Hikotaのバルサ考察ブログ

主にFCバルセロナが好きです。他サポの方大歓迎です

【考察】ルイス・スアレス さらばクラブ史上最高の9番 

2020年9月23日、バルセロナルイス・スアレスの退団、そしてアトレティコ・マドリ―への移籍を発表しました。

www.fcbarcelona.jp

アルトゥール、ラキティッチビダル、セメドに続く今夏の放出選手。ここまで主力の一斉放出がある年も珍しいでしょう。その中でもラキティッチスアレスの2人に関しては別格の貢献度を見せてきました。ということなので、今回はラキティッチに引き続きスアレスのお別れ記事を書いていきたいと思います。

www.footballhikota.com

 

 

6シーズンで198得点、ゴールに愛されたハンター

2014年、ルイス・スアレスバルセロナの地に降り立ちました。当時27歳。肉体的にはベストに近い状態。プレミアリーグでゴールを積み上げ続けた実績も十分であり、世界的なビッグネームの到来にバルセロナ界隈は大いに沸きました。

というのは事実でなく、実際のところ悲観論が多かったように記憶しています。理由は彼の素行面の問題の多さ。パトリス・エブラへの人種差別発言や、加入直前の2014年W杯での噛み付き事件(しかも噛み付きは2度目!!)で彼の人格面への評価は下がりに下がっていました。

かのイブラヒモビッチの言葉を借りれば「学校の生徒」のような選手が多かった当時のバルサに、スアレスのようなザ・問題児は合わないのではないか。何よりチームのエースであるリオネル・メッシと合うはずがない。そういう風に僕自身が強く思ったのをよく覚えています。

果たして僕と大多数のクレの見立てはいい意味で大きく裏切られたのです。6シーズンで198ゴールを挙げ、不動の9番として君臨しました。198ゴールはクラブ歴代3位の記録。わずか6シーズンでクラブ史に残るゴールハンターとして名前を残したのです。これは本当に驚くべき活躍です。

「は?」という反応を何度させられたことでしょうか。スアレスのゴールは歓喜よりも唖然を呼び寄せます。スアレスのゴールは本当に難易度の高いものが多く、「なぜ入った??」というよりも「なぜ撃ったの??」という気持ちにさせられるものばかり。

代表的なのは昨シーズンのマジョルカ戦でのバックヒールでのゴール。入ったのもすごいですが、まず普通のストライカーはあの状態でシュートに行こうなんて思いません。まさに不可能を可能にするようなゴールハンター。バルサの下部組織からは決して出てこないようなタイプのビーストでした。

www.youtube.com

↑気になる方は是非!

素行もバルサに来てから非常に落ち着きました。勿論、噛むことはありませんでしたし、トラブルを抱えたケースはほぼ皆無。あってもシュミレーションっぽいやつとか審判に文句言ってイエローカードくらいのもので、それまでのスアレスを考えると可愛いものでした笑

そしてそれ以上に驚くべきだったのは、リオネル・メッシとの相違相愛ぶり。「絶対に合わない」という前評判から「毎回マテ茶を飲みながら一緒にスタジアム入りする」ほどの仲良しになりました。お互いの家族も仲良しで、オフのバカンスすら同行するくらいの大親友になったのです。

ピッチ上でも見なくてもお互いの位置が分かっているような呼吸の合い方をいやというほど見せつけられてきました。それこそメッシはスアレスGPSを埋め込んでいるんじゃないかと疑ってしまうくらいのパスを出していました笑。

 

バルサの9番」より「メッシの相棒」としての価値

やはり近年のバルサにおいて、新加入のアタッカーで最も気になるのはメッシとの相性。どんなに優れた選手であっても、メッシと合わなければバルサで力を発揮することができません。

スアレスはこの部分が天才的に上手いFWでした。自分のエゴを殺さず、メッシを立てる。言葉にすると簡単そうに聞こえますが、これができない一流FWは山のようにいるはずです。つまり、スアレスの真価は単なるゴールマシーンとしての働きではなく、「2番手アタッカー」の資質を持ち合わせていたことにあります。

単純な得点力もさることながら、ポストプレー、ラインブレイク、スペースメイクを精力的にこなす事でエースのリオネル・メッシに多大なスペースを提供。それもパターンではなく、即興で合わすだけの柔軟性を有していたのは本当に驚きでした。正直もっとエゴイスティックなFWだと思っていました。

