車をかけたのが、この変更の17分後、再びセティエンは3-4-1-2に戻します。おまけに左CBにはジュニオルを投入。ちょっと何をしているんだかわからない状態。4-4-2が状況の打開を図った策で、3バックに戻したのは逃げ切りのためなのでしょうか。ちょっと逃げ腰の采配ですね。

あまりに采配に納得感がないので、これはCLナポリ戦に向けての情報戦なのでは?という説が僕の中で浮上しました。究極の万能型セルジ・ロベルトのお陰で、同じメンバーでも4通りくらいのシステムが組めるわけです。4-3-3、4-4-2、4-3-1-2、3-1-4-2。敢えて色々なフォーメーションを見せておくことで相手のスカウト陣を攪乱しよう!的な。

ってくらいじゃないとよく意図が分からない采配ではあったんですよねえ。刻一刻とバジャドリードの得点の匂いは濃くなっていましたし、テストにしてはちょっと雑過ぎたというか。そもそも目下優勝争い中に暢気にテストしている場合でもないですし。普通に同点に追い付かれていたらタイトルの行方は決まっていたわけですから。

結局、この後のバジャドリードの猛攻を何とか凌いだバルサは勝ち点3を積み上げて、首位マドリ―の結果を再び待つことになります。テア・シュテーゲン様、本日もありがとうございました。

 

■まとめ

何とか勝ったものの、とても楽観視できる内容ではありませんでした。エスパニョール戦に引き続いての、下位相手の辛勝。優勝争い中なので勝ち点3奪取は素直に喜ぶべきなのですが、モヤモヤは残ります。勝つには勝ちましたが、正直ひっくり返されても文句は言えない試合内容でしたね。

バジャドリードは、特に後半上手く戦いました。4-4-2への変更はお見事でしたね。しかし、裏を返せば相手がやり方を変えたときにそれに対して打つ手がないのが今のセティエンバルサの苦しさを表しています。これがCLだったら、と思うとなかなかに考えたくない想像をしてしまいますね笑。

ビジャレアル戦の成功で、セティエンは4-3-1-2の熟成にかかるのかと思っていましたが、エスパニョールにあっさり対策を打たれたことで、再び3バックにすがりました。僕は4-3-1-2には懐疑的なので、それは別にいいんですけどね笑。ただどのような根拠を持って戦術を組んでいるのか、疑問は残ります。

チームが多くのオプションを有することは間違いなくプラスなわけですが、今のバルサにはそれ以前にあまりに一貫性がないように思われます。幹がしっかりしていなければ、枝はすぐに折れてしまいます。何を拠り所にプレーするのか。リオネル・メッシを頼りにしたいのであれば、彼がプレーしやすい環境を作るべきです。セティエンに明確なアイディアがあるならそれに殉ずる覚悟を持つべきです。

途中就任が厳しいのは百も承知ですが、もうセティエンが就任してから20試合以上を消化しています。タイトルも、説得力のあるゲーム内容もないなら、立場は相当厳しくなるでしょう。今のバルサに最適解を見出すことができるのか。残り2試合できっかけをつかむことを願います。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。