Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】CL準決勝2ndレグ リバプール対バルセロナ 後編

お待たせしました!リバプール戦後編です!

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 ↑前編はこちら!

それでは記事に入りましょう。

 

■何も変えなかったバルベルデの意図はどこに?

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後半開始からリバプールは負傷した左SBのロバートソンに代えて、中盤のワイナルダムを投入します。この交代に伴い、左インサイドハーフミルナーが左SBに下がりました。この交代はアクシデントによるものでしたが、結果的に試合を大きく動かすものとなりました。一方のバルサは選手交代はなし。前半と同じ11人がピッチに並びます。

前編にてバルサの前半の守備の問題点を挙げました。

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 再三申し上げているようにバルセロナの第1プレッシャーライン(メッシとスアレス)はほとんど機能していません。そのため、リバプールは簡単にボールを運ぶことができます。特に構造的にファビーニョがフリーになりやすいので彼を経由してリバプールは比較的自由にボールを展開してバルサの中盤以下を自陣に押し込めることに成功しました。

 これは別にこの試合に限った話ではなく、バルサの戦術的な欠陥になっています。例えばファビーニョを掴まえようとラキティッチが前に出たとしても、両CBに十分なプレッシャーがかかっていない場合は簡単に後ろのスペースを突かれてしまいます。リバプールの両SBが高いポジションを取ったことでよりこの弱点は浮き彫りになりました。この状況ではリトリートするしかほぼ選択肢がありません。SBのポジション取りでこれだけビルドアップは向上するのです。

いくらバルサのリトリート守備が向上したと言っても、8枚が下がって「バスを停める」だけではいつか決壊してしまいます。自陣に引きこもっているだけで守り切れるほどサッカーは甘くありません。ボールホルダーにある程度プレッシャーをかけて相手のビルドアップを阻害することで、守備は非常に楽になります。

この問題、特に自由を謳歌するファビーニョのケアをどうするのかが後半の課題となりそうな予感はありました。

前半はさほど決定機を作らせなかったバルセロナですが、後半に入ってリバプールの圧力が強まるのは明白でした。好き放題相手に前進されてしまうこの状況はバルサにとって都合の良いものではありません。何も修正してこなかったバルベルデの決断には正直驚かされました。

別にセメドを入れて守備を固めるべきとか、アルトゥール投入で中盤を厚くすべきとかそういうことを言っているわけではなくて。ただ、チームとしての意思をはっきりと統一すべきだったと思います。今から後半の試合内容に触れていきますが、あれだけ押し込まれて左サイドにコウチーニョを残しておくのは非常に不可解な選択でした。

前編でも書いた通り、コウチーニョは決して自陣に貼り付けられて輝くプレーヤーではありません。受けに回るのであれば別のソリューションがあったはずです。

 

▪️自陣に釘付けのバルサ、厄介なワイナルダム

というわけで、後半開始早々から自陣に押し込まれるバルセロナリバプールはさらにラインを押し上げ攻勢を強めてきます。

リバプールは先述した通り、後半からワイナルダムが投入されています。1stレグは3トップの中央で起用され、上背はないものの、クロスボールに強い彼の存在はバルサにとって非常に厄介でした。

前編でもお話しした通り、リバプールは速攻が厳しい局面では、サイドに数的優位を作ってのクロスボールがメインウェポンになっています。中央突破はバルサの守備が堅いのと、サラー&フィルミーノの不在で難しかったのだと思います。前半はあまり外側からのクロスが脅威にはならなかったものの、ワイナルダムは積極的にエリア内に飛び込んでくるので、単純にエリア内のターゲットが増えました。

バルサとしてはまず守備の優先順位は真ん中を固めることかつメッシスアレスは下がって来ないので、必然的に大外の選手にフリーでクロスを上げられるシーンが増えてきます。前半と同じクロスでも脅威の度合いはまるで違いました。

47分には早速アルバの裏を取ったシャキリのクロスにワイナルダムが飛び込み、バルセロニスタをヒヤリとさせます。セルジ・ロベルトが何とかクリアして難を逃れたものの、このクロスにはリバプールの選手3人がエリア内に入っており、非常に危ないシーンでした。

 