スアレスの加入の伴い、メッシは右サイドに移行し、スアレスは中央に陣取るようになりました。この変更により、相手のCBは常にスアレスとの駆け引きを強いられ、積極的にボールを奪いに行くプレーが困難となりました。スアレスを無視すれば簡単に出し抜かれてしまいますからね。

f:id:hikotafootball:20200926001043p:image

それにより、メッシはCBの圧力を以前より受けなくなり、より自由に自身の好きなスペースを有効活用出来るようになったのです。スアレスは背負うこともできますし、密集地隊でのプレーも可能だったので、メッシを優先させることによる弊害を殆ど受けなかったという意味で価値が高いものがありました。

むしろメッシを活かすことでスアレスも活きるという関係性を作ってしまったのは本当に凄いことでした。メッシと同じ絵が描けるアタッカーは本当にスアレスネイマールだけだったと思います。

スアレスバルサというチームにとって「最高の9番」だったかは分かりませんが、メッシの相棒としては間違いなく最高だったと思います。

 

慢性的な膝の痛みとCLでの決定力

しかし、スアレスは特に最後の2~3シーズン、クレから激しく批判されました。

その理由は主に2つ。

1、守備貢献の低さ

2、CLアウェイ戦での得点が約5年間ない 

 1に関してはかなり深刻でした。スアレスは慢性的な膝の痛みを抱えており、30代に突入したあたりから依然のように走り回るのが困難になりました。スアレスの1番の仕事はやはりゴール・アシストですから、当然エネルギーはゴール前で発揮し、それ以外の局面では省エネするようになったのです。

メッシは元々守備を免除されていたので、バルサはこれで前線にプレスをかけないFWを2人抱えることになってしまったのです。この状況では4-4-0で守るほかなく、バルサはボール保持を捨ててリトリートしてカウンターを狙う場面が増えました。このプレースタイルはクレの不興を大いに買ったのです。

www.footballhikota.com

しかし、スアレスは依然としてメッシと好相性を築いていましたし、攻撃面においては必要な存在でした。アンタッチャブルな存在になってしまったがために、殆どの試合で90分フル出場。そのため、競争相手のFWを獲得しようにもスアレスの存在が絶対的であるが故に、大物を獲得するのは難しく。ケビン・プリンス・ボアテングでお茶を濁そうとしたのが懐かしいです。

また、CLアウェイ戦で点が取れなかったことも批判の対象でした。原因は全く分かりませんが、リーガやホームの試合ではゴールを量産するスアレスが、CLのアウェイになると別人のように沈黙してしまうのです。バルサというチーム自体がアウェイに弱いという事情もあるのですが、スアレスほどのFWであれば・・。

とはいえ、得点能力は30を越えても大きく落ちませんでした。17-18は25ゴール、18-19は21ゴール、そして昨季は16ゴールをリーグ戦で記録しました。昨季は負傷による欠場が長かったことを考えると、フル稼働していれば20ゴールを越えていたと思います。

スアレスは40ゴールを記録したシーズンもあったので、それを考えると落ちたとも言えそうですが、単純にそっちが異常だっただけで、メッシが優先されるバルサにおいてリーグ戦20ゴール以上は十分すぎる成績でしょう。

 

レジェンドとしてクラブを去る

残してきた数字だけを見れば、彼の放出は不可解かもしれません。しかし上記の事情と年齢を考えると退団は仕方なかったと思います。バルサは変化を必要としており、メッシが退団しないのであれば彼の放出はチームバランスの観点からやむを得なかったと考えています。

僕自身もスアレスの得点能力に依存して、その分の守備負担を他の8人で補うやり方には限界を感じていました。勿論、彼に汚い言葉をぶつけることなどありませんでしたが、彼の今夏の放出には賛成の立場でした。

しかし、どんなに批判を受けようと、彼がクラブ史上最もリスペクトされるべき選手であることに疑いはありません。間違いなく、この6年間のバルサを引っ張ったのはメッシとスアレスの2トップでした。戦い方に賛否はあっても、この事実を否定できるファンはいないはずです。

6年間9番のポジションを守り続けた選手の退団はやはり寂しいものですね。思い返せばこの6シーズン、スアレスには良くも悪くも「なんでよ!」と思わされ続けてきました。「なんでそのゴールが決まるの!」とか「それで何でその横パスが通らないの!」とか笑

ゴールを決めても、ミスをしても本当に愛されるストライカーだったなと思います。今後スアレスよりも優れたFWは出てくるかもしれませんが、彼ほど色んな意味でめちゃくちゃなFWはもうバルサには出てこないような気もします笑、

スアレスの新天地はアトレティコ・マドリー。リーガの覇権を争う直接のライバルチームの一員として今季からバルサの前に立ちはだかることになりました。守備の部分の貢献度が非常に気になるところですが、アトレティコでも変わらず点を取り続けることでしょう。

バルサ戦以外での彼の活躍と幸せを祈りたいと思います。今までありがとうございました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。