Hikotaのバルサ考察ブログ

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【マッチレビュー】20-21 CL決勝トーナメント1回戦1stレグ セビージャ対ドルトムント

こんにちは。今回はCLのセビージャ対ドルトムントの試合のレビューを書いていきたいと思います。

決勝トーナメント初日からPSGがカンプ・ノウバルサを一蹴し、リバプールライプツィヒがハイレベルな攻防を繰り広げた今季のCL。バルサが負けたのは残念ですが、やはりこの大会はテンションが上がります。

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スタメン

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ホームのセビージャは今使える選手でベストメンバーを組んできました。負傷者はアクーニャ、オカンポスの2名。左サイドには冬に加入したアレハンドロ・ゴメスが入っています。 

一方のドルトムント。ホーランド、サンチョの20歳コンビは最早世界的に有名ですが、中盤に入るベリンガムはまだ17歳の選手。彼らを筆頭に若い選手が多いドルトムント負傷者は多く、ビュルキ、ピシュチェクヴィツェル、シュルメツァー、アザールがこの試合を欠場しています。

 

前半

前半の早々にスソの得点でセビージャが先制にするも、ドルトムントが3得点を奪い、逆転に成功しました。3失点のうち、2失点はスーパーな得点だったので致し方ないところはあったのですが、セビージャが先制後上手くいっていなかったのは事実。その原因はどこにあったのでしょうか。

武器を失ったセビージャ

昨季から始まったロペテギ体制のセビージャの最大の特徴はダイナミックなサイド攻撃。同サイドに人を集めて、密集を作り、相手を引き付けたタイミングでサイドチェンジ。手薄になったサイドからの高精度のクロスで得点を狙うパターンで昨季はリーグで4位、EL優勝という素晴らしい結果を残しました。

そのサイド攻撃の鍵を握ったのが、抜群のキック精度を誇り、ロングレンジのサイドチェンジを涼しい顔で通すバネガ。そして右サイドで抜群の連携を見せるオカンポスとナバス、そして粗削りながら縦への推進力が抜群だった左SBのレギロンでした。

しかし、バネガとレギロンは退団。オカンポスは負傷でこの試合を欠場し、復帰したばかりのナバスはコンディションが思わしくなかったのかいつもに比べると精彩を欠いた印象です。このような状況であったのでセビージャのサイド攻撃はいつもに比べると迫力が欠けていました

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セビージャボール保持時

ドルトムントは前からセビージャのビルドアップを制限するプレーはあまり見られず、どちらかというと上図のように4-5-1の陣形で重心を低く守ることを意識していました。優先順位としては背後のスペースを消すことだったと思うので、ライン間はそこまできつくない印象を受けました。

対してセビージャの攻撃。この日のウイングはスソとパプ・ゴメス。どちらもハーフスペースでのプレーを好むタイプでライン間で受ける姿勢を前半を通して見せます。セビージャはボール保持時に中盤の誰かがDFラインに入ることが多いので、3-4-2-1のような陣形に。スソやゴメスの足元にボールを入れてそこからどうこうが目的だったかなと思います。

ただ、先述した通りナバスの身体が重く、左SBのエスクデロもさほど馬力があるタイプではないため、ライン間にボールが入っても「そのあとどうする?」状態だったことは否めませんでした。ドルトムントも中央は堅かったので、ライン間で受けてからコンビネーションでの中央突破は難しそうでした。

もう1つ気になったのは、今日のセビージャは「陣形が整い過ぎていた」こと。2CB+1+1のビルドアップ、フェルナンドが高い位置を取り、両SBが幅取り役、2WGが左右のハーフスペースでプレーし、エンネシリは中央に陣取ります。左右のバランスはとてもいいですね。

しかしながら、セビージャの崩しの肝は密集を作ることです。例えば、先日の国王杯のバルサ戦ではゴメスがポジションを離れて頻繁に右サイドに流れ、スソやジョルダンと絡みながらチャンスを作るシーンが目立ちました。距離感の近いコンビネーション&アイソレーション攻撃がセビージャの大きな武器です。
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いつもとは異なり、今日のセビージャは過度に同サイドに人が集まることはなく、あくまで初期配置を重視しながらの試合運びになりました。恐らくドルトムントの高速カウンターを警戒して、あまり配置を崩したくなかったのだと思いますが、それだとなかなか相手の陣形も崩れないので、攻撃ではかなり苦労してしまった印象です。逆に先制点が早すぎたパターンかもしれません。

普段のセビージャは基本的に「人が動くこと」で相手を動かします。バネガのようなプレーメイカーはもうスタメンにはいないので、ボールを動かして相手を動かすとなると、そういう選手が欲しいなあと思ったりします。そして後半はそういう選手が入ってきました。

最強生物ホーランド

先制パンチを食らってしまったものの、守備でリズムを作ったドルトムントは徐々に攻勢を強めていくことに。やはり特徴的なのは縦に速い攻撃。月並みですが、中心はやはりCFのホーランド。2G1Aと目に見える結果を残しました。

デカくて速い、そして技術も高いというウイニングイレブンのエディットで作るような「ぼくのかんがえたさいきょうせんしゅ」なホーランド。裏に抜けても良し、ポストプレーも良しの彼が最前線にいることで自然とセビージャのラインは彼を警戒して下がってしまいます。

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ホーランドのポスト

例えば、このようなシーンでホーランドが前線にいると自然にラインが下がります。セビージャは前からボールを積極的に奪いに行きましたが、ホーランドがいることでDFラインが上がり切らず、DFと中盤のラインの間にスペースができてしまい、そこをホーランドのポストプレーで使われるという場面は散見されました。