▪️決めなければならないスアレス、光ったファビーニョの貢献

バルサの決定機は50分。リバプールのプレスを掻い潜って右ハーフスペースに位置するメッシにボールを渡すと、裏に抜け出したスアレスにスルーパス。完璧な連携でしたがスアレスの右足シュートをアリソンがセーブ。決定機を逃してしまいます。

相手が捨て身でプレスに来ているだけにここはなんとしても決めるべきでした。この試合の後、スアレスの手術が発表されました。この試合のスアレスの状態はさほど良くなかったのだと思います。返す返す惜しいのは、前節セルタ戦でデンベレを負傷で失ったこと。もし彼がベンチに入っていたのなら、スアレスを下げてメッシを頂点に置く4-5-1が組めたかもしれません。

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例えばこんな解決策、4-4-1-1的な

このようなフォメーションであれば中盤が厚くなり、ファビーニョのケアも上手くいく可能性はありました。デンベレがいればロングカウンターの威力は増しますし、押されていてもリバプールを脅威に晒すことができたかと思います。バルベルデアウェイゴールを重視してスアレスを下げませんでしたが、あのシュートが決まらないのであればスアレスを下げて中盤を分厚くするべきでした。あくまで結果論ですが。

そしてメッシ、スアレスコンビが守備をしない恩恵を受け続けるファビーニョは後半も輝きを放ち続けました。構造的にフリーになりやすいこともあり、存分にその展開力を活かすことが出来ていました。ワイナルダムとヘンダーソンが積極的に前線に飛び出すこともあって、ポジションは前寄りになりましたが、持ち前の守備範囲の広さでセカンドボールを回収、二次攻撃に繋がることができていましたね。個人的にはここに蓋をして欲しかったのですが…。

 

▪️立て続けの2失点

後半開始から僅か7分、バルサ守備陣のダムが決壊します。アーノルドのミスパスラキティッチが拾うと真横のアルバにパス。これを素晴らしいネガティブ・トランジションでアーノルドが奪い返すと、縦に持ち出してクロス。グラウンダーのボールに2列目から飛び出したワイナルダムがネットを揺らして追加点を奪います。

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リバプール2点目

これはワイナルダムのフィジカルの強さが活きた得点でした。映像をよく見返してみると、シュートの直前にビダルに身体を当てられていますが、それを弾き返してゴール前に侵入しています。シュートも強烈でしたね。ペナルティーエリア内に守備者は足りていましたが、やはり後ろから走りこまれるとDFは対応に苦慮しますね。

バルサ側としてはラキティッチの軽率なミスと言えばその通りですが、チームとしてかなり自陣に押し込められている状況でポゼッションをやり直して陣地を回復したいと思っても無理はありません。そういう意味では、引き金を引いたのはラキティッチのミスですが、結局は遅かれ早かれだったと思います。ミスを糾弾するのは簡単ですが、ミスの背景には必ず伏線があると僕は考えています。

そして、その試合再開直後簡単にボールを奪われてしまうと、右サイドから左サイドにボールが渡り、シャキリが左足でピンポイントクロス。これを再びワイナルダムが今度は頭でゴールに叩き込みます。これで合計スコアは3-3。スコアをイーブンに戻したリバプールの選手たちの躍動にアンフィールドのボルテージは最高潮に達します。

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リバプール3点目

こちらがシャキリがクロスを上げる直前の図です。ご覧の通り、バルサのほうは実に7人が自陣ペナルティーエリア内に押し込められてしまっています。一方の、リバプールは両ハーフスぺ―スにファビーニョヘンダーソンが陣取り、セカンドボールをしっかりと狙っています。闇雲なクロス攻撃ではなく、デザインされた攻撃であることが分かります。バルサはここまで押し込められる展開でさすがに跳ね返し続ける力はありませんでした。

 

▪️遅すぎるセメド投入

カンプ・ノウで得た3点のリードを僅か60分足らずで失ってしまったバルサバルベルデは慌ててコウチーニョに代えてセメドを投入します。

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お馴染みの交代だけど、今回ばかりは…

1stレグと同一の交代ですが、この試合においては同点に追いつかれた後の守備的な采配ともあってかなり後手を踏んでしまった印象です。せめて、後半開始からこの采配をしていればチームの方針ははっきりしたと思いますが…。バルベルデとしてはなんとかリバプールの勢いを止めたい一心だったかと思いますが、効果的な一手とは言えませんでした。

