Hikotaのバルサ考察ブログ

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【考察】リオネル・メッシは衰えたのか? 2021年3月版

こんにちは。今日のテーマはメッシの今季について。

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去年書いたこの記事の20-21版です。今季「不振」や「衰えた」と囁かれるメッシですが、本当に衰えたん?というところをデータを見ながら考えていきたいと思います。

(データはFBREFより)

 

数字のお話

まずはアタッカーとして最もメジャーなゴールとアシストのお話から。

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ここは最も分かりやすい指標というか、ここの数字でアタッカーの調子だったり、衰えが指摘されてしまうのはまあ切ないところです。ゴール+アシストは昨季から0.37点低下と、傍から見たら「メッシ衰えたな」と言われてもまあおかしくはないのかなと思います。

今季の90分あたりのゴール数は0.88。昨季の0.78よりは高い数値になっていますが、その前の2シーズンが1試合あたり1ゴールを超えていることを考えると、まあ下がりましたね。ただ、1試合当たり1ゴールが基準になっている時点で頭がバグっている感は否めません。

明確にここ4シーズンで最低の記録になっているのがアシスト数。1試合当たり0.19は「メッシらしからぬ」成績と言えるでしょう。これは相棒である盟友であるルイス・スアレスの退団が大きいのは間違いありません。チームの得点数自体も下がっていますし。

ゴール・アシストに直結するシュート数&キーパスのデータも見てみましょう。

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ここも明確に下がっていることが確認できます。シュート数はここ4シーズンで初めて5本を切っており、絶対数は下がっているのですね。反対にチームのシュート数は昨季よりも上がっているため、メッシのシュート数が下がったことは一概には悪いこととは言えません。

一方、キーパスも数値は下がっているものの、21アシストを記録した昨季からさほど下がっているわけではありません。SofaScoreのスタッツで確認しても、メッシの今季のチャンスクリエイトはリーグトップの14回。ここはシンプルにフィーリングが合っていたスアレスビダルがいなくなった分、という解釈でいいでしょうか。(今季ブライスワイト、グリーズマン、メッシで合わせて何と25回のビッグチャンスのミス!!)

正直、チーム状況を考えると、このデータだけでメッシの衰えを指摘するのはちょっと無理があるかなと思うので、もう少し深掘りしてみましょう。

メッシと言えばドリブル。彼にとってはドリブル数も重要な指標になります。

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昨季は20歳の若手のようにガンガンドリブルを仕掛けまくったので、そこと比べると数は少なくなってしまっています。1試合当たりのドリブル成功数が4を下回るメッシというのはなかなかです。これも基準はぶっ壊れていますが。

ただ、成功率自体はほとんど過去2シーズンと変わらないので、ここも衰えたと言える指標かと言われると微妙ですね。今季はCFの位置で起用されることが多いので、そこを加味すると本当に何とも言えません笑。

それに関連して、ボールタッチの位置にも注目してみました。エリアを横に3分割した時の、エリア別ボールタッチのデータがこちら。

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ボールを受けに下がりまくっていたセティエン政権が半分だった昨季は、アタッキングサードでのボールタッチが極端に下がっています。そこに比べると2シーズン前の傾向に戻った感のある今季という解釈でいいでしょう。今季もビルドアップの局面に下がる機会は多いですが、やはりここもスタートポジションがCFである影響はあるような。

ただ、興味深いのはメッシの今季のパススタッツ。

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パス数とパス成功率がこのように上がっているのはどう解釈すればいいでしょうか。17-18は58.3本のパス数だったのが、今季は73.3本。シーズンを重ねるごとに本数が上がっているのはやはり2018年のイニエスタの退団の影響でしょうか。ボールを難なく運んでくれた彼がいなくなったことで、メッシがその役割を担わなければならなくなりました。

今季はビルドアップに苦しむシーンが多いため、尚更メッシが余分にパス回しに加わった感もあります。まあここもちょっとデータでは読みにくいですね。

 

印象のお話

データ的に下がっているところは下がっているものの、チーム状況だったり、主力選手の退団を度外視するわけにはいかないので、定量的に「衰えている」と断定するのは難しいと思います。

では、定性的にはどうでしょうか。ここからは僕の100%主観になります。

僕の今季全試合観てきた中での正直な印象は「本調子では決してない、でも衰えたかどうかは分からない」というものです。

昨夏メッシは退団騒動でメンタル面に大きなダメージを負いました。シーズン序盤戦はモロにその影響を受けており、本来の彼が持っているキレや勝負強さは失われました。2020年にリーグ戦で記録した数字は僅か7ゴール1アシスト。メッシでなくともバルセロナレベルのクラブのエースとしては明らかに物足りない数字です。

しかし、シーズンが進むにつれ、メッシのメンタルは徐々に回復。今季の19ゴール4アシストの内、12ゴール3アシストは年明けの9試合であげたもの。明らかに2021年に入ってから復調傾向にあり、チームもリーグ戦では無敗と力強さを取り戻しています。

