こんにちは!代表ウィークがようやく終わり、バルサが帰ってきました。前節は約2週間前になりますが、アノエタでレアル・ソシエダに6-1で圧勝したバルサ。
代表ウィーク明けの今節はバジャドリードと対戦します。バジャドリードはここまで5勝12分11敗の16位。今季も残留争いに巻き込まれる格好となりました。バルサは前半戦の対戦で3-0と勝利しています。クラシコを次節に控えていますし、リーグ制覇のためには勝てねばならない一戦ですね。
スタメン
ホームのバルサは4試合連続同じスタメンでこのバジャドリード戦に挑みます。累積リーチのフレンキ―とメッシも先発メンバーに名を連ねることになりました。ピケやセルジ・ロベルトは練習には戻ってきているようですが、この試合では残念ながら招集メンバーから外れています。
一方のバジャドリードはコロナ感染や負傷で欠場者が多い厳しい状況です。欠場者はなんと12名に上ります。オレジャナが出場停止、ヴァイスマン、エメテリオが負傷中、ホアキン・フェルナンデスやキケ・ペレスは新型コロナ感染とかなり苦しいですね。スタメンにはビルバオからレンタルで加入したコドロが名を連ねます。
課題となる「噛み合わせ問題」
スコアとこの試合唯一の得点が入った時間を見れば、試合を観戦していなくてもバルサが苦戦したことは分かります。そして試合を観れば、よりバルサの苦戦っぷりが分かるような試合でした笑。
苦戦の原因は、選手たちのコンディション不良に求めることができます。バルサのこの日のスタメンの選手たちはメッシ以外は代表招集を受けており、それぞれ移動+1試合分以上消化してきているので、疲労はかなり溜まっていたと思います。
しかし、原因はそれだけではありませんでした。
この日もここ数試合と同じく、3バックでスタートしたバルサ。セビージャ戦やソシエダ戦のように上手く行かなかった要因は「噛み合わせ」にありました。
バルサの3バックの肝は、「システムを噛み合わせることで、オールコートでマンツーマンを作り、相手に断続的にプレッシングをかけて、ボールを握り続けること」です。つまり、3バックのバルサにとって、大前提なのはシステムが噛み合っていることにあります。
さて、この日のバジャドリードはいつもの4-4-2ではなく、3-5-2でこのゲームに挑みます。システムを噛み合わせてみると、以下の様になります。
注目して欲しいのは中盤中央、トップ下のオスカル・プラーノ。噛み合わせ上、彼は浮くことになります。ここにマークがつかないとプレッシングに行っても逃げ場になってしまうので、バルサからすると面倒です。実際、バジャドリードのビルドアップでは、CFのコドロやグアルディオラにロングボールを当て、そのセカンドをプラーノが拾って…というパターンが多かったように思います。
相手が2CB(4バック)ならグリーズマンが下がって対応すればいいのですが、バジャドリードは3バックだったのでそうもいかず。となると余っている最終ラインのフレンキ―がオスカル・プラーノを潰しに行くのは自然の流れでした。
しかし、ここで問題が2つ発生します。
1つは冒頭で述べた通り、フレンキ―の累積問題。この試合でイエローを貰えばクラシコに出場できない状況だったので、プラーノについて行きはするものの、激しいコンタクトプレーができず、ここを潰しきれませんでした。こうなってくるとフレンキ―を無理矢理先発させたのはなんだかなあという感じです。
もう1つは本来背後をカバーリングするべき3バックの中央の選手が前に出て行ったことで、左右のCBの対応が後手になってしまったこと。特にミンゲサは背後にカバーがいる状態で前に出て行くときに最も良さが出る選手なので、対面のコドロ相手にかなり苦戦した印象です。
つまり、初期配置が嚙み合っていないことでバルサの対応はどうしても後手後手になり(勿論コンディション不良も一因)、その分、バジャドリードの中盤の選手たちに自由を与えてしまった印象です。バジャドリードは中盤で素早くボールを回収すると早めにサイドへ展開し、そこからのクロスでチャンスを演出しました。
試合を観ながら、ミンゲサとフレンキ―の位置を入れ替えるのも一案かなとも思いましたが、そうなるとコドロ対フレンキ―のエアバトルが始まってしまうので、それもそれで難しかったなと。
これは偶然起こった現象ではなく、バジャドリードのセルヒオ・ゴンサレス監督が意図的に仕込んだものでしょう。恐らく代表ウィーク中にバルサの3バックを研究され、「嚙み合わせを外せば、勝機がある」とみたのだと思います。
実はこの問題はこの試合で露見したものではありません。バルサが本格的に3バックを使い始めた25節セビージャ戦の後半にこの現象は起こっていました。
前半セビージャの虚を突いた3バックで先制に成功したバルサでしたが、セビージャのロペテギ監督はハーフタイムに戦術変更。システムを3-4-1-2に変更し、バルサの噛み合わせを外そうと試みました。これによりバルサのプレッシングはかかりにくくなり、セビージャの攻勢を許す展開になりました。
セルヒオ・ゴンサレスがこの試合を観たかどうかは分かりませんが、少なくとも3バック初戦でこの課題は示唆されていたわけです。嚙み合わせが合わない時にどう対応する?というのは今後の課題になってきそうな感じはします。