ドルトムントはそのホーランドに一旦当てて、そのレイオフをインテリオールやウイングが前向きで受ける攻撃のパターンはかなり徹底してやっていました。そりゃああれだけの化け物が前線にいたら有効活用しますよね笑。

ドルトムントの同点弾も敵陣中間あたりでロングスローを受けたホーランドがジエゴ・カルロスを背負いながら時間を作り、プレスバックに来た2人も難なく剥がし、そのタイミングでバイタルに入ってきたダフードにパスを出したことで生まれたもの。背負った時の身体の使い方と時間の作り方が抜群で、あの巨体にボールを隠されたらどうしようもありません

ドルトムントの2点目もアカンジの縦パスをライン間で引き出したホーランドが前を向いてドリブル。敵を引き付け切ったところで横のサンチョとワンツーで抜け出してゴール。この局面でもセビージャはホーランドを掴まえ切ることができませんでした。

背負う、裏に走るだけではありません。CFとしてあまりに引き出しの多いホーランド。昨日バルサハットトリックでノックアウトしたキリアン・エンバペと並んで次代を築く選手になるのは間違いありません。

 

後半

ロペテギの修正

先制点以外あまり良いところがなかったセビージャは後半開始から選手交代。ラキティッチを下げて、より守備力に定評のあるグデリを入れます。一見すると守備固めのような交代に見えますが、この交代の意図はどこにあったのでしょうか。

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セビージャ後半の形

選手交代に伴ってセビージャはフェルナンドを3バックの中央に落とす3-4-2-1に変更。あれ、前半とあまり形変わらなくない?と思った方もいるかもしれませんが、この変更には主に3つの狙いがあると僕は考えました。

1つ目はフェルナンドを低い位置に留めることでカウンターの防波堤として据えること。フェルナンドはアンカーに入った時は、ビルドアップ時高い位置を取って攻撃に厚みを出すようなプレーをします。それが有効な時も勿論あるのですが、今日のドルトムントのように縦に速いプレーをするチームが相手だとそれがマイナスになることもあります。

特にホーランドのところは脅威でしたし、そこを抑えると意味でもフェルナンドを低い位置でプレーさせるのは重要だったのかなと思います。フェルナンドを最終ラインに落とす采配はロペテギの定番でもあります。

2つ目はフェルナンドを最終ラインに落とすことで、右CBのクンデが上がりやすいシチュエーションを作ること。クンデは守備力だけではなく、積極的な攻撃参加に定評がある選手です。彼の能力については先日記事を書いたので、是非。

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最後の3つ目は、SB、特にヘススナバスを攻撃に専念させること。ナバスの状態があまり良くないというのは先ほど書きました。言うまでもなく4バックのSBとWBは異なるタスクを持ちます。後方にクンデ、フェルナンド、ジエゴ・カルロスがいることで前半よりも攻撃に集中できる状況だったので、ナバスがサイドで存在感を発揮するシーンは後半増えたと思います。

というセビージャの修正に対して、ドルトムントは特に動かずアウェイゴール3得点を取れればもう満足とばかりにさらに自陣深くにブロックを敷いて、守りを固めます。

セビージャはさらに4人の選手交代を行います。ルーク・デ・ヨング、ムニル、オスカル・ロドリゲス、オリベルを入れて攻撃に厚みを出します。

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オスカル投入後のセビージャ

2トップに変更し、中央の密度を高めるとともに、展開力のあるオリベルを投入したことでサイド攻撃に厚みが増すことになります。強度に問題はあるとはいえ、個人的にはオリベルはもう少し重用されてもいいと思っていて、今日のような静的な配置の試合では彼のような選手が必要だと思います。

攻め続けたセビージャは最終的にセットプレーの鬼であるオスカル(直接FKも惜しかった!)のFKからルーク・デ・ヨングが抜け出して右足で押し込んで得点。1点差に迫る貴重なゴールを挙げて試合終了。ドルトムントが1点のアドバンテージを持って2ndレグへ向かうことになりました。

 

試合雑感

ホーランドがセビージャを蹂躙した前半と、ロペテギの修正でセビージャが盛り返した後半でした。非常に面白い試合でしたね。朝から見ごたえのある試合を観れて起きた甲斐がありました。厳密には6:00に起きたので、追っかけ再生で見たんですけどね笑。あれができるのはWOWOWが放映権取ってくれてよかったなという感じです。

スペイン代表解任の経緯が酷すぎるのと、その原因となったマドリ―での挑戦が大失敗に終わったことでマイナスイメージが付きまとうロペテギですが、普通に名将だと思います。代表でも普通に結果残していましたし。個の力ではややドルトムントが上だったと思いますが、それを戦術的な修正でチームに+αをもたらしたのはロペテギの采配でした。

言うまでもなく、2ラウンド制なので同じ負けでも1-3と2-3は全然違いますルーク・デ・ヨングの追撃弾はセカンドレグに効いてくるはずです。それでもアウェイで2-0以上の勝利が必要なので難しい試合にはなると思いますが。

ドルトムントからすると後半は重心を下げただけに2点差をキープして試合を終えたかったところですが、最後の失点で後味が悪い結果になってしまいました。尤も、アウェイゴール3得点は非常に大きなアドバンテージですし、前半はそのクオリティを存分に発揮しました。特に守備の部分では徹底されていたと思いますし、サンチョやロイスもしっかりと守備の貢献度は高かったです。

昨日のエンバペもそうでしたし、リバプールライプツィヒを見ても実感しましたが、このレベルで守備をサボる選手がいたらアウトです。バルサは頑張らねばですね。

こんな感じでCLは他のチームのレビューも書いていけたらなと思います。普段毎試合追っていないチームなので、粗は山ほどあると思いますが、よろしくお願いいたします。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。