しかし、それでもメッシが「衰えていない」とは言いきれないのも正直なところ。これは昨季からの傾向ですが、「え?それ外す?」というシーンは散見されます。

今季は数が減っているとはいえ、ドリブルは33歳とは思えないような切れ味ですし、仕掛ければ必ず1人、2人躱せるような凄みは健在です。彼の武器であるロングフライスルーパスは序盤の不調時ですら、冴え渡っていました。

衰えを感じるとすれば、やはりフィニッシュの局面だと言えるでしょう。今季のメッシの決定機逸は10回。本来の彼であれば、その半分は実際の得点にしていたでしょう。それでもリーガ得点王まで戻ってくるのは流石なのですが、本来の彼基準であれば、もっと決めていてもおかしくなかったと思います。

ただ、これを衰えと言っていいのかどうかは極めて微妙なところ。というのもメッシは慢性的な右足首の痛みに悩まされており、この影響で今季何試合か欠場しています。軸足である右足で踏ん張れ切れないことで、枠を外れてしまったり、GKの正面を突いてしまうシュートが多くなってしまう側面があります。尤も、それも衰えと言ってしまえばそれまでですが・・。

それでも今季のチームの総得点の34%は彼が決めたものです。本調子ではないにしても、依然としてチームにとって不可欠な存在であることに変わりはありません。衰えていないわけじゃないけど、それでも世界最高の1人であることに変わりはない、くらいが印象としての落としどころかなと思います笑

 

理不尽な存在からチームの1人になれるか

昨日のセビージャとのゲームで、メッシは0ゴール0アシストに終わりました。チームは劇的な展開でセビージャに逆転勝ちを収め、決勝進出を決めました。しかし、今までのバルサであれば試合を決める決定的なゴールはメッシの左足から生まれていたと思います。

その代わり、メッシはこのセビージャとの2連戦で精力的にプレッシャーをかけ、守備に奔走しました。勿論日頃の彼に比べればという前提ですが、ボール非保持時の貢献度は今季最も高かったと思います。クーマンがメッシが守備に参加しやすいようにコンセプトを弄ったのも幸いしました。

来夏移籍するにしろ、バルサに残留するにしろ、メッシという特異な存在が現代サッカーのトップレベルで生き残り続けるためには2つしか選択肢がないと僕は思っています。

1つはこれまでやってきたように、ボール保持時に理不尽な活躍を見せ、圧倒的な数字を残し続けて、ボール非保持時のデメリットをかき消すこと。2点取られても3点取ればいいという理論です。

これを続けるためにはメッシは「衰えてはいけない」ということになるので、ちょっとでも数字が落ちるとアウトになります。先述したような少しの衰えがチームとしては大打撃になるわけです。

もう1つは攻撃のスタッツが落ちてもいいので、ボール非保持時の貢献度の割合を高くすることアンタッチャブルな存在から、良い意味で「普通の選手」になること。守備免除を外し、エネルギーをボール非保持時に回すことでよりバランスの良いアタッカーになるというものです。

僕は今まで後者を実現するのは難しいと考えていました。あれだけの実績を残してきた選手が30歳を越えてから急に守備に奔走するのはメンタル的にも体力的にも厳しいんじゃないかなと。今季もクラシコやPSG戦では全然走っていませんでしたから笑

しかし、セビージャ戦を観て少々考えを改めました。チームの枠組み次第ではメッシを守備に走らせることは可能ではないでしょうか。勿論、長い距離を走らせるのはNGですが、プレス組織が整備され、チーム全体で「リスクを負って奪いに行く」姿勢を見せればメッシのいるチームでもセビージャからボールを取り上げることはある程度できたわけです。

マークを引きつけられる上に自らこじ開けることもできるスアレスがチームから退団したことで、メッシの理不尽なゴールやアシストは減りました。チームにはもう4-4撤退守備を支えたラキティッチビダルもいません。最早前者のメッシ理不尽&守備免除の方針は現代サッカーの潮流を考えても、メッシ自身の状態を考えても先が見えるものではありません

ということで僕はバルセロナというクラブはもうメッシの衰えと共に死ぬしかないと思っていたわけです。それくらいの存在ですし、歴代最高峰の選手で10年以上楽しんだんだからそれくらいの覚悟はありました。

でも、それ以外の道があるなら、嬉しいです。

もし、クーマン継続的にメッシを守備に走らせ、高い位置からボールを奪いに行けるバルサを復活させられるとすれば、それは大きな光明になるはずです。メッシ自身は何よりもチームを勝たせたい選手です。あのスタイルでセビージャに勝てたのは結果以上に大きな意味があるのではないかと僕は思います。

何だか最後はメッシ個人ではなく、チームの話になってしまいました笑。まあ難しいミッションですし、理想論ではあるんですけど、希望は持っていたいなと思います。

他を寄せ付けない圧倒的な数字を残し続けるメッシは最高でしたが、若い選手が伸び伸び躍動するなかで、身を粉にしてチームに貢献するメッシを今は見たいです。ここからどちらの方向にクーマンバルサが向かうか楽しみになりました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。