この試合はぶっちゃけ、フレンキーが中盤化して実質2CBになっている時間が長かったので、ミンゲサ&ラングレペアだとちょっと不安定だったなと思います。このような試合こそ守備範囲が広く、1対1ではまず負けないアラウホの出番だったかなと。彼が後方にいればチームももう少し押し上げてプレーできたかなという印象です。
もう1つ、バルサの悩みだったのはバジャドリードの左CBのオラサでした。彼の対面はメッシになるわけですが、メッシは高い位置でプレッシャーをかけることはできても、深い位置まで下がって相手を追いかけることは基本やりません。
これを上手く利用したのがオラサで、頻繁に高い位置まで進出し、左サイドに「+1」を作ってチャンスメイクに寄与しました。
これもバルサの構造的弱点を突いたものであり、やっぱり色々研究と準備をしてこのゲームに挑んでいることがよく伝わってきます。よく走り、よく身体を張る良いチームでした。バルサが苦戦する理由はちゃんと相手チームにありました。
「良い守備は良い攻撃に繋がる」が最近のバルサのコンセプトだったので、プレッシングが上手くハマらなかったことで、それが攻撃にも影響した格好ですね。特に前半はほとんど得点の匂いがありませんでした。
ようやくチームの一員として
プレッシングに行けないとあんまり3バックの意味はないよってことで後半からはフレンキーを中盤に戻して4-1-2-3に変更したバルサ。
ただ、それでもバジャドリードのインテンシティがあまり落ちなかったので停滞感は否めず。むしろバルサの選手たちの疲労の色の方が濃くなっていました。むしろ先述のオラサの攻め上がりから決定機を作られるなど、かなり危ない試合展開になっていきます。
この苦しい展開で存在感を見せたのがウスマン・デンベレでした。
79分に鋭い仕掛けでオスカル・プラーノに退場を強いると、後半終了間際に左足のボレーでニアサイドを抜いて待望の決勝点。まさに試合を決定づける活躍を見せました。
しかし、素晴らしかったのはこれらの分かりやすい結果だけではありません。CFに入った前半は背後へのランニングを繰り返し行いチームを活性化しようとし、ウイングとして起用された後半はサイドのレーンで果敢にドリブルを仕掛け、中央の堅いバジャドリードを外から崩そうと試みていました。
今季のデンベレはその時々で「やるべきことをできるようになった」印象があります。不要なボールタッチや切り返しの数は激減し、必要とされるプレーを遂行できるようになった。これは紛れもない成長の証です。
怪我せず、毎回ピッチに立って、チームのために働く。プロサッカー選手にとっては当然のことのようで、今までのデンベレには当たり前ではありませんでした。これまでの3年と今季の大きな違いはそこにあります。
そして、チームメートもそのようなデンベレを信頼して彼を何とか活かそうという意図が見えました。この試合もなかなか中央突破ができない状況で、チームは真っ先にデンベレを探し、彼の突破力で打開しようという統一された意図を感じました。ゴールはその結果だと思います。
今季のMVPは?と聞かれれば、僕は迷わずペドリの名前を挙げますが、今季1番成長した選手は?と問われれば、これまた即答でデンベレと答えます。手腕が疑問視されてきたクーマンですが、デンベレを変えたということに関してはかなり貢献していると思います。
ようやくチームの一員として計算できる存在にまでなった。そのような気持ちです。
ただ、まだまだ物足りなさは残ります。23試合出場で5ゴール2アシストはアタッカーとしてあまりに寂しいですし、プレーヤーとしての課題はまだ山積みです。この位置に満足することなく、これからもチームのタスクをしっかりこなしながら、もっとビッグな存在になって欲しいですね。
試合は1-0でバルサが勝利しました。
試合雑感
代表ウィーク明け、メッシ・フレンキーが累積リーチ、バジャドリードの好パフォーマンスという厳しい状況の中でよく勝ち点3を手にしました。内容的にはかなり厳しかっただけに、このような試合で勝利できたのは大きいですね。
繰り返しになりますが、バジャドリードのパフォーマンスは素晴らしかったです。彼らにもう少し決定機があれば、あるいはオスカル・プラーノの退場がなければ、勝ち点を落としていたのはバルサだったかもしれません。代表明けにはあまりにハードな相手でした。
何はともあれ、今節の勝利でバルサは首位アトレティコに1ポイント差まで迫りました。これが何を意味するかというと、「残り試合全部勝てば優勝」という状況になったということです。
勿論、クラシコやアトレティコ戦だけでなく、ビジャレアル戦やグラナダ戦など難しいゲームも残しているので、言葉ほど簡単ではないでしょう。しかし、タイトルの行方が自分たち次第になったのは大きいですね。よくここまで来ました。
さて、次節はいよいよクラシコになります。優勝争いという意味でも、前半戦のリベンジという意味でも絶対に勝たなければならない一戦です。
時間があればプレビューを書きたいところなのですが、ここ最近はマドリーも3バックを採用していますね。3バック同士の対戦になった場合、この試合で浮き彫りになった「噛み合わせ問題」がどうなるのか。ここは割と焦点の1つになりそうです。
ここまで来たら2冠取って今季を終わらせたいです。まずは、クラシコ絶対に勝ち取って欲しいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。