Hikotaのバルサ考察ブログ

主にFCバルセロナが好きです。他サポの方大歓迎です

世界最高の選手との別れ

半年ほど前、部屋の書類を整理していた時、しわくちゃのA4の紙が出てきた。内容を見た時、衝動的に捨ててしまったので現物はもうないのだが、その紙には小学生の汚い字で確かにこのように書かれていた。

 

『世界最高の選手→クリスチャーノ・ロナウド

 

この紙に僕が文字を書き殴ったのは恐らく2008年。マンチェスター・ユナイテッドがクラブW杯のため日本を訪れた年である。

 

ウェイン・ルーニーカルロス・テベスライアン・ギグスリオ・ファーディナンドエドウィン・ファン・デル・サール。名だたる名手が揃った当時のユナイテッドにおいて、背番号7の輝きは別格であった。

 

当時代名詞の1つであった無回転FK(小学生のサッカーチームでは練習前に決まって誰がロナウドの無回転を蹴れるか競争だった!)に加え、両足で強烈なシュートを放ち、シザースを交えた高速ドリブルを繰り出す。おまけに超がつくほどのイケメン。当時小学生のサッカー少年にとっては憧れずにはいられない存在だった。

 

10〜11歳の僕はロナウドが世界最高の選手だと疑っていなかった。実際、2008年のバロンドールは彼の手に渡ったので、小学生の感性ながら間違ってはいなかったと思う。

 

しかし、僕にとっての『せかいさいこう』は僅か1年で覆されることになった。

 

バルセロナの試合を見始めたのは本当に偶然だった。たまたま親がWOWOWに加入していて、なんとなく見てみたEURO2008でスペインが優勝して、その中心にいたのがバルセロナの選手だった。という理由に過ぎなかった。今振り返ると超ミーハーである。

 

そして、僕は青とえんじの若き背番号10にあっという間に心を奪われた。

 

最初の感想は「この選手だけ早送りしてるみたい」。誰よりも小さい選手が、誰よりも速かった。面白いように相手を躱し、面白いようにネットを揺らし続けた。気づけば1シーズンが終わり、僕はバルサのファンを名乗るようになった。

 

その後の活躍は今更語るまでもない。小柄なアルゼンチン人は伝説となった。

 

1番の思い出は何だろうか。3冠獲得を決定づけたオリンピコでのヘディングシュート。クラブワールドカップでの胸で押し込んだゴール。CLクラシコで見せた圧巻のドリブル。国王杯決勝ビルバオ戦のゴール。CLでジェローム・ボアテングを転倒させ、ノイアーの頭上を抜いた一連のプレー。そしてラストプレーで決勝点を挙げ、マドリディスタを絶望させたクラシコ…。

 

選べない。選べないが、僕が鮮明に覚えているのは18-19のアウェイベティス戦。勝利を決定づけた一発である。ペナルティエリア左から放たれたボールは綺麗な弧を描き、懸命に手を伸ばすGKを嘲笑うかのようにゴールバーを掠め、ネットに吸い込まれた。

 

この一撃には味方でさえ頭を抱え、敵地のファンですら惜しみの無い拍手を送った。まさに芸術。この得点は彼が達した境地がいかに高いものであるか証明するに相応しいものであったと思う。この時期には若いころのようなスピードはなかったものの、代わりにフットボーラーとしての質は増しており、誰も到達し得ない領域に彼は確かにいた。

 

文句なしで世界最高であった。そしてクラブの象徴であった。

 

そんなリオネル・メッシバルセロナを去ることになった。

 

いつかはその時が来ると分かっていた。でもこんな形は想像だにしていなかった。辛い。未だに信じられない気持ちで一杯である。

 

メッシはずっとバルセロナでプレーし、引退するものだと確信していた。昨夏の移籍騒動時ですら、どこかで本当に移籍するはずがないと高をくくっていた。それだけに今回のショックは大きい。

 

僕が見てきたバルサは、誰がなんと言おうと、「リオネル・メッシの物語」であった。メッシが10番を背負ったシーズンから始まり、世界一となり、キャプテンとなり、そして伝説となる。その13年間の歴史が僕が見てきたFCバルセロナの全てである。

 

今回の退団劇で嫌というほど思い知らされたことがある。自分が見たかったものは、毎週睡眠時間を削ってまででも見たかったものは、バルセロナというクラブの試合ではなく、リオネル・メッシというプレーヤーの一挙手一投足であったということに。彼が輝くバルサが本当に好きだった。メッシを擁するチームのファンであることが本当に誇らしかった。

 

そんな僕が、メッシなき後のバルセロナを僕は応援し続けることができるだろうか。

 

答えはYESである。バルセロナは、あのメッシが、全てを勝ち取ってきた世界最高のプレーヤーが涙を流して「残りたかった」クラブなのである。

 

メッシは会見で「必ず戻ってくる」と明言した。いつになるのかは分からない。キャリアの晩年かもしれないし、引退後かもしれない。それでも彼がそう言うならいつか必ず戻ってくるはず。その時まで気長に待つ気持ちはある。その時まで全力でバルサを応援したい。あの記者会見が前向きにさせてくれた。

 

幸い、メッシが1年残ってくれたことで、クラブには選択肢が生まれている。昨季台頭した選手たちである。ロナルド・アラウホ、オスカル・ミンゲサ、セルジーニョ・デスト、そしてメッシ後の旗頭となり得るのがペドリ。さらにはフレンキ―・デ・ヨングとアンス・ファテイ。新時代を担う彼らがメッシと1年だけでもプレーできたことは大きな財産である。

 

改めてメッシには感謝してもし切れない。メッシがいなければこれほどバルサを好きになる事も、これほどサッカーを好きになる事もなかった。彼の存在がなければ、今ブログを書いていることもなかったと思う。

 

13年間夢を見せてくれてありがとう、贅沢すぎる時間でした。本当に楽しませてもらいました。あなたがプレーした時代に生まれてきて本当に良かった。またバルサでプレーすることを願っています。

 

今でも、これからもずっと、多分死ぬまで、あなたは僕にとって『世界最高』です。