しかし、このメンバーで戦った約12分間は全体的に見れば後半の中ではマシな時間帯だったかもしれません。失点していませんし、メッシがラキティッチとの長いワンツーから決定機を迎えるチャンスもありました。

 

▪️まさかのビダル交代、そして悪夢の…

相変わらずポゼッションは低いバルサはアルトゥールを準備させます。ボールポゼッションに長けた彼を入れることで中盤に落ち着きをもたらそうという意図でしょうか。個人的にはアルトゥール投入自体は悪くなかったと思いましたが、交代した選手がまずかった。選ばれたのはビダル。ここまで守備で多大なる貢献を残してきたビダルに代えてアルトゥールが入ります。

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この交代に伴い、バルサの陣形は上記のようになります。右サイドにラキティッチ、左サイドにセルジ・ロベルトが配置されます。DAZN解説の戸田さんも指摘していましたが、この交代は非常に不安が残るものでした。特に左サイドの守備はビダルが投入されてから安定感を増していただけに。

その不安は最悪の形で的中してしましました。78分、右サイドのアーノルドが高い位置でボールを受けます。相対するのはセルジ・ロベルト。アーノルドはキックフェイントを細かく入れながらゆっくり前進。セルジ・ロベルトはこのドリブルに対してズルズル下がってしまい、結局コーナーキックを献上。

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セルジ・ロベルトも自分の対人の弱さを理解しているからこそ、どうしてもこういう対応になってしまいがちですね。たらればですが、ビダルならもう少し前方でボールにアタックしていたと思います。バルベルデは試合後、ビダル交代について「疲れているように見えた」と話していましたが、だとしたらセルタ戦で起用して欲しくなかったところなのですが…。

そして、もう思い出したくもないような得点が決まってしまいます。バルサが集中を欠いたのを見逃さなかったアーノルドが素早くCKをリスタート。正確なキックがゴール前のオリギの元へ通ります。咄嗟に反応したオリギがゴールに蹴り込み、得点。リバプールが遂に試合をひっくり返します。

バルサの選手たちは全くボールを見ていませんでした。得点を決めたオリギでさえ、準備をしていなかったと思います。非常にお粗末な守備でしたが、聞くところによるとリバプールは分析を行い、バルサの選手たちがCKの際に集中を切らす傾向があると見抜いていたそうです。そのため選手たちだけでなく、ボールボーイにも出来るだけ早くボールを入れるように指示をしていたとか。本当、徹底していますよね。

アーノルドのキックも正確でした。2点目のアシストも彼ですし、本当にキックの精度が高い選手です。プレビューのほうでリバプールの両サイドバックのクロスの精度については言及しましたが、正に不安が的中してしまいました…。

 

▪️溢れんばかりの喪失感、負けるべくして

バルベルデは慌ててマルコムを投入して攻めに出ます。大逆転を喫しましたが、それでも1点取ればAGで勝ちぬけられる状況です。しかしリバプールの強固な守備の前には成すすべがありませんでした。試合はこのまま0-4で終了し、バルサの準決勝敗退が決定しました。

前編でも触れたように、この試合は恐らくサッカー史に残ると思います。日程、1stレグの結果、主力選手の疲労、怪我人とあらゆる面でバルサが有利なはずでした。起きてしまってはならないことが起こるのがサッカーです。それがサッカーの魅力ですし、今まで数多くの熱狂を味わってきました。ですが、この試合は当事者になるにはあまりに辛いゲームでした。

試合から1週間が経過しました。メディアやファンも落ち着きを取り戻しつつあり、バルサの今後について活発な議論がなされています。僕がこの記事を通して伝えたかったのは、「バルサは負けるべくして負けた」というところです。負けたのはメッシでも、バルベルデでも、選手たちでもありません。バルサはチームとして、クラブとしてリバプールに完敗しました。ここにはほんの少しのエクスキューズもありません。

僕のこの試合に対して、そして今のバルサについての気持ち・感想は後日、コラム(?)のような形で書いていきたいと思っています。良ければそちらも是非お読みください